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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


百年に一度だけの夢■変な話で盛り上がり(〜共通ノベル合流前)


 とぼとぼと歩く姿が廊下にある。
 いつもの赤いスーツ…ではなく、蓬莱館の浴衣を着用した姿の、シュライン・エマ。
 …開催者が高峰沙耶ともなれば、やはり草間興信所の皆さん辺りと共に、休養がてら来訪している訳で。


 …但し。
 お誘いに乗って、のんびりしに来た…割にはその顔はどうも浮かない…気がする。


□□□


 ………………蓬莱館に来るちょっと前の、とあるなんでもない普通の日の夜の話。
 バー『暁闇』にてシュラインは『とある件』を回想しつつ溜息を吐いていた。

 …『あの場』は確かに楽しかった、これは本当。
 ただ…。
 好きな相手が触られたり何だり、私にとっても大ダメージだったりするのよね、実際…。
 それは、連れて行ったのも確かに私だけど。
 …私だけど。
 遠い目をしつつ、シュラインは再び溜息。
 暫し空白。
 …次『こんな仕事』来たら自分で行こう…うん。自分に被害あった方がマシだもの…。

 などと反省していたら。
 実はある意味『その件』の関係者でもあったりするカウンターの中の紫藤さん…どうも笑ってらっしゃるし。
 …どうやらシュライン、グラスを前に無言のままで七面相していた模様。
 で、紫藤の方はその理由をあっさり察していたようで。

 もう。と内心むくれつつもシュラインは特に何も言えない。
 …当たってもどうしようもない事でもあるし当たるべき事でも無いし。


□□□


 …とまぁ、そんな事があったりした訳で。
 近い記憶でもあるので、何となくそれを回想しながら歩いている。
 自然、気持ちが暗くなる。


 と。
 温泉の定番とでも言うつもりか、通りすがりの部屋に置かれていた卓球台(…)に目が行った。
 その遊技場のひとつらしい部屋の扉が開かれていた上に、かこーんかこーんかこーんとリズミカルに素敵に打ち合っている音が聞こえ。更にはその音を響かせている方々はどうやら知り合いのような雰囲気だったので。…『あんな事』を考えていたせいと言っては何だが、つまりは『暁闇』関係者っぽい方、発見。
 …とは言え。
 打ち合っている片方の人物には具体的に見覚えはなかったりするのだが。
 ちなみに見知った片方は『暁闇』のマスター、紫藤暁である。
 …となると、その相手はいったい?
 武彦さんや真咲さんよりは年上そうに見えるし、だからと言って紫藤さん程でもないし。
 シュラインは少し考え込む。
 年頃としては、不惑…に一応届かない程度?


