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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


学園怪奇情報ネットワーク 起動!
■オープニング

私立 柳城学園は中高一貫の学園である。
そこそこの進学校でもあり、一人一台のパソコンも完備されている。

さて、下校時刻間際。逢魔が時。
第2パソコン教室に、灯りが灯った。
「さあってと!今月分の原稿整理は終了っと。
入学式から二ヶ月、各学園も体制が整ってきた頃だよね。…以前からの構想を、そろそろ形にしてみようかな♪」
仕事用のフロッピーを抜くと、彼は軽快にキーボードを叩き始めた。
(最近の都内での怪奇現象は異常なほど多すぎる。不思議な世界の扉は、驚くほど僕達の隣にあるんだ。)
でも、多くの人はそのことを知らなさ過ぎる。
まして学生はそういうことに困った時に、助けを求める手段が悲しいまでに少ない。
だから。と彼、西尾勇太は思う。
学生同士のネットワークを作りたいと。
お互いに情報を交換し合い、助け合う。
そんな某妖怪ポストのようなネットワークを作れないか。と。

とりあえずはHPは作ってみた。
トップページと 意見交換の為のBBSしかまだ無いが、とりあえずはいろんな意見を聞いてみたいのだ。
後は…今までいろんな学園のHPに、知り合った人たちにメールを出してみる。

あなたはこんな文章を眼にするかもしれない。

「僕達、学生だからできること、僕達学生にしか見えない世界。
そういうのも、必ずあると思うんです。
一人一人でできることなんて限られてるけど、みんなでならできることがあるかもしれません。
一緒に作ってみませんか?学園ネットワークを…。」

■始まりに、立ち会うもの

メール送信
「お久しぶりです。元気そうで何より。
あと学園ネットワークのお知らせありがとう。
面白い試みね。私はもう学生じゃなくって久しいけど。もし、私で良ければ協力させてもらうわ。
それから勇太くん、良かったらお友達と一緒に一度、図書館にいらっしゃい。
ちょっと話したいこともあるから。待っているわ。 綾和泉・汐耶」

「さて…と。ドキドキの結果発表だ。どんな返事が来ているかな?」
学園ネットワーク構想の告知を出したのは昨日のこと。
興味を持ってくれた人からの返事が来ているかもしれない。
西尾勇太はメールボックスを開けた。
「えっと…ダイレクトメールが3件に、こりないウイルスメールが4件。そして…来た!」
タイトル名『学園ネットワーク構想について』
協力してもいいという好意的なメールがいくつか来ている。
「うれしいなあ。」
勇太の頬が、押さえきれずに緩む。
一日二日で結果が出るようなものではない。
元々長い期間をかけて作成、運営していくつもりだったがやはり早く反応をもらえると嬉しいものだ。
「早速返事書こう…ん?」
丁度その時、メール新着をランプが告げた。ウイルスの心配も無い。
「あ、汐耶さんからだ。」
メールの送り主、綾和泉・汐耶は勇太にとっては旧知の、そして尊敬する女性だった。
彼女からのメールは励ましとお祝い。そして…話があると勇太に告げる。
「話?なんだろう?」
少し考え込むと勇太は、頷き、またパソコンに向かいキーボードを叩く。
ややあって、パソコンは数通のメールを送信した。

今時の作家の大半の制作ツールはパソコンである。
昔は「原稿用紙に文字をつづるから物書きというのだ。」との声も高かったが新しい技術が文章作成のスピードアップに大幅に貢献したことは否めない。
だが、所詮書くのは人である。浮かばなければ書けない訳で…
「だ〜〜っ!このままじゃ、締め切りに間にあわねえぇ!!!…ん?メール??」
ここにも一人頭を抱える作家がいた。
とりあえず、執筆の手を休めメールを開く。
「ほお、あいつが…。」
それは彼にとって小さな友人で、大事な弟子からのメールだった。
「学園ネットワークか、あいつも成長したな。…ちと真面目に傾くが。」
弟子の成長と真剣な気持ちを嬉しく思いながら、ちらちら心に生まれる老婆心。
(俺は老婆じゃねえぞ、のツッコミは無視)
「よし…!」
彼は、メールを打ちはじめる。もちろん仕事は一時小休止。
それを人は逃避と呼ぶ… かもしれない。

