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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


恋文



------<オープニング>--------------------------------------

「あなたのせい。 あなたのせい。 あなたのせい。 あなたのせい」
繰り返し繰り返し、クレヨンの赤で書き殴られている言葉の羅列は、
それだけで最早ある種の呪として完成されているように思われる。
少なくとも草間武彦は、一目見て頭痛に襲われた。
一枚の画用紙一杯に書き殴られている子供のような字。
そして、その画用紙にべったりと散っている、
クレヨンの赤よりも尚一層赤い血の雫。
「最早、何か嫌だ」
武彦は、その画用紙を見下ろしげんなりとした表情で呻く。
これは、30分程前に訪れた客が置いていったものだった。

「半年位前かだ、ま…毎日、届くんです」
疲れ切った表情で、30代半ばと思われる男性が呻く。
武彦は、銜えていた煙草を灰皿に押し付け眉を顰めた。
「それは、それはまめな奴ですね。 で、こんな嫌がらせをしてくる人間に心当たりは?」
「あ……ありません」
「では、警察へどうぞ」
依頼主の答えに殊更冷たい風情で、切り捨てて武彦は少し首を傾げた。
「何にもやましい事がないのなら、
高い金を払って探偵に調査依頼をする事ぁ、ないでしょう? 警察に頼みなさい」
それから表情を緩め、頭を掻きながらぼやくように呟く。
「依頼して頂くというのは、大変有り難いんですけどね、
全てをお話頂かないと、分かるもんも分からないでしょう?
探偵には守秘義務が御座います。 
こちらでお話しされた事は絶対に外には漏れないとお約束させて頂きますんで」
そう言いながらチラリと、依頼主に視線を流せば、
ガタガタと身体を振るわせて、それからか細い声で呟いた。
「あ…あります」
「何がです?」
「心あたり」
「それは、誰でどんな心当たりなんですか?」
武彦の問い掛けに、一瞬依頼主は躊躇を見せ、それから勢い込むようにして告げた。
「で…でも、もう、相手は死んでいる筈なんです!
「………えー」
その瞬間、物凄い勢いで武彦の目が死んだ。
「え…、えーって…」
「また、アレですか? 怪奇っぽい依頼ですか?」
「いや、それはまだ分からないんですけど、こういう感じの事は、
此処に来れば大丈夫って聞いたものだから」
「大丈夫って、ねぇ?」
「はぁ…」
「俺、怪奇探偵って呼ばれる為に探偵やってる訳じゃないし」
「そう呼ばれてるんですか?」
「はい。 何か、怪奇探偵って、俺が怪奇なの?位の勢いで」
「へぇ…」
「多分、俺のお袋とかも、息子がそんな風に呼ばれてるって知ったら、辛いと思うんですよ。 
探偵ですら、胡散臭いのにその上怪奇探偵て!って感じじゃ無いですか? 真っ当じゃないでしょう?」
「まぁ……ねぇ」
「あと、その画用紙」
「あ、はい」
「禍々しい!」
「え、まぁ、そうだからこそ、此方に依頼する事に決めたんですけど…」
「見ただけで鬱入る位、禍々しいですよ、それ」
「私も、郵便受けを開けて、是が入っているのを見る度に、辛くて辛くて…」
武彦は、すこぶる真面目な顔で告げた。
「明らかにヤバイ匂いのする仕事ですね。 こうなっては是非、この依頼はお断りしたいと……」
「お願いしますぅぅ!」
きっぱりと断りかけた武彦に突如、縋り付くように依頼主は腰にまとわりついた。
「怖いんですよ!」
「俺だって怖いですよ」
平然とそう言い放つ武彦に、男は諦めずに言い募る。
「こ、こここ、この、画用紙に付いてる血、ほ、ほんもんなんです!」
「本物?」
「人間の血なんですよ!」
「一年間、毎日送られてくるのに?」
「そ、それも同じ人間の!」
違う人間のならば、余計に怖いが、
これだけの量の血を毎日流して平気だとすると、余程血の気の多い奴と考えるか…、
まぁ、「怪奇現象」と嫌々ながらも捉えるべきか。                                                                                                                                                                                                                  
武彦は依頼主の、見上げてくる縋るような眼にもう一度溜息を吐くと
「分かりました。 詳しくお話下さい」と、答えた。

依頼主は、昔、ある女を裏切った。
依頼主は、実は実家がある食品会社を経営しており、なかなかに裕福な身の上であったのだが、
それ故自由の少ない身であり、学生の時に既に幾つかの見合い話が決まっているような状態だったという。
だが、依頼主にはその時心に決めた女がいて、二人は手に手を取って駆け落ち同然で逃げ出したそうだ。
身元もはっきりしない若い二人が稼ぐ手段は殆どなく、暮らしは加速度的に貧しくなっていった。
初めの内こそ、甘い事ばかりを言い合っていられたが、その内依頼主は元の何不自由ない暮らしが恋しくなり、
そんな時期に依頼主の行方を探し当てた実家が「×月×日に組んであるお見合いの席に、
大人しく出席するならば今回の事は不問に付す」と連絡を取ってきた。
依頼主は、これ幸いとお見合いの日に実家に戻り、女はそれを知って、男を取り戻そうとしたのだろう。
殆ど半狂乱の状態で後を追い、途中で交通事故にあって死んだ。
腹の中には、妊娠三ヶ月を越えた依頼主と女の子供がいたという。

