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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


『蓬莱館』の真実
●結界の向こう側【12A】
(やはり結界か)
 『蓬莱館』敷地内某所――慶悟はそこへやってきていた。その手には一昨日描いた『蓬莱館』の地図がしっかと握られている。
「地図が太陰大極図を2つに分けたがごとくなっていたのは……偶然ではない、ということか」
 目の前に張られた結界を前に、慶悟は地図を見ながらつぶやいた。
「この先があの洞窟に繋がっているはずだ」
 洞窟――西船橋武人が入っていったあの洞窟のことだ。武人に式神たちをつけていたため、慶悟は武人が『蓬莱館』をあちこち調べていたことを把握していた。
 しかしその式神たちは、武人が洞窟に入った直後に何者かによって消滅させられていた。先に式神につけていた式神、それから武人につけていた式神という順番で。
 なので洞窟の中で何があったのかは、慶悟には分からない。言えるのは、自らの目で確かめるべきだということ。
 慶悟は式神十二神将のうち4体を召喚すると結界の四方に配置し、結界を破ろうとした。10数分後に結界は破られ、慶悟はその中へ足を進めた。
(陽の中にも僅かながら陰は含まれている……その陰がここなのだろう)
 太陰大極図をよくよく見てみると、陰陽どちらにも反対の属性が小さく含まれていることに気付くだろう。
 慶悟が描いた地図も見事にそのようになっていた。ちょうど結界で囲まれた部分が小さな円となっていたのだ。
 さて、慶悟が結界で囲まれていた領域の中心部へ来ると、そこには地下に続く緩やかな坂道があった。
「地下……陰の気が集まりし場所か」
 何気なくつぶやき、神将たちを伴い坂道へ足を踏み入れる慶悟。地下へ続く坂道はうねうねとカーブを描き、慶悟を遠くの世界へ誘う。
 坂道はじきに暗く湿気のある洞窟へと姿を変え、緩やかに下に傾斜を続けている。そうして10分近く歩いた頃だろうか、長い洞窟は突き当たりを迎えていた。
「石の扉……」
 神将たちに命じ、石の扉を調べさせる慶悟。やがて神将の1体が、扉の中央に丸く小さな窪みがあることを慶悟に知らせた。
「ビー玉サイズ……」
 ふと慶悟の脳裏に浮かんだ映像があった。それは『蓬莱館』館内探索のために放っていた式神が見た物。由香里が首にかけていたネックレスの青い宝石――サイズ的には、ちょうどそのくらいではないか。
「……いや、まさかな」
 最初その考えを否定する慶悟。だが、今このタイミングで存在しているのは事実。次第に否定した考えが大きくなってくる。
(扉の台座と対……なのか?)
 もしそうだとしたら、窪みにあの宝石をはめ込むとどういうことが起きるのか。式神に命じて館内に何か文献のような物がないか調べさせていたが、らしき物は見当たらない。
「……『求めよ、さらば開かれん』とも言う。危険な気もするが、はめ込む他にこの扉を開く術もないようだ」
 コンコンと石の扉を叩く慶悟。念のため神将たちに開けさせようと試みたが、扉はびくともしなかった。
「1度地上に戻るか」
 そうつぶやくと、慶悟は来た道を逆に歩いていった。
(それにしても……誰が味方かいまいち分からん。一昨夜みたく、色々暗躍している者も居るようだからな)
 溜息を吐く慶悟。敵味方はっきりせぬ状況下で、はてさてどこまで調べられる物か――。

【『蓬莱館』の真実・個別ノベル 了】


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■   登場人物                  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
                   / 男 / 20 / 陰陽師 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ダブルノベル 高峰温泉へようこそ』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全38場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・大変お待たせし申し訳ありませんでした。ここにようやく『蓬莱館』の真実をお届けいたします。『蓬莱館』とはこのような所でした。皆様はいかが思われたでしょうか? 今回もまた共通・個別合わせまして、かなりの文章量となっております。共通ノベルだけでは謎の部分があるかと思いますが、それらは個別ノベルなどで明らかになるかと思います。また、『『蓬莱館』へようこそ』と合わせてお読みいただくと、より楽しめるかと思われます。
・今回高原が書かせていただきました『高峰温泉』2本ですが、不老不死・陰陽(精霊含む)・IO2・『虚無の境界』・シリアスとコミカルの危うい同居……といった所をテーマにしておりました。果たしてどの辺りまで達成出来たかは分かりませんが、もし楽しんでいただけたのであれば幸いです。
・分かりにくかったかもしれませんので、時間軸のお話を少し。『『蓬莱館』へようこそ』は麗香逗留3日目から4日目にかけてのお話、『『蓬莱館』の真実』は逗留5日目と後日談のお話でした。
・当初の予定では、エヴァはもっと暴れる(戦闘する)はずでした。でも実際の本文ではそうはなっておりません。これはプレイングの影響を受けたためです。普段の高原の依頼もそうなんですが、『高峰温泉』は特にプレイングの影響で流れが変わっております。書かなくてはならないことも雪だるまのごとく増えてゆきましたし。
・あと余談なんですが、この『『蓬莱館』の真実』では麗香に深く関わるとどんどんと麗香が壊れてゆく様子が見られる予定でした(しかも、ろくに情報が手に入らないというおまけつき)。その片鱗は共通ノベルや一部の個別ノベルに出ているかと思います。いや、予定ではもっと凄かったんですけれども……ちょっと残念。
・真名神慶悟さん、ご参加ありがとうございました。前回、武人に式神をつけていたことは正解でした。今回は前回蒔いた種が芽を出したという感じかもしれません。地図がああだったのはこういうことでした。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、またどこかでお会い出来ることを願って。