コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談・PCゲームノベル>


□想いは通じ――。

 あるカフェテラスに天薙撫子が、人を待っているかのように座っている。しかし、いつもの彼女ではない。ソワソワしているのだ。服装はいつもの和服姿。多分懐には妖斬鋼糸は基本。しかし、当の本人は色々考えてみては頬を染めて下を向く。

 それは、1週間前のことだ。


 天空剣道場で、護身剣(チャンバラスポーツの剣より少し固くしたもの)を使い、試合方式の稽古となった。素振り、形、茣蓙の試斬がいつもの稽古のスケジュールなのだが、試斬をこの試合稽古に前もって変更していた。其れは師範のエルハンドのスケジュール決定事項。決して畳屋から余った茣蓙を買いそびれた訳でも無く、稽古用の水浸け茣蓙が完全に水に浸されていないからでもない。エルハンドの名誉のため、念のために言っておく。

 稽古に参加しているのは、その場全員。もちろん審判はエルハンドが取り仕切る。とは言っても、この道場が発足してから公式剣術五段以上を取れる年齢を持つ者はいない。最高四段ぐらいなのだ。天空剣の特殊性を考えると、やむなしである(神格覚醒の見込みがあると、剣より神格制御と真の天空剣を習うため、公式段位や試合に関われなくなる。織田義明も、まだ若いので三段である25歳で五段行けば良いのだが)。
 
 撫子は、どうもこの所、天然さ(?)を増していた。いつもぽやんとしている彼女がさらにぽやんとしている。暫く観察すれば、いきなり誰かを見ては頬を朱に染めているか、ため息をついている。その先は天然剣客とあだ名が付いている織田義明である。
 日に日に彼を想うことが強くなり、あまり彼をよく見ることは出来ない。見ようとすると恥ずかしさのあまり俯いてしまうのだ。
「これは、恋心なのですね……はぁ」
 そう分かってしまった撫子さん。もうそれからは更に赤面しているのだ。
 義明も同じ事をしている時もある。しかし、天然同士なので、お互いその事に“全く気が付いていない”らしい。
  エルハンドも、かわうそ?も笑いを含んだため息をついては茶をすすり、
「平和だな」
「うぃ」
 と、稽古終了後にご隠居さんとなって、2人のことを話す事が日常になりつつある。たまに茜が後ろで嫉妬の焔を燃やすこともあるが、八つ当たりできる人物を確保したらしく、その人物がえらい目に遭っているそうだ。
 ――|Д゚)ノ さらに直ぐお茶を沸かせるから好都合♪
 撫子からすれば、自分が年上と言うことで困っている。つまり、義明の幼なじみ茜、瀬名雫の存在が壁となっている(若さだな)。前に蓮の間で気迫あるにらみ合いがあったが、すこし茜がリード(茜にはお節介の補佐が居るのだ)。実際、義明は誰を想っているのかも勇気出して訊けない事が現状。

「義明、少し任せる」
「はい、師範」
 エルハンドは、かわうそ?と何か話し込んでいる。
 すでに一般門下生はこのナマモノを危険視していないし、ある種マスコット扱い。稽古が終わればもみくちゃにされるかわうそ?なのだ。可愛がられているというのだろうか?
 |Д゚) 撫で撫でされる♪
「では、護身剣を使う試合稽古を行う。護身剣を用意!」
 倉庫から、数人分の護身剣を取り出す。好みの握りの堅さなどを調べるのに時間がかかるものだ。
 その中で、さっさと剣を取り出した義明は真面目に素振り。撫子は調子を見て貰うため義明に向かう。
 ――隙間から何か痛い視線は感じるのは耐えておき。
「師範代、前の形のことですが……」
「一回やってみてください」
「こうする場合……こう足を……」
「まだ踏み込みが甘いですよ。軽く流すときでも踏み込み……足腰はしっかりしないと流してから突きを入れる時に勢いが落ちます。あと、血ぶりの形は思いっきり振らないと」
 と、レクチャーする。護身剣でするから木刀より軽いし事故を起こすことはない。
 このときの義明は撫子に対しての恋心など奥にやっており、まさに剣客として相応しい雰囲気を出している。一方撫子は、彼の声、たまに接触する身体にドギマギするしまつ。普通このときの義明は何故?と思うのだが……。
 今の義明は撫子が何を思っているか分かるのだ。
 ――さてどうしたものか……(義明の心の声)
 師範代としての考え方に切り替わっているためそうそう、赤面することはない。想いを少し戻して……。
「撫子さん」
「はい?」
「撫子さんとの試合に勝ったら、次の休みに付き合って頂けませんか?」
 義明の誘いに、頬を朱に染めながら、固まる撫子さん。
 反則と言えば反則だが、これ時しかチャンスはない。と勇気をだして義明が言ったのだ。
 ――因みに隙間から痛い視線は悲しみの視線に。
「あ、はい。わかりました!」
 思わず承諾。
 ――隙間からの視線は走りながら去っていく。気になったサポーターも追いかけていくが、心地よいハリセンの音と純真の霊木の笑う波動。
 

