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Let's海水浴!
●オープニング
ある暑い日のことである。
――――プラントショップ『まきえ』関係者は、揃って海水浴へやってきていた。
「青い空!」
ビシィッ!と水着の上にパーカーを羽織った崎が空を指差して叫ぶ。
「白い雲!!」
それに倣うように、水着着用で、腹に耐水性の包帯を巻いて同じくパーカーを羽織った希望がふわふわと漂う雲を指差して叫ぶ。
「そして――――輝く太陽を映しだす水の鏡!!」
男物の水着にシャツを羽織った葉華が、嬉しそうに下を指差して叫ぶ。
「「「海だ――――――ッ!!!!!」」」
喜んで駆け出す3人の先には――――太陽の光を反射して輝く、海があった。
「3人とも…嬉しいのは解りますけど、気をつけてくださいね…?」
浜辺にパラソルを立てながら黒のワンピースの水着にパーカーを羽織ったまきえが苦笑気味に言うと、離れた所から『おー!』ときちんと聞いているのか怪しい返事が返ってくる。
「ふふ、若い者は元気でよいのぉ」
ピンクのパレオの水着を着て、前を開けたパーカーを着た櫻がくつくつと喉を鳴らして3人を見る。
髪はポニーテールにされていて、一応考慮してあるのか、桜色の髪は腰までの長さに揃えられていた。
「まぁ、元気なのはいいことなんですけどね…」
水着の上にやはりフード付きのパーカーを羽織った聡が、荷物を置きながら苦笑気味に頷く。
「―――あれ?そう言えば、ボブはどこに…?」
先ほどまでは一緒に車に乗っていたはずなのに…。
そう呟きながら辺りを見回す聡に、まきえは笑顔で頭上…パラソルを指差した。
「ボブなら…さっきからそこにいますよ…?」
「……え?」
きょとんとして聡が上を見上げるが、そこにあるのは黒いパラソルの内側だけ。
「母さん、黒いパラソルのどこにボブが…」
そこまでいったところで、聡ははっとして顔を青くした。
―――まさか。
頭の中を過ぎった嫌な予感を振り切って、聡は慌ててパラソルの外へ出る。
――――そこには。
「ぼっ…ボブッ!?」
布の部分を広げられた挙句しっかり骨組みを取り付けられ、見事にパラソル代わりにされた憐れなボブの姿が…。
心なしか表情が情けなく、今にも泣きそうな感じが…。
「か、母さん!!ボブを今すぐ降ろしてよ!!
普通のパラソル持ってきてるでしょ!?」
「それは勿論そうだけど…いいじゃない、そのままでも…」
「駄目です!!!」
「…そう…?」
どことなく不安そうな顔ながらも、まきえはボブを開放した。
そんな騒がしい面々を呆然とした顔で見ているしかなかった貴方達。
しかしそれに気づいた聡が、困ったように笑って振り返る。
「騒がしくてすみません。
まぁ、今日は手伝いしてくださったお礼ですから、たっぷり楽しんでいってくださいね?」
そういって微笑む聡に、貴方は笑ってこくりと頷く。
「聡ー!!今から希望たちとビーチバレーするから審判やってくれー!!」
「あ、はーい!今行きますー!!」
大きく手を振って聡を呼ぶ葉華。近くには希望、崎、櫻の姿もある。
その声に返事を返すと、聡は小さく会釈をして葉華達のいる方に向かって走り去って行った。
――――――さて、これからどうしようか?
●バイト求めて三千里?
プラントショップ店長のお招きで海へやってきたメンバーの一人であるシオン・レ・ハイ。
自由行動とばかりにいっきに散らばった面々の中、彼は真っ先に―――――海の家へ向かっていった。
何故海ではなく海の家か。
そして何故夏だというのにロングコートに身を包み、下には更に長袖長ズボンを着込み。しかも左手には皮手袋。
更にその上にエプロンを着、もう完全に夏と言う季節を無視しているとしか思えないほどの厚着をしてしまうほど完全装備なのか。
……本人曰く、
「レディの前で肌を晒すのはイヤンなんですよ」
…………だそうです。
まぁ、台詞んとこのアレコレはあえて追求せずに、彼は女性に肌を見せたくないのだと言うことで納得しておこう。
海の家に関しては…単にバイト先を探していたと言うのがおそらく一番合っているだろう。
きょろきょろと辺りを見回していると、『臨時バイト募集!』の張り紙があるのが目に入った。
そのまま一直線に入ったその海の家のオーナーは…どうやら女性のようだ。
外見から見た年齢はざっと40〜50の間ぐらいだろうか。随分と恰幅の良さそうなおばちゃんである。
「おや、どうしたんだい?そんな暑っ苦しい格好してさ」
おばちゃんはシオンの格好に最初は面食らったものの、すぐににっと年の割には白い歯を見せて笑う。
そんなおばちゃんに思わず笑い返しながらも、シオンはぐっと身体を乗り出した。
「あのっ!