「そ、その後、勿論お見合いの話は壊れ、私は自分の行った行為を恥じ、
女への罪悪感を抱き、実家を出ました。 
ある企業に就職し、一人で孤独に、でも平凡に時を重ねてきました」
男は、頭を抱えながら言う。
「そして、会社で私は、愛おしいと思える女性に出会い、結婚の約束を交わしました」
「それからなんですか? この、画用紙が届くようになったのは?」
「…はい。 そのせいで、なかなか結婚に踏み出せず、その女性にも悪い事をしているとは思うのですが…」
確かに、こんなものが毎日届く状況では、結婚なんて出来たもんではない。
「友人に大学病院に勤めている人間がいたので、何枚か検査して貰ったら、
人間、それも同じ人間の血だと真っ青になりながら教えられました」
武彦は、恐怖に固まった表情で言う。
「画用紙に付着していた血はね、探偵さん。 
DNA検査の結果、私と、その死んでしまった女の間の子供の血と判明されたんですよ」




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「あなたのせいだ」

キキキキキキ

耳障りな声が、耳をつんざく。
まるで、ガラスを爪を立てて引っ掻いた時に起こるような、不快な音。
依頼主を指差して、子供が笑った。

キキキキキキキキ

翼は眉根を寄せて呻いた。
「哀れな」
何か言いたげに此方を見下ろした金蝉が、然し何も言わずに、煙草をくわえる。
金蝉は吸いすぎだ。 体の為にも、少し控えた方が良い。
翼は関係のない事を考えてみた。
そんな事を考えでもしなければ、目の前で繰り広げられる光景は辛すぎて直視出来そうになかった。

「と、いう事で頼む」
簡潔に依頼内容を説明した武彦は、銜えていた煙草を灰皿に押し付け、また新たな一本を胸ポケットから取り出す。
目の前に置かれた画用紙からは、触れずとも禍々しい空気が立ち上っているのが分かって翼は視線をスススと逸らしつつ、「零ちゃんは、今日はいないのか?」と、問い掛ける。
すると、武彦は「さっきまで金蝉が来てたんだけどよ、俺も吸うし、あいつも吸うしで、部屋がえらく煙たくなってしまってなってしまって、嫌がって買い物に出掛けたんだ」と答えてきて、これでこの事務所に来る楽しみの80%が消えたと、遠い目をしてみた。
彼女のいれてくれたお茶と、可憐な笑顔を心から楽しみにしていたのにとかなんとか16才の少女が考えるにはどうも不適当な思考内容ではあるが、然し、外見が人間離れすらした中世的美貌のせいか、何の違和感もなくその落胆の仕方を納得できるのが恐ろしい。
「禍々しくはあるが、然し、不浄とまでは言い難い。 僕の使命感の琴線に触れるような仕事じゃないね。 君が金蝉をどんな風に言いくるめたのか大変興味があるよ」
ヒラヒラと手を振りながらそう言い、「大体、もうじき大事なレースが控えてるんだよねぇ」と言う翼に「お前、ただ依頼主が気に入らないだけだろう」武彦が突っ込めば、「それに、仕事を人に押し付ける君も気に入らないね」とにべもなく答えた。
相変わらず男の頼み事には冷たい、と苦笑した武彦に翼はパンパンと膝を払いながら立ち上がり告げる。
「心配しなくてもちゃんと依頼は受けるさ。 金蝉を野放しにできないだろ。 あと、まだ煙たいからね。 ちゃんと換気をしてあげなよ? 雫ちゃんが可哀想だ」
非難がましい顔でそう冷たい声で言う翼に、女へ向ける優しさの一片でもいいから、我々男性にも向けて欲しいと武彦は密かに胸の内で毒づいた。