■新たなる仲間

「だから!まずは拠点を決めて、そこから少しずつネットワークを組んでいくのが妥当だと僕は思う。」
「まだ形にもなっていないのに、中心を決めてそこに集中してしまったら、潰されてお仕舞いでしょう?まずは協力者を募った方がいいとアタシは思うの。違う?」
学園ネットワーク構想の第一回会議。
そうメールを貰って指定された図書館の一室にやってきた寡戒・樹希の前では扉を開けたとたん喧々諤々の論争が繰り広げられていた。たった二人が…。
「あの、ここって学園ネットワークの相談会?でいいんだよね?」
「「あ!ごめんなさい。」」
論争を繰り広げていた少年と少女は、その声にお互いの顔を見合わせ、討論を一時フリーズ。
新たなる仲間に頭を下げた。
「僕は、西尾・勇太です。竜柳学園中学2年。一応今回の提案者ってことになってます。」
「アタシは瀬名・雫です。神聖都学園中学2年。ちょっと彼とは知り合いでね。お手伝いすることになったの。」
共に中学生だと名乗る二人はどちらも小柄で、背の高い樹希と並ぶとかなり小さく見える。
(へえ、この子達がねえ。)
名前と高校生ということを名乗ると樹希は、促されるままに席に付いた。
「あ〜〜、あたし、寡戒・樹希。宜しく。」
「キミ達は中学生みたいだけど、高校生だって別にいいんだよね。」
「もちろんです、僕らの学校も、高校付属だしできれば小学校とか、大学とかともネットワークも繋げればって思っています。」
「神聖都学園は全部あるし♪」
雫と名乗った少女はちょっと自慢そうに鼻を鳴らす。
「そっか、なら手伝えることはいくらでも手伝ってあげるよ。うちは普通の公立高校だからパソコンがそんなに完備してるとかって訳じゃないけどね。…でもメンバーはこれだけ?」
周囲にくるり顔を巡らせて樹希は問いかける。小会議室にいるのは自分達3人だけだったから。
「ネット上で協力を申し出てくれている人は結構いますよ。でも今日のところは僕達と、樹希さんと、あともう一人まだおいでになってないですけど美猫さん、って方だけのはずです。」
「まあ、しょうがないよ。ネットは顔を見せないからこそ自由にできるってとこ多いから。まだ信用も無いしね。これからこれから。さ、早く話始めようよ。」
勇太は自分のノートパソコンと携帯電話、MOなどを慣れた手つきでに接続していく。
「どうぞ。」
雫から差し出されたボトル入り清涼飲料を受取り開けながら樹希はその様子を見つめていた。
少しの感心の視線を込めて…。

時々、綾和泉・汐耶は会議室を覗いて様子を見ていた。
「やってる、やってる。ちょっと心配だったけど、大丈夫かしらね。」
ここが図書館で無ければお茶とお菓子でも差し入れてあげるところだが、そうはいかない。仕事も有るし。
汐耶がカウンターに戻ると、一人の少女が佇んでいた。もじもじ、うろうろ、声をかけたいけどかけられない。
そんな空気を察した汐耶は彼女に声をかけた。
「何か本を探しているの?それとも貸し出し希望?」
ビクッ!丸めていた背が汐耶の声に反応して伸びると、少女は首を小さく横に降った。
「あの…ちがいます。ここに、ユータさんっていませんか?ここにきてください、って言われたんですけど…。」
ユータ、それが知人、勇太のことであると汐耶が気付くまでそれほど長い時間はかからなかった。
「ああ、あなたも勇太くんのネットワークの関係者ね。どうぞ、こっちよ。」
カウンターから立ち上がった汐耶は手招きする。彼女の後ろを少女は跳びはねる子猫のようにぴょこぴょことついて行った。

