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寝た子はだれだ?
●夕食後
「寝ないでいる? 何でそんな真似しなきゃいけねぇんだ。部屋に帰ってとっとと寝るぞ俺は」
美味い料理に全身脱力状態の弔爾は生あくびを噛み殺しながら、傍らの刀に言った。腹いっぱい、いや許容量をオーバーする量を胃に詰め込んだ弔爾は満足そうにゲップをした。
『旅先の余興はつきものであろう。遠路遥々やって来て、する事がいつもと同じとは……全く以って情けない』
いつものごとく小言を言う妖刀・弔丸は大仰に溜息をついた。 弔丸はどこかからか不眠耐久バトルの事を知り、弔爾に参加を促していた。
『旅は道連れと言うであろう。旅での出会いを大切にせんでどうする』
「世は情け、とも言うな……こんな時ぐらいてめぇの小言なんざ聞きたくねぇよ」
うんざりと口答えする弔爾に弔丸の怒声が飛ぶ。
『戯けが! 人が折角の旅を思い出を作ってやろうというのに、貴様は好意を踏みにじる気か?』
「作ってやろうとか……押し付けがましい事言うんじゃねぇよ。うざってぇ」
うえっと舌を突き出した、弔爾はさっさと自分の部屋へと廊下を進む。
「また風呂に入るってのもいいかもな。風呂に浸かりながら、酒でも一杯……いいねぇ」
こんな贅沢する事は今後、どう考えたってありえないだろう。弔爾にとって、まさに蓬莱館での生活は夢の中で見る夢のような生活である。それを満喫しない手はありえない。
だが、ここに確実に避けられない障害があった。
『えぇい! この軟弱者め! つべこべ言わずに余興に行くぞ!』
弔爾の体から感覚が消え弔丸に勝手に動かされる。
(あ、コノヤロウ! 勝手に人の体を動かすんじゃねぇよ!)
いつもの事だが、一応文句を言ってみる弔爾。だが、弔丸が聞くはずもなく睡蓮の間へと向かう道を見ながら、弔爾は諦めの溜息をついたのだった。
●座敷を後に
『何とも面白い余興であったな』
心底嬉しそうな声色に弔爾は大きく溜息をついた。
「まったく、春先からとんでもねぇもんにつき合わされちまったよ……」
『何を言う。あのような真名神殿と紅臣殿の姿を見れただけでも儲け物ではないか』
「……確かに。ありゃ、いいもの見た」
『そうであろう?』
とても得意気に言った弔丸に弔爾は苦笑した。
今頃、慶悟はかくれんぼ。緋生は掃除でもしているのだろう。弔爾は良いからかいのネタが出来たと内心ほくそ笑んだ。
『なんだ? 気色の悪い笑みを浮かべおって』
「うるせぇよ。……あ〜あ、なんか眠気も覚めちまったし、風呂にでも浸かりなおしてくるかな」
大きく伸びをした弔爾は頭を掻いて露天風呂へと向かい歩き出した。
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■ 登場人物 ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0845/忌引・弔爾/男/25歳/無職】
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■ ライター通信 ■
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今回は高峰温泉ダブルノベルにご参加頂き、有難うございます。
如何でしたでしょうか?
共通ノベルの方の犠牲者は、私の独断と偏見で決めさせて頂きましたので、怒らないで下さい。
弔爾さんは今回は傍観組み……と言いましょうか、観察組みにさせて頂きました。
いや、どう考えても弔丸がいる分他の方より有利ですし。
あまり率先しての行動は無かったのですが、漁夫の利というやつだと思って頂ければ……はい(汗)
では、またお会いできる日を楽しみにしております。
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