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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


冷たい手

------<オープニング>--------------------------------------

 纏わり着くような熱気が体を覆う。
 秋山達也はぬるい息と共に、寝返った。
 体中が汗ばみ気持ち悪かった。冷たい場所を探して、足先が布団の上を弄り滑る。しかしそんな場所があるはずもなく、体がどんどん火照っていくのは止められない。
 カーテンの向こうでブーンと車が走り抜けていく音がする。
 達也は小さく舌打ちして、クーラーもない部屋を呪った。
 薄っすらと瞳をあける。真っ暗闇だった。けれど暫くして瞳が慣れると、部屋の壁の輪郭が薄っすらと浮かび上がった。
 熱帯夜。こんな夜は眠いのに眠られない。そんなチグハグな体の欲求に、頭は冴えて苛々する。
 達也は寝るのを諦めた。気分転換にベットに転がるテレビのリモコンを探し出し、電源ボタンを押す。ベットの横に置いてあるテレビ画面からばっと光が溢れた。
 眩しさに目を細めながらチャンネルを変えていく。洋画にアニメにバラエティ。歌番組。
 興味を引くような内容の番組も特になく、CMに入ったところで達也はふとテレビから視線を逸らせた。深い意味はなかった。ただ、ふと。
 そしてそれを見つけた。
 それはベットの端でコソコソと蠢いていた。
 自分が見たそれが信じられなくて、達也は呆然とした。
 手。人の手だ。
 手首から先が全くないその手は、しかし正しく人の手だった。マネキン人形のようでもあるが、マネキンの手は動かない。それにこの手には妙な生々しさがあった。
 硬直する達也の前でコソコソと動いていた手は、ふと達也を認識したように爪をこちらに向け静止する。
 達也はどうすることも出来ないでいた。驚きに体が竦み、耳だけがテレビの雑音を聞き流している。
 それはコソコソとまた動き出した。指を足のように動かし進む。
 ペトリとそれが達也の足に触れた。その瞬間、体がビクリと飛び跳ねた。
 それはとても冷たかった。



「いやもうなんつーか。俺今、本当にそういうのやってないから」
 久坂洋輔は携帯に向かい、ウンザリした声を上げた。
 カーテンのない窓から容赦ない夏の日差しが差し込んでいる。寝る以外に帰ることのないアパートに、カーテンは不要と思ってつけなかったのだ。しかし今は少し後悔している。カーテンはやっぱり必要だ。
 洋輔は電話の向こうから聞こえてくる声にいい加減な返事を返しながら、バタリとそこに寝転がった。
 京都に戻ってきてからというもの昔の友人や仲間やその連れが、自分が少し前まで興信所でアルバイトをしていたことをドコからか聞きつけ何かと電話を鳴らしてくる。
 今度は高校時代の友人だった。
「頼むよ。こういうので動けるのお前しか居ないじゃん。昔さぁ。良く喧嘩の仲裁とかさぁ。やってくれてたじゃんさ。強ぇし」
「金払ってどっかに頼めよ」
「事情が違うんだよ……なんつーか。ちょっと変なんだ。手が、さ」
「手?」
「たぶん。人の手みたいなんだけど。手首から先がねぇんだってさ。しかもそれが動いてんだってさ。冷たい手。別に今ンとこ悪さをするわけでもないからあれなんだけど。気味悪いだろ。調べて欲しいんだよ」
 フーンと洋輔はまたいい加減な返事を漏らした。
「ねぇ。あのさ。そいつなんかやばいクスリでも打ってんじゃねーの。っていうか俺、超能力とか霊感とか本当悪いけど全然ないよ」
「分かってるけど……トラブルつって思い浮かぶのお前ぇしか居ねぇしさ。しかも……そいつだけじゃないんだよ。その手を見てるの」
 怪奇事件発生。
 洋輔は小さく、溜め息をついた。

