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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


秋葉原心中

 そうさ……あれは、とても冷たい雨が降ってた日だったんだよな。

 レコードを買いに行った帰りに、自由屋ツインタワーのふもとで雨宿りしてさ。
 そん時だったんだよな。あいつに会ったのは。
 可愛い妹なんか連れてるくせに、辛気くせえ顔しちゃってなんだい、ってそん時は思ったんだっけ。
 けど、違ったんだよな――あいつも、妹さんも、思い詰めてた。

 兄貴と妹の恋愛なんて、この街の虚構では腐るほどあるし、
 現実にだって、全くないわけじゃないから、普通なら、まあ、茶飲み話にしかならないんだけどさ。
 あいつらは……お互いに住む世界が違っていたんだよな。

 片や三次元、片や平面でさ。
 時ならぬ、次元を越えた恋愛だよ。

 本当に、あいつらは、俺らのやったことに、満足してくれたのかな。
 俺らのやったことは、本当に良かったことだったのかな。
 分かっていることは、もう、あいつらはこの街のどこにもいない、ってことだけ――

 こういう、冷えた雨の日には、いやでも思い出しちまう……どうしてなんだろうな。

 え、なんだって? 詳しく聞かせろって?
 鋼ちゃん、それはあまりにぶしつけってもんで――まあ、いいか。
 でも、俺だけの話じゃないから、話していいかは、みんなに許可をとらにゃいかん。
 固いこというなって?
 あのなあ、俺は公僕なの。もぐりだけどさ。
 さーて、電話電話、と。

