コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


最後のライフライン

 「…あー、ようやく人心地ついたわ……」
 心底気持ちよさげな声を漏らす麗香に、隣で顔を洗い終えた皇騎が思わず笑い声を漏らす。
 「なぁに、そんな風に笑って…宮小路さんだって、そう思うでしょ?」
 「ええ、まぁ確かに。でも特別に麗香さんの声が気持ちよさげだったんで、つい」
 そう言うと麗香が、まだ雫の残る額を、タオルで押さえるようにして拭きながら笑った。
 「だって本当に気持ち良かったんですもの。こうして見ると、水道も何もかも、既に無くてはならないものになってしまったのね…」
 「元来は、こんな便利なシステムは無かった訳ですから、文明に馴れ切って軟弱になったと言えばその通りなのでしょうね。今の社会がどちらかと言えば懐古趣味に偏っているとは言え、この程度の文明はなくしようがないでしょうね」
 「そりゃそうよ。クーラーを無くすのと水を使わないのとは話が違うわ」
 私はクーラーも手放せないけどね、そう麗香が言うと、また皇騎が楽しげに笑った。

 「それにしてもさっきのあの娘(こ)…気にならない?」
 「生気を頂く…とか何とかってのですか?」
 皇騎がそう言うと、麗香は頷いて同意を示す。
 「どう言う事なのかしら?」
 「そうですねぇ…聞いても教えてはくれないでしょうから、推測するしかありませんが…私はまるで、人の血を吸う吸血鬼のような話だな、と思ったんです」
 その言葉に、麗香は蓬莱が言った、『ご馳走』と言う言葉を思い出した。
 「そうね、まるで私達が彼女達の食料であるような言い方をしたわね…でも、実際に私達が食べられる訳ではなく、彼女達が『頂く』のは、私達の生気…」
 「だからこそ、ここでの満足感が必要だったのかもしれませんよ?私達が満足しなければ、英気も養われないし、当然、生気が満ちる事も無い。そうすると、彼女達も干乾しになってしまう。だから、早めにこの問題を解決する必要があった、…と」
 「だったら、自分達で解決しなさいよ、って思うけどねぇ」
 僅かに唇を尖らせ、そうぼやく麗香の姿は、普段のキャリアウーマン的デキる女のイメージとは程遠い、どちらかと言えば子供っぽい雰囲気が見え隠れした。
 「…なーに、さっきからそんな目で私を見て……」
 「え、いや別に。ただ、麗香さんは麗香さんだなぁと思って見ていただけですよ」
 「何、それ」
 皇騎の解答に、思わず麗香も吹き出してしまう。使い終わったタオルは綺麗に畳んで小脇に挟み、顔を洗う為に纏めていた髪をさらりとほどいた。
 「さて、朝食前にモーニングコーヒーでも一緒にどう?復活したてのお水で淹れたコーヒーはきっと格別よ?」
 「お供しますよ、私がそんな素敵な誘いをお断りする訳がないでしょう?」
 では、と皇騎が片手を差し伸べ、エスコートしようと麗香を誘う。麗香はその手を一瞬じっと見詰め、次に皇騎の顔へと視線を移す。にっこりと微笑み、その手に自分のを重ねて預け、二人はラウンジへと歩き始めた。



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物                  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

【 0461 / 宮小路・皇騎 / 男 / 20歳 / 大学生(財閥御曹司・陰陽師) 】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

この度はダブルノベルのご参加、誠にありがとうございました。こんばんは、ライターの碧川桜でございます。
宮小路・皇騎様、はじめまして!お会い出来て光栄です。細々と活動をしているヘタレライターですが、今後ともよろしくお願い致します。
ダブルノベルと言う、初めての試みに戸惑う部分もありました。共通ノベルと個別ノベルと言う、ダブルノベル固有の特色を活かせた内容になったかどうか若干不安な点もありますが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
共通ノベルでは麗香さんとの会話が楽しくて、ついうっかりメインである筈の探索シーンを食ってしまった感がありますが…如何だったしょうか?(汗)
ではでは、今回はこの辺で。また東京怪談の何処かでお会い出来る事をお祈りしつつ…。