店の前の張り紙を見たんですが…まだ、間に合いますかっ!?」
「―――は?」
その余りにも必死な叫びに、おばちゃんはきょとんとして暫し硬直。
「…ぷくくっ…あっはははははは!!!!」
…しかしすぐに口の端を歪めると、急に口を開けて大声で笑い出した。
「いやぁ、面白いねぇアンタ!気に入ったよ!!」
いまだに大声で笑いながらシオンの背中をばしばしと力を込めて叩くおばちゃん。
女だからって舐めちゃあいけない。
このおばちゃん、意外と力が強いご様子。
バシバシと一叩きする度にシオンが息を詰まらせる。
十回ほどされれば、見事に顔が青くなったシオンの出来上がりだ。
「…おや、大丈夫かい?顔色がよくないみたいだけど」
シオンの顔が青くなっていることにようやく気づいたおばちゃんが気遣わしげに声をかける。
…貴方のせいです、ときっぱりはっきり言えればどれだけ気が楽か。
とは言え流石に面と向かって言うのもなんなので、シオンは「大丈夫です…」と苦笑するだけに留めておいた。
そうかい?とやや心配そうに返したおばちゃんは、ぽん、とシオンの肩に手を置く。
「―――まぁ、事情は聞かないよ。どうせ一日限りの付き合いだしね。
働き次第によっては給料は引き上げるから、がんばんな!!」
あぁ、格好も無理に変えろとは言わないけど、きちんとエプロンはつけてもらうからね。
なんて冗談も交じえつつにかっと笑うおばちゃん。
その笑顔を見て、シオンは嬉しそうに頷くのだった。
***
そんなわけで、シオンがバイトを始めてから早一時間。
アルバイトに慣れているシオンが手間取る筈もなく。
中々の手際の良さと見た目の渋さに反する愛想のよさで、働き具合は上々だ。
「ほらシオン!カレーあがったよ!!」
「あ、はい!!」
おばちゃん(後で年齢を聞いたらなんと53なのだそうだ。元気なものだ)の声にシオンは返事を返すとカレーを運んでいく。
あっちにいったりこっちにいったり、中々忙しそうである。
そしてそんな中、一人の男が席についた。
真っ赤なアロハを引っ掛けて、下は黒の超ビキニパンツといういろんな意味で目立つ格好。
それ故か妙に目立つ男は周りの視線に全く気づかずに席につく。
その男とは――――高台寺・孔志。
今回のプラントショップにお礼で海水浴に誘われたメンバーの一人である。
そのことを思い出したシオンは、伝票片手に孔志に近寄っていく。
「―――ご注文は?」
近くに立って笑顔で声をかけると、孔志は何故か自分の腹辺りを暫し凝視し、その後顔を上げて……もう一回面食らったような表情で硬直した。
ぽかんとしたまま口を開けっぱなしの孔志を疑問に思いつつも、シオンはにっこり笑顔で伝票とペンを構えて孔志の言葉を待つ。
ほんの少しの間を空けた後、孔志は引き攣った笑顔を浮かべながらシオンに声をかけた。
「…えっと…シオンさん。なんで此処に?」
なんとなくいっぱいいっぱいな雰囲気が漂う問いかけ。
その問いかけに一瞬きょとんとしたシオンだったが、すぐににこりと微笑んでこう言った。
「なんでって…バイトですよ?」
当然といえば当然な返答。
その言葉に驚いたように目を白黒させた孔志だったが、すぐに笑顔で問いかけ直す。
「いや…そうじゃなく…。
俺が聞きたいのはなんで海水浴に来たはずなのにバイトしてるかってことで…」
眉間に固めた拳を当てながら途切れ途切れに呟く孔志に、シオンはあぁ、と呟いてから一段と爽やかな笑顔を浮かべてこう言った。
「―――――――ビンボーだからです!!!」
…しーん………。
笑顔のまま告げられたとんでもない台詞に、声が届く範囲にいた全てのモノが言葉を失った。
心なしか、「チーン…」と不吉な効果音までも…。
「…び、貧乏…?」
「はい、貧乏です!!」
胸を張って言われてしまえば、孔志はどうしていいかわからないような微妙な顔。
じーっとその姿を見つめていると、何故か後ろでぐすぐすと涙やら洟やらを啜るような音とか、「かわいそうに…」とか思いっきり哀れむような震えた声とかが耳に入ってくる。
シオンは固まった孔志を不思議そうに見ていたが、不意に彼がぷるぷると疲れたように人差し指を立てて持ち上げ、呟いた。
「―――――――――醤油ラーメン一つ。
それと、お冷やもよろしく」
「かしこまりました♪」
どこか疲れたように注文する孔志に笑顔で返し、シオンは伝票に書いて確認すると、身を翻す。
そしてそのままぱたぱたと小走りで店の奥へと歩き出した。
途中で、『少しだけだけど…足しにしてね…』なんて涙声のおばちゃんにお金を渡され(なんと諭吉さん一枚貰ってしまった)、『え、あ、ありがとう御座います…』と戸惑い気味に返すシオンの姿があったのは…まぁ、言うまでもないだろう。
●警戒警報!?鮫騒動!!―SIDE:S―
孔志の注文をおばちゃんに伝えた直後。
