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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


『蓬莱館』へようこそ
●方針検討【13A】
「いや〜、綺麗になっちゃったね〜、三下君」
 充はつやつやになった風呂上がりの三下の頬をぷにぷにと何度も突きながら、面白そうに笑っていた。充が宿泊している部屋での出来事だ。
「これほど綺麗な肌だと、ちょっと嫉妬しちゃうかなあ……」
 三下の頬に顔寄せ、半分冗談半分本音のような言葉を吐く充。だが言われている三下は泣きそうな表情である。
「うう……本当に大変だったんですからぁぁ……。危うくお婿に行けなくなるかと……」
 ……何があったんだ、というか何された三下。
「まあからかうのはこのくらいにして……何だっけ、そのカップルの名刺にあった雑誌名って」
「えっと、月刊誌『秘湯の盟友』です」
「……聞いたことないなあ。ずいぶんマニアックな雑誌なのかな」
 思案する充。確かにマニアックな雑誌であれば、充が知らなくて当然かもしれない。事実、専門分野に特化した雑誌だと、そういう類のはごろごろしている。
「書店売りほとんどなしで、定期講読者のみで成り立ってる雑誌もあることだし。第一、ばんばん売れてたら全然『秘湯』じゃなくなるか」
 充がくすっと笑った。うんうんと頷く三下。
「そうなんですよねえ。だから、雑誌が嘘だとも思えなくて」
「ちうか、本そのものは三下君も見てないの?」
 充が何気に重要な質問を投げかけた。実際に雑誌の実物があればこの議論はそこで解決、即座に終了である。
「……はあ、見てません」
 申し訳なさそうに答える三下。予想通りの答えではあった。
「そうなると確かに怪しいかもね。聞いたことない、見たこともない、実物もない……ないない尽くしだもの」
 そう言って充は溜息を吐いた。
「その上、人が入るほどの大きなトランク持ってるって? それは大げさだとしても……トランクは僕も持ってはいるけど、完全に衣装用だからなあ。まさかカップルで僕と同じ……って、有り得ないか」
 苦笑する充。自分で言っていて、矛盾を感じたのであろう。
「だったら、わざわざ雑誌名出したりライターだって言うこともないし。どっちかと言うと、ひっそりとやるだろうからなあ……」
 充が一瞬神妙かつ複雑な表情を見せた。だがすぐに笑みを見せ、こう言った。
「ウェディングドレスで2人きりの結婚式だったら、可愛いものだけどね。そう願うよ、物騒なのは勘弁」
「でも、どうやって調べましょうか……。いっそ、本人たち捕まえて聞いた方がいいんでしょうか」
「それは最後の手段じゃないかな」
 三下の考えを聞き、くすっと笑う充。
「まあ、僕はまだその『杉並ゆうじ』さんや『千代田雅子』さんとやらを見てないからな〜。顔を見たらまた、いい考えが浮かぶのかもしれないけど」
 とそこまで言ってから、充はふと気付いたように言葉を続けた。
「そういえばここ、夕食の場所を部屋か広間か選べたんだよね……じゃあ可能性はあるのかな」
「へ?」
 きょとんとなる三下。充の言葉の意味が、まだ飲み込めていないようである。
「分からない? もしかしたらその人たちも広間に来るかもしれないって話。来なかったら来ないで、何か理由つけて蓬莱さんに部屋を聞いてもいいんじゃないかな」
「ああ、なるほど!」
 三下がポンと手を叩いて感嘆した。そして充の手を握り、ぶんぶんと上下に振った。
「室田さんありがとうございますぅぅぅ! やっぱり室田さんに手伝ってもらってよかったですぅぅぅっ!!」
 ここまで喜んでもらったら、悪い気はしないものである。にこにこ顔になる充。
「それじゃあ、とりあえず夕食食べに行こうか。広間で食べるって伝えてあるし」
 こうして充は三下を伴って、夕食場所である広間へ向かったのだった。

【『蓬莱館』へようこそ・個別ノベル 了】


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■   登場人物                  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0076 / 室田・充(むろた・みつる)
                / 男 / 29 / サラリーマン 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ダブルノベル 高峰温泉へようこそ』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全51場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・大変お待たせし申し訳ありませんでした、『蓬莱館』での出来事のお話をここにお届けいたします。今回共通・個別合わせまして、かなりの文章量となっております。共通ノベルだけでは謎の部分があるかと思いますが、それらは個別ノベルなどで明らかになるかと思います。また、『『蓬莱館』の真実』と合わせてお読みいただくと、より楽しめるかと思われます。
・今回プレイングを読んでいて思ったのは、直球ど真ん中ストライクなプレイングが結構あったかな……と。ひょっとして、高原の考えが読まれていたのでしょうか。
・室田充さん、ご参加ありがとうございました。三下くんが大変お世話になりましたね。トランクの中身はああだったのですね、実は。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、またどこかでお会い出来ることを願って。