金蝉と歩くと目立って仕方がない。
自分の容姿を棚に上げて、翼はまとわりつく視線を鬱陶しく感じながら、つまり今、自分がこんなに不機嫌なのは、依頼主が心から気に入らないせいなのだろうと思った。
「女性の味方」を自認している節のある翼にしてみれば、愛する女性を捨てて、安易な享楽の生活へと戻ろうとした依頼主の行動は噴飯もので、そんな奴は少し怖い目を見ればいいとすら思う。
然し、金蝉が依頼を受けたのは、結局あの画用紙から自分が感じた以上の脅威を察したからであろうし(少々、霊障に脅かされる位の事なら、金蝉は動かない)、そういう意味においても今回はサポートに徹するべきであろう。 そんな事をつらつら考えていた翼に、金蝉が無表情な声で言った。
「人の想いとて不変ではなく依頼主が特別酷いわけでも珍しい例でもない」
翼が驚いたように金蝉を見上げれば、金蝉は正面を向いたまま呟く。
「どうせ、依頼主の自業自得とか考えてんだろ?」
「………」
「人は変わる。 だから面白い」
翼は、金蝉の口調に自分の不機嫌の原因が幼いからだと言われているような気になって、少し口を尖らせた。
分かっている、この感情も幼い。
然し、こうなるのは金蝉の前だけだ。
だから、金蝉が悪い。
ブチブチと口に出さないまま、全ての原因を金蝉に押し付けてみる翼に、「フゥ」と低い溜息を吐くと、「おい」と目の前に骨張った、繊細そうな手を広げた。
抜けるような白い色をした手の上に鮮やかな包装紙にくるまれた飴玉が転がっている。
「これでも喰ってとっとと、機嫌直せ」
余りにも金蝉には似合わないお菓子の登場に、思わず「プッ」と吹き出して、それから翼は金蝉に問い掛けた。
「どうしたんだ、コレ?」
「武彦に、翼も女だから、あんま目の前で煙草ふかすな、だとさ」
「で?」
「口寂しい時に舐めろって……」
翼は、最初苦笑めいたものを浮かべていたが、然し次第にクククククと、抑えきれない笑みが零れてしまう。
「俺は甘いものが嫌いだから…」
「だから?」
「やる」
そう言った時の、憮然とした金蝉の顔を、不覚にも「可愛い」と感じてしまい、翼は飴玉を恭しく取り上げた。
「御礼に、僕に気にせず煙草を吸う権利を進呈するよ」と、笑いに震える声で告げれば、金蝉はしゃあしゃあと「そりゃ、どうも」と返答した。 


翼が巧く誤魔化されてしまった事に気付き、再び不機嫌になったのは、仕事が終わってからの事である。


依頼者の部屋の中に、金蝉がいつもの如く横柄な態度で入り込むのを呆れるような気持ちで眺めながら、翼は後に続いた。
気圧されたように眺める依頼主に、サッと視線を走らせた翼は、何か引っかかりを感じ、金蝉に囁く。
「おい。 あいつ…」
「ああ。 分かってる」
翼が全て言う前に、短い言葉で答えた金蝉は勝手に部屋の中を探り始める。
慌てて翼も後を追うと、寝室と思わしき場所に金蝉に入っていく。
翼は、その少し慌てた風情を不思議に思いながら、同じように寝室に入った瞬間、部屋に満ちている障気に目を見張った。
「金蝉、これは…」
「不味いな。 殆ど自家中毒と同じ状態だ」
「自家中毒…?」
「見てみろ」
ベット脇に置いてある机の引き出しからクレヨンの箱を取り出した。
蓋を開けると、他の色に比べて異様に短い赤色のクレヨンを取り出す。
「つまりあの画用紙に、『あなたのせい』と書いているのは自分自身だと言うことか?」
「ちょっと違う」
金蝉は、自分でも考えを纏めながら喋っているのだろう。
難しげな表情でゆっくりと語り出す。
「少なくとも、その意識は自分にはないし、何よりこれは霊障である事に間違いない。 その証拠に、画用紙には『生まれなかった餓鬼』の血痕がある」
「どういう事だ?」
「つまり……、この画用紙は依頼主自身の中から送られてるものなんだ。 依頼主の中に、穴が空き何者かが住んでいる。 然し、それは自分自身の罪の意識を投影した『己自身』とも言うべき存在だ。 通常なら、それはこのような霊障を伴った現象にまで発展する事はなかった。 然し、今回『結婚』を契機に、今まで鬱々と募り続けてきた『罪悪感』が爆発的に高まり、それが死した、依頼主の子供の魂を自分の中に呼んでしまった」
「じゃあ……」
「ああ。 間違いない。 画用紙の送り主は依頼主自身でもあり、そして依頼主の餓鬼でもある。 チッ、ややこしい事になってきたぜ」
翼は、金蝉の言葉に、少し体の奥が冷えるのを感じた。
「放っておけば、死ぬな、依頼主は」
「ああ。 それも、今の恋人を道連れに自分自身の手でな」
男の身の安全は知った事ではないが、女性迄道連れに死ぬだなんて事態は許せない。
翼は、やっとこの仕事に対して、やり遂げねばならないという決心が固まるのを感じた。


「これはな、つまり現世への『恋文』って訳だ」


リビングへ移動して、依頼主と向かい合った金蝉がそう言った。
金蝉の唇から放たれる「恋文」という単語に、耳の奥が少しだけ甘く痺れるような感情を覚える。
だが、「恋文」その語感の美しさと、目の前にある画用紙の持つ凶悪な空気が相容れない。
翼は違和感を禁じ得ない気分になりながらそれでも、明るい声で金蝉をからかった。
「なかなか、詩人な言い回しじゃないか、金蝉。 恋文。 お前の口からそんな言葉が出るなんて、愉快だね」
金蝉に「うるせぇ」とだけ不機嫌に答えられ、クククと喉の奥から笑いが漏れる。
分かっている。
これから相対する事態は結構ヘヴィだ。
だからこそ、抑えても、抑えても沸き上がる嫌な予感を押さえ込むために軽口を飛ばした。
僕の嫌な予感って、結構当たるんだよねと、胸中で囁いて。