『疲れただろ?代わりの子が来たから一旦休むといいよ』とおばちゃんから言われ、シオンは『そうですね』と頷くとエプロンを脱いで海の家から出ることにした。
そして海の家から一歩出た途端―――――――。
「鮫だ――――――――――っ!!!!!!!!」
――――――男の大声が、耳に届いた。
「鮫ですかっ!?」
その声に瞬時に反応したのは、勿論シオンだ。
一見しただけでは驚いたように見える表情は、よく見てみるとどこか嬉しそうな色を含んでいるのが見て取れた。
シオンは叫ぶと同時に勢いよく走り出し、ブーツで砂浜を走りぬける。
巻き上げられた砂が中に入り込んで足がちくちくしたが、そんなことは知ったこっちゃない。
丁度通り道にいた日向ぼっこをしているボブを発見し、シオンはにやりと口元を歪める。
「行きますよボブさん!!」
『!?』
―――言うが早いかやるが早いか、問答無用でボブの布部分を鷲掴みにしたシオンは、そのまま真っ直ぐ足を動かす。
なんだかじたばたと嫌そうに暴れているようだが、それくらいじゃあシオンはビクともしない。
っていうかむしろ乗り物はイキがいい方がやりがいがある、ぐらいには思ってるかも。それはそれでちょっと怖いが。
そんなシオンは爆走モードで海に向かって走る、走る。
気づけば海は目の前だ。
「―――はっ!あそこに鮫に襲われかけてるレディあーんど少女がっ!!」
海で鮫に追われて大急ぎで岸に向かって水を掻いている人々を見て、シオンはそう叫んだ。
彼の視界には女性しか入るスペースがないようなので、男は完全無視の方向で。
「待っていて下さい!今私が助けに参りますっ!!」
そう言いながら大げさに腕を開いてみせるシオンの足の下には、どこか切なげな雰囲気を漂わせるボブが一匹(?)
しかしそんなことは一ミリほども気にかけず、シオンはボブに発進の命令を出した。
もうここまでくればボブも諦めた方がいいと判断したようで、仕方なくシオンを頭(カボチャ部分)の上に乗せたまま浮遊し出す。
ただし頭の上に人間(しかも成人男性がっしり型)を乗せているので、高度は低いし、速度は何時もより更に遅い。
ざばざば水を掻き分けてもボブ自体は水の中。
よって傍から見ればシオンが水の上に仁王立ちしたまま移動しているように見えるだろう。…想像してみれば相当怖い光景だ。
しかしシオンもボブもそんなことは気づいてすらいない。
ボブはひたすらとっとと終わらせたくて、シオンは早く少女と女性(熟女や老女も含むのだろうか…?)を助けたくて、周りの状況など一切目を向ける余裕も無いようだ。
―――そしてボブの頭の上に乗りながら、シオンは自分の幼少時代の事を思い出していた。
幼少時代…実はシオンは水が苦手だった。
飲むだけならどうってことないのだが、潜ったり顔をつけたりするだけでもとてつもなく勇気がいる行為だった記憶がある。
そしてそんなシオンの姿に怒りを覚えたのかそれとも単に心配したのか。
シオンの父親は――――――彼を、海に突き落とした。
それも、鮫がうようよいる危険度Aランクの海原へ。
その時の父親は、ものすごい笑顔で「寝る子は育つ」と言っていた。
…さりげなく何の関係もないコメント。これはあれか、「このまま海で永遠の眠りについて来い」とか言う遠まわしの死刑宣告か。
泳ぐとか泳がないとか以前に、むしろ鮫からどう逃げ延びるかの方が大変だったような気もする。
溺れて喰われるか根性で泳ぎを会得して逃げるか…ある意味究極の二択。
そしてシオンは―――無理やり水への苦手意識を克服するという結果を出したのである。
そりゃもう命がけの連続だった。
溺れかけるわ鮫が近づいてくるわ溺れかけるわ鮫が噛み付こうと口を開くわ溺れかけるわ鮫に喰われかけるわで。
…要するに溺れかけたり鮫に喰われかけたりしまくったのだ。
何とか泳ぎを会得した後も、あっちこっちの大海原に唐突に放り込まれ、生きて帰ってこなければならないと言うある意味強制イベントを幾度もさせられて。
気づけば自然と鮫と闘う術が体に染み込んでいた。
……よって、鮫狩りは彼にとってお手の物な行為でもあるのだ。
そこまで回想した所で、シオンはかっと目を見開いた。
「そして今こそいざ行かん!!レディを助けるための大海原の旅へ!!!!」
……関係あるんだかないんだか。
そう大きく叫ぶと、シオンはボブの頭を蹴って水の中へ飛び込んだ。
ザッパァン!!と大きく立ち上る水柱。
意外とそれなりに深いところまできていたおかげで底に頭を突っ込んで停止、なんて馬鹿くさい展開にはならずに済んだようだが、ある意味微妙である。色々と。
そして驚いた少女や女性達が一斉に視線を向けるのにあわせ、シオンは一気に動き出した。
思い切り水を掻き分け、泳ぐ、泳ぐ、泳ぐ!!
泳ぎ方がまるで鮫のようでかえって怖いとかいうツッコミは受け付けません!