トントントン。
ノックの音。
「はい。」
「汐耶です。入るわね。」
どうぞ、の声に促されて汐耶は扉を開けた。
「お客さまよ。さあ、大丈夫だから。」
残りの半分の台詞を汐耶は後ろ向きに告げた。自分のスラックスをギュッと握り締める閉める少女に優しく手を添え前へと押し出す。
「…君は、ひょっとして…『美猫』さん?」
「…はい。中藤・美猫…です。」
「キミ、小学生だよね。それも…低学年?」
勇太と樹希の問いに、美猫はコクリ頷く。
「あの…2年生です。2年生だと…ダメですか?」
一瞬、驚きと困ったような視線を混じり合わせた3人に美猫はおそるおそる問いかける。
だが、美猫の不安を打ち消すように3人は晴れやかに微笑んだ。
「そんなことないよ。大丈夫。ようこそ、僕らのネットワークへ。」
「アタシたちを信じて来てくれたんだもの、大歓迎。人手はたくさん欲しいし。」
「小学生と、中学生と、高校生か…。これで大学生も入れば完璧だね。」
三者三様の笑顔に、美猫は勇気を貰った気がした。汐耶の服から手を離しペコリお辞儀をする。
「何か、困っている人の手伝いができたらいいなあ、って思いました。よろしく…おねがいしますっ。」
パチパチ…拍手が美猫を迎える。
「問題は無いようね。これで…メンバーが揃ったのなら、ちょっと来て貰えるかしら。4人とも。」
今まで黙って様子を見ていた汐耶の言葉に、子供達は顔を上げた。
「何ですか?汐耶さん?」
勇太の問いかけに、いいからついてきて、そう言って廊下に出る汐耶。4人になった子供達は顔を見合わせあい、頷き合うと黙ってその後に続いたのだった。

■情報の奥の真実…。

関係者以外立ち入り禁止の札を軽く横にずらして汐耶は地下に降りていく。
その後を4人は黙って続いた。
さらに奥の一室に彼女は子供達を招く。静かなる静寂に閉ざされた扉を、物理的な鍵と、そうでない鍵で開いて…。
「さあ、入って…。」
天井までの本が連なる本棚。彼らは目を丸くしてそれを見上げていた。
「ここは…ひょっとして封印の書庫?」
「凄い…。」
「これ…唯の本じゃないね。」
「みんな、ふしぎな感じがする。」
彼らは皆、神のような特別な能力を持つ者たちではない。ごく普通の子どもで、ほんの少し異界に近いだけ。
だが、それでも彼らにも解った。ここの本たちの持つ力が…。
「情報や知識を必要なら私が管理するこの『要申請特別閲覧図書』の閲覧を許可するわ。私は貴方達に協力したいと思うから。」
ここの本が有れば、おそらく世界で起こる不可思議現象のうちの半分くらいには有力な情報が得られると汐耶は説明した。
「でもね、当然危険なものもあるわ。受取るか否か、受取るに足るか否かはキミ達次第よ。」
「世の中には、僕たちの知らない世界がまだまだあるんだ…。」
「インターネットの海は、この本と同じだね。情報は溢れてるけど、危険もあるし、それに振り回されるかもしれない。」
「でも、さ。大丈夫だよ。あたし達は一人じゃないんだから。それに、そういう人たちを一人にしないためのネットワークでしょ。」
「うん、みんなで頑張ろうよ。」
4人は静かに手を重ねた。心と一緒に…。

地上階に彼らが戻ると、図書館職員が汐耶を手招きする。
足早に近づこうとした汐耶はふと、足を止めて振り返った。
「時には人を頼ることも恥ずかしいことじゃないわ。貴方達を助けてくれる人はいるんだから、抱え込んじゃダメよ。本当に困ったことがあったらいつでも相談なさい。」
「「「「ありがとうございます。」」」」
4人が部屋に戻った時、モバイルがメールの着信を告げていた。
「あっ、ヤバッ、切断するの忘れてた。…ん?」
駆け寄る勇太がディスプレイを見て頬を緩ませる。
「ホントに僕達を助けてくれる人はいるんだね。」
「ん?どういうこと?勇太くん?」
首をかしげた樹希の問いに勇太は仲間達を手招きし、そして画面に届いたばかりの一通のメールを差し示した。
『HP開設おめでとう、良い企画だな。
お前の行く道は輝く方向へと向っているが足元は結構茨が多いぞ、気をつけて進め♪
お前は決して1人ぼっちじゃない、友が仲間がいるついでに師匠も(笑)
お節介だが俺のホームページのアドレス乗せとく。精進せい  雪ノ下 正風』
(…師匠、ありがとうございます。)