当たり前といえば、当たり前だがこういう非現実的な事態に限りなく疎い依頼主に、金蝉と二人掛かりで依頼主には余りにも衝撃的な事実(このまま放っておけば、自分自身の手で己と、恋人を殺してしまうという事)だけは黙って、今の現状がいかに危ないかを説明する。
金蝉の端的な言葉を補足して、出来るだけかみ砕いて説明したのに、結局金蝉の「つまり、放っておくと死ぬぞ? それも、お前だけでなく、お前の新しい恋人もな」という短い言葉で、全てを悟ったのが気にくわないと言えば、気にくわないが、まぁ仕方がない。
翼は、金蝉が依頼主の胸に手を当てるのを見て「そうか、そこに穴が空いているのか」と納得した瞬間、リビングルームが交差点へと変化を遂げていた。



翼の目の前を一台の車が通り過ぎていく。
そして甲高い女の悲鳴が響き渡った。
声の方向に意識を向ければ、女が車に跳ねられていた。
これで、三度目だ。
同じ女が、数分ごとに車に跳ねられ宙に舞う光景が、何度も何度も繰り返し目の前で繰り広げられている。
跳ねられた女は、そのまま地面に叩き付けらる。
そして、体からジワジワと血を流し、半分潰れた顔を上げて、恨めしげな視線を依頼主に投げかけ、消えた。
1分程後には、再び女は急いで道路を渡ろうとし、車に跳ねられるのだ。
翼と金蝉、そして依頼主は歩道に設置されたガードレールの側に立ち、その光景から視線を逸らす事の出来ぬまま、キキキキキと道路を挟んで向かい側にある歩道で、腹を抱えて笑っている少年の声を聞いていた。
何台も、何台も車は走っているのに、その世界は全くの無音で、少年の笑い声だけが、高く、高く無音の世界に響き渡る。
悪夢だ。
「ゆ…許してくれ、許してくれ、許してくれ…」
頭を抱えてうずくまり、虚ろにそう呟き続ける依頼主。
翼は、頭痛を感じて、天を仰ぎ、そして努めて冷静な声で金蝉を呼ぶ。
「金蝉」
「何だ?」
「ここは、彼女の『事故現場』か?」
「そうだな」
「お前が、『招いた』からか?」
「ああ。 つまり、これは、お招きに預かって光栄ですって事だよ」
二人が呑気とすら言える会話を繰り広げる間に、また女が跳ねられた。
「歓迎されているとはとても思えないな」
そう、一人呟いてみた。


キキキキキキキ
あなたのせいだ。
あなたのせいだ。


ヒステリックな、甲高い子供の声が空間を揺らし続けている。


男は毎晩結婚を決めてから毎晩この夢を見るという。
翼は、「それは、それは…」と呟いた。
それは、それはお気の毒様。
しかし、自分で望んだ夢だろう。

「あなたのせいだ!」


子供が、依頼主を指差し愉しげにそう叫ぶと、ゆっくりと車道を渡りこちらへ近付いてきた。
金蝉が、懐から銃を取り出し、ゆっくりと構えるのを見て、翼は、胸の痛みを感じる。
哀れだ。
父親の身勝手で、こんな悪夢に捕らわれて、冷たい弾丸に貫かれて消えるというのか。
ここで、全て断ち切るのは簡単だ。
金蝉ならば、屹度見事にそれをやってのける。
然し……。
金蝉。
君のそんな姿見たくないよ。
自覚してないだろうけどね、屹度、酷く否定するだろうけどね、そんな事をすれば、君は傷付く。

