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<東京怪談・PCゲームノベル>


目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜

オープニング

 七人の犠牲者が出て、事件は一瞬の静寂を迎えた。
 ―…八人目の犠牲者は出ない、はずだったのだが…。
 七人目の犠牲者が出てから一週間、八人目の犠牲者が出た―…。
「ぐっ…」
 現場に向かった刑事の一人が遺体を見て、吐き出す。どんなに刑事歴の長い人間でもこの悲惨な現場を見たら吐き出してしまうのも無理はないだろう。
「吐くのは勝手だけど、現場を汚さないでね」
 叶は冷たく男の刑事に言うと、遺体の方へと足を進めた。
 殺され方は今までと同じ獣に食いちぎられたような殺され方。
 こんな異常な犯罪は今までにないため、同一犯と考えてもおかしくはないだろう。
「…だけど―…」
 今までと違うのは被害者が殺された場所。
 今までは人目につくような場所で殺されていたのだが、今回はあまり人が通らない樹海。間違えれば遺体は誰にも発見されない可能性だってあるのだ。
「…なんで今回はこんな場所に…」
 今までと何か違うのだろうか、叶はそう思いながら現場を後にした。


視点⇒柚木・シリル

 目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜

「八人目の犠牲者…。また夜白という少年の仕業なんでしょうか…」
 シリルは新聞をクシャと握りしめながら小さく呟く。一週間前にシリルは夜白という少年と出会った。その少年は人間と獣との合成獣を作り、人を襲わせていた。
 シリルも人狼のハーフなのでいくら作られたとはいえ同族をそんなひどい扱いするのは許せなかった。
「今回も夜白がしていることならば…止めるために樹海に行かなくては…」
 時計を見るとちょうど暗くなっていく時間帯で樹海に向かうにはいい時間だろう。
 シリルは上着を取って問題の樹海に向かう事にした。


「やっぱり、暗いですね」
 シリルはあれから一時間の時間をかけて樹海にやってきた。昼間でも薄暗いそこは夜になれば一層闇に包まれてシリルはゾクリと鳥肌がたつのを感じた。
「誰?」
 背後から声が聞こえたのと同時に背中に何か硬いモノがあてられた。それが拳銃だとシリルはすぐに理解した。
「…また、あなたなの?」
 気の抜けたような声で拳銃をホルダーになおす。月明かりが女性の姿を照らすと見覚えのある顔が浮かんできた。
「桃生、叶さん…?」
「あなたは…?私の名前をなんで知ってるのかしら…?」
 不審そうに叶がシリルを見るとあわててシリルは「それです」と指を指した。シリルの指の先にあるのは名前の書かれたプレートだった。桃生叶と確かに名前がかかれている。
「…あ」
「少し安心しました。こんな暗いところで一人はやっぱり怖いですから」
 それはシリルの本心だった。シリルを育てている義母は最近仕事のため家にいない事が多い。それは珍しい事ではないのだけれど、嫌な事件に関わっている今はそばにいてほしいと思ってしまう。だからまたお説教されるかもしれないとは思っていても叶と出会えたのは少しシリルに安心感を与えた。
「あれ?また来ちゃったんだ?おねーさん達」
 突然声がして、シリルは声のした方に視線を向ける。すると木の枝に体重を預けてこちらを見る夜白の姿があった。
「今回もあなたの仕業なんですか?」
 シリルは穏やかな口調で夜白に問いかける。夜白は「んー…」と暫く考え込んで「違うよ」と否定の言葉をシリルに投げ返した。
「俺がしたことじゃない、なぁ?みちる」
 夜白は横に視線をうつして話しかける。
「まぁな、今回はあたしがした事なんや」
 月の光に照らされて女性の姿が次第に見えてくる。そこにいたのは背中に大きく、そして真っ黒な翼を持つ女性だった。
「初めまして、お嬢さん。あたしは紫峰堂みちる。鳥の遺伝子を持ってるんよ。以後、お見知りおきを」
 みちると名乗った女性はわざとらしいお辞儀をしてみせる。
「私には貴方たちのしている事が理解できません、何のために…」
 シリルの言葉に反応したのはみちるの方だった。けたたましく笑いながらシリルの前に木の上から降りてきて立つ。
「ご立派なお言葉やな、泣けてくるわ、それと同時に…虫唾が走るわ。あんたみたいなイイコちゃんタイプってのは」
 ジャキ、と音をたててみちるは爪を伸ばしてシリルの首に当てる。
「このまま殺しちゃおうか、夜白」
「やめとけば。そっちのおねーさんに撃たれるんじゃない?」
 夜白は顎で叶の方を示す。叶は拳銃を構えてみちるをいつでも撃てるようにしていた。
「その子を離しなさい!でないと撃つわよ」
「へぇ、撃てるもんなら…」
「みちる、そいつは警察の人間だ。このまま殺したらヤバイんじゃない?」
 警察、その言葉を聞いてみちるを取り巻く空気がザワと音を立てて変わったような気がした。
「けい、さつ。あんた刑事なんだ?そぉ、だったら余計に殺したいわ」
 シリルに向けていた爪を叶に向けると「みちる!」と夜白の怒鳴る声が聞こえた。
「…分かった。じゃあな、刑事さんにお嬢さん。そやなぁ、これからのショーを楽しくするためにおもろい事を教えたるわ。実験は成功してるンや。意思を持つケモノは成功してるンや。敵はうちらだけじゃなくて意外と身近にいるかもしれへんで?」
 みちるは意味深な笑みと言葉を残して夜白と共にシリルと叶の前から姿を消した。
 姿を消す前に「プレゼント・フォーユー」と言って一体のケモノを残していった。残されたケモノは以前のような人の姿をしてはいなくライオンに翼が生えたようなものだった。
「下がっていなさい!」
 そう言うと同時に叶がケモノ目掛けて発砲した。ケモノはさらさらと砂のように消えていった。
「今回までにしたほうがいいわ。次は命をなくすわよ」
 叶が拳銃をホルダーに直しながらシリルに呟く。叶の言葉にシリルは「いいえ」と短く答えた。
「私と同類の人が事件を起こしているかもしれないんです」
 シリルは俯きがちに小さな声で呟く。
「そぅ、貴方のことだから無理にでも来るんでしょうね」
「…よろしければ被害者についてお聞かせ願えませんか?」
 そう問いかけてきたシリルに叶は手帳を取り出してシリルに渡した。
「最初の犠牲者は私の妹よ。それから殺された人間に関しても共通点は一切見られない。殺され方以外はね」
 そうですか、とシリルは答えて叶に手帳を返す。
 夜白とみちる、彼らとは争う以外に道はないのだろうか、それに―…。

 ―敵は身近に…

 みちるが言い残した言葉もシリルは気になっていた。まるで身近な人間が犯人だとでも言うようなその言葉…。
 この言葉の意味をシリルは後に知る事になる。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2409/柚木・シリル/女性/15歳/高校生

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■         ライター通信          ■
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柚木・シリル様>

いつもお世話になっております。瀬皇緋澄です。
今回は「目隠しの森」に発注をかけてくださいましてありがとうございます^^
「目隠しの森」はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと感じていただければ幸いです。
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

         −瀬皇緋澄