  ◆ ◆ ◆

 あれが噂のォ〜 みっこみこファイヤァイヤイヤ♪
 そうよわたしは 恋をするにはわっかすぎない〜♪

 雨が降っている。
 どしゃ降りと言っても良いほどに、その雫は大きく、重い。
 通り雨のようだった。
 切れ切れの雨雲の間から、月が出ている。
 その暗い空を見上げながら、下手上手なナンバーを口ずさむ男がいた。
 オレンジ色のスポーツウェアが、目に眩しい。
 しまいには踊りだしそうなそいつに、傍に立っていた青年が、とうとう声をかけた。
「やかましい」
「――お、すまんすまん」
 自由堂ツインタワー……その間の小道には、雨が降り注がない。
 二人は雨宿りの最中だった。
 胡散無想な表情で、オレンジウェアの謝罪に頷いたのは、雪森雛太(ゆきもりひなた)。
 パチンコ店「ごおるでん」の帰りであった。
 この、電脳の産物と別次元の欲望が渦巻く街――電魔街。
 こんな街にも、パチンコ店などの遊興施設は、根強く存在している。
 だが、何も知らずにそこに入ったものは、恐らく目を剥くだろう。
 外界――現代日本に流通している現行機種など、殆ど存在していない。あったとしても、ヲタク受けの良いキャラクターものに限定される。
 ではその他に、どんな台が並んでいるのか?
 ……企業が電魔街限定モデルとして、ローリスクローリターンで出荷している電魔街向けの生産限定台が並んでいる。住民の懐を狙うべく、脱衣やボイスなどの演出が激しいのが特徴である。
 キャラクターものなどを、実験的に回すモニター地区としての役割も、電魔街のパチンコ・スロット店は担っている。雛太はそこに訪れ――見事に軍資金は吸い込まれてしまった。
 確変スタートをアナウンスした、あの猫耳従業員のせいだ。あんなのがいるから集中が乱れた。
「くそったれめ……」
「機嫌悪そうだな」
「そりゃ悪りーよ。駐禁は切られるし、残りの金入った財布は落とすし……」
 そう言って、雛太はジーンズのポケットに手を突っ込みながら、
「ここのパチンコ店には、もう行かねえ」
「猫耳のサービスがそんなにあれだったか?」
 オレンジウェアの問いに、雛太は口をゆがめた。
「プリペイドカードをさ、胸の谷間に入れて持ってくるの、反則だよな」
「それが売りだ。あんまり怒るんじゃない」
「……たばこも忘れてたし。地城、一本ちょうだいよ」
「電魔街は禁煙だぞ。一応そういうことになってるんだが」
 言いながらも、オレンジウェアの青年――宮杜地城は、自分のポケットから紙の包みを取り出した。
「……"しんせい"か」
「いらないか?」
「いる。ちょうだい」
「はいよ」
 鼻歌は止めたものの、ひょいひょいと身を踊らせながら、"しんせい"を一本、箱から差出し――
「あら。頂こうかしらね」
 それを手に取ったのは、突如として現れた女だった。
「「おい!」」
 雛太と地城が、その女に半ば怒鳴るに近い声を張り上げたものの、煙草を手に持った女は動じない。
 それどころか、
「「あーーーッ!」」
 その煙草の巻紙をびりびりと破き、自分の持っていた白銀のキセルに詰め込む始末であった。
 程なくして、紫煙が湿気のひどい空気中に漂う。
「この"しんせい"って、まずい煙草ね……」
「人のを取っておいて、それが言う台詞かい」
 雛太のもっともな意見に、肩と肢体を揺らしつつ、くっくっく、と笑む美女――紅蘇蘭(ホン・スーラン)。
 ひょいとその立ち位置を翻し、通りの方にすっくと立った。足が長い。
「あいかわらずグンバツじゃねえか」
「……味わってみたいのかしら?」
「…………遠慮しとく」
 少しだけ考えて、地城は辞退した。
 綺麗な花には棘がある。
 しかも、この女の場合は棘どころか、爪や牙、あぎとのオンパレードだ。何もしないのが賢い。
「軍閥をどんな風に味わうんだ?」
「ギャンブラーは、そんな意味を知らなくてよろしい」
「ちぇっ……で、その兄妹ってのは、本当にここに現れんの?」
「さあな――」
 改めて受け取った"しんせい"をくゆらす雛太であった。
 その視線が、蘇蘭の背後に注がれる。
「……どうも」
「こんにちわ〜」
「って、誰この人。地城」
 雛太は地城に問いかけ、オレンジの青年はむべもなく答えた。
「香坂丹(こうさか・まこと)。お前とは違う、真面目な大学生だ」
「雪森くん、だよね? ちゃんと大学いかなくちゃ、ダメよ?」
「は、はい……」
 明朗に動く丹の瞳と唇に、雛太はなんとなく視線をこぼした。
「"ひなた"じゃなくて日陰者だなー」
「地城は黙っとけよ。何しに、ここに来たんだい?」
「ここの街の喫茶店にね、"デュリエール"のケーキを食べさせてくれる場所があるのだ。やることが済んだら、宮杜さんに連れてってもらうの」
「ここの喫茶店……って、全部いかがわしいところばかりじゃないか」
「そうかもね……まあ、見方によっては、可愛いとも取れなくも無いけど……まあ、どこにあっても、美味しいものはウソつかないしね」
「なるほど……煙草吸う?」
「ダメだなあ、雪森くん。デリカシーが無いゾっ」
「無いゾっ」
 地城も丹に続いて、雛太の肩を指でつついた。
「……う、うるさいな」
 妙に所在の無い雛太だった。
「じゃ、じゃあ……ミルクセーキとか、どうだろう」
 自由堂ツインタワーのふもとには、自動販売機がずらりと並んでいる。
 そのうちの一つは、ミルクセーキだけを売っている、奇妙な自販機だ。おでん缶自販機と並ぶ電魔街名物である……というのは、先程地城から聞いた電魔街の豆知識だ。
「それ、甘い?」
「たぶん、甘いと思うけど……」
「おごってっ」
「…………」
 残っていた小銭入れを取り出し、しぶしぶと自販機の前に立つ雛太。
 なぜか丹のペースに乗せられているのを感じた……こんな日もあるよな。諦める雛太だった。
「俺の分は?」
「唾でも飲んでなよ」
「わたしの分は?」
「霞でも食っててよ」
 苦笑する地城と蘇蘭。顔を見合わせた。
「……烏龍茶ならあるぜ。おごるぞ」
「発想が単純ね――」
「それが俺のいいところさ」
 自販機に向き直るやんちゃな青年の背中へ、出来の悪い弟を見守るように、蘇蘭は微笑した。

