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囚われの女神を助けてくださいませんか? 〜in高峰温泉〜
ACT.SPECIAL■シュライン・エマさま接待企画〜弁財天宮にようこそ〜
「まったく……。ドレスアップして来いっていうから、いったい何事かと思えば」
高峰温泉より帰還後の、某月某日のとある昼下がり。
『蓬莱館・偽』の看板が立てられた弁財天宮の、地下1階接待用客室『名探偵の間』では、蓬莱のコスプレをした弁天が、どこか含みのある笑顔で待ちかまえていた。
「おお、シュライン。よく来てくれた。今日はまた、いつにも増して美しいのう。そのオレンジのミニドレス、おぬしにしては珍しいが、実によく似合うておるぞえ。まるで異世界からやってきたサラマンダーのようじゃ」
――不適切なたとえである。服を誉めるにも、他に言いようがあろう。
シュラインは腕組みをしたまま、蓬莱のコスプレ姿の弁天をじろっと弁天を見る。
「……結局、浴衣が気に入らなかったのは、蓬莱さんの衣装が着たかったからなのね?」
「まあまあまあ。今日のおぬしは姫君。わらわは忠実なしもべじゃ。ほれ、そこのテーブルに座って。飲み物は何が良いかの? ん?」
「言っておくけど、どんなに接待されても臨時勇者の報酬は1円たりとも値引きしませんからね。払えないっていうなら、今まで蓄積したデータをもとに、弁天さんがらみの信憑性のある都市伝説を作ってワールドワイドに発信しますから、そのつもりで」
弁天はさあっと青ざめたが、すぐににやりと笑い、手を打ちならした。
――と。
さっと客室の扉が開き、黒の三つ揃いに身を固めたデュークと、見慣れぬ黄金色の髪の青年が、シュラインの足元にうやうやしくひざまずいた。
「シュラインどの。ようこそおいでくださいました」
「本日は、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
シュラインは驚いて、一歩引いた。
「……あの。無理しなくていいのよ。公爵さん。と、そこのあなた?」
「ファイゼ・モーリスです、シュラインどの。この姿でお会いできるとは!」
「ああ、ふもふもさん。この前はグリフォンの盾をありがとう」
「さあさあ。ふたりとも、シュライン姫を真ん中にはさんで、アダルトに濃密に接待するように」
「……かしこまりました」
「喜んで!」
紅薔薇で飾られた白いテーブルにシュラインは座らされ、両脇をデュークとファイゼに固められる。
3人分のグラスとシャンパンを弁天が運び、自ら栓を抜いた。
「ほれ。乾杯じゃ乾杯。もっと楽しそうにせぬかシュライン。うむ、よしよし。こう、ぐ〜〜〜っと仲良さげに接近して――うむ。良い角度じゃ」
いつの間にか、弁天はデジカメを構えていた。
シュラインが、はたと気づいた時には――遅かった。
ぱしゃっ!
「謀ったわね!」
「ほっほっほ。さあシュライン、おぬしが男前ふたりを楽しげに侍らせている写真が撮れたぞえ? これが匿名で送られてきたら、草間武彦はどう思うかのう?」
「う……」
「取引をしようではないか。この写真データを消去して欲しくば、報酬を大幅値下げして、ついでにわらわの秘書になるのじゃ!」
「その脅迫は……ちょっと欲張り過ぎじゃないの?」
「まあまあ。時間はたっぷりある。ゆっくり話をしようではないか」
「申しわけありません。シュラインどの。私はそんなつもりでは」
肩を落とすデュークに、シュラインは苦笑する。
「わかってるわよ。あなたも辛い立場ね」
そして。
接待(?)は続くのであった……。
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■ 登場人物 ■
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【0086/シュライン・エマ(しゅらいん・えま)/女/26/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは。神無月です。いつもありとうございます。
この度は、とんでもないシナリオに勇気をふるってのご参加、まことにありがとうございます。
それにしてもシュラインさまには名探偵役がぴったりです。きっと弁天の脅迫も切り抜けることでございましょう。
冒険、お疲れさまでございました!
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