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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


己の力

 ササキビ・クミノは話を断るつもりだった……なのだが……
「良いお湯ね。そう思わない?」
 そう言ってクミノの方を微笑み見やる高峰に、クミノは無愛想にそっぽを向いた。
『こうしている間にも、影響があると言うのに……』
 クミノは、温泉の水面に移る自分の顔を見詰めていた……

 数日前の事である。
「やはり、行けないな」
 自分が経営する『ネットカフェモナス』、その上階にある自室で、クミノは呟くと受話器を上げて番号を押し始めた。
 幾度かの呼び出しの後、聞こえて来たのは落ち着いた女性の声。
『はい、高峰心霊研究所です』
「ササキビだ。高峰さんだな?」
『ああ、クミノさんね?どうかした?』
 電話の向こうの高峰 沙耶は、きっとあの怪しげな笑顔を見せているに違いないがそんな事は、クミノにとってどうでも良かった。
「先日頂いた話だが、やはり断らせて頂く」
 きっぱりと告げたクミノに、受話器からは問い掛けが返って来た。
『あら?どうしてかしら?』
「私は特別だ。他の生物に致死的影響が出てしまう。そんな物を看過したくはない」
 そう、クミノの体には特殊な障壁が備わっており、24時間他の生物と居ると、他生物に対して致死を及ぼしてしまうと言う厄介な物が存在していた。高峰も、その事は知っていた筈なのだが……
『ああ、あれね。気にする事ないわ。人里離れた場所で、居る時間も制限するし、他生物と言ってもあの辺りにはそんなに動物も居ないわ。気にせず来て頂戴』
「いや、しかし……他の者も居るのだろう?」
 あっさり返って来た答えに、珍しくうろたえるクミノ。
『ええ、居るわよ?けれど、貴女との時間はずらして来て貰う手筈だし、気にしなくて結構よ』
 クスリと笑みが毀れているのが聞こえて来た。
「しっしかし、私には温泉旅行等行ってる暇は……」
 戸惑いながら最早言い訳としか取れない理由で断ろうとするクミノだが、高峰は言う。
『じゃあ、貴女には依頼としてお願いするわ。それだったら、問題ないんじゃなくって?』
 絶句である。
 最早、クミノに断る理由がなくなった瞬間だった。
『良いかしら?』
「あっああ……」
『それじゃあ、そう言う事で。場所と時間は近い内に連絡するわ』
 それだけ言うと、高峰は受話器を下ろしたのだろう、ツーツーと音が聞こえた。
「やられた……」
 呆然とした呟きが、クミノの口から漏れた……

 温泉から上がり、蓬莱に用意してもらった赤い色の浴衣を着込むと、クミノは自室に篭って月を眺めていた。
「良かったのだろうか?私が此処へ来て……」
 呟き見上げた月が凛とした光を放っていた。
 明日は、依頼を片付ける事となる。詳しい事はまだ聞いては居ない……
「何時も通りやるだけだ……」
 ふっと自嘲気味に笑みを見せ呟くと、クミノは床に就いた。
 夜の静寂に、虫の声が心地良かった……



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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1166 / ササキビ・クミノ / 女 /13歳 / 殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。

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■         ライター通信          ■
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 初めまして、ササキビさん。ライターの凪 蒼真です。

 この度は、東京怪談ダブルノベル『高峰温泉へようこそ』へのご参加有難う御座います。
 他のライター様とは違う、全くの戦闘依頼と言う事で戸惑われたのではないでしょうか?(汗)
 怪談ではなかなか戦闘依頼が無いものですから、戦闘依頼を出してみたくてこうした形になりました。共通も、殆どが個別の内容となっておりますので、楽しんで頂ければ幸いです♪

 温泉に行く事を断ると言うようなプレイングがありましたので、こちらを個別とさせて頂きました。
 此方から読んで、本編を読まれると、流れが掴めるかとは思います。(汗)
 少し、少女が抜け切ってない様に、此方では書かせて頂きましたが、如何だったでしょうか?(汗)
 お気に召して頂けると、宜しいのですが・・・(汗)
 また御機会がありましたら、どうか宜しくお願いします。(深礼)

 それでは、今回はこれにて!
 御参加有難う御座いました♪