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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


囚われの女神を助けてくださいませんか? 〜in高峰温泉〜

ACT.SPECIAL■嘉神しえるさま接待企画〜弁財天宮にようこそ〜

「やほ♪ 弁天さま。ご招待ありがと。お言葉に甘えて参上したわ。思いっきりおめかしして来いってことだったからこの服にしたんだけど、どう?」

 高峰温泉より帰還後の、とある休日のことである。
 井の頭公園弁財天宮前には、かなり不審な看板が見受けられた。
 
=====蓬莱館・偽(期間限定)=====
 
 何も知らない人間がうっかり迷い込んだりしたら、即、回れ右してダッシュで逃げたくなる怪しさである。
 今回、この看板は、日にちを替えて合計5回、立てられることになる。
 蓬莱館の露天風呂から続く異界通路に挑み、弁天の救出にたずさわった勇者5名を、ひとりずつ招待して接待する企画のために、弁天が手書きで製作したのであった。
 
 本日は、勇者のひとり、嘉神しえるを接待する日である。
 『蓬莱館・偽』にやってきたしえるは、赤地に白い小花を散らしたノースリーブのマーメイドドレスに、スイス製のレースのショールという、華やかないでたちであった。
「うむうむ。美しいのう麗しいのう。曙の明星ルシフェルも、かくやとばかりの美貌じゃ」
 さりげなく堕天使を引き合いに出すあたり、いまひとつ誠意か感じられない。しかしこの程度のことは、もう弁天とのつきあいも長いしえるには慣れっこである。
「弁天さまこそ、蓬莱さんのコスプレ、似合うじゃない」
 そう――
 スペシャル限定企画を盛り上げるために、弁天の衣装は蓬莱を模していた。
 だが女性を接待するのに、弁天がコスプレしてどうするのかという問いは、この際棚上げである。
「ようこそ、温泉のない蓬莱館・偽へ。今日はごゆっくりお楽しみ下さいましまし……おや? ませね」
 慣れない言葉回しもたどたどしく、弁天はしえるを弁財天宮地下1階、接待用客室『天使の間』に案内した。
「いらっしゃいませ。しえるどの」
「ようこそ、しえるさま」
 黒い執事服に身を固めた、栗色の髪の青年と灰色の髪の少年が、しえるを出迎える。
 顔にはなじみがないが、声には聞き覚えがある。幻獣として見知っている、ケルベロスとフェンリルであった。
「あら。ポチとリルリル。この前はアイテムをありがと♪」
「どういたしまして。さあ、こちらへ」
「今日は各種ワインと地酒を取り揃え、心ゆくまでおもてなし申し上げます」
「へえ。弁天さまの招待にしては、結構待遇いいじゃない?」
「そうであろう? じゃからのう、しえる。ものは相談じゃが、臨時勇者の報酬、ちとまけてくれぬかのう〜〜?」
 接待の主目的であるところの報酬のダンピングを、弁天はさりげなく切り出す。
「え〜? どうしようかなぁ〜〜」
 とぼけてみせるしえるの前に、銀の髪のウエイターがワイングラスを置いた。
「あれぇ? 蛇之助?」
「はいい〜。いらっしゃいませ」
 しえるに挨拶をしてから、蛇之助は涙目で弁天に訴える。
 
「弁天さま! どうして幻獣さんたちが執事服で、私はウエイター服なんですかぁ?」
「文句言うでない。今日だけはしえる女王さまに尽くすことを許す! 報酬値下げをご了解いだたくまで、尽くして尽くして尽くし倒すのじゃ!」

 ――さて。
 接待の成果や如何に?
 

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■   登場人物                  ■
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【2617/嘉神・しえる(かがみ・しえる)/女/22/外国語教室講師】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは。神無月です。いつもありがとうございます。
この度は、とんでもないシナリオに勇気をふるってのご参加、まことにありがとうございます。
とにもかくにも、『湯けむり異世界ぶらり旅』に大受けしたライターでした。
弁天救出(?)お疲れさまでございました!