------------------------------------------------------------


001



「どうぞ」という声がした。それはとても冷たい声だ。
 彼はいつも素っ気無い。何か怒っているのか、と問い返したくなるような、そんな声と表情で話をする。
 浅海忠志は、ドア越しに流れてくるシャワーの音に小首をかしげながら、「いいんですか?」とわざわざ大声でもう一度確認を取った。
「だから……どうぞ? 言いませんでしたっけ」失笑交じりの声が言う。
 けれど、何か怒っているのか。実際そう問い返せたことはない。
 どうせ、こんな風に馬鹿にされるか、意地の悪い笑みを浮かべて嫌味を吐かれるだけなのだから。そう思うと、踏み込めない。
 浅海は溜め息を吐いてドアを開けた。
 素足が見えた。細い、けれど妙に色気のある肉のつき方をした、素足とふくろはぎがあった。
 流れ出た水が排水溝へ向け、渦を作っている。
 無意識に視線は上がっていた。濡れた腿、引き締まった腰、平らな胸、程好く筋肉の張った、けれど細い、腕。いつもはきっちりと結わえられている金髪の髪は、下ろされ肩にかかっていた。それは、妙に淫らだった。
「なに開けてるんですか」
 目が。合った。
 モーリス・ラジアルが冷たい声で言った。
「ど。どうぞって言ったじゃないですか!」
 言ってハッとした。慌てて扉を閉めた。体を翻して背中を預けた。心臓がドキドキとしていた。
「どうぞっていうのは」
 シャワーブースの中からくぐもった声がした。コックを捻る音がして、水の流れる音が止む。
 ドアのノブが上下した。中から加えられる力を背中に感じた。
「閉じ込める気ですか。出れません」また、冷たい声が言う。
「ああ」浅海は慌ててその場から離れた。ついでに脱衣所からも出る。「すみません」扉を閉めてから、ドア越しに言った。
「どうぞというのは。何が用があるならどうぞ言って下さいということです」扉の向こうが言う。
 扉越しに頭を抱えた。
 そうか。そうか。
 確かに。
 浅海はうな垂れる。
 確かに、あの場合の「どうぞ」は、何か用があるならどうぞ言って下さいの「どうぞ」だ。それなのに扉を開けてしまうとはなんと間抜けであろうか。
 責められて当然、である。
「すみませんでした」
 脱衣所の扉が開く。バスローブ姿で出て来たモーリスは、髪をゴムで乱雑に纏め上げていた。筋張った、白い首筋が露わになっている。
「それで。結局何の用だったんですか。まさか」モーリスは唇をつり上げる。冷たい、意地の悪い微笑。あぁ、何か嫌味が来るぞ。そう、思った。「私の裸でも覗きに来ましたか」
 脱力した。
「違います」呟くように答える。それからそう言われて当然のような行動を自分が取っていたことに、頭を抱えたくなった。「主人が。お呼びですよ」
 恥かしさが込み上げてくるのを押し込むように言った。
「それは。わざわざどうも」部屋に入って行くモーリスに続く。ベットに腰掛けたモーリスは「でも。知ってましたけど」と言ってベットサイドに置かれた四段ラックからドライヤーを取り出した。
「知ってるのも知ってます」浅海は憮然と答える。主人、セレスティ・カーニンガムが彼を呼べば、どんな場所であろうとモーリスは突如として現れる。どういう仕組みになっているのかは今でもわからないが、とにかくそうなのだ。
 いつでも、驚かずにはいられない。突然現れ、突然声を発するのだ。身構えて、来るぞ来るぞ、と思ったらもっとびっくりする。だから最近では、素直にびっくりすることにしている。「でもだからこそ。知ってる貴方が来ないのを主人が心配して、ですね」
「お風呂に入っている時くらいは仕方ない」モーリスが鼻を鳴らした。「だいたい。主人は知ってると思いますけど。私が、風呂に入っていることくらい。だいたい。私と主人がどれくらい一緒に居ると思ってるんですか? 来ない時は風呂だなんだと彼だって思いますよ」
「なら」拗ねたような声が出た。「どうして僕を」
「からかわれたんじゃないんですか」
 頭を抱えたくなった。人間不信に陥ってしまったらごめんなさい、と思った。
 そんな浅海を、モーリスは人を小馬鹿にしたような顔で見つめてくる。
「なんですか」
「やりたくなったんでしょうか」おはようを言うように素っ気無く、モーリスが言う。一瞬、何を言われたか分からず静止してしまった。けれどすぐに、驚いて目を見開く。
「な。ななななな。なりません!」
「そうですか。いつまでもそんな目で私を見ているからてっきりそうなのかと思いましたよ」
 どんな目だ、と思った。
「ま。とにかく分かったならいつまで居るつもりですか。と言いたいんですがね、結局のところは」
 地団駄を踏みたくなった。
「とにかく。呼んでらっしゃるんで。すぐに来て下さい! 来客なんです。ケーナズさんが来られて……だからとにかく。来て下さい」
 強引に話を纏めた。部屋を出た。主人には「連れて来て下さいね」と言われたが、もう駄目だ。
 溜め息が出た。疲れた、と思った。


Ж


 どうしても。君を他の男になんて触れさせたくはない。

 唐突に、昼間見た洋画のセリフを思い出した。
 ユウは、スポンジから溢れる泡を見つめながら、そのセリフを言った俳優は誰だっただろうかと考えた。見覚えのある顔は、けれど何処で見たかも思い出せない。有名な映画の脇役だったかも知れない。けれど、中々良い男だった。

 愛しているんだ。君じゃなきゃ駄目なんだ。他の誰かなんて、頭にないんだ!