『きゃあぁぁぁぁあああッ!?!?!?』
『うわぁぁああっ!?!?』
少女と女性達(+野郎共)の叫び声が上がる。
目の前には鮫とシオンの両方が迫っていようだが…彼(女)等の悲鳴の原因は、果たして鮫とシオンのどちらなのだろうか…。
「フ・カ・ヒ・レ――――――――ッ!!!!」
そう叫びながらシオンがバシャァッ!!とまるでイルカのように空高く舞い上がったその時。
「…貴様ら低俗な魚ごときがこの雪女の私を食べようと言うのか?
―――――身の程を知れ!!!!」
―――1人の少女のどこか時代劇がかった口調の声と同時に、シオンの記憶はぷつりと途切れたのだった。
***
「……ん?」
「あら、目が覚めましたか?」
光りの眩しさに目を細めながらシオンが起き上がると、目の前にはまきえのどアップが。
一瞬驚いてから起き上がると、ふと自分の周りに人が集まっていることに気がついた。
「ここは…」
何時の間にか浜に戻り、まきえ達が立てたパラソルの下で寝かされていたらしい。
不思議そうに声をあげるシオンに、急に一人の少女がやってきた。
―――彩峰・みどりである。
みどりはとことことシオンの目の前までやってくると、がばっと頭を下げた。
「―――――ごめんなさい!!!」
「…はい?」
いきなり頭を下げながら言われた言葉に、シオンは目を丸くする。
はて、自分は確かこの少女を助けようとした筈なのに何で自分が寝かされてて且つ唐突に謝られねばならぬのだろうか。
不思議そうに目を白黒させているシオンを見ておどおどと困った顔をしながら、みどりは指先をつんつん合わせながら呟いた。
「えっと…その…。
あまりにも鮫が怖くて…つい、雪女の力を…使っちゃって…」
鮫だけを凍らせたつもりだったんですけど…と申し訳なさそうに呟くみどりの姿を見て、シオンはようやく記憶がないことに合点がいった。
どうやら、みどりの力で氷付けになってしまっていたようだ。
あまりにも唐突だったため、此方も能力を使って抵抗する、と言う動作が間に合わなかったせいでシオンは見事に氷付けになったと。
確かに横を見てみれば、まだ凍ったままで溶けるには数時間かかりそうな鮫が置いてあるし、半凍傷になったと赤くなった腕を振って大騒ぎをしている男が数人いる。
…ちなみにその男達の背中には、鮫のヒレのようなおもちゃがくくりつけてあった。
後で話を聞いたところによると、女性を脅かすだけのつもりで、本物の鮫はてっきり誰かが鮫の着ぐるみでも着てやってるんじゃないかと思ってむしろ感心すらしていたとか。
……まったく、はた迷惑な話である。
「だから…その…本当にごめんなさい!!」
そう言って今にも土下座しそうな雰囲気を漂わせるみどりに、シオンは笑って彼女の肩を叩く。
そしてにっこりと微笑んで、こう言った。
「私は気にしていませんよ。
―――むしろ、貴方になにも無くてよかったと思うくらいです」
だから、そんなに落ち込まないで下さい。
そうエレガントに笑うシオンに、みどりも安心したように微笑んだ。
…ただし、体中からボタボタと水を垂らしている為、イマイチ決まってなかったのは…周りの者達の心の中だけの秘密である。
――――ちなみにその後。
野生(?)の勘で危険を察知していち早く逃げていたために氷付けの被害にあわなかったボブをモザイク必須の発禁モノの道具を振り回しつつ追いかける、シオンの姿があったとかなかったとか。
本人は『ボブ割りにチャレンジしただけですよ。ほら、食料だし』と言っていたが…本当にそれが本音なのかは、一切不明である。
●ビーチバレー大会参加決定?
昼も食べて一時を回った頃。
一同は唐突に微笑むまきえに呼ばれ、パラソルの場所で全員集合となった。
「なんでおいらたちが全員呼ばれたんだ?」
「…あぁ、そのことはですね…」
何故か終始にこにこと微笑んでいるまきえに首を傾げる一同だったが、不意にまきえが持ち上げたポスターのような紙により、その理由が明らかになる。
『―――――「ビーチバレー」大会???』
そこに書かれているのは、砂浜でネットを挟んで二人の人間がジャンプしている場面。
上のあおり文や題名を見る限り、どうやら一般開催の簡単なお遊び大会らしい。
「…これの優勝賞金と商品…なんと、10万とスイカ5個だそうなんです」
ぴくり。
なんだくだらない、と呆れて解散しかけた者たちも、まききえの言葉に耳をダンボにして足を止めた。
「どういうことですか?」
「…どうやら今年は人の入りがよくてお金に余裕があるそうなんです…。
……ですから、今年は更に、二位には二万とスイカ一つ、三位にも一万と海の家割引券三枚が賞金・商品としてあてがわれるそうで…」
ぴくぴくぴくっ。
更に続くまきえの言葉に、面々の肩が大きく動く。
――――なんて美味しい大会だろう。
「…これに皆さんで参加していただければ、きっと上位独占で…分けても皆様の懐も少々ですが潤ったりするのではないかと…」
『参加する(します)!!!!!!』
ぐっと拳を握ってやる気満々で叫ぶものが数人。
「なんか楽しそうだからやってみてもい?ノイ」
『好きにすればー?』
「私もなんだか楽しそうだからやってみたいです…」
「ふむ、ビーチバレーは初めてじゃな。よい経験になろう」
興味津々で参加を決意する者が四人。
「まぁ、やれって言われたらやるけどねー」
「結果は期待しない方がいいと思うけどなぁ…」
やや乗り気ではないものの参加をするつもりなのが二人。
――――そして。
「ビーチバレー?