 かこーんかこーんかこーん。


 …年代が違う割には紫藤さんと妙に息が合っている気がする。
 ――――――そう言えば丁香紫さんが言っていた話では…。
 まさかまさか。
 首を傾げつつも、ある事に思い至ったシュラインはほてほてと卓球台に…と言うかお名前不明な方に歩み寄る。
 で。
「あのぅ…ひょっとして間島さん…ですか?」
「?…はい。…シュライン・エマさんでしたっけ?」
 えーと確かいつぞや『暁闇』で谷中の八つ当たりにあった…。
 …と、思い出しつつ飛んで来たピンポン玉を器用にラケットで受け止め手で引っ手繰り、試合停止。
 それを見た紫藤も同様に試合を止め、台を回って何処ぞに移動。
「は、はい。そのシュラインです」
 思わずぺこりと頭を下げる。
 いや御丁寧にどうも、あの時はとんだとばっちりごめんなさいねと間島も会釈を返す。
 …いえそんな、とまた返しつつも、本物らしい、と言う目の前の事実に何だか何だか、凄いわとシュライン、感動。
 何故ならこの間島、ちょくちょく『暁闇』の店に来る事は来るが、はっきり言って目に見える存在では無い。
 そもそも、霊感が強くともかなり薄らとしか認識不能な『幽霊さん』である筈なのだ。
 …勿論、触れられもしないし言葉も交わせない。
 が、今は。
 …卓球のラケットを握っている。
「あ、あの、記念に握手しても良いですか?」
「はい? …いやまぁ構いませんけど」
 …とのお言葉に甘えてシュライン、間島と握手。
 わ。本当に実体が。とまたまたシュライン、感動。
 一方の間島の頭の上には?マークが乱舞。
 ………………歓迎されている事は取り敢えずわかるが、それ以上はなんだか状況がよくわからないらしい。
 そんな中、良く冷えた缶ビール三本を何処ぞの自販機(…自販機なんぞあるのか蓬莱館)で入手して来たらしい紫藤が戻ってくる。卓球台の上に取り敢えずひとつ起き、もうひとつを当然のように間島に渡すと、残ったもうひとつのプルタブをぷし、と開け、いかがです? とばかりにシュラインにも勧めたり。
 で。
「先日は我妻が色々と御迷惑お掛けしました」
「…我妻?」
「碧と言った方がわかりますかね?」
 硬直。
 …碧と言えば、件の『あの場』…こと、アルバイトを募集していた某ゲイバーのママさんの源氏名。
 シュラインもシュラインで『その件』が頭にちらちらとあった訳で、すぐに思い至る。…そもそも、そうでなくとも印象が強い事は強い。
 また反省していた事を鮮明に思い出してシュラインは再度ダメージ。
「う…。はい。誰の事だかわかりました」
 そこで缶ビールの意味に何となく気付き、シュラインは大人しく受け取って、奢られる事にする。
「…って、我妻の奴、エマさんまで巻き込んでた訳なの?」
 と、何故か凄く嫌そうな顔で、シュラインを見返しつつ紫藤に振る間島。
「エマさんをと言うより、草間さんを、だね」
「…ああ、それで」
 速攻で察したか、納得したよう頷くと、間島は改めてすまなそうにシュラインを見る。
「ごめんね?」
「…あの?」
 何故間島さんが謝る。
 と思うと、今度は紫藤が口を開く。
「いや、実は碧はこいつに惚れてましてね」
 そう言って紫藤が示したのは目の前の間島崇之。
「…」
 シュライン、ちょっと停止。
「…つまり人間関係を元の元から考えると俺が居たからあいつが今紫藤と付き合いある訳で。…や、俺はその気は無いからって幾ら言っても、どれだけ冷たくあしらっても全然効果無しでね。結局そのままくっついて回られてなしくずし。気が付きゃ俺たちの居るところにゃいつも顔出すようになってやがってね。で、逃げても間に合わないから紫藤とか皆巻き込んで絶対奴とふたりっきりにならないように気を付けつつ仲間としてのお付き合いはしてた訳。…ま、そんなに悪い奴じゃないし、『そーゆー意味で』俺に惚れてる、ってのさえ除けば、充分信頼出来る奴なんだけど…ちょっとやっぱりね…」
 間島はうーん、と悩ましげに首を傾げる。
「…そんな訳でどーも我妻が近場の連中に掛ける迷惑は俺が後ろめたくなる」
 その様を見て苦笑する紫藤。
「…幾ら冷たくあしらったと言っても、こいつの『冷たい』がどれ程のものかは想像付くでしょう?」
 シュライン、紫藤の科白に無言で頷く。
 がく、とちょっぴり大袈裟に項垂れる間島。
「…俺そんっなに甘いかな」
「お優しい…とは思います…」
「褒め言葉と受け取っておくよ」
 と、溜息を吐きつつ、それでも間島はちょっと落ち込んでいる。
「ところで、間島さんがいらっしゃる…って事は」
 谷中さんがいらっしゃったりは…?
 ふと、疑問。
 すると。
「谷中は風呂」
「…茹るまで入ってるだろ、ありゃ」
 速攻で答え。
「って谷中さん、お風呂…と言うか温泉と言うか…お好きなんですか?」
「ああ。良くぞ日本離れていられたなと思えるくらいの風呂好きだ」
「で、折角ここなら風呂に入れる身体になれるんだから入らない手は無え! とひとり頑張っちゃって」
 苦笑する間島。
「ついでに言うと丁香紫さんの言う蓬莱館の話聞いて一番来たがったの奴だし」
「…向こうで死んだのが余程心残りだったと見える」
「で、置いて行かれた俺たちは手持ち無沙汰だったんで何となく卓球など」
 谷中の風呂には到底付き合い切れないし。
 言いつつ、ちびりと缶ビールを飲んでいる。…今の間島さん、飲食も可能なんだとシュラインも確認。
「…ところで、今ここで谷中の事訊いたり俺が俺だとあっさり受け入れられた、って事は…エマさんも丁香紫さんのお話、聞いてたりしますね?」
 ずい、と近くに顔を出しシュラインに問う間島。
 思わず目を瞬かせるシュライン。
「え、は、はい」
「んじゃ宜しければ御一緒にいかがでしょう? ま、色々事情知ってるみたいな真咲曰く、『彼女』のお仕事の邪魔にならないように、とはあんまり考えなくて良いらしいんで。こちらの気が向いた時に行って構わないみたいなんですよ。…なので、エマさんも…御暇でしたらそろそろ蓬莱嬢探してみません?」
 ま、お連れさんとか気にしなくて良いのなら、ですが。
 にこりと微笑んだ間島の声に、シュラインは殆ど無意識でこくりと頷いている。
 …確かに、この男が普通に居る事それ自体が物凄く珍しい事なんで仕方無いかもしれませんけどね。


