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●願い事が叶えば・・。
〜番外編〜 たった一つの願い事。
舞い落ちる桜並木の道を歩く。
宴会も終え、温泉に再び入った後に昼間の小さな神社へと向かう。
夜桜は、昼間とは違った雰囲気をみせてくれる。
「綺麗〜」
舞い落ちる桜を見上げながら、今日一日の事を振り返る。
桜の妖精に自分の声が届き、樹達の願いを叶えてくれた事に感謝する。
そして、賽銭箱の前に立つと賽銭を放り込み、鐘を鳴らす。
「「ジャラジャラ」」
軽快な鐘の音が鳴り響く。
賽銭箱の前で手を合わせ、目を閉じる。
「(願い事は1つだけ・・・どうか、ずっと俊介さんのお傍に・・)」
真剣に願い事をし、目を開けると少しだけ気持ちが軽く、心が少しばかりむず痒くなり、軽く微笑む。
そして振り返り、石版の上を踏みながら歩く。
舞う桜の花びらに手を伸ばすと、ヒラヒラと一枚の桜が導かれるように雪の掌に舞い落ちる。
「綺麗な桜色・・」
鮮やかな桜色に少しばかり、見とれながら境内の石段に腰を下ろすと、一片を早速、押し花にする。
「雪お姉さん〜」
「銀君?」
遠くから聞こえる聞き覚えのある声に振り返ると、銀と樹が心配して雪を迎えに来ていた。
遠くから手を振っている銀に、手を振り返すと、雪は立ち上がり、押し花にした桜をそっと懐にしまい込み、笑顔で待つ銀の元へとゆっくりと向かう。
「雪お姉ちゃん、何をしていたの?」
「お願い事をしていたのよ」
樹と銀の手を取り、来た道を引き返して行く。
月が三人の行く手を照らし、夜桜が三人の帰り道を導くように舞い落ちる。
「ボクも、ちゃんとお願い事したよ!!」
「銀くんの願い事叶うといいね」
「うん。皆とずっと仲良く出来ますようにってお願い事したんだ」
銀らしい願い事であり、願い事の話をする銀は最高に幸せそうな笑顔を雪に向ける。
「樹ちゃんはどんなお願い事をしたの?」
「パパとママに・・それから皆と一緒に、また出会えますようにって・・」
「素敵な願い事ね」
兎をぎゅっと抱きしめて、樹は軽く微笑む。
「雪お姉さんはどんな願い事をしたの?」
「うん?・・えーっと・・秘密」
銀の質問に人差し指を口元に軽く添えて、少し顔を赤らめながら微笑むと銀達より一歩前に出て、振り返り、美しい桜を背にふわりと髪を靡かせる。
「でも・・雪お姉さんも、とても素敵なお願い事をしたんだね」
「そうね。樹ちゃんも同じ事を願う日が来るかもしれないわね」
首を少し傾げながら樹は相槌を打ち、いつか自分にも理解できる日が来ればいいなっと心の中で思った。
「さー、遅くならない内に蓬莱館に戻りましょ?」
三人は仲良く手を繋ぎ、桜道を歩いて帰った。
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