「学校とかのパソコンって侵入されて踏み台にされることが多いんだよ。ファイアーウォールは当然入ってるし気をつけてるけどね。」
「担当区域を分けたり、メーリングリストみたいにすれば危険は減るし、負担も少なくなるんじゃないかな?」
「それいい!でも正式稼動はもう少し人を集めてからにしした方がいいかもね。」
「美猫は…何すればいい?」
「小学生向けに解りやすいブロックを作ってみようと思うんだ。それに意見をもらえないかな?」
「あたしの腕は並みだけど、基本的なことを教えるのにはいいと思うんだ。美猫ちゃんに付きながら、人集めとか実践的な方を担当するよ。」
「じゃあ、そっちは樹希さんに任せようか。僕達は、メインのシステムに万全を期すようにするよ。雫さん、ホームページと掲示板の制限やCGIの方は?」
「大丈夫、それに関してはアタシはこう見えてもベテランなんだから♪」
「そろそろ区切りはつけられる?閉館時間なんだけど…。」
汐耶の言葉に彼らが時計を見たときにはもう6時近くになっていた。
「あっ、もうこんな時間。でも…大体の方向性は纏まったね。」
立ち上がろうとする雫。樹希や美猫は勇太の方を見る。彼は大急ぎで…何かをしているようで…。
「できたっ!!」
彼は一枚のMOをドライブから引き抜くと、今までコピーしていたらしい3枚と一緒に机に並べた。
「これは…何?」
「HPのバックアップデータだよ。みんなに持っていて欲しいんだ。」
「美猫ももらっていいの?」
もちろん、と頷く勇太に促され、3人の少女達はそれぞれがそのMOを手に取った。
「これから、ネットワークがどう稼動していくかは解らないけれど、その最初はこの4人だから。最初の気持ちを…忘れないように…。」
あの本の中で感じたこと、思い。インターネット、そして自分達の前に広がる現実という海の中。
それを生かすも殺すも自分たちなのだと、自分達は一人ではないのだと…忘れないように。
機械から抜き出したばかりだからかもしれない。でも、そのMOは不思議に暖かかった。

■学園ネットワーク起動?

メール返信
『メールありがとうございました。仲間もいますし、無理はしません。
あ、でもどうしてもの時は助けてくださいね(^^)
がんばります。勇太』
ふう、息をついて正風はディスプレイに紡がれた文字を見つめた。助けてください。と言えるのなら大丈夫。余裕もあるようだ。
「あいつなら成功するだろう、鍛えつつ弟子を見守るかね。」
言いながら正風は机の積み重なった本の中から薄い一冊のノートを取り出した。
密かに着けている勇太育成日誌だ。彼が知ったら顔を真っ赤にして照れるか、怒るだろうが…。
『免許皆伝まで後3年 しっかりやれよ。』
さて、と机に向かう。逃避している時間はもう無い。
締め切りまで後15時間。

かくしてHP学園怪奇情報ネットワークは起動した。
まだまだ、老舗ゴーストネットOFFには情報量は敵わないし、メンバーも少ないが、それぞれの熱心な心がそのHPを日々輝かせていった。

立ち上げ4名から始まった小さなHPが信用を重ね、メンバーを増やし、やがて関東随一の学園ネットワークと呼ばれるようになる。
か、どうかはまだ定かではない。

だが、それは決して不可能な未来ではない。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 0391/雪ノ下・正風  /男性 /22歳  /オカルト作家 】
【 1449/綾和泉・汐耶  /女性 /23歳  /都立図書館司書 】
【 1692/寡戒・樹希   /女性 /16歳  /高校生 】
【 2449/中藤・美猫   /女性 / 7歳  /小学生・半妖 】

【 NPC/西尾・勇太  /高校生/14歳 /中学生・ライター見習い】
【 NPC/瀬名・雫   /女性 /13歳 /怪奇HP管理人&女子中学生 】


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■         ライター通信          ■
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ライターの夢村です。
今回は初の異界シナリオにご参加くださいましてありがとうございます。
メンバーをもう少しと思い、かなり長くお待たせしてしまった方も。
でも、皆さんのおかげで、なんとか起動させることができました。
心から感謝申し上げます。

大した特典ではありませんが、今回参加のみなさんには以降ネットワーク関連の異界シナリオを私が提出し、それにご参加下さった場合には成功率、描写率が高くなります。

正風さん、ご参加ありがとうございます。
勇太が喜んでいました。描写が少なくなってしまいましたがお許しください。
今後またぜひ、しごいてやってくださいますと嬉しいです。

では、今回はありがとうございました。
また、機会がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。