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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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 ■整理番号/PC名
 性別/年齢/職業

■PC
 ■0086/シュライン・エマ
 女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

■指定NPC
 ■間島・崇之(まじま・たかゆき) ※未登録NPC(異界情報内に記載)
 男/享年38歳/幽霊(生きていれば53歳)

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          ライター通信
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 深海残月です。
 今回は発注を頂き有難う御座いました。
 …それから今回、極個人的にスケジュールが凶悪な状況(汗)になってしまいましたので、
 ライター通信は普段と比べ妙に簡略形で失礼致します。

 …ところで、この面子をお気に召して頂けていたとはついぞ気付かず…(紫藤以外はシュライン様の初めましての時以来、具体的に動かしてないので当然と言えば当然ですが/汗)
 異界に彼らに関してもごちゃごちゃ書いている通り、今後も出ます。はい。…とは言え私は単純に遅筆な上にノベルの内容傾向も登場NPCもかーなーりあっちゃこっちゃしがちなので、予定はあってもいつになるやら、な部分はありますが(汗)
 取り敢えず今回は裏話的な要素が強めで御座います。


 ※また今回、今まで私がお渡し致しました色々なノベル&部屋に置いているサンプルが関連している部分も多くなってしまいましたので、参考までにそれらのノベルを上げておきます。
 こちらの話も知っていると、今回の共通ノベルは色々深読み出来てまた面白いかもしれません。

「草間興信所:夜のお店にゃ危険がいっぱい」→暁闇が舞台。紫藤暁、間島崇之、谷中心司の関係です。
「草間興信所:腕に覚えは」→真咲誠名が草間興信所に依頼を持って来た話です。
「草間興信所:月下の凶縁」→真咲誠名の死亡時の状況関連。
「草間興信所:アルバイト募集(秘密厳守致します?)」→碧(我妻)&暁闇の面子関連。
「ゴーストネットOFF:迷い幽霊預ってます」→高比良弓月と凋叶棕の関係です。
「ゴーストネットOFF:死神さんのお手伝い」→高比良弓月と凋叶棕の関係、それから死神もここ。
「クリエーターズショップのサンプル:暖かい闇」→暁闇が舞台。間島が訪れると店内こうなると言う例です。
 ※真咲御言に関してはこれらすべてに出てまして、密かに何処でも関連してます(出る機会が多いです)

 …取り敢えずこんなもので。
 では、失礼致します。


 深海残月 拝