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行楽は如何ですか?《高峰温泉編》
ぜいぜいという荒い息遣いが蓬莱館裏手に無感動に響き渡った。
本性晒してちょこまかと逃げ回った狐と狸は互いの顔を見合わせつつぐったりとその場に蹲る。二匹の味わった恐怖が如何程のものだったかは喧嘩も出来ないその様子から推して知るべし。
しかしそれを全く頓着しないものとて中にはしっかりいたりする。
佐久間啓は、至って気さくにそのぜいぜいいっている哀れな二匹の獣に近づいた。
「いよう!」
こげ茶と茶色の二匹の獣はその毛を残らず逆立てた。
「おおおおおおおおお客ささささささささまままままままま」
「なんでこっだらとこに……」
「あー?」
しゅぼっと安煙草に火をつけながら啓は何事でもないことのように語る。
「いやちっとばかしうろうろしてたらなぁ。ここ一応温泉宿だってのに、カップ麺だわコンビニパックだわってー日頃見慣れたもんが転がってる一角があったんでなー。ま、アジトだろうと思ったわけよ。ビンゴ?」
啓の言うとおりその場はずいぶんと混沌としていた。どんべえだの赤いきつねだの緑のたぬきだのといったインスタント食品のカラから、スナック菓子やコンビニ弁当の残骸まで、安価で容易く過ぎに食べられるプラスティック食品の亡骸が散りたい放題散っている。独身男の部屋のようである。その独身男が嗅ぎつけたのは当然と言うものかもしれない。
まあそんな啓のちょっと悲しい事情は狐と狸には想像もつかない。ふかふかの体を寄せ合って怯えるばかりである。啓はその狐と狸を見下ろし実に獰猛に笑んだ。
「さっきは実にイイモノ拝ませてくれたじゃねえかよ、ええ?」
「おおお、お褒めにあずかりまし……」
「いや褒めてねえし」
狐の足元にぽとりと煙草を落とした啓はそのまま二匹の元に膝をつく。逃げ場もなく狐と狸はタダでさえ擬態が解けて小さくなってしまった体を益々小さくして身を寄せ合った。
威圧十分。啓は内心にまりと笑うと更に二匹に顔を寄せた。
「まあそこでだ。口直しと言っちゃあ何だが……なあ?」
「はい?」
狐が小首を傾げた横で狸が器用にぽんと前脚を打ち合わせる。
「そっだら事でしたらこの丸山ツーリストにお任せくだせえ」
「おう。んじゃー期待させてもらわあ」
いっそさわやかな笑顔で持って、啓は狸の頭をぽんぽんと叩いた。
因みに啓が言外に依頼した温泉芸者の顔は、やっぱり手を出すのが非常にはばかられるかなり年少の知人でどこぞのHP管理者の顔で、結局口直しにはならなかったと言うが、それはまた別の話である。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1643 / 佐久間・啓 / 男 / 32 / スポーツ新聞記者】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、里子です。
今回は(も)お待たせしてしまいまして申し訳ありません。
行楽は如何ですが特別編、毎度の事ながら阿呆な内容です。阿呆な内容なので書いてて非常に楽しかったですが。<待て待て
佐久間啓さま、毎度お世話になっております。
怪しげな体験記事まで書くとの事でしたので、まあその方向で個別となっております。<違
今回はありがとうございました。
また機会がありましたら、よろしくお願いします。
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