 ――ああ!どうしましょう!
 撫子さん苦悩。このままでは練習にもならない。おどおどしているのは皆から分かっている。もう其れを気にすることは出来ないほど、心臓はドキドキしている。義明クンを見ていられそうにないのも事実だ。
 それでも、稽古は続けられるのである。
 ――あうう、わたくしやはり義明くんのこと……(っぽ)
 試合どころではない。
 彼女の心理描写では、簡単に和服でも飛び越して行ける、地面の裂け目を渡れない感じで困っている。その先には本当に心を許せる、少年が笑顔で待っているのだ。
 ――愛しています。と微笑んで。
 (わたくしも、あなたのことが……ああ!)
 と、一人で苦しんでいる撫子さん。
 
 エルハンドとかわうそ?は既に“見切っている”ので何かしようとニヤニヤしていた。
「好きにするがいい」
|Д゚)ノ やた♪
 しかし、何をしでかす気なのか?

 心理描写内の撫子の世界。手を差し出す義明に戸惑う撫子。
「わたくしも……」
 しかし相変わらず、その一歩の裂け目が飛び越せない。彼の手を取って“むこうがわ”に行けるのは容易いはずだ。しかし、今まで恋を深く感じたことはなく考えたことがないのが彼女を臆病にさせてしまった。
 |Д゚) ふぁいとー! いっぱーつ!
 後ろから何時の間にやら乱入してきた“謎生物の代表”が撫子さんを蹴る。
 ――あ、ああ!
 裂け目に落ちそうな撫子さん。
 しかし、裂け目に落ちなかった。
 咄嗟に、さしのべられた手をとり、上手くその相手の胸に飛び込んだのだ。
 |Д゚)ノ おめでたうしー

 しかし、気がつくと、目の前で撫子さんは義明と抱きしめあっていた……。
「撫子さん」
「よ、義明くん? え?」
 心理描写世界は一瞬だったようだが、実時間は既に稽古が終わっていたようだ。
「俺、あなたのことを愛しています。付き合って下さい」
「は、はい……」
 純真の霊木は優しく2人を霊気で包んでいる。

 さて、試合の方は当然やる気140%な義明の勝利。因みに神格制御で一般の高校生並みの肉体能力にしてだ。幾たびの死線をくぐり抜ければ、彼に匹敵する有段者でも一本取れる。おまけに割り込み乱入参加した25歳男性ベストな肉体能力に置き換えても全く手を抜いていない師範のエルハンドも打ち負かす義明。もう完全勝利。撫子さんは心理描写世界との戦いで気が散っており、試合で負けて、気を失ってしまったのだ……。



 と言うわけで、撫子さんの待っている相手は天然剣客……否、天空剣師範代・織田義明。今では共に人生を歩んでいくパートナー。彼の姿が見えると彼女は微笑んで手を振った。
「遅れて御免なさい、撫子さん」
「いいですわ。待って居るのが楽しかったです」
 と、2人は微笑む。
 義明は何か大人びた感じになった。撫子は彼の精神的成長に惚れたのだろうか。
 
 ――|Д゚)その辺は秘密っつーことで。(と、陰で見ているナマモノ)

 2人の恋は成就された。しかし、2人の生きる道は厳しいだろう。撫子は退魔の“天薙”、義明は“神”となる道を進むのだから。


 ――終わりは次の始まり。



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生】

【NPC 織田・義昭 17 神聖都学園高校生・天空剣士師範代】
【NPC エルハンド・ダークライツ ? 男 正当神格保持者・天空剣士・大魔技】
【NPC かわうそ? 年齢性別不詳 かわうそ?】
※ほか視線を投げかけるハリセン娘などなど。


NPC座談会? と義明からのお話。
茜「ま、まけた〜」
|Д゚) くす
茜「なによー! あんたが!」
|Д゚) 心の中の想い人には勝てなかっただけー
エルハンド「うむ、久々に良いモノを見た」
茜「しくしく。こうなったら、蓮の間に保管している大吟醸全部飲んでやる!」
エルハンド「まて! そんなコトしたら私の楽しみが! それよりお前未成年だろ!」

義明「のどかな漫才(?)をしている茜とせんせーとナマモノは放っておき、お互いの気持ちが言えて良かったです。これからも撫子さんと共に歩いていきたいです。宜しくお願いします」(今までとは違った雰囲気のよっしー)