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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


『蓬莱館』の真実
●どこでそれを感じたのだろう【2】
(……変わった宝石でしたわ)
 亜真知は撫子の部屋へ向かいながら、例の由香里のネックレスのことを考えていた。
 先程宝石を触らせてもらった時、亜真知は密かに霊視を行っていた。その結果分かったことなのだが――あれはどうも一種の人工物であるらしい。
 わざわざ『一種の』とつけたのには理由がある。あの宝石は、いわゆる『気』の塊であったのだ。しかも、巧妙にそれを感じさせないように術が施されてもいた。
 普通の者なら全く、霊感を持つ者でも見ただけでは分からないはずだ。触れて霊視して、そこでようやく分かるようになっていた。
(これほどの芸当が出来るということは、造り出された方はかなりな腕前の術士ですわね。それに……)
 亜真知には宝石のこととは別に気になることがあった。その1つは霊視をした際に宝石から感じた懐かしい霊気のことだ。決して敵対するような霊気ではない。
 それと同じ霊気を、亜真知は『蓬莱館』から感じていた。つまり、あの宝石と『蓬莱館』には何らかの関係性があるということだ。偶然の一致で片付けられる問題ではなかった。
(でも……いつどこで感じたのでしょう)
 そしてもう1つ。『蓬莱館』への道すがら、『蓬莱館』の方角より感じた懐かしい霊気とはまた別に感じていた気配のこと。
 亜真知にしてみればそれは親しい気配――自らは親友と思っているエヴァ・ペルマネントのことである。
(何やら楽しそうなことがありそうですわね)
 亜真知がにこっと微笑んだ――。

●言い訳【4D】
「あ、撫子姉さま。お帰りなさいませ」
 浴衣に着替えて撫子の部屋で待っていた亜真知は、麗香の部屋から戻ってきた撫子を笑顔で出迎えた。
「どうかされまして、撫子姉さま?」
 撫子の表情が浮かないように見えた亜真知は、若干心配そうに尋ねた。
「いいえ、わたくしは何も。でも……」
 と言って、撫子が麗香の部屋での話を亜真知に聞かせてくれた。麗香が見たという幻覚の話である。
「それは……不思議なお話ですわね」
 話を聞き終わった亜真知が、気になった様子を撫子に見せた。『そうでしょう?』といった表情で、撫子が亜真知の顔を覗き込んだ。
「一緒に調……」
「すみません、撫子姉さま」
 撫子が話し出したと同時に、亜真知は頭を下げた。
「わたくしのお友だちが来られているようなので……そちらへ向かわなければなりません」
 『お友だち』――それには2つの意味合いがある。もちろん1つはエヴァのことだ。そしてもう1つは、懐かしい霊気のことである。
 もしその懐かしい霊気が何者かより発せられていて、かつ亜真知の見覚えある者であったなら……やはりそれは『お友だち』であろう。
 では、それを探すためにはどうしたらよいのか。……やはりここは、それを知ると思われる者に聞くのが一番なのであろう。言うまでもない、蓬莱のことだ。
「……そう。それでは仕方ないですね」
 撫子が少し寂し気な笑みを浮かべた。

●単刀直入【8D】
「蓬莱様」
 『蓬莱館』館内を歩き、ようやく蓬莱の姿を探し当てた亜真知は名前を呼んだ。
「はい? どうされましたか、お客様」
 にこっと微笑み、振り返る蓬莱。すると亜真知は笑顔でこう言った。
「何か手伝えることがありますか?」
「え? いえいえ、お客様に手伝っていただくようなことは何も……」
 笑って断ろうとする蓬莱。だが亜真知がもう一言付け加えた。
「ここで感じられる霊気にも関係することですよ?」
 その途端、蓬莱の顔色が変わった。
「あなた……いったい……」
「手伝うこともやぶさかではない……のは、私も同じだが? ただし、話の内容次第だ」
 そこにひょっこりとレイベルが現れた。こちらはこちらで、聞きたいことがあって蓬莱を探していたのであった。
「どうして私の組んだトラップがここにあるのか……と聞こうと思ったのだが、それより先に聞くべきことを思い出した」
 腕を組み、近くの壁にもたれかかるレイベル。
「蓬莱、少々面白い者たちが招待され過ぎたようだ。もっとも今回の黒幕は他に居るようだけど。さて……そろそろ目的に必要なことは教えてくれないかな?」
 レイベルが蓬莱の顔を見つめた。亜真知も亜真知で、蓬莱の顔を笑顔でじーっと見ている。
「分かりました。説明するよりも、見ていただいた方が早いでしょうね……」
 溜息を吐き、複雑な笑みを浮かべる蓬莱。
「どうぞこちらへ」
 そしてレイベルと亜真知を促すと、蓬莱は先頭に立って歩き出した。

●だから懐かしいのだと思った【14B】
(そういうことだったんですのね)
 蓬莱より徐福の名前が出た瞬間、亜真知は納得をしていた。どうりでここには懐かしい霊気が感じられるはずだと。
 いつのことだったか、亜真知は徐福と1度出会ったことがあったのだから。

【『蓬莱館』の真実・個別ノベル 了】


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■   登場人物                  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 1593 / 榊船・亜真知(さかきぶね・あまち)
  / 女 / 中学生? / 超高位次元知的生命体・・・神さま!? 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ダブルノベル 高峰温泉へようこそ』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全38場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・大変お待たせし申し訳ありませんでした。ここにようやく『蓬莱館』の真実をお届けいたします。『蓬莱館』とはこのような所でした。皆様はいかが思われたでしょうか? 今回もまた共通・個別合わせまして、かなりの文章量となっております。共通ノベルだけでは謎の部分があるかと思いますが、それらは個別ノベルなどで明らかになるかと思います。また、『『蓬莱館』へようこそ』と合わせてお読みいただくと、より楽しめるかと思われます。
・今回高原が書かせていただきました『高峰温泉』2本ですが、不老不死・陰陽(精霊含む)・IO2・『虚無の境界』・シリアスとコミカルの危うい同居……といった所をテーマにしておりました。果たしてどの辺りまで達成出来たかは分かりませんが、もし楽しんでいただけたのであれば幸いです。
・分かりにくかったかもしれませんので、時間軸のお話を少し。『『蓬莱館』へようこそ』は麗香逗留3日目から4日目にかけてのお話、『『蓬莱館』の真実』は逗留5日目と後日談のお話でした。
・当初の予定では、エヴァはもっと暴れる(戦闘する)はずでした。でも実際の本文ではそうはなっておりません。これはプレイングの影響を受けたためです。普段の高原の依頼もそうなんですが、『高峰温泉』は特にプレイングの影響で流れが変わっております。書かなくてはならないことも雪だるまのごとく増えてゆきましたし。
・あと余談なんですが、この『『蓬莱館』の真実』では麗香に深く関わるとどんどんと麗香が壊れてゆく様子が見られる予定でした(しかも、ろくに情報が手に入らないというおまけつき)。その片鱗は共通ノベルや一部の個別ノベルに出ているかと思います。いや、予定ではもっと凄かったんですけれども……ちょっと残念。
・榊船亜真知さん、ご参加ありがとうございました。という訳で、あの宝石は本文のような用途に使われたのでした。懐かしい霊気についても、やはり本文の通りです。あと、本文では明確にしていませんが、エヴァは亜真知さんを見かけました。エヴァの行動がちと妙なのは、その影響かもしれません。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、またどこかでお会い出来ることを願って。