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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


赤根草
「んーっ」
 大きく伸びをして、ころん、と自分に振り分けてもらった部屋に横になる。もちろん座布団は何枚も敷いて布団代わりとし、その上に体を横たえているのだが。
「疲れちゃったなー」
 ぽつんとそう呟いて天井を見上げた。
 今の時間は皆思い思いの事をしているのか、遊びに来てくれる人も居らず少しばかり暇を持て余しているところだった。
「思った程危険じゃなかったよね」
 かと言って全く安全と言うわけでもなかったが。あの息苦しさや襲いかかって来たアレは、もし1人だったら、と思うとぞぉっとして思わず胎児のように座布団の上で丸くなってしまう。
「惚れ薬って甘いのかな?それとも苦いのかなぁ。苦かったら飲みたくないな」
 飲んだ後の事は考えていないのか、味の事を思っていかにも苦そうな顔をし。それからぱっと顔を輝かせて、
「あっ、でもでも、必要ないもんね。もうあたしにはちゃぁんとしただーりんがいるんだから」
 強いし守ってくれるし優しいし頼りになるのよー、と誰も聞いていないのをいい事に普段照れくさくて言えないような事も口に出して言ってみる。それでも口に出してみると照れてくるのか、もう一枚座布団を引っ張り出して半折りにし、ぎゅー、と力いっぱい抱きしめながらごろごろと転がった。
「お薬を使ってまで、ねえ…でもちょっと欲しいかも…」
 自分が使うとしたら、相手はもちろん決まりきっている。それも、効果を確かめると言うよりは効いたとしたらどういう行動に出るのか見てみたいという好奇心のみの考え。
 他に使うとしたら、と座布団を抱きながら天井を見上げ、
「んー、でもそんなお薬でくっついちゃったら後が大変よねー」
 解毒剤も一緒に作ってくれればいろんな人に飲ませてみるのにな、とその時のことを考えてくすくす笑いまたころんと寝返りを打った。
 後はあの子と、この子と…と、想像だけなら問題ないかと勝手に何人もの知り合いをくっつけておいてその後のことを想像しながら。
*****
「ん…」
 ふあぁぁぁん、と大きく子猫のような欠伸をしながら身体を伸ばし、起き上がる。ぼんやりとした目で辺りを見回し、暫くぼーっとした後でようやく今何処にいるのかを把握し。
 そして、その時ようやく自分の体にかけられた毛布に気が付いて「?」と首を傾げた。
 もしかしたら無意識に布団を引っ張り出したのだろうか?
 だが、毛布を畳んで押入れに仕舞いに行ってみると、どう見てもきちんと畳まれた毛布は崩れた様子も無く敷布団と掛け布団の間に挟まれており、明莉が引っ張り出したとは思えない綺麗さだった。
「寝てる間に誰か来たの?」
 明莉の質問に答えられる人間はこの場に居ない。
 ただ、心配はしていなかった。来るとしたらあの人しか考えられないし、こうして寝ている姿を見て布団をかけてくれるような心遣いをしてくれる者など彼以外には知らないのだから。
「そうよ、お薬なんて必要ないのよ」
 うたた寝する直前に試しに飲ませてみたいなどと考えていた事もすっかり忘れ、上機嫌で座布団を積み上げてにこにこと満面の笑みを浮かべた。
 この後、横になっていたせいでやや乱れた髪を整えた後、自分の方から恋人に力いっぱい飛びついて行こうと決めて。

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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2768/朋矢・明莉/女性/19/専門学校生】

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■         ライター通信          ■
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長い間お待たせしました。「赤根草・個人ノベル」をお届けします。

この物語は、共通ノベルで依頼を果たした後の話となっています。参加者それぞれの物語、共通ノベルと合わせて楽しんでいただければ幸いです。
個人ノベルには他のPCは絡ませていません。いたとしてもNPCのみです。従って、それぞれ違った物語となっていると思われます。宜しければチャンネルを切り替えるように読んで頂ければ、と思います。
こうしたイベントには初参加でしたが、楽しませていただきました。またの機会があれば是非参加させてもらいたいと思っています。
それでは、またの機会にお会いできることを願って。
間垣久実