優しい君は傷付く。

翼は、縋るように金蝉に言った。
「何とかならないのか?」
「何とか? どういう意味だ」
金蝉の眉間の皺の深さに呆れながら、それでも言い募る。
「あの子供はあの依頼者のせいで悪意へと変えられてしまった哀れな存在なのだろう? 産まれる事すら叶わなかったのに、その上こんな風に具現化されてしまうだなんて可哀想過ぎる」
「そうだ。 だから、引導を渡してやろうって話じゃねぇか」
金蝉の無表情が辛い。
翼は、困ったような気持ちになった。
「然し、それでは余りにも不憫だ。 あの存在が、例え産まれる前に命を失ってしまった者であろうとも、依頼者の『息子』であったのならば…」
「ならば?」
「……悲しい別れをさせるのは、止して欲しい」
「……はっ! おめでてーなぁ」
金蝉がそう言い放つ瞬間の目つきの鋭さといえば、殆ど凶器とすら言えるものだったが、翼は慣れたもので、眉一つ動かさずにじっと、その眼を見つめる。
「相手は、何の聞き分けもねぇ餓鬼だ。 親父が思い込み続けてる『自分の責任だ』という意識に乗っ取られ、親父を責める為だけに生まれ出たいわば、あの男の自責の念そのものだ。 消してやれば良いんだよ。 跡形もなくな」
「………金蝉」
翼は咎めるようにその名を呼んだ。
金蝉、そんな事言うもんじゃない。
「本当にそう思うのか?」
噛んで含めるようにそう言えば、眼を逸らしながら、「チッ」と、金蝉は盛大に舌を鳴らした。
「大サービスだ。 翼、嫌だろうが、どんだけ胸糞悪かろうが、とにかくその男引っ張って立たせて、あの餓鬼と向かい合わせろ」
「…じゃあ?」
「ああ。 面倒臭いが通じ合わせてやる」
翼は嬉しくなって、いつもの自分からは想像できない程に劇的に表情を変えると、依頼主の元へと走り寄る。

子供を救えるかも知れない事が嬉しいというよりも、その為に尽力してくれる、金蝉の感情が嬉しかった。
だから、力一杯依頼主の肩を掴んでガクガクと揺さぶった。
「おい! 君っ! 自分の息子とも向かい合えないのか、情けないっ! 自分が、どれだけ酷い事をあの子に行っているのか分かってるのか!」
男がゆっくりと顔をあげるのを、もどかしいような気持ちで眺める。
そして、意識的に言葉に自分の催眠の力を込めると、魂に直接語りかけるようにして、じっと目を逸らさずに言葉を紡いだ。
「君は自分勝手だ。 自分で自分を責めて、色んな人を傷付けている。 現に君の今の想い人だって、迷惑を被ってるじゃないか。 いいか? あの子を、あんな風に変えたのは君だ。 それは間違いない。 この悪夢の原因は、君だ。 然し、事故の原因は君のせいじゃない。 君のせいなものか。 そんな力は君にはない。 逃げ帰った甘チャンの君が、彼女を殺せたりするものか。 思い上がるな! いいか? 本当に、罪の意識があるのなら、あの子を、お前の子供を救ってやれ。 お前にしか出来ないんだ。 父親のお前にしかっ!」
力が効き始めているのだろう。
男の目に、イミテーションの宝石のような、輝きが灯り、夢見るようにぼやけた声で問うてくる。
「と…届くんでしょうか? 俺の言葉」
「…安心しろ。 俺が届けてやる」
複雑な印を結びながら、無造作に金蝉が答えた。
確か、陰陽術とは意識の集中が必要不可欠な術であったと思うのだが、金蝉程余所事をしながらも、見事に呪を完成させる術師は、そうはいないだろう。
「つまり、テメェのケツ位テメェ自身で拭くんだな」
下品な言葉を言い放ち、片手に数珠を掛けて拝む金禅の薄く、形の良い唇から、低く、空間を柔らかに揺らすような経の詠唱が漏れる。
その横顔は、神々しさに満ちていて、乱暴な口を利くいつもの姿からは想像できない程に美しい。
長い睫が、頬に影を落としているのを思わず陶然とするような心地で眺めた後、翼はハッと我に返って、空気を探った。

ピィィィィンと、空間が糸を張るかのように引き締まるのを確認し、「……いいよ。 喋って」と、金蝉の読経を邪魔せぬよう、低い声で翼は依頼主を促した。
「が、画用紙を送ってきたのは、お前だね?」
依頼主が恐る恐るの問い掛けに、子供は「キキキキッ」と嗤って答える。
「そうだよ! あなたに思い出させてあげる為に送ったんだ」
「あの血…は?」
「僕の血さ! 貴方に教えてあげたんだ。 あの手紙が、どういう意味の手紙なのか。 知ってたでしょ?」
そういいながら、ペロリと着ている服を捲り上げる。 そのお腹、臍のあたりにはポッカリと穴が空き、子供がグッと腹を押すと、穴からトロトロと血が流れ落ちた。
そのグロテスクな情景に普通の女の子のように悲鳴をあげる事はない。
然し、翼は息苦しいような情感に襲われる。


痛い。


子供が腹から流れる血を画用紙になすりつけて、父親に手紙を送り続ける。


これ以上そんな事を、させてはいけない。
絶対に。



「お母さんと繋がっていた場所。 生まれる前に断ち切られてしまったからね、血が止まらないんだ」
子供がキキキと嗤う。
「……す…すまなかった」
依頼主の詫びの言葉に子供が、依頼主を無邪気とも言えるような目で見た。
翼は頭を振る。
そんな言葉、求めていないのだ、あの子は。
早く解放してやって欲しい。
こんな悪夢は痛すぎる。
「お…お前には、悪い事をした」
依頼主の言葉に、子供がニコニコと笑った。
空虚な笑み。
空っぽの、人形のような微笑み。
「……嘘吐き」
「え?」
「そんな事、微塵も思ってない癖に」
「思ってる。 だから俺はずっと……」
「じゃあ、何で別の人と結婚するの?」


