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●願い事が叶えば・・。
〜番外編〜 ささやかな願い事。
舞い落ちる桜並木の道を歩く。
宴会も終え、昼間の小さな神社へと銀と樹を連れて向かう。
辺りは夕暮れ時で空は真っ赤に染まり、桜の雰囲気が一段と違った趣を感じさせる。
「わぁ〜真っ赤だね!!」
「本当・・綺麗だね」
夕日に染まる空の色に感情豊かに感動する子供らしい銀に樹(しげる)は微笑ましさを覚える。
「さー、願い事をしようか・・」
背が足りない為、は先に二人を順番に持ち上げ、賽銭を投げさせ、鐘を鳴らせてあげる。
「「ジャラジャラ・・・・・」」
手を合わせ、全員が一緒に願い事をする。
各々に、目を閉じ、真剣な顔で願い事を心の中でささやく。
「(素敵な彼女が見つかりますように)」
しっかりと願い事を終え、ゆっくりと目を開けると樹(しげる)を銀と樹がじっと見上げていた。
「えっ?」
「ううん、樹お兄ちゃん、真剣にお祈りしてたから・・」
意外な出来事に樹(しげる)は顔を少しばかり赤らめる中、樹は顔を赤らめる理由が分からないながらも、素直に思ったことを万遍の笑みで言葉を返した。
「樹ちゃんはどんな願い事をしたの?」
「私?私はパパやママ、それから皆と、樹お兄ちゃんと、また、会えますようにって・・それから・・」
「それから?」
途中まで軽快に話していた樹が最後の方で突然、躊躇して、言葉を濁らせると、樹はその理由が分からずついつい聞き返してしまった。
「秘密だよ!大人の女の子の秘密!!」
「・・・そっか、分かったよ」
大切な兎をぎゅっと抱きしめて顔を赤らめながら話す樹に、これ以上聞き返してはいけないと思い、頭を軽く撫でる。
「あっ・・お兄ちゃんを怒らせちゃったのならごめんね・・」
「んっ?全然、怒ってないよ。僕も内緒にすれば、これでお相子・・だよ」
心配して樹(しげる)を見上げる樹に優しく微笑みかけると、不安そうな顔が見る見るうちに解けていった。
「樹お兄さん、見て!夕日が沈みそうだよ」
突然、遠くを指差して言う指の先を見ると、確かに夕日は、まさに沈もうとしていた。
三人は夕日が沈む瞬間をじっと、待つ。
見とれていると、やがて夕日は落ち、空は薄暗くなっていった。
そして、神社を後にする。
「夕日、綺麗だったね」
「うん。こんなに綺麗な夕日を見たのは初めてだよ!!」
二人が会話を交わす中で、樹(しげる)は桜並木の帰り道にポケットに二人には内緒で、そっと花びらを一枚手に取り、包んで痛まないようにポケットの中にしまい込んだ。
立ち止まった樹(しげる)に気づき、銀と樹が振り返る。
「また、こうやって、旅行が出来るといいですね・・」
「「うん!」」
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