 また、その俳優のセリフを思い出した。その後その俳優は、米国人イメージピッタリのグラマーな女優とキスをした。
 三流恋愛映画だった。愛し合う二人に波風が立ったり、男がとってもプレイボーイだったり、試練があったり、そして二人はやっぱり愛し合っているのだと気付くとか。良くある話で。
 けれど人は、時としてそういう良くある話から目を逸らせない時がある。
 ドラマの中では良くある話でも、現実にはそうそう、ないからだ。
 ユウはそれを、テレビに取り付けられた衛星放送の有料チャンネルで見た。一般放送に飽き、有料チャンネルに切り替えたのだが、テレビリモコンをグチャグチャと動かしていたらその映画に行き着いた。
 見るつもりはなかった。
 けれど。
 結局、最後まで見ている自分が居た。
 熱烈なキスシーン。そのワンシーンが頭から離れない。男が嫌がる女を無理矢理抱き寄せるシーンだ。放して! と言う彼女と。好きだ、という男。
 実はその前に、男が違う女と居る所を女が見たもんで、しかも女がまたあてつけのように他の男と抱き合ってる場面を男が見てしまったもんで、そういう修羅場的展開になったのだが、男が、そうやって真実の愛に気付いていく姿は嫌いではない。見ていて、もっと男を虐めろ。むしろ、土下座でもさせちゃえ、もうちょっと引っ張れ、逃げ回れ女! などと思い、ワクワクした。
 そういう自分は今まで知らなかったので、妙にそうか僕ってこういうの好きなんだ、と思った。
「手が止まってる」
 不意にくぐもった声が耳をつき、ユウはハッとした。
「ヤル気がないならもう上がりなさい。というか。出なさい。窮屈だ」ケーナズ・ルクセンブルクが鏡越しに言った。
 ユウも鏡越しにケーナズを見る。青い瞳は、曇ったガラスに映り水色に見えた。「そんなことないよ。折角なんだから、いいじゃない」慌てて言う。また、スポンジを上下に動かす。
 ケーナズの背中は広かった。服を着ている時はそれほど立派な体だとは思わず細身に感じるのだが、脱ぐとスゴイんです。というやつだ。筋肉のついた腕、厚い胸板。引き締まったふくろはぎ、腹、腰。
 うっとりとする。
「それで、さ」ユウは腕に落ちてきた袖をめくり直しながら言った。「あのォ」
「なるほどな」ケーナズが遮った。え、と思わず問い返す。
「急に背中を流すなんていうから。何か企んでるんだろうとは思ったが」彼のついた溜め息が、風呂場に響く。「なんなんだ」
 その言葉に、溜め息をつきたいのはこっちだ、と思った。僕=悪い奴みたいな、そういう展開はそろそろやめて欲しい。
「違うよ。京都に、そろそろ帰りたいなって思ったんだよ」
「何故だ?」
 どうでも良さそうにケーナズが言う。てっきり駄目だ、と言って貰えるかと思ったのに、えらく素っ気無い返答だった。
「に。荷物とか。あるし」
「またか」ケーナズが言った。
 またか? 小首を傾げた。京都に帰りたいなんて言ったのは初めてだ。
「また、悪いことを企んでいるんだな」
 ついに、溜め息が出た。
「まぁ? どうしても帰りたいと言うのなら止めないが。新薬のことだけは忘れろよ」
「違うよ」ちょっと、泣いてもいいかしら、と思った。「もう、いいよ」
×
 風呂から出ると、電話の着信音が部屋中に響き渡っていた。ユウは袖を下ろしながら、電話に向かった。受話器を受け取る。
「はい。ルクセンブルクですが」
「もしもーし。ケーナズしゃん! なーんしてんのッ」
 受話器の向こうで、ずば抜けて明るい声が言った。男の声だ。なんだ、と思った。眉を寄せた。
「あの。どちら様でしょうか」おずおずと言う。
「あれ?」そこでやっと向こうの男は我に帰ったという風だった。「なんだ。ケーナズん家じゃないの?」
 呼び捨て。また、なんだ、と思った。眉が一段と寄る。
「いえ。そうですけどあの……し……ケーナズは今、ちょっと席を外しておりまして」呼び捨てで対抗してみた。
「誰だ」
 背後で声がした。飛び上がりそうになった。
 風呂上りのケーナズが立っていた。下半身にジャージ素材のグレイのパンツをはき、逞しい上半身をさらし、タオルで髪を拭いている。
 ユウは受話器を差し出し、「わかんない」と言う。器用に眉を上げたケーナズが、受話器を受け取った。
「ケーナズだが」ユウに視線をやりながら、言う。
 ソファに腰掛けたので、続いて隣に座った。耳を寄せ、会話を盗み聞く。ケーナズが窮屈そうに眉を顰め、肘うちした。関係ない。唇でもとがらせたい気分だ。
 呼び捨てにする女ならまだしも。男とは、誰だ。
「おーーう。ケーナズしゃん! なーーーんしてんさ!」
 ずば抜けて明るい声は、音量も大きかった。受話器を当てていないユウの耳にも、良く通る。
「なんだ。洋輔か」脱力したようにケーナズが言う。
「ひ・さ・し、ぶりぶりっす」
「なんだ。その、必要以上に気味の悪い声は」
「それだと俺が、いつも気味悪いみたいなんですけど」
「まぁ。悪いな」
「ヒデー」受話器の向こうで軽快な笑い声がする。
「本当のことだからな……それで? 何の用だ」
「あ。そうそう。それでさ。ちょっと頼みごとアンだけどォ」
「頼みごと?」
「ちょっと京都にさ、来てほ」
「無理だ」
 受話器から耳を離したケーナズはそのまま切ボタンを押す。ユウは驚く。なんと冷たいことだろうか。しかしケーナズの唇は緩やかにつりあがっている。どういうことだ、と思ったらすぐに着信音が鳴った。ケーナズが同じ表情のまま受ける。
「ルクセンブル」
「何も、切ることはないっしょ。切ることはさ」
 ケーナズはハハと小さく笑った。「電波でも悪いんじゃないか」
 いい加減な返事をした。その顔が、少し楽しそうで腹が立った。何故だかわからないが、妙に腹が立った。
 ちょっとその頬を抓ってもいいかしら。と思った。
「電波て。家じゃん」
「私ではなく、キミだ。人のせいにするな」
「あー。はいはい」いなすかのように洋輔が言う。「それで。来てくれないの?」
「電話を切る前に、無理と言ったはずだが」
「やっぱ切ったんじゃん!!」
 あー。とケーナズが苦笑した。受話器の向こう側でへらへらと笑うような声が聞こえる。「もしかして、夏バテしてんじゃん? 毒舌にキレがありませんぜ、お兄さん」
「失礼な。日本の夏が暑すぎるのが悪い」憮然としたケーナズが続ける。「そもそも、なんでこの残暑厳しい時期に、ハワイでもグワムでもなく、盆地の京都なんかに行かねばならん」
「他に頼れる人がいないからじゃん」
「そう煽てても無駄だぞ。どうして私なんだ」
「だから。他に頼れる人が居ないからだって。それにほら。ケーナズしゃんさ。すげぇじゃん? サイコメトリーとか使えんじゃん? もうやっぱりすげぇじゃん? いやいやいやいや、すげぇじゃん? やみくもやたらにすげぇじゃん?」
「まぁ」ソファに身を預け、ケーナズが踏ん反り返る。「どういう用件か、くらいは聞いてやってもいいが」
 その瞬間、ユウは煽てられてんじゃないわよ! 横っ面を叩いてやるぞ! くらいのことを思った。
「ちょっとね。怪奇現象系のことでさ」
「おいおい、勘弁してくれよ。幽霊のたぐいは守備範囲外だ」
「そこをさ。なんとか」
「だったら。キミが来い」
 素っ気無く言ったケーナズが、電話をまた切る。
 なのに、暫くして「京都なぁ」と呟いた。
 まさか。こいつ。行く気では。
 ユウはその横顔を見る。むしろ、怨念を込めた目で睨みつける。
 行く気だったら。
 絶対、ついて行ってやる。
 そう。思った。