  ◆ ◆ ◆

 あいにく烏龍茶は売り切れており、裏路地に地城が回ると――そこに、もう一人の待ち人がいた。
「……現れたか?」
「いいや、まだだ」
 志賀哲生(しが・てつお)――私立探偵。
 元はと言えば、この男と共に、地城は最初の接近遭遇を遂げたのだった。
 そういう意味では、他の三人よりも、件の二人については詳しいし、考察もしている。
 烏龍茶を買いにきたこともすっかりどこへやら――もちろん意図的に忘れたのだが――煙草を一本取り出し、火をつけた。ジッポもオレンジだった。
「一本、くれないか」
「"しんせい"だけど、いい?」
「たまには、苦いのも悪くない」
「はいよ」
 地城の持つ紙箱から、煙草をつまむ哲生。
 一見だらしなく見える無精髭も、どこかアンニュイな雰囲気に取り込まれ、一つの魅力にすらなっている。
 "しんせい"の辛くて苦い匂いに混じって、香水の匂いもした。
 それは、彼の体に染みついた、死の気配をごまかすためのマーキングだ。
 ……このナイスミドルが絡んでるってことは、やっぱり、命の話ってことなっちゃうんだろうな――地城は思う。
「俺と居るのが、不満か……?」
「……まあね」
 地城は悪びれることなく、言ってのけた。その態度に、哲生がほう、と、煙草こそ落とさなかったが、口を軽く開いた。
「あの女の子――とっさに取った携帯のカメラから分析したんだが、精巧に平面を線を張り合わせたような皮膚をしてたんだよな」
「ヴァーチャル・リアリティみたいなものか?」
「実際はテクスチャっていうんだけど、技術的な話は関係なさそうだから、そう考えてもらっても構わない」
「だが、あの女は、抱き合った男と言葉を交わし――男の方も、しっかりと女を抱いていた。抱いていたんだ。分かるか……宮杜」
 地城は哲生に頷いた。
「質量があることは、間違いないってことだ」
「随分、東洋的な話だな……まあ、ここはかつて日本だった場所だから、当たり前と言えば当たり前だが」
 大きく煙を吸い、地城はしゃがみつつ空を見上げた。
 雨はだんだん弱まってきていた。
「宮杜――知っているか。インドには、墓が無いんだ」
「へえ……」
「死体というものからは、生前の者の意思は既に去って……ただの『入れ物だったもの』と解釈するのだと」
「入れ物だったもの、か……ずいぶんと、ドライな話なんだな」
「中国や日本では、死体にはその人間の意思が宿っていると言われている。だから墓があるし、墓参りもする」
 哲生も煙を強くくゆらせた。湿気は未だに高く、濃い――
「そのヴァーチャルリアリティというのは、入れ物なのか? それとも、それそのものが意思を持っているのか?」
「さあ……」
 そう地城は応えたものの、哲生が言わんとしたことは理解していた。
 二次元体の美少女。
 その意思は、テクスチャの中に秘められたものなのか?
 それとも、テクスチャそのものが描き出した意思ものなのか?
 その美少女は他者なのか、それとも……あの少年が生み出した、もう一人の少年とも言うべき姿なのか?
 二人が煙草をもみ消したのは、同時だった。

