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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


百年に一度だけの夢■お前は今は満たされているよ(〜共通ノベル後)


 一段落付いたところで、取り敢えず宛がわれた部屋に戻る。
 皆でわいわいやるのも良いが、ひとりでぼーっとする時間も、あって良い。
 まして。


 ………………あんなもの、見せられちゃあな。


 尚道としてもちょっとは期待をしてみたくなる。
 寝台に腰掛けて、ごろりと転がってみる。
 うーん、と伸びをしてみる。
 そして、伸ばした腕を戻そうとして…目に入ったのは、右手の小指。
 填められているのは何の変哲もない…ように見える指輪。
 ばあちゃんがくれたもの。
 封印の指輪。
 …これは弱い力なら封印し、強い力なら制御出来る指輪。
 いつか必要になる時が来てしまう。
 幼い俺に警告を発してくれた、ばあちゃん。
 おかげで、あの時――助かって。
 …で、そのおかげで――今の俺が居るとも言える訳で。
 尚道はそんな事をぼーっと考えている。
 と。


「…ここのお湯は気持ちが良いねえ」


 すぐ側から。
 声が聞こえた。
 尚道は跳ねるように起き上がる。
 …声の源。
 すぐ横に、ちんまりと座っていたのは、疾うに亡くなっている筈の。


「ばあちゃん!?」
「はいはい。久しいねぇ、ナオ」
「…本当にばあちゃんなんだ」
「はいよ。…まぁ、本当にって言っても、そこは見てる方の判断する事だがね」
 つまりは、ナオが本物と思うなら本物って事さ。
 ここではそれで良いらしいよ。
 ばあちゃん…祖母はそう告げつつ、のほほんと黒茶を飲んでいる。…蓬莱館でのサービスで出されている様々な種類の中国茶のひとつ。
 この寝台が縁側だったなら、今のこの状況は…あの時と同じような形。
 …ひどく、懐かしい。
「じゃあ、本当って事にするよ」
「そうかい。だったら暫くばあちゃんの話し相手になってくれるかい?」
 あの頃のまま。
 優しく微笑む祖母の姿。
 今は、とても小さく見えるけれど…それは、俺が大きくなったからでもあって。


 尚道は思わず話をしてしまう。
 あの時に言われた通り、指輪が必要になる程の事が起きてしまった、と。
 その時、自分が、既に滅びた世界の破壊神だったと知って。
 力だけじゃなく、記憶まであって。
 …ばあちゃんがこの指輪くれなかったら、どうなってたかわからない。


 全部。
 …ばあちゃんには、聞いて欲しくて。
 気が付いたら、話してしまっていた。
 自分の心の裡の事、言える相手は、今まで…居なかった、からかもしれない。


「そうかい。…やっぱり色々大変だったんだねえ」
 頑張ったんだね。ナオ。
 うんうん、と懐かしいしわくちゃの顔にしみじみ頷かれ、尚道は少し顔を赤らめる。


 でもね、と祖母が呟いた。


 …だったら、どうして今、ナオはばあちゃんに逢いたいと思ったんだい?
 もっと大事な人が居たんじゃないのかい?


 ふと、言われて。
 尚道は停止した。
 それを見て。
 祖母は静かに微笑んで見せた。


 ………………お前は今は満たされているんだねえ。


 そのまま、静かに言われたその言葉。
 尚道は思わず目を見張る。


 俺は?
 尚道はまた右手の小指を見る。指輪。…これをくれたばあちゃんが今ここに居る。
 今、そのばあちゃんに言われて…初めて逢いたい対象と思えた――あの時の巫女。
 …が、フラッシュバックするように、別の赤い瞳がすぐ浮かぶ。
 面影が似てはいても、明らかに別人の。
 それは、今、この世界に居る相手。
 ………………勿論、あの巫女の事も忘れていた訳じゃない。
 けれど、大切な――それでも、過去の事として。
 受け止める事が出来ている自分が居る事に、改めて気付いて…俄かに驚いた。
 自分を庇った巫女の事だけじゃない、あの時の、皆の事も。…ひどく、辛い事ではある。逆に暖かい思い出もある。でもそれらの記憶に、惑わされる程では、引き摺られる程では無くなっている。…心の整理が付いている。無理矢理整理しようと押し込めたのではなく、むしろ、穏やかにすべて受け入れられている。
 …今の俺には、仲間だってたくさん居る。
 それに。
 欠けていた――ずっと気になっていた『もうひとり』まで、こんなところで、見付ける事が出来て。
 そのせいだろうか。
 確かに、『今』は。
 ………………ばあちゃんの言う通り。


 そんな尚道のすぐ横で。
 祖母の声が柔らかく…暖かく、耳を打つ。


 ………………ばあちゃんの言う事、なにか、違うかい? …ナオ。


 尚道は静かに息を吐く。
 …その通り。
 何も――違わない。


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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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 ■整理番号/PC名
 性別/年齢/職業

 ■2158/真柴・尚道(ましば・なおみち)
 男/21歳/フリーター(壊し屋…もとい…元破壊神)

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          ライター通信
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 深海残月です。
 今回は発注を頂き有難う御座いました。
 …それから今回、極個人的にスケジュールが凶悪な状況(汗)になってしまいましたので、
 ライター通信は普段と比べ妙に簡略形で失礼致します。

 すごろくで助かりました(汗)
 …TRPGを出されるのが、実は一番不安だったので(マテ)
 それから、個別ノベルはこんな風にしてみました。
 殆どお任せ頂いたので、今まで御指名頂いたシチュエーションノベルからして、こちらで思ってみた事を書いてみました。
 また、共通ノベルでは妙な脱線もあったと思われます(笑)


 ※また今回、今まで私がお渡し致しました色々なノベル&部屋に置いているサンプルが関連している部分も多くなってしまいましたので、参考までにそれらのノベルを上げておきます。
 こちらの話も知っていると、今回の共通ノベルは色々深読み出来てまた面白いかもしれません。

「草間興信所:夜のお店にゃ危険がいっぱい」→暁闇が舞台。紫藤暁、間島崇之、谷中心司の関係です。
「草間興信所:腕に覚えは」→真咲誠名が草間興信所に依頼を持って来た話です。
「草間興信所:月下の凶縁」→真咲誠名の死亡時の状況関連。
「草間興信所:アルバイト募集(秘密厳守致します?)」→碧(我妻)&暁闇の面子関連。
「ゴーストネットOFF:迷い幽霊預ってます」→高比良弓月と凋叶棕の関係です。
「ゴーストネットOFF:死神さんのお手伝い」→高比良弓月と凋叶棕の関係、それから死神もここ。
「クリエーターズショップのサンプル:暖かい闇」→暁闇が舞台。間島が訪れると店内こうなると言う例です。
 ※真咲御言に関してはこれらすべてに出てまして、密かに何処でも関連してます(出る機会が多いです)

 …取り敢えずこんなもので。
 では、失礼致します。


 深海残月 拝