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奇怪!温泉植物の腹の中!?
〜ふしぎなイルカさん〜
浅い海を葉華の先導で歩き回っていた一行。
「……ん?」
どれくらい歩いただろうか。
前を歩いていた葉華が何かに気づいたらしく、眉を潜めて足を止めた。
その様子を見て、愛華とエマもつられるように足を止める。
「どうしたの?」
後ろから覗き込んだ愛華が不思議そうに声をかけると、葉華が真剣な声で返事を返す。
「―――――何か、近づいてきてる」
「「え?」」
「なにかはわからないけど、何かがこっちに近づいてきてるみたいだ」
海がおいら達の動きとは違うリズムで振動してる…と呟く葉華に、愛華とエマは身構える。
「一体何が来るんだろ…」
「とりあえず敵じゃないのを祈るばかりね」
「かなりの高確率でそれはありえないけどな…」
緊張しつつもどこか軽い口調で話し合う3人だったが、耳にバシャバシャと大きく水を掻き分ける音が聞こえてくると、身体を強張らせた。
水を掻き分ける大きな音は、確実に此方に向かって進んでいる。
着実に大きくなっていく水音にぐっと口をきつく結んだ葉華は、その音が聞こえてくる方向に振り向き、声を張り上げた。
「――――誰だ!!」
その声にバシャリ、と一際大きく水を跳ねさせた来訪者は、声を上げた。
「オーウ!そんな怖い顔をしないで下サーイ!!
ワタシ、争いはキライデース!!!」
……半端に日本語を学んだ外国人のような、物凄く適当に英語にかぶれた日本人のような変な口調で。
「「「……はい?」」」
思わず間抜けな声をあげてしまった3人の目の前にいたのは――――――体長2mほどの、眩しいくらい真っ黄色の…イルカ。
とはいっても普通のイルカとは違い、尾びれで身体を支えて直立しているような格好。
―――バイクで言うところの『ウィリー』といえば、解ってもらえるだろうか?
そんな感じの奇妙な体制でバチャバチャと水を掻きつつバランスを保っている珍イルカは、胸ビレをバッ!と盛大に広げて叫ぶ。
動作からすれば大袈裟なのだが、胸ビレはあまり長くないためどうにも決まらない感じが…。
「ここに人が来るのはトテモお久しぶりなのデース!
一体どんなヒトが来たのかト思って、ワタシ見に来ましタ!!」
要するに興味本意で堂々と覗きに来たと。
いや、多分この場合は覗きとは言わないのだろうが、雰囲気的には合ってるような気もしなくはない。
「…な、なんだこの海の哺乳類…」
そんな野次馬根性丸出しのイルカに葉華が思わずぼやくと、愛華の姿を見ると、嬉しそうに胸ビレを動かした。
「オー!!ビューティホー!!!」
…しかもわけのわからない奇声付き。
「な、なになに!?」
「急になんなの!?」
「一体どうしたんだ!?」
驚いて2歩下がった3人を他所に、イルカは胸ビレをぶんぶんと振り回しながら興奮気味に叫んだ。
「ベリーキュート!!アーンドグラマラス!!!
こんな可愛らしいのに素敵なスタイルをしたレディーを見たのは始めてデース!!!!」
ビシィッ!と愛華を指差しながら、イルカは思い切り叫ぶ。
「え、えぇっ??」
「……変態なのかしら…?」
「ロリ顔好きなんじゃねーの?」
戸惑う愛華の横で、エマと葉華はぼそぼそと囁き合う。…それは言ってはいけないとこです。
しかしそんな3人を気にも止めず、イルカは愛華に近寄る。
バシャバシャと跳ねる水がちょっとウザいかもしんない。
愛華の目の前にやってきたイルカは、口を空に向けて開く。
「そんなキューティーレディーにワタシからのプレゼンツでーす!!」
なんて言いながら、イルカは何時の間にか胸ビレに持っていた物を愛華に差し出した。
…一体どこに隠していたのやら。
「…あ、ありがとう…」
差し出されたそれを恐る恐る受け取った愛華は、それを見て驚いた。
それは―――大きな、薄ピンク色の真珠。
直径4cmぐらいはあるだろう。普通の真珠ではありえないサイズだ。
「…おっきー…」
感心したように愛華が呟くと、イルカは誇らしげに言う。
「ワタシが見つけた真珠デース!
レディーにピッタリのピンクパール、きっとこの日のために用意されたモノだったのデスネ!!」
…多分それは違うと思う。
心の中でした3人のひっそりとしたツッコミが揃った。
にしても随分と思い込みの激しいイルカだ、コイツ。
「でも…これ、貰ってもいいの?」
大きな真珠を見て戸惑い気味に問いかけた愛華に、イルカは勿論と笑って頷く。
「ワタシが持ってても宝の持ち腐れデース。
これは可愛らしいお嬢さんが持ってこそ光のデース!!」
…あえて『お嬢さん』に限定する辺り結構イイ性格だ。
「えっと…あ、有難う!イルカさん!!」
そう言って笑う愛華に嬉しそうに胸ビレを叩き合わせると、イルカはくるりと方向転換する。
「礼には及びまセーン!
それでは、ワタシはこれにして失礼しマース!!」
そう言ってビシッと片ヒレを上げたイルカは、来た時と同様、物凄いスピードでウィリーもどきをしながら去って行った。
「……結局なんだったのかしら、あのイルカ」
「…ってゆーかアイツ、少女趣味なのか…?
結局名前も分からないままだったし…。」
「…名前なら、『ウィリーイルカ』なんてどう?」
「それいいな、採用」
イルカが去って行った方向を呆れたように見つつちょっとズレた会話をするエマと葉華を他所に、愛華は嬉しそうに真珠を太陽の光に透かす。
「んー…きれーvv」
きらきらと光を反射するピンクパールに、愛華は満足そうに微笑むのだった。
―――その後、その真珠はペンダントにされて愛華の胸元で光を放っていたとかいなかったとか。
終
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■ 登場人物 ■
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【2155/桜木・愛華/女/17歳/高校生・ウェイトレス】
【0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【NPC/葉華】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは。暁久遠です。
今回この話にご参加下さって、どうも有難う御座いました。
【愛華様】
共通では葉華と仲良し姉弟風味と言う事で頑張ってみましたが…い、如何でしょうか…?(自信皆無)
特に宴会の席では大暴走させていただきまして…申しわけ御座いませんでした(汗)
個別はお任せということでしたので、「変なイルカと出会う」をテーマに書かせていただきました(見りゃ解るし)
とはいえ拙い表現手段しか持っていないので、きちんと満足いただけたかどうか…(汗)
こんな話ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
またの機会がありましたら、またよろしくお願い致します。
それでは、失礼致しました。
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