 紅茶を取ろうと、本から目を上げた。カップの隣にある携帯のディスプレイが光っていた。着信か、とセレスティ・カーニンガムは思った。音を消していたから気付かなかった。
 いつから、鳴っていたのだろう。
 テーブルに手を伸ばし、携帯を取る。ディスプレイに表示されている知らない番号。この番号を知っているものは多くない。仕事関係の人間は皆、自宅電話にかけてくる。
「はい。カーニンガムですが」
 本に目を走らせながら言った。
「おおおおおおおおう。セレスティしゃん。なーーーんしてんのッ!」
 受話器の向こうでズバ抜けて明るい声が言った。
「おやおや」本から目を上げる。「洋輔くんではありませんか」
「覚えててくれたんね。ご無沙汰! 元気?!」
「えぇえぇ」元気な声が微笑ましい。頷き言った。「元気ですよ」
「何してたん?」
「本を読んでいましたよ。自宅で」
 膝の上にあった本を閉じ、テーブルに置く。代わりにカップを掴み、口に運ぶ。
「あ。そなんだ」
「えぇ……どうかされました?」
「あー。うん。元気かな、と思って。思い出したから」
「嬉しいことを仰いますね」セレスティは微笑みながら言う。「本当にただ、私を思い出して頂いたならば」付け加えた。
 受話器の向こうでうーんと唸る、洋輔の声が聞こえる。吹き出しそうになった。
「すんませんでした。嘘つきました」
 分かっていますよ。「なんの用だったのですか」
「うん」ちょっと間があって洋輔が切り出す。「実はさぁあ。ちょっと協力して欲しいことがあってさぁ」
「協力?」
「こっちで。あ。京都でさ。怪奇事件が発生しちゃったんだけどさ」
「ほう。怪奇事件、ですか」
「そなんよ。それでさ。もう、頼る人、セレスティしゃん以外思いつかなくてさぁあ」
「ほう」
「だから。その懐の大きさで、どうか。俺を助けて欲しい」
「私の懐が大きいと?」小さく、笑う。受話器の向こうから「そりゃあああ、もう」と力んだ声が聞こえた。
「大きいっしょ。も、なんつか。すげぇっしょ。常に冷静っしょ。ある意味、カリスマっしょ。オォォーラが違うっしょ。もう俺の回りには絶対居ないタイプつか。ホント。尊敬しちゃうなぁあああ」
 紅茶を口に運びながら苦笑した。「調子が良いですね」
「違うって。マジだって。ホント。頼ンます。愛してます。だから来て下さい」
 どういうことだ、と思う。また、苦笑した。
「考えておきますよ」曖昧な返事を返した。「何か決まりましたら、この電話番号にご連絡すれば宜しいですか」
「えええええ。考えるのんですか!」
「考えるのんですよ」
「そっか」溜め息交じりに洋輔が言う。「あぁ。逢いたいなぁ。セレスティしゃんに逢いたいなぁ。もう、めちゃくちゃ逢いたいなぁ。凄く逢いたいなぁ。逢わないと俺、死んでも死に切れないなぁ。っていうかむしろ、死んじゃうかも知れないなぁ。あぁ、逢いたい。逢いたい。逢いたい……と。いう俺の気持ちを踏まえた上で。出来るだけ早く、返事を下さい」
「貴方が今、どんな顔でそんなことを言うのか。想像すると可笑しいですね」
「でしょ?」洋輔がへらへらと笑う。「見えてないかも知ンないけど、土下座して、涙流しちゃってンかんね。オイラ」
「それはそれは」答えながら京都か。と考え、暫くのスケジュールを振り返る。
 鑑定会のスケジュール、リンスター財閥に関するスケジュール、講義、勉強会の依頼。草間の依頼を手伝うのとは違い、少なくとも一泊くらいはすることになるだろうから。いや、どうせ京都に行くならば、一泊だけというのも面白くない。
「わかりましたよ」後で、詳しいスケジュールを聞いておこう。「出来るだけ早くお返事しましょう」