……ダルい」
きっぱり切り捨てるのが―――1人。
ダルいと言い切った男は嘉神・真輝。
その言葉通り、顔中から『めんどクサ…』的なオーラが満ち溢れている。
「あら…」
どうしましょう、と困ったような声をあげるまきえ。
しかし、それはすぐに杞憂へと変わることになる。
「――――――なんじゃ、負けるのが怖いのか?」
一抜けたとばかりにぷかぷかと煙草をふかす真輝の前に立ってにやりと笑ったのは…櫻。
「…は?」
その言葉に眉を寄せ、真輝はぎろりと櫻を睨みつける。
しかし櫻の不敵な表情はぴくりともせず、むしろ挑発するようににやにやと笑う。
しかもまるで追い討ちをかけるように、更に希望が櫻の隣に立ってにやりと笑って口を開いた。
「優勝できる自信がないから逃げるんだろ?」
「なっ…!
んなワケねぇだろ!?」
言われた言葉に顔を怒りに染め、真輝は反論するが二人はどこ吹く風。
「どうだかのぉ?」
「言い訳なんていくらでもできるしねぇ?」
失礼この上ない二人の言葉に―――真輝は、ついにキレた。
がばっと立ち上がり、ふんぞり返るように胸に片手の平を当てて声を上げる。
「俺は運動は全般そこそこ得意だ!!」
「えー。そう言われても確証ないしー」
「左様。口で言うだけならなんでもできるからのぉ」
怒って言っても二人は疑いのまなざしを引っ込めない。
それに焦れた真輝は―――ついに、声高に宣言した。
「―――やればいいんだろ、やればっ!!!!」
生来負けず嫌いの性分の自分が、まるで負け犬みたいな扱いをされるなんて我慢できん。
半分自棄気味に言われた言葉に、櫻と希望はにやりと笑い合い、くるりと身体を半回転。
「まきえ、真輝のヤツも参加すると言うたぞ」
「これで全員参加だな♪」
「…えぇ…ありがとうございます…」
二人の言葉ににっこり返すまきえを見て…ようやく、真輝ははめられていたことに気づく。
「…そういうことかよ…」
他のメンバー達からどこか生暖かい視線を受けつつ、真輝はがくりと肩を落とすのだった。
***
全員参加することが決まったので、まずは二人一組に分かれねばならない。
その旨を伝えると、何時の間に作っていたのか、まきえの手には複数の紙くじが握られていた。
準備万端だな…なんてぼやく人物の言葉をさらっと無視し、まきえは皆にくじを引くように指示をする。
紙の先が同じ色に塗られていたらペア決定。
簡単な分け方に納得しながら、全員はせーの、と言う掛け声と共に一斉に掴んだ紙の端を引っ張った。
―――――その結果は、以下の通りである。
A−嘉神・真輝&櫻(W女王ペア)
B−高台寺・孔志&秘獏・崎(花屋と中学生(略して花中)ペア)
C−シオン・レ・ハイ&山川・まきえ(熟年ペア)
D−夏野・影踏&山川・聡(狩人と獲物ペア)
E−如月・縁樹&緋睡・希望(素性不明ペア)
F−彩峰・みどり&葉華(精神的大人と子供(略して大小)ペア)
なんていうか…こう、一部のペアに何者かの作為が見え隠れするような…偶然のはずなのに何故なのか…。
ちなみに()内は登録時にまきえが適当に決めたペア名なので、深くは考えないように。
…と言うか既にブーイングが発生している所もあるが、そこんとは黙殺の方向で。
「ふふ…きちんとやってくれるのであろうな?」
「当たり前だ!出るからには勝つ!!」
「よっしゃ、出るからには目指すは優勝だー!!」
「おうよ!でも俺的には賞金ゲット出来れば別に何位でもいいんだけどね!!」
「…ご一緒に…頑張りましょうね…?」
「えぇ、優勝目指して頑張りましょう!」
「さ・と・し〜vv俺たちはやっぱり離れられない運命なんだな!!」
「うぅ…なんでこんなことに…」
「頑張りましょうね!」
「まぁ、ぼちぼち頑張ってやろうねー」
『……やる気あるの?』
「葉華君、一緒に頑張ろうね!」
「まぁ、怪我しない程度に楽しもうな」
各ペア様々な会話がなされているが、とりあえずは大会に参加する気なので問題はない。