キキキキキキキキ


「裏切り者。 あなたは、ずっと、ずっと、ずっと母さんを好きでなきゃいけないんだ。 だって、あなたが殺したのだから」


哀れな。
金蝉が言った。
不変のものはないと。
ないだろう。
人の想いも変わるだろう。
変わるからこその人間だろう。


然し、然し、然し。


この子はこんなにも乞うているじゃないか。


親の愛情を。
変わらない、親の愛情を。


愛している。

それだけで救われるのだ。


一生変わらず愛している。
そう言ってあげて欲しい。
それが真実かどうかなんてどうでも良い。


翼には聞こえていた。



キキキキキキキ。


甲高い子供の嗤い声は悲鳴だ。



苦しくて叫び続ける、あの子の悲鳴だ。



無理矢理悪霊にさせられた、あの子の中の『真実』が悲鳴を上げている。
もうお父さんを苦しめたくないと悲鳴をあげている。
もうお母さんが死ぬ所を見たくないと悲鳴をあげている。


生まれなかった子供。


不変のものが此処にあるよ。


金蝉。


目をこらしてみようよ。

此処にある。
この子の親への愛情は、こんなにも不変だ。
子が親に感じる愛情は、不変なんだ。



救いたい。
翼は、我知らず祈っていた。
哀れな魂に祝福と安らぎを。
どうか、どうか、どうか。



恋文。


あの画用紙には、血に混じって父親からの愛情を乞う、哀れな子供の魂の叫びが描かれていたのではないか。


『あなたのせい』


そうやって恋うたのか、父を。



恋うて、乞うて、恋うて、だから恋文。




救わねばなるまい。



「不浄なものを刈り取る」という命題により、根強く意識の中にある正義感が目覚めるのを感じる。
救わねばならない。
これも、使命だ。


子供の鋭い言葉の数々にたじろぎ、依頼主は救いを求めて此方を見る。
溜息を吐き、金蝉は数珠を鳴らし、とりあえず『霊魂に現世の者の言葉が届く』という状態を留めて、依頼主に声を掛けた。
「言えば良い」
「な…んて」
ゾクリ、と金蝉の視線に背筋に冷たいものが走るのを翼は感じる。
「俺は確認しただろう? 簡単な事だ。 お前は、子供に微塵も未練がない筈だ」
屹度、酷い事を言う。
とても酷い事を。
翼は、咄嗟にそう察し、強く金蝉の袖を引いて名を呼んだ。
「金蝉…」
だが、そんな翼の呼びかけに耳も貸さずに金蝉は冷淡な表情のまま言葉を続ける。
「言えば良い。 お前など、もういらないと」
酷い言葉を続ける金蝉に、心の中で呼びかけた。
やめろ。
やめろ、金蝉。
どうして、そんな風に怒る?
何に苛ついているんだ、君みたいな人間が。
誰にも君は左右されない筈だ。
ましてや、こんな子供に……。
翼はそこまで考え、ふと猛烈な不快感に襲われた。
何だ?
金蝉が満たした、呪の心地よいとすら言える端正な空間の揺れの中に、微妙に不快な揺れが混じり始めている。
その揺れは、子供から発せられており金蝉の術の揺れに混じり、自分の存在を隠しながら、然し確実に術者である金蝉へと向かっていた。
「しまった!」
翼は小さく叫び、愛用の神剣に手を掛けるが、然し「空間」を切り裂くという荒技で子供の金蝉への干渉を断ち切る事は可能だが、そんな事をして金蝉と子供が無事に済むか自信がない。
結局、唯、手をこまねいて眺めるしか出来ない翼は、金蝉の様子が少しずつおかしくなり始めたのに気付いた。
「この世に『永遠』なんてものはねぇんだよ。人の思いもまた然りだ。 死んじまったら終わる。 そして、変わる。 テメェの心変わりは、なんら恥じるべきものじゃねぇ。 不変のものなんざつまらねぇだろうが。 俺はごめんだね」
何処か虚ろな目でそう言う金蝉に、どんどん不安が増し始める。
暴走している?
金蝉ほどの男が、自分の感情をセーブ出来なくなり始めている。
何だこれは。
一体、何が起こっている。
翼は不安な気持ちを隠しきれずに、子供と依頼主金蝉三者の間でせわしなく視線を移動させた。
屹度普段の金蝉ならば、こんな事許しはしない。
子供の小賢しい企みにだって気付いていたはずだ。
然し、今は、完全に異空間の中、それも簡易的に『現世の人間と死者を結ぶ』術の状態を留めているという無防備限りない状態で、その術から精神に進入されたとて、金蝉を迂闊と責める事は出来ない。
「いいか? いらねぇんだよ。 テメェにとって、その餓鬼はな」
金蝉が、冷たい声で言った。
「お兄ちゃん」
子供がうっすら笑って、金蝉を指差した。
「それって、僕の事? それとも……」


