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寝た子はだれだ?
●目覚めると……ここどこ?
「ここ……どこだ?」
緋生は目の前に広がる光景に顔を引き攣らせた。
照り付ける太陽に、目の高さには晴れた空と遠くまで見渡せる森のてっぺん。緋生のお尻と手の下には不安定な滑りやすい瓦のひんやりした感触。緋生がいるところは蓬莱館で一番高い屋根の上である。
緋生は危うく滑りそうになりつつも、立ち上がりまわりを見た。見渡せども、やはりそこは屋根の上で、しかもどうやら屋根の補修をしていたらしい。何枚かの瓦と道具が足元に置いてあった。
「一体、何が、どうなってんだ!?」
髪をガシガシと掻き回し、緋生は唸った。
緋生に憑依したのは菫と言う名前のお掃除好きなお年頃な女性。誰に言われるでもなく、汚れたところや壊れたところなどがあると、綺麗にせずにはいられない。直さずにはいられないといった性格。
昨夜も人の居なくなった睡蓮の間を綺麗に片付けた後、蓬莱館を点検して回っていた時である。
「こんな夜遅くにどうなさったんですか?」
「あら、蓬莱ちゃん」
声をかけてきた蓬莱館でただ一人姿の見える従業員、蓬莱に緋生は嬉しそうな声を上げた。
「久しぶり。元気だった?」
「あ、もしかして……菫さんですか?わぁ〜お久しぶりです」
久しぶりの再会らしく、互いに手を取り合い喜ぶ蓬莱と緋生。ひとしきり雑談していた二人だが、ここで緋生が尋ねた。
「そうだわ。ねぇ、蓬莱ちゃん。どこか掃除するところとか修理するところはある?」
「またですかぁ? そうですねぇ……あ、確か屋根の一部が崩れてたっけ」
顎に指を当て、視線を宙に向け蓬莱は言った。
「それはどこの屋根?」
「一番高い屋根の東側なんですけど……夜だし、危ないですよ?」
不安な顔をする蓬莱だが、緋生は気にした様子もなく、逆にニッコリ笑顔で言った。
「いつもの事でしょ。それに、夜じゃないと動けないし」
「あ、それもそうですね」
と、まぁ簡単に蓬莱は納得し、緋生に屋根を直してもらうべく道具と新しい瓦を渡す為、二人は歩き出した。
「あーたーしーをーおーろーせー!」
大声で屋根の上から怒鳴る緋生。すずめがチュンチュンと緋生を尻目に戯れては飛び去っていく。
「誰か聞いてないのかよ! おーろーせー!!」
勿論、屋根の上にいるのだから梯子か何かで登って来たはずである。緋生がそれに気づかないはずはなく、探したのだが一体どこからどう登って来たのかまったく分からなかったのだ。
そうして怒鳴り続ける事数時間。昼飯前にようやく思い出した蓬莱が屋根裏から屋根へと続く扉を開けるまで、緋生はじりじりと太陽に焼かれ続けていたのだった。
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■ 登場人物 ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0566/紅臣・緋生/女/26歳/タトゥアーティスト】
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■ ライター通信 ■
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初めまして、壬生ナギサと申します。
今回は高峰温泉ダブルノベルにご参加頂き、有難うございます。
如何でしたでしょうか?
共通ノベルの方の犠牲者は、私の独断と偏見で決めさせて頂きましたので、怒らないで下さい。
えーっと……まずは、楽しんで頂けましたか??(汗)
一番最初に犠牲となってしまいましたが、起こらないで下さい!
だって……だって、敵が真名神さんと弔爾さんですもん!!
…………スミマセン(汗)
では、ご縁がありましたらまたお会いできる日を楽しみにしております。
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