――――そんなわけで、ビーチバレー大会が開催されるのである。
●準々決勝!花中ペアVS熟年ペア編
一回戦、二回戦と意外と簡単に勝ち進めた全チーム。
今までメンバーのペアは全て別の所にいたので当たることはなかった。
が、三回戦…準々決勝になったところで、ついに知り合い同士で当たりだした。
二番目に戦うことになったのは、孔志と崎のペアと、シオンとまきえのペアだ。
「よっしゃぁ、勝つぞー!!」
「おう!目に物見せられてやろうぜ、アンドレ!!!!」
「オーケー!オスカル!!」
わけの分からない会話をしつつ、変な呼称を言い合う二人。
ちなみに孔志がオスカルで、崎がアンドレである。
なんかと言うと、花屋→花と言ったらバラ!(この時点で既に不思議)→バラと言ったら『ベル薔薇』!!→ベル薔薇と言ったらオスカル!!→でもそのまんまじゃつまらないからアンドレで。と言う感じで決まった孔志のあだ名に、孔志が便乗して遊んでるだけなのである。
何と言うか…ノリがいいというのは、こう言う時に便利なものである。
「さぁ、まきえさん、一緒に頑張って優勝をもぎ取りましょう!」
「…はい…頑張りましょうね…?」
にっこりと微笑み合うのは余裕すら見える流石と言った感じの熟年ペア。
…と言うか、むしろ余裕を見せてしまうくらいシオンや周りの人々にとって予想外だったのは…やはり、ひとえにまきえの怪力のおかげだろう。
この痩身の女性が数十kgの荷物を片手で軽々と持ち上げられるような怪力だと、誰が思うだろう。
まぁ、その油断を利用する形でまきえが強烈なアタックを決めたため、相手の戦意喪失と言う結果を招けたとも言えるのだが。
――――そして、試合開始のホイッスルが鳴る。
***
「まきえさんっ!」
「任せてください!!シオンさんっ!」
「はいっ!!」
崎のアタックをレシーブしたシオンの声に答え、まきえがトスをあげる。
そしてそれを高く飛び上がったシオンが、強く叩いてスパイクを叩き込む。
「甘いっ!!」
「行けっ、アンドレッ!!」
「任せろオスカルッ!!
俺のスマッシュを受けてみやがれ!!!」
―――――バァンッ!!!!
わぁっ!!!
ちょっと間違っている孔志の台詞と共に、崎のトスによって上げられたボールが孔志の強烈なスパイクでまきえとシオンのコートに見事に叩き込まれた。
上がる歓声に、孔志と崎は手を叩きあう。
「よっしゃあ!やったぜオスカル!!」
「おう!ナイスだアンドレ!!」
二人で笑い合ったところで、がばっと孔志が崎に抱きつく。
「うおっ!?」
「勝利の喜びを表すスキンシップさオスカル♪」
「おお、そうだったのかアンドレ!!」
驚く崎にワケの分からん理由を言う孔志に、それにあっさり納得する崎。
後方から『抱きつくなら俺にー!!』『夏野さん、大人しくしてて下さい!!』と言う会話が聞こえてきたが、多分聞かなかったことにした方がいいだろう。
そして抱きしめあった後離れた孔志は、シオンとまきえに向かうと、不敵に笑う。
「…伊達に毎日花の水を持ち運んでるわけじゃないんだぜ?」
そう言って手首を叩くように捻ってみせると、シオンとまきえが小さく苦笑した。
自信満々な孔志を見ながら、二人はこっそりと口を開き。
「なんだか、悔しいですね」
「…えぇ…今度は、点を取り返してやりましょう…?」
などと、静かな会話が成されていたり。
…そして、試合再開。
今度はまきえ達のサーブである。
今回は公平を規すため、片方が二回サーブを打ったら、今度は相手側が二回サーブを打つ、と言うように交互制になっているのだ。
なので、まきえがボールを掌に乗せ、サーブの体勢をとる。
「…いきますよ…?」
ピッ、と審判が笛を吹く音と同時に、まきえはゆっくりとボールを放り投げた。
放り投げられたボールは軌跡を描き、まきえの元へと落ちてくる。
そしてまきえはゆっくりともう片方の手を掲げると―――思い切りボールに打ちつけた!!