キキキキキキキキ


子供が嗤う。
「自分の事?」


「っ! 精神浸食っ!」
やっと、子供の行っている事に気付いた翼はそう金蝉に叫ぶが、もう手遅れだ。
金蝉は完全に子供の術中に落ちていた。

精神浸食。

時たま、質の悪い霊が人の体を乗っ取る際などに使ったりする、相手の精神に浸食し、一種の興奮状態まで相手を引き上げ、それに依って開いた心の隙間から一番の心の傷跡やトラウマを探り出しという技だが、実際には何処まで有用な技なのか翼は知らなかった。
何処まで対象者の事が分かるのかも分からないが、そんな風に心の中に勝手に上がり込むだなんて卑劣な技の詳細など、理解したくもないと翼は感じていた。
金蝉は今、屹度、とても不快な気分になっている筈だ。
だが、どう二人の間に割り込めばいいのか見当もつかず、翼は歯噛みする。
「いらない子」
子供は金蝉をそう呼んだ。
父も母も守れなかった、いらない子。
金蝉も子供に言った。
テメェはいらねぇと。
必要のない存在だと。
金蝉が、どんどん傷付いていく。
その痛みを思うと翼は、もういてもたってもいられない気分になる。
いらないものか。
金蝉がいらないなんて、そんな事あるわけない。


少なくとも僕は、こんなに金蝉が必要なのに。


金蝉の顔が歪むのが見えた。
そして素早く銃の照準を子供に合わせている。
「消すぞ?」

その視線を見て、悟った。
金蝉は、あの子に自分を重ねているのだろう。
いらないと、あの子に言いながら、同時に自分にも同じ言葉を投げている。
金蝉、早まっては駄目だよ。
その子を消しては駄目だ。
そんな幼い頃の自分を消してしまうなんて事しないで。


「お兄ちゃんの体は僕のもの。 後ろの、お姉ちゃんの体は母さんのもの。 そうさ。 これから家族三人で、暮らすんだ。 だから、頂戴? その体、結構イケてるから満足してあげる。 出来るよね? お兄ちゃんは、方法を知ってるよね?」
唆すように、子供は金蝉に語り続ける。
例えば、相手が普通の人間ならば、いや、並の陰陽術師であっても、この空間の中完璧ともいえる程相手の精神に入り込んだあの子供は、屹度、思った通りに相手を動かせるだろう。
それは、自分の持つ能力魅了と同等以上と言ってもいい効果を見せるはずだ。
然し、駄目だ。
相手が悪すぎる。
金蝉は、あの子の手に負えるような者ではない。
他人の思い通りに動かされる位なら、死んだ方がマシだと言い切る彼が、こんな事をされて黙って等いるものか。
むしろ、あの子は触ってはいけないものに触れているのだ。

