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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


不思議な木

 陽の事があってから新開直は、蓬莱に「畑」に案内された。
「畑」と言っても、それは木の「畑」なのだ。

「なんじゃこりゃ!」

 そこに案内された新開直は開口一番、そう言った。
 そこには木に実るもの以外のものも、木に生っていたからだ。
 たとえば、缶ジュースの木とか、赤い魚とか、菓子折りとか。
 そういうものがすべて木に生っている。
「さっき説明しましたよね。この場所はこちらの者が欲しいと思うものを木に宿らせてくれる場所だって」
 魚とかは、ビチビチいいながら木に釣り下がっている。
新開直がそれを不気味そうに見ていると、蓬莱は微笑んで
「活きが良いでしょう?」
 なんて言ってくる。
 周りじゅう、変な木にかこまれて新開直は蓬莱の後をついて歩いた。
「……で、これから何しにいくの?」
「直さんは宿の食事にあまり満足していない、と陽に聞いていたので、お好みのものを食べられるように、と思いまして〜」
 蓬莱は軽い口調でそう言った。
 そうして何も生っていない木の前までくると、足をとめた。
「この木、直さんに上げます。今日と明日の食事はこの木で調達してくださいな〜」
「ちょっと待て! 俺が料理するのか?」
「違いますよ〜。この木は望みのものを実らせてくれる木だって言いましたよね。だから出来たものを願えばいいんです。例えばじゃあ、お菓子でも思い浮かべてみて下さい。強く念じるんですよ」
「あ、ああ」
 そう言われて新開直は最近新発売したポテトチップスを思い浮かべた。
 すると木の葉の間からロープに下がったそれがザッと出てくる。
「うおっ」
「まあ、こんな感じです。後は自分の好きなように出して食べてください〜。あ、木に実るのは食べ物限定です〜。では私は仕事がありますからこれで〜」
 蓬莱は足取り軽く蓬莱館へ戻っていった。

「本当に何でも出てくるんだな……」
 ぐるるる〜〜
 とたん、腹の虫がなった。そういえば朝食を食べていない。
「う〜〜ん、何がいいかなあ」
 新開直は悩んだ。もともとそんなに料理はしないし、何か思い浮かべるのも何を思い浮かべていいのか分からない。
「う〜〜ん、とりあえず、朝だから秋刀魚? いや、それは……せっかく温泉にきてるんだから……。そうだ、フカヒレスープとか! お、中華はいいな。シュウマイとか、餃子とか、チャーハンとか美味そうだな」
 ぽぽぽぽぽんっ、とロープに下がったそれらが木に生った。
「やっほう! あ、後、白い飯も!」
 ぽんっ。

 こうして自分の好きな朝食を食べた新開直だったが、朝から中華という脂っこいものを食べたにもかかわらず、その日は元気に仕事に精をだした。
              ☆END☆

整理番号/名前 /かな      /性別/年齢/職業
3055/新開直/しんかい ちょく/男 /18/予備校生

 ライター通信

 高峰温泉のオリジナル設定、不思議な木の話です。厨房の裏に広がる果樹園。それは食べ物ならなんでも実らせる不思議な木だった。
 という設定で書かせていただきました。
 本編同様、ギャグ路線です。
 少しでも楽しんでいただけると、幸いです。   有月 加千利 拝