バァンッ!!!ビュンッ!!…ブチィッ!!!!!―――ゴッ。
『……あ』
「…あら…?」
ボールに手の平が強く叩きつけられた音。
……ミスサーブだったようでそのボールが勢いよくネットをブチ破る音。
――――そして、鈍い衝突音。
…どさっ。
…鈍い衝突音の発生源は、孔志。
無言のまま顔にボールを半分めり込ませ、直立のままで真っ直ぐに地面に倒れ付した。
「アンドレッ!?」
崎が孔志のことを呼びながら駆け寄り、抱き起こす。
顔に見事にボールの後をつけた砂まみれの孔志は、ぷるぷると震える手を持ち上げ、小さく笑った。
「オスカル…俺は、もう、ダメ…だ…」
そこまで言うと、がくりと顔を落とし、手がぼとりと地面に落ちる。
「ッ!!…アンドレ――――――――ッ!!!!!!」
まるでベル薔薇のオスカルよろしく思い切り叫んだ崎。
その様子を見て戸惑う皆。
そんな中、審判は必死に平静を装い、ゆっくりと片手を上げた。
「…花中ペア、試合続行不可能により、失格…」
「…あらあら…勝ってしまいましたね…」
「勝ったって言ってもいいんですか?これ…」
「…でも、一応不慮の事故ですし…」
「まぁ、運も実力のうち、と言うことでしょうか…」
未だにオスカルになりきってるのか叫びまくる崎を他所に、シオンは苦笑交じりに、まきえは笑顔で話をするのだった。
――――――熟年ペア、準決勝進出。
●準決勝!大小ペアVS熟年ペア編
一回戦、二回戦と意外と簡単に勝ち進めた全チーム。
三回戦…準々決勝になったところで、ついに知り合い同士で当たりだし。
そして勝ち進んだ者たち…と言うか知り合い同士のメンバーで、準決勝が行われることになった。
先に戦うことになったのは、みどりと葉華のペアと、シオンとまきえのペアだ。
「…か、勝ち進んじゃったね…」
「おいらもまさか準決まで来るとは思わなかったかも…」
準決勝に来たことで緊張を浮かべるみどりと、意外な戦果に苦笑する葉華。
確かに誰もがこんな展開になるとは思っていなかっただろう。
参加者中最軽量を誇るペアなのだ。それがここまで勝ち上がるなど…誰が想像するものか。
「と、とにかく、一緒に頑張ろうね!」
「あぁ、こうなったらいけるトコまで行ってやろうぜ!」
そう言って気合を入れなおす二人は…本人達には悪いが、どこかほのぼのした空気が流れていた。
「…あら、今度は葉華と戦うのね…」
「準決勝まで来たからには、このまま勝ち進みたいのが本音ですね」
「…えぇ、本当に…」
熟年ペアはのんびりしたまま笑いあっていて、やっぱり大人の余裕満々、って感じだ。
「…今度は、不慮の事故が起こらないように…気をつけなくてはいけませんね…」
「流石に小さな子達に直撃させるのはしのびないですからね。
気をつけましょう」
前回の試合での教訓を元にした会話がなされたが…それは、充分に物騒な会話ととれるものだったりするのだった…。
――――そして、試合開始のホイッスルが鳴る。
***
「シオンさんっ!」
「はい、いきますっ!!」
バァンッ!!!!!
わぁっ!
まきえのトスをシオンが見事にコートに叩き落すと、歓声が沸きあがった。
「…やりましたね、シオンさん…」
「はい、まきえさんのトスのおかげです!」
「…いいえ…シオンさんがお上手なおかげです…」
にっこりと微笑みあう熟年ペアはやはり威厳が漂っているような漂ってないような…。
「ごめん葉華君っ」
「平気平気、次は点取り返してこ?」
「うんっ」
大小ペアは早くも次に対する気合を入れなおしているようだ。
…このペアの戦い、先ほどから一進一退の攻防が続いていた。
相手が1点取ればこちらも1点取り返す。
そんな感じで進んでいるので、既にほとんど点取り合戦状態になっていたりする。
―――そして、今度は熟年ペア側のサーブだ。
まきえがボールを掌に乗せ、サーブの体勢をとる。
「…いきますよ…?」
ピッ、と審判が笛を吹く音と同時に、まきえはゆっくりとボールを放り投げた。
放り投げられたボールは軌跡を描き、まきえの元へと落ちてくる。
――――― 一瞬、観客達の頭の中で『デジャヴ』が発生した。
まるで、またあの惨劇が発生するかのような…。
そしてまきえはゆっくりともう片方の手を掲げると―――思い切りボールに打ちつけた!!
バァンッ!!!ビュンッ!!―――ゴッ。
『……あ』
「…あら…?」
ボールに手の平が強く叩きつけられた音。
……ミスサーブだったようでそのボールが勢いよく何かぶつかる、鈍い衝突音。
…どさっ。
今度の鈍い衝突音の発生は――――シオン。
どうやら今度はまきえのサーブがシオンの後ろ頭に直撃したらしい。
「…あらあら…シオンさん、大丈夫ですか…?」
偶然の産物パート2。
しかもまきえには一切悪びれた様子がない辺り、逆に怖い。
ちなみにシオンは、完全にのびている。
まぁ、まきえの怪力サーブを至近距離で後ろ頭に食らったのに、気絶だけで済んだのはむしろ運がいい方だろう。
「…駄目なようですね…」
まきえは伸びたシオンを見てぽつりと呟くと、自分よりも大きな彼の身体を軽々と担ぎ上げ、さっさとコートを去っていった。
――――――――暫しの沈黙。
「…じゅ、熟年ペアの試合続行不可能、および試合放棄により、大小ペアの勝利!!!」
審判が引き攣った勝利宣言を上げると同時に、またもや半ば無理やりテンションを上げるように観客達が大声で歓声をあげた。
「…えーっと…?」
「……まぁ、あれだ…また、運が良かったってことだろ?」
「うーん…それで片付けていいのかなぁ…?」
「あー…うん、まぁ…いいんじゃないの?」