  ◆ ◆ ◆

 お互いの大学についての話をする、学生二人を眺めながら、蘇蘭は思う。
 電魔街。
 時として妄想すら具現化されるこの街……どのような恣意が、この街に宿ったのだろうか、と。
 その怪異は、まるで、無から有が生まれるに等しい――神と呼ばれる概念ですら、それはおいそれと起こせる現象ではない。
 自分のような、人の姿で偽った、古来からの存在か。
 さもなくば、魍や魎のように、小さなものが集合して形を為したものなのだろうか。
 ――後者の方が近い気がした。この街の神は、住人の中に居る。それを、蘇蘭は感じ取っている。
 雨が上がろうとしていた。
 そして、彼と彼女が現れる――哲生と地城も、路地に戻ってきた。
 飛沫が集まって雫になるかのように、何も無いところから、生身の体と二次元体の美少女が現れていく。
 神隠しというものに、逆の現象が存在するとするならば、まさに今、その現象を見ている――丹は思った。
 それほど、"向こう側"の力には通じていない自分ですらも、こうしてはっきりと見えている。この街が異常であることを、改めて認識した。
 一同の目をはばかることなく、抱きあいながら愛を交わす二人に、しかし進み出る者が一人。
「いい加減、やめたらどうだい」
 地城だった。
 二人は言葉を発することなく、地城に対して怪訝な表情を見せ……また、踊るかのように身を擦り合わせ始めた。
「聞いちゃいねえか……」
「見るってことは、聞いてるってことじゃねえの?」
「音として聞くのと、言うことを聞くのとは、また違うだろうが」
 雛太の茶々に、苦笑しつつも応じる地城。
 その前に進み出で、次元を違えた二人を見つめる――哲生だった。
「お前らは、なぜここにいる……なぜ、まだ、ここにいる」
「まだ……?」
 その言葉に首を傾げたのは、丹だった。
「まるで、ここにいちゃいけないような言い方ね。宮杜くん、どういうこと?」
「……わりーな。守秘義務ってのがあるんだわ。すまないが、言えねえ」
「あの人は知ってるみたいじゃない」
「元刑事の探偵だからな。俺がこうして、まこっちゃんにほのめかす前に、自分で調べちまったんだよ」
「……事件が、あった、ということかしら」
「そういうことよ。飛び降り自殺ね」
 飄々とした口調で間に割って入って来たのは、蘇蘭だ。
「えーッ!」
「おい何勝手に――」
 地城の制止も聞かぬまま、蘇蘭は雛太の方に話を振った。
「そうね……お兄さん。すこしばかり、真剣に見つめてみなさいな」
「……おれ?」
 そんな顔をしつつも、雛太は抱き合う二人を、スロットのリールを目押しするくらいの気分で凝視してみた。
「…………あ」
「どうしたの? 雪森くん」
「……男の方の、喉元を見てみ」
 言われた通りの場所を、丹は見た。良く分からなかった。
「首がどうしたの? 動いてないじゃん」
「そう……全然動いてないんだ。呼吸してないんだよ」
 呼吸していない……つまり、それは、人として生きていない、ということだ。
「え、じゃあ、あ、あれ、女の子の方じゃなくて、男の子の方も、お化け……?」
 丹は地城に問うたが、地城はもやもやしたような表情のまま。
 それを丹は、肯定と受け取った。
 次元を越えた色恋……それだけの話であれば、この街においては事件にはなり得ない。モニターに口づける奴など、ごまんといるのだ。
 本当に事件になっているのは、この、自由堂ツインタワーの休憩所とも言うべきこの場所に、そのようなものが出現する――ということ。店側としては、それは困るのだろう。
 つまりは、よそでやれ、ということなのだが……相手はどうやら、生きていないらしい。
「……死してもなお、縛られるか……なぜだ?」
 哲生が二人に問いかける。無言で返されるも、彼は言葉を次いだ。
「この街から離れることが出来ないとでも、言うのか……?」
 その問いに、二人は、頷いた。はじめてのリアクションだった。
「ここでなければ、この街でなければならない理由……それは、なんだ?」
「ストップ。それを聞くのも、野暮ってものさ」
 地城が制止し、哲生はそれに素直に従った。郷に入りては郷に従え。そんな気持ちで哲生は引いた。
「地城よ……この街は、天国かしら? それとも地獄かしら?」
「どっちも同じようなもんだろう」
「有りもしないものを追いかけて、それを具現させてしまった。死してなお、いや、死がその引き金ですらあったのかもしれない……二次元の娘は、それを抱くアストラルボディの、思惟の結晶――」
「それって、どういうことさ」
 雛太が蘇蘭に訊く。彼女は艶のある微笑を浮かべ、言った。
「言うなれば、あの男の妄想が、形を帯びた。その力を、彼は死して獲得するに至った。この街が、死んでいく彼に与えた贈り物……洒落っ気たっぷりに言えば、ギフト」
「……この街では、幸せなことかもしれねえな」
 雛太は吐き捨てるように言い、
「俺は絶対いやだけどね。本当は無いものなのに、それに心奪われるなんて、まっぴらごめんだ」
 そう言を締めたと同時だった。
 二人が、舞踏するように、宙を舞い始めた。
 消えていく前兆だった。以前もこうして、煙に巻かれた――哲生と地城は瞬時に動いていた。
「宮杜!」
「肩に乗れ――手足を吸盤化させるぜ」
 哲生は地城の両肩に、しゃがむように乗りかかり、そのまま地城は空に舞った。
 ツインタワーの外壁に張り付きながら、ジグザグ・ジャンプで高みへと上がっていく。
 ターゲットと同じように、妄想を具現化出来る彼の力であった。
「思い出でもなんでもない、お前自身の捏造した思い――そんなものでも、大事かッ! 安息でも無い! 救いでも無い! ましてや逃避でも……お前のやっていることは――」
 哲生が、空へと消えていく二人に、声を張り上げた。彼にしては珍しい大声だった。
「聞こえちゃいねえさ……きっと、自分の殻に閉じこもってる。ここは……そういう奴らが集まる場所でもあるんだ」
 上空に差しかかるころには、二人の姿はもはや無かった。
 ――あったのは、雨上がりの月夜だけだ。
「夢の世界からは、抜け出すのは難しい、ってことかしらね……」
 屋上に降り立つ二人を尻目に、蘇蘭が月を見ていた。
 大きなキセルにまたがっていたと思いきや、それは瞬時に小型化し、彼女も哲生や地城のそばに降り立つ。
 超然とした顔つきだった。
 雛太や丹も、階段伝いで追いつき――同じように月を見上げた。
「望むものが手に入らないのは不幸……けど、その望むものを、かりそめのものでも手に入れられれば、それは幸せ……少なくとも、彼にとっては。わたしたちの介入する余地はあったのかしらね?」
「蘇蘭さん、それって、ちょっと達観しすぎじゃない? 自分の妄想と、ただ一緒にいるだけ……それは、本当に幸せなことなのかなあ」
 若い丹には、それは良く分からなかった。
 食べて見なければ美味しいと分からないように、物事というものは体験しなければ、本質を掴むことはとても難しい。
「だけど……あんただって、なんとなくは分かるだろ」
 雛太が蘇蘭に言った。
「あれは、間違って無いかもしれないけどさ……でも、確実に、正しくはないだろ」
「そういうことだろうな――」
 哲生もその意見に続いた。苦い顔をしていた。
「でも、二人とも、笑ってた……みんなの言ってたこと、聞こえてたのかもしれないよ? それに、ちょっぴり、ろまんちっくだと思わない?」
 丹は、消えていった二人のことを思った。
「たとえ偽物の関係でも、夢の中でなら、ずっと一緒にいられるんだから……」
 丹のその言葉に、蘇蘭は淡い微笑を浮かべた。
 確かにそういう見方もある……そう思いながら。