消されてしまう。
間違いなく、完膚無きまでに。


止めなきゃ。
そんな事をしたら、金蝉が傷付いてしまう。



ギラギラと、冷たくて、冷たくて、最早熱さすら感じさせる殺意に凝り固まった視線が子供を射た。
子供は、それでも言葉を続けた。
金蝉にとって致命的な言葉を。  

それは、まるで玩具の音のような浅薄な銃声。
現実感がないよ。
金蝉。
その弾丸には魂がない。
「死ね」
空っぽの声で、金蝉が言った。
ポカンと驚愕の表情で、子供は金蝉を見上げている。
銃声が再び響く。
恐怖も痛みもない、何が起こっているのか理解出来ていない顔。
ほらね、君の手に負えないだろう?
翼は、金蝉の元に走り寄る。
どうしたいのかも、どうすればいいのかも分からないけど金蝉を止めなきゃならない。
哀れな。
哀れな金蝉。
迷子みたいな顔をしている。
翼は、全体重を掛けて体ごと金蝉にぶつかった。
「やめるんだ!」
そう叫びながら、翼は金蝉の体を力一杯抱き締める。
骨張った、煙草臭い体。
女の自分が羨むほどに細い腰。
トクンと震えている鼓動。
救いたい、その心のままに翼は叫ぶ。
「やめろ、やめろ、やめろっ!」
「離せ。 もう、駄目だ。 こいつは、駄目だ。 消すしかねぇよ」
駄目じゃない。
この子も、君も、駄目じゃない。
翼は必死だった。
そして、どうしてこんなに不安なのか漸く悟った。
まるで、金蝉が遠くに行ってしまいそうに見えたのだ。
子供を消したら、金蝉自体が消えてしまいそうに感じたのだ。
「哀れだ」
翼は、心のままに囁く。
「同情もいい加減に…」
「君が、哀れだ」
金蝉の、虚ろな目に元の美しい光が宿り始めていた。
この奇麗な光に何度見惚れた事だろう。
「傷付けるな、自分を。 あの子への、君の言葉は、全部自分への言葉に聞こえた。 ご両親は、君を愛していた。 間違いないよ、金蝉。 いらない子なものか。 世界中の誰が、君にそんな事を言ったって、僕が否定してあげる。 君は、最高だ。 最高の男だ。 僕が言うんだ、間違いない。 だから、自分を傷付けないで」
心からそう言って、翼は金蝉から離れ次に、ゆっくりと子供の体を抱き締めた。
小さな冷たい体。
血の匂いがする。
この子も迷子だ。
父の胸の中で迷い続けた、迷子だ。
道しるべをあげねばならない。
翼は耳元で、優しく、優しく囁く。
「いらない子はいないよ。 君も、大事な、大事な子だよ」 
そしてもう一人の迷子に視線を向けた。
「言ってやってくれないか?」
依頼主に向かって翼が言う。
「愛していると。 この子に。 それで救われる。 君も、この子も、彼女も」
跳ねられ続ける女が、べたりと地に伏し、そしてゆっくりと此方を見る。
今まで恨みに凝り固まっていた目の中に、言いようのない色が浮かんでいた。
救われたいのだ。
彼女も。
「いらないなんて、悲しい事を言わないでおこう。 君の子だ。 屹度、愛していただろう?」
翼は、力を込めて囁き続ける。
「え?」
「生まれていたならば、間違いなく愛していただろう?」
依頼主は、コクリと頷いた。
「……はい」
「愛していたんだよ」
腕の中にいる子供に、翼は言い聞かせた。
「お父さんは君の事を。 大丈夫だよ。 もう、お父さんは君がいなくても大丈夫なんだ。 お終いにしよう。 苦しかったね? 独りで、此処で、お母さんの為に頑張っていたんだね? お父さんの胸の中に閉じ込められて、頑張っていたんだね? エライね。 君はエライよ」
孤独だったに違いない。
寂しかったに違いない。
「……愛されてるって、どういう事?」
だから翼は、子供の問い掛けに優しい笑みを浮かべて答えた。
「寂しくないって事さ」



「ご苦労さん」
武彦の言葉に、翼は疲れた声で「本当にね」と答えた。
「大変だったよ」
「ま、そうだろうな」
他人事のように答える武彦を睨み、それから手持ちの鞄の中からドサリと重い音を立てて「お徳用飴玉セット」と書いてある飴が一杯詰まった袋を取り出した。
「……何だソレ?」
「人に、喫煙量の事でどうこう言うんだったら、まず君が禁煙に取り組んでみれば?という僕からの提案だよ」
「は?」
「零ちゃんも女の子だからね? 煙草、控えるように」
怪訝そうな武彦に飴の袋を押し付け、立ち上がりかける翼に、首を傾げつつ武彦が言った。
「俺が、誰に喫煙の事でグダグダ言ったんだ?」
「金蝉に言ったんだろう? 僕の前では煙草を控えろって。 飴玉渡して」
「は? んな事しねぇよ。 俺は、唯、零から貰った飴玉を机の上に放り出しておいたら、金蝉が勝手に持ってったんだ」
「え?」
「何か、扱いの難しいのがいるから、ご機嫌取りの餌に貰ってくって……」
「………」
「や。 飴玉一個で機嫌直るって、よっぽど単純な相手だなって考えたんだが、お前の事だった……」
「武彦」
翼が冷たい声で、武彦の台詞を遮った。
何か、赤子とかが見たら、一発でトラウマに残りそうな表情を浮かべ、翼が言う。
「良い事を教えてくれてありがとう。 感謝するよ」
フフフと、笑う翼に、武彦は背筋が冷えるのを感じる。
そして、翼は握り拳を固めて天に吠えた。
「こぉぉんんんぜぇぇぇんぅぅぅ!」
殺意一杯の翼に、武彦は一瞬意識を遠のかせながら、同時に「俺のせいじゃない。 後で、金蝉が血を見るハメになっても俺のせいじゃない」と呟いた。






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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 2916/ PC名 桜塚・金蝉 (さくらづか・こんぜん)/ 性別 男/ 年齢 21/ 職業 陰陽師】

【整理番号 2863/ PC名 蒼王・翼 (そうおう・つばさ)/ 性別 女/ 年齢 16/ 職業 F1レーサー兼闇の狩人】



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■         ライター通信          ■
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初めまして。 この度は、ご依頼請けて頂きまして、真に有り難う御座いました。 momiziで御座います。 と、いう事でどちらからお読みになって下さっているか分からないので、とりあえず初めましての御挨拶をさせて頂きました。 今回、二つの視点から一つのお話を書かせて頂いて、その受け取り方の差異やキャラクターの違いを出すのに、頑張らせていただきました。 どちらのキャラもとても魅力的で、凄く、凄く楽しかったです。 正直、どんな壮大な物語だよ!って位長くなってしまって、呼んでいてお疲れになってしまわないか心配です。 ご満足頂ける内容になっていますでしょうか? また、何かありましたら是非是非、宜しくお願いいたします。 ご縁が御座いますように!って事で、この度は本当に有り難う御座いました。