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●願い事が叶えば・・。
〜番外編〜 大切なあの人へ・・。
宴会も終え、温泉に再び入った後は昼間の小さな神社へと向かう。
夜桜は、昼間とは違った雰囲気を見せ、月は倉菜を明るく照らしてくれる。
夜の神社も悪くはない。
桜の木を背に、石版の上を歩き、倉菜は賽銭箱の前に近づいていく。
夜桜を楽しんだところで、目的のお参りをしようと思い、賽銭を投入れ、ゆっくりと鐘を鳴らす。
「「ジャラジャラ・・・・・」」
軽快な音が響き渡る。
倉菜は手を合わせ、真剣に願い事を心の中で告げる。
「(どうか私の大事な・・・大切な人達が幸せになれますように。・・・そして大事だと思える人に巡り会えますように・・)」
けして軽い気持ちではなく、倉菜は自分の周りの大切な人たちの事を思い出しながら丁寧に願掛けをする。
願い事が二つになってしまったものの、どちらの願い事も倉菜にとっては大切な願い事だ。その為、どちらも叶う事を倉菜は刹那に願った。
「倉菜お姉さん〜」
「あら・・銀くん!」
お参りを終えた、丁度振り替えた瞬間に、銀の声が倉菜の耳に届く。
銀と樹が倉菜の元へと元気良く、走ってきた。
「二人共、どうしたの?」
「倉菜お姉ちゃんをお迎えに来たの・・」
走ってきた樹が少しばかり息を切らしながら大事な兎の縫ぐるみを落とさないように持ち直してから倉菜に笑顔を見せて告げる。
「そうなの?・・お迎えに来てくれてありがとう。もう、遅いし、気をつけて帰りましょうね」
銀と樹の手を取り、桜並木の道を楽しみながらゆっくりと歩いてかえる。
「倉菜お姉ちゃん、お願い事をしていたの?」
「ええそうよ。大切な人達が幸せになれますように・・・って」
「そっか。私も倉菜お姉ちゃんや大切な人達に幸せになってほしいな」
倉菜の優しい雰囲気に樹は笑顔を返しながら、ぎゅっと倉菜の手を握り締める。
実のところは二つ願い事をした倉菜だが、片方の願い事は自分の心の中だけにしまいこんでおく事にした。
「ボク達もお願い事を神社でしてきたよ」
「あら、銀くん達の方が先に来ていたのね・・」
「うん。皆とまた、出会えますようにって、樹ちゃんとお願い事したんだよ」
樹と目を合わせて、笑顔を見せると、再び倉菜のほうを見上げながら話を続ける。
「倉菜お姉さんのお願い事も叶うといいね」
「・・心を込めてお祈りしたわ。・・叶うと信じましょうね」
銀と樹は笑頷で倉菜の言葉に頷く。
夜空を見上げると、月は満月で、山の中は空気がよく星空は都会よりもずっと美しい。
夜空を見上げながら何処までも続く桜並木の道を三人はいろんな話をしながら皆の待つ蓬莱館へと向かった。
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