「まったくアイツは調子がいい」
 サロンに戻った浅海は、ケーナズのそんな言葉を聞いた。
「皆に結局、貴方しか居ませんと言ってるんじゃないか」
 椅子の背もたれに片腕をかけたケーナズは、ぼやくというより呆れるように言った。顔が、苦笑に緩んでいる。
「ですが、そういう調子の良さがない洋輔くんというのも淋しいではありませんか」
「まぁな」セレスティの言葉にケーナズが頷く。
 え。と思った。
「洋輔」思わず呟いた。セレスティが振り返る。
「おや。浅海くん。モーリスを呼びに行ったのではありませんでしたか」
「よ。よよよ。洋輔くんから連絡があったんですか!」
 主人の問いには答えずに、飛び掛るようにして聞いた。勢い余って、前につんのめる。そして、こけた。
「おいおい。キミ。少しは落ち着きたまえ」ケーナズが苦笑する。
「だ。だって」セレスティの顔を見上げる。「いつ。何時、洋輔くんから連絡が!」
「おとついですよ」
 声は後からした。モーリスの声だった。
 振り返ると、微笑するモーリスが腕を組みそこに立っている。けれど、目だけはいつものように、冷たかった。馬鹿にするように浅海を見下ろしている。いつものことだった。「ストーカーさん」
「す。すすす。スト。ストーカーッ? し。ししし。失礼な!」憮然と言い、立ち上がる。それから、ハタ、と気がついた。
「知ってたのか?」
 当然、とばかりにモーリスが頷く。
 なんと。
 仲間、外れですか。と思った。
 ついでにさきほど聞いた、モーリスの言葉を思い出してしまった。からかわれたんじゃないんですか。
 少しだけ、泣きたくなった。
 そんな自分を見てフンと鼻を鳴らしたモーリスは、ケーナズの元へと歩み寄った。
 その前に傅き「こんにちは」と彼の手を取り甲にキスをする。「その節はどうも」
「ああ」ケーナズが含むように笑った。「元気だったか」モーリスの手から手を抜き取り、その頭をゆったりと撫でた。
「相も変わらず」モーリスも含むように、笑う。「お母様にも宜しくお伝え下さい」
「ハハハ。そうだな」
 二人の間にはきっと何かしらあったに違いない。二人の視線の交わし合いを見て、浅海は漠然とそんなことを思った。
 っていうか、なんで。
 そっと自分の胸に手を当てる。
 なんで俺がドキドキしてんだ。
「宿泊の件ですが」
 それから何事もなかったかのようにセレスティに向き直ったモーリスが言った。「申しました通り、スケジュール上、二泊が限度ですので。それで予約しておきました」
「そうですか」セレスティが頷く。
「しかし。この暑い時期に京都になんて。行くべきではないと思いますがね」
「だろう」モーリスの言葉にケーナズが同意した。しかしそれを遮ったのは、ケーナズの隣に座っていたユウという青年だ。
「僕は行きたいけどね!」怖い顔で言う。「見たいもの、あるしね!」全然行きたいようには見えない。
「良いではありませんか。京都。千年の都。魔界京都とも言われますし、今の時期は……五山送り火もあるのではなかったですかね」セレスティがモーリスを見上げる。「そういうものも、見てみたいでしょう」
「まぁ」
 溜め息交じりにモーリスが言った。
「お決めになられたことに反対する権利は、私にはありませんから。ですが。そういうことであれば、私も同行しますよ。大事なお体ですから。体調でも崩されては溜まりません」
「さすが。医者だな」
「医者なんだ」ケーナズの突っ込みに、何故かユウが思量深く頷いた。
「あの」浅海は勢い込んで言う。「僕も。僕も行っては駄目でしょうか!」
「さすがストーカー」揶揄するようにモーリスが言う。
「ストーカーでいいから連れて行って下さい」やけくそで答えた。
「おやおや」セレスティが笑う。「わざわざ言われなくても。連れて行くつもりでしたよ」