  ◆ ◆ ◆

 −事後報告−

 ●紅蘇蘭
 お茶を買ってこなかった地城に、いろいろとグンバツな御仕置きをした。
 彼の能力ゆえの無尽蔵な精気を頂き、悠々と帰還した。

 ●志賀哲生
 萬世橋警察署の霊安室へ、男の死体を見に行った。
 建前こそ『検証のため』だが、本当の理由は彼のみぞ知る。

 ●雪森雛太
 なけなしの小銭でケーキまで奢る羽目に。ちなみに雛太本人はおすそわけのみ。
 帰りは数時間かけて徒歩であった。最悪の一日。

 ●香坂丹
 メイド喫茶「ライム」でケーキ食いまくり。至福の時を過ごした。
 ヲトメゲームの宣伝が気になったものの、そのまま帰宅した。

 ●宮杜地城
 相棒の鉄鋼曰く「『三日間は使い物にならなかった』と言っていた」。



 Mission Completed.



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0908/紅・蘇蘭/女性/999/骨董店主・闇ブローカー
 2151/志賀・哲生/男性/30/私立探偵(元・刑事)
 2254/雪森・雛太/男性/23/大学生
 2394/香坂・丹/女性/20/大学生

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■         ライター通信          ■
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 どうも、Kiss→C(きっしー)です。
 【界境現象・異界】こと「C&CO.」、いかがだったでしょうか。

 今回は、話の方はちょっと分かりづらくなった感があるかもしれませんが、
 その分、キャラクターを掘り下げることは頑張ったような気がします。
 今後は両立出来るよう、もっと修行を積みたいと思います。

 それでは、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
 次のC&CO.の捜査も、よろしければ手伝ってやって下さいませ。