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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


『蓬莱館』の真実
●だから俺は嫌だったんだ【4B】
 シュラインは浴衣に着替え終わった草間たちの部屋に入ると、今日までの『蓬莱館』での出来事を事細かに説明した。
「……『虚無の境界』だと?」
 そのうちにシュラインの口からその言葉が出た途端、草間が激しく眉をひそめた。零はというと、やはりこちらも同じ言葉に反応を示していた。
「そうらしいのよ。私は直接現場見た訳じゃないけど……三下くんや真名神くん、天薙さんたちから話を聞いたらそう名乗ってたって」
「で、ゾンビが出たり、妖精が出てきたりって訳か? いずれそのうち、鳩でも出すんじゃないか?」
 呆れたように言う草間。その顔には『やっぱり来るんじゃなかった』と書いてあるように感じられた。
「IO2の西船橋くんも居るわよ」
 ぼそっと付け加えるシュライン。それを聞いた草間がまた眉をひそめる。
「鉄板だな……」
 頭を振る草間。IO2と『虚無の境界』、両者揃い踏みという事実は、草間に確実に精神的ダメージを与えていた。
「だから、招待なんか受けたくなかったんだ……俺は。怪しいことこの上ないし、前科だってある」
 草間の脳裏に、高峰絡みの事件が数々思い出される。帰昔線、中ノ鳥島、そして『誰もいない街』……ほら、厄介事だらけだ。
「あら、高峰さんのこと言ってるの? ……そりゃ怪しいけれどね。でも彼女の場合、ちゃんと事を避ける選択肢も用意してると思うけれど」
 同じく過去の事件を振り返り、そう分析するシュライン。ゆえに、草間に招待状を送ったのもその一環ではないのかと――。
「だからといってなあ……」
「それにね、武彦さん」
 シュラインはびしっと指差して、何か言おうとした草間を制した。
「前科だって自業自得な所、結構大きいんじゃないかしら。ねえ、零ちゃんもそう思うでしょう?」
 零に話を振るシュライン。零は曖昧な笑みを浮かべただけだった。
「はいはい、何もかも俺が悪いんだ。全部悪いんだよ、くそっ」
 そんな風に拗ねる草間を見て、シュラインがくすくすと笑った。
「はいはい、いじめるのはここまでにしときましょ。本当にへそ曲げられても大変だし」
「……で、その西船橋はどこの部屋なんだ」
 気を取り直した草間が、シュラインに尋ねた。
「そこまでは聞いてないけど。それに、今日はまだ1度も見てないのよねえ……」
「ともかく、見かけたら教えてくれ。話を聞くだけ聞いてみたい」
 と、前向きな発言をする草間。何だかんだと言いつつも、一旦スイッチが入ったら調べる気になるのは、やはり探偵の性であるのだろう。
「他に何か気になる話はあるか?」
「気になるっていうか……まあ、あれなんだけど。ここの温泉、100年に1度しか開かないって……話」
「……オリンピックかうるう年か、何かと勘違いしてないか、それ」
 草間が呆れ顔で言った。
「冗談……だとは思うんだけど。でもねえ……」
 IO2や『虚無の境界』が実際動いている以上、単なる冗談とも思えなくて――。

【『蓬莱館』の真実・個別ノベル 了】


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■   登場人物                  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
     / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ダブルノベル 高峰温泉へようこそ』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全38場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・大変お待たせし申し訳ありませんでした。ここにようやく『蓬莱館』の真実をお届けいたします。『蓬莱館』とはこのような所でした。皆様はいかが思われたでしょうか? 今回もまた共通・個別合わせまして、かなりの文章量となっております。共通ノベルだけでは謎の部分があるかと思いますが、それらは個別ノベルなどで明らかになるかと思います。また、『『蓬莱館』へようこそ』と合わせてお読みいただくと、より楽しめるかと思われます。
・今回高原が書かせていただきました『高峰温泉』2本ですが、不老不死・陰陽(精霊含む)・IO2・『虚無の境界』・シリアスとコミカルの危うい同居……といった所をテーマにしておりました。果たしてどの辺りまで達成出来たかは分かりませんが、もし楽しんでいただけたのであれば幸いです。
・分かりにくかったかもしれませんので、時間軸のお話を少し。『『蓬莱館』へようこそ』は麗香逗留3日目から4日目にかけてのお話、『『蓬莱館』の真実』は逗留5日目と後日談のお話でした。
・当初の予定では、エヴァはもっと暴れる(戦闘する)はずでした。でも実際の本文ではそうはなっておりません。これはプレイングの影響を受けたためです。普段の高原の依頼もそうなんですが、『高峰温泉』は特にプレイングの影響で流れが変わっております。書かなくてはならないことも雪だるまのごとく増えてゆきましたし。
・あと余談なんですが、この『『蓬莱館』の真実』では麗香に深く関わるとどんどんと麗香が壊れてゆく様子が見られる予定でした(しかも、ろくに情報が手に入らないというおまけつき)。その片鱗は共通ノベルや一部の個別ノベルに出ているかと思います。いや、予定ではもっと凄かったんですけれども……ちょっと残念。
・シュライン・エマさん、ご参加ありがとうございました。相変わらず鋭い推測だな、と思いました。由香里のそばに居たことは正解だったと思います。居なければ、また流れは変わっていたことでしょう。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、またどこかでお会い出来ることを願って。