 インターネットブラウザを開きメールチェックをしようとしたところで、ふと気が変わり、ケーナズは気象情報のリンクをクリックした。京都に旅立つ前に、暑さに対する心構えをしておこうと思ってのことである。
 画面に、全国の天気が表示された。各地の天気の項目の、京都という文字をクリックした。
 続けて、気温という文字をクリックする。向こう一週間の京都の気温が表示された。
 最高気温は全て、三十度以上と表示されていた。それを見て。見ただけなのだが、なんだか凄まじい眩暈を感じる。
 想像するだけで倒れそうである。東京でもそれほど高くはないはずだ。
 下らないと知りつつも、そうなってくると今、東京は何度なのだろうと気になった。気になって仕方なくなった。私は一体、どれくらいの温度の中を歩いているんだ?
 調べてみることにした。
 東京という文字をクリックし、気温を表示させる。全てではないものの、東京も三十度以上という数字がいつくかある。
 いよいよ眩暈がした。
 知らなかった。そうか。東京も暑いのか。
 知らなければ良かったと少し後悔した。知れば余計に暑いと感じてしまう。
 溜め息が出た。吐く息までも暑い気がした。
 ドアノックの音がする。ケーナズは慌ててブラウザのホームボタンを押した。ドアの開く音がした。「何してンの」ユウが背後で言った。
 ケーナズは内心でわたわたとして、ふと思いつき、検索ボタンに冷たい手と放り込んだ。
「下調べをしているんだ。なんだ。イキナリ入ってくるな」憮然と言った。
「フンだ。用意してやってンのにその言い方ナンなのさ」
「大して役にも立たないんだからそれくらいはやりなさい。威張られても困る」画面に目を向けたまま、素っ気無く言ってやった。
 冷たい手という検索で表示されたのは、20695件だった。どれもこれも、余り依頼とは関係なさそうな話である。血行が悪いだとか、そんなような。
「フーン」ユウが小刻みに頷いたかと思うと、突然横からマウスを奪う。
「こら。何をするんだ」
 止める声も聞かず、ユウはブラウザの戻るボタンを連打した。それから呟いた。「え? 気温?」
 やれやれと溜め息を吐いた。「暑いからな」
「なんだ。アダルトサイトでも見てたのかと思った」
「お前じゃない」
 ピトリとユウが擦り寄ってくる。「なんだ」眉を潜めた。
「可愛いね。暑いの。ヤなの?」ユウに言われ、自分は何をしてるんだ、という気になった。
「暑いからだ。そのせいだ」強引に、言った。