これにはみどりも葉華も、戸惑った声を上げてしまうのだった。
――――――大小ペア、決勝進出。
●帰りは安全運転で(何)
ビーチバレー大会が終わった後、そのまま表彰式になった。
ちなみに順位は以下の通りである。
1位:大小ペア
2位:W女王ペア
3位:素性不明ペア(熟年ペアは片割れ(シオン)が戦闘不能の為3位決定戦は行われなかった)
まきえの希望通り、見事に上位を知り合いのメンバーが独占した状態になったのだ。
いやぁ、めでたいめでたい。
…ちなみに商品のスイカのうち三つは、その場で切って皆で祝杯代わりに食べました。
残りの三つは半分にしてラップに巻き、全員に手渡されましたよ。
――――そして、そのまま日が暮れて夕方。
一行はプラントショップのキャンプカー(10人+二体が乗っても充分余裕があるくらいには広い)に乗って、帰り道を走っていた。
「楽しかったですね」
『まぁ、悪くはなかったね』
「アンドレ、生きていてくれたんだね!!」
「勿論さオスカル!君を置いて死んだりはしないさ!!」
「あぁ、バイト代も沢山もらえたし…これで少し貯蓄が出来ます…」
「よかったですね、シオンさん」
「あー、それにしても幸せだったなーv聡の膝ま…」
「わーっ!!余計なこと言わないでくださいっ!!!」
「黙ってたってバレバレなのに…」
「だよなー?」
動きすぎてすっかり疲れた人間とか、バイト代を貰ってほくほくな人とか、まだまだ体力有り余ってる人とか。
皆すっかり海水浴を満喫した様子。
――――しかし、そんな中でも地獄を味わった人がいるようで。
「くっ…!!!」
上着を脱いで腕を抑えているのは―――真輝。
抑えられている彼の腕は、焼けて黒く…とかじゃなく。
まるで火傷のように真っ赤になってしまっていた。
「…やっぱり日焼けで赤くなってるし…」
…彼の肌はマトモな紫外線対策もしないで思い切り夏の太陽に照らされ、日焼けをせずに真っ赤になっただけになってしまったのだ。
ヒリヒリと痛む腕を抑え、真輝は身悶えていた。
「うわっ、すっげー…真っ赤だよ」
真輝の肌を見て興味津々の葉華は、真っ赤な腕をぺたりと触る。
「いっ…!
っだー!葉華触るなっ!痛いだろーがっ!!!」
その痛みに涙目になりながら、真輝は葉華の手を振り払う。
「えー…ちぇっ」
残念そうにしながらも、葉華は大人しく手を引っ込める。
「くく…なさけないのぉ…」
何時の間にか普段の着物姿に戻った櫻が口元に扇を当てながら笑うと、真輝がぎろりと睨みつける。
しかし櫻がものともしないのを見ると、がくりと肩を落として疲れたように呟いた。
「大体なー…
お前ら植物系なのに、なんでこの日差しで平気なんだよ…信じらんねー」
真輝のそのぼやきに、葉華と櫻は顔を見合わせるとなんとでもないように口を開く。
「おいらやボブの身体の細胞にはサボテンも混ざってるから、暑くても平気だし」
「わしは元々精神の塊のようなものじゃからのぉ。
日差しなんぞあってないようなものじゃ」
「…そーかよ…」
さらっと言われた言葉に、真輝はがくりと肩を落とす。
「…ふふ…。
……機会がありましたら、またご一緒に海水浴に参りましょうね…?」
運転しながら微笑むまきえの言葉に全員が頷いたかどうかは…一行だけの秘密である。
終。
●●登場人物(この物語に登場した人物の一覧)●●
【1431/如月・縁樹/女/19歳/旅人】
【2227/嘉神・真輝/男/24歳/神聖都学園高等部教師(家庭科)】
【2309/夏野・影踏/男/22歳/栄養士】
【2936/高台寺・孔志/男/27歳/花屋】
【3057/彩峰・みどり/女/17歳/女優兼女子高生】
【3356/シオン・レ・ハイ/男/42歳/びんぼーにん】
【NPC/山川・まきえ/女/38歳/プラントショップ『まきえ』店長】
【NPC/山川・聡/男/18歳/プラントショップ『まきえ』店員】
【NPC/ボブ/無性別/1歳/「危険な温室」管理役】
【NPC/緋睡・希望/男/18歳/召喚術師&神憑き】
【NPC/葉華/両性/6歳/植物人間】
【NPC/秘獏・崎/男/15歳/中学生】
【NPC/櫻/女(無性…?)/999歳/精霊】
○○ライター通信○○
大変お待たせいたしまして申し訳御座いません(汗)異界第十弾、「Let's海水浴!」をお届けします。 …いかがだったでしょうか?
今回は全開にも増して個別9:共通1の割合で書いてますので、個別シーンが果てしなく大量です(ぇ)
自分のキャラが他の人のノベルに出てる、なんてこともありますので他の人の物も見て探してみるのも中々面白いかもしれません。
今回の〆直前は真輝さんと櫻・葉華の独断場となりましたが、そこはどうかお許し下さい(汗)
…ところで、誰がどの台詞を言ってるかわかりますか…?(爆)
ちょっと人によって長さがまちまちですが、ご容赦くださいませ(土下座)
なにはともあれ、どうぞこれからも愉快なNPC達のことをよろしくお願い致します(ぺこり)
シオン様:ご参加、どうも有難う御座いました。
えー…散々な目にあわせてしまって申し訳御座いませんでした!(土下座)
上手く壊せたかどうかが不安です…いかがでしたでしょうか?
貧乏キャラと言うことでその辺りを楽しんで書かせていただきました!
また参加して下った方も、初参加の方も、この話への参加、どうも有難う御座いました☆
色々と至らないところもあると思いますが、楽しんでいただけたなら幸いです。
それでは、またお会いできることを願って。
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