「彼はどんな風でしたか」
「彼? あぁ」荷物を詰める手を止めて、モーリスがニヤリと笑った。「喜々として用意していましたよ。馬鹿ですね」
 本に目を落としたままその言葉に頷いた。「そうですか。喜んでいましたか」
「全く単純だ。私には理解出来ませんがね」
「好きな人に逢えるというのは。嬉しいことなのでしょう、きっと」
「くだらない」モーリスは呆れたと言わんばかりに言う。「相手に気持ちはないのでしょう? しつこい男は嫌われるだけです。いやむしろ、現に彼は嫌われているのではありませんか? フフ。彼は、そう言ったら顔を真っ赤にして違います! と声を荒げましたけど」
 その言葉が余りに喜々として聞こえたもので、セレスティは本に目を落としたまま、唇をつりあげた。「彼と遊んでいるのは楽しいですか」揶揄するでもなく言い、ページを繰る。
「楽しい?」目を上げると、モーリスが困惑した表情を浮かべていた。「そう、見えますか」
「えぇ。見えますね」
 モーリスは益々困ったような、曖昧な苦笑を浮かべ、「まぁ……言われた言葉を素直に受け取り、すぐに傷つく。やりがいがあるといえば。そうですが」とだけ言った。
「それは」モーリスに向かい、手を差し出す。「とても良いことだと思います」
「良いこと、ですか」
 モーリスが差し出した手の元に傅く。
 ゆっくりとその頬を両手で挟み、エメラルドに輝く瞳を覗き込んでやった。
「キミはね。なんだかいつも人々に囲まれ、楽しそうで。だからこそ楽しくなさそうに見えるのですよ。器用に見える。義務のような感情から微笑み、愛し、愛され、生きている。そんな風に見えます。私にはそれが……少し、悲しい」
「そんなことは」
「ならば。いいのですが。折角人の姿になったのですから。貴方も。もっともっと人として。楽しんでほしいと思うのですよ……親心、でしょうかね。楽しいということだけが人生の楽しみではないし、笑うだけが喜びの表現ではありませんから」
 モーリスは瞳を伏せた。そしてただ、きつく手を握ってきた。
「買い被りでしょう。私はいつでも楽しいですよ。浅海をからかっている時よりは、はるかに」
 そして続けた。
「私は。いつでも貴方の身を案じています。貴方が幸せなら私も幸せですよ」
 彼が言った。分かっていますよ、と言いかけ飲み込んだ。代わりに「ありがとう」と微笑んだ。


002




 入り口のドアが開いた。
 洋輔は思わず、そこに目を向ける。来たかな、と思った。
 しかし、中を覗き込んでいるのは見知らぬ男だ。
 なんだ。そう思い、目を逸らす。男が店内に入ってくるのが視界の端に見えた。だから、また見た。男はこっちを見ていた。見られたので、見返した。
 男はこちらに向かい、歩いてきた。そして、向かいに座った。勢い良く、座った。
「なに、アンタが洋輔?」
 唐突に。言った。
「ハ?」眉を寄せ、額を掻いた。「え。なに? 誰?」
「アンタが洋輔なんかって聞いてンじゃん。答えれば?」
「態度デカッ。意味不明。あったまおかしいんじゃねーの」
「あんだと、コラ」
「は。なに。っていうかなに? 意味不明。何怒ってンの」
 男はフンと鼻を鳴らした。腕を組み、洋輔を上から下へとねめつけた。「大したことないのにさぁあ」
「はぁあ?」耳に手を当てた。「何が? やんの?」
「ぜーーーんぜん。大したことない。絶対、僕の方が可愛い」
「え? っていうか、はぁ?」
「お前なんか。この……アホ!」
「えええええええええええええええええ」思わず、笑ってしまった。
 何を言い出すんだ、と思った。そして、寒くなった。それからどうしよう。そう思った。
 どうしよう。コイツ。絶対、頭がおかしい!
 洋輔は恐る恐る立ち上がる。
「て。ててって。店長ォ?」
 カウンターに向け、声をかけた。髭にドレッド頭の店長は「なによ」と素っ気無く言い、コップを磨いている。なんと悠長なことか、と思った。恐る恐る男に視線を戻す。
 睨まれている。
 うわッ。うわ。うわ。うわ。見てる。めっちゃ見てる。めっちゃ見てるで。怖。怖。怖ッ。
 えええええええ。
「お前なんか認めないからな!」
 何が何だかわからない。どうしよう。また思う。何だか分からないが、恨まれてる臭い。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
 つま先をソロリと動かした。それからばっと動いた。男の背後に回り、素早く首根っこを捕まえた。ナイフでも持たれていたらたまらない。男の手を掴んだ。背後に押し上げた。
「イテテテ。あにすんだって」
「捕まえた! 捕まえた! 店長!」
「あっそ」脱力系店長が、素っ気無く言う。力強く頷いて、男を捕獲したまま入り口のドアに向かった。追い出そう。そう思った。
 けれど扉の前まで来てハッとした。どうやってドアを開けよう。どちらの手も離したくない気満開だった。まごまごしていると、扉が向こうから開いてくれた。
 やったと思い身を乗り出す。入り口から入ってくる男に跳ね返された。びっくりした。顔を上げた。
 ケーナズだった。

 白い肌を桜色に染めたケーナズが、苦しそうに目を細めながら、そこに立っている。
「え。なんで」思わず、呟いた。
「お前が。来いと言ったんだろうが」息を切らしながらケーナズが言う。「どいてくれ」
「ご。ごめん」男を捕獲したまま一先ず、身を引いた。
 その隙間からケーナズがフラフラと入り込んで来る。カウンターにグタリと倒れこみ、「水をくれ」と言った。
 呆然とその姿を見る。「え」掠れた声が出た。「ウソ。大丈夫?」やっと言った。
 ケーナズは寝言のように答える。「大丈夫じゃない」
 手の中に居た男が暴れ出した。
「ちょ。ちょっと。ちょっと。離して離して」
 隙を突いて、男が手から離れて行く。「あ。コラ!」
 けれどケーナズの元に駆け寄った男は泣きそうな声で「スマンの。スマンの」と言い、店長にオシボリ! と声を荒げる。
「ユウ。もうお前は……先に行くなと言っただろうが」
「ええ。ごめん。なんで? 暑さでやられちゃった?」
「死にそう、だ」ふがふがとケーナズが言う。
「えええええええ」洋輔は呆然の上から呆然とした。「なんなの〜。知り合い〜?」
 その呟きと重なるように、脱力店長がオシボリと水の入ったコップを差し出した。
「外、そんな暑いんだ?」誰に言うでもなく呟いた。洋輔はさぁ? と小首を傾げてやる。
「暑い! 暑いに決まってる!」
 カウンターに手をついて、ケーナズが叫んだ。勢い良く水を手に取り、一気に飲み干す。
「だいたいな」コップを勢い良く置いた。われるのではないか、と思った。「この暑さは以上だ。異常気象だ。温暖化だ。温暖化! どういうことか分かるか! 蟻の吐く息でももう、気温が一度上昇するということだ! だからもう、お前らは息をするな! 二酸化炭素を吐くな! 二酸化タンショを!」
「いやいやいやいやいや」洋輔は思わず手を差し出す。「二酸化タンショて。噛んでますやん、お兄さん」
「暑いからだ」ケーナズは溜め息を吐き出した。それから。
 苦笑した。
 両手の人差し指と中指をハサミのように動かす。「カット」
「なんの撮影だよ〜」
 洋輔は仰け反りながら、抑揚のない声で突っ込んだ。





 ホテルの窓から見える鴨川は、向かい側の土手にある街灯やビルの光を反射させ、キラキラと輝いていた。鴨川の川べりには幾人もの人や恋人達の姿が見え、楽しそうだ。
 東京の夜景とはまた違った顔を見せる京の景色に、こういうのもたまにいい、とセレスティは思う。
 背後で、ドアノックの音がした。「どうぞ」と言い、振り返った。
 モーリスが部屋の中に入ってくる。「そろそろ時間ですが」
「あぁ」セレスティは壁にかけられている時計に目をやった。「そうですね」
 洋輔との待ち合わせの時間である。
 なんでも木屋町にあるお店で会議を開きたいというのだ。馴染みの店らしい。
「ケーナズは先に行っていますかね」
「えぇ。たぶん。私達はホテルで休憩してから行くと言ってありましたので」
「そうですか。浅海くんは?」
「気持ちの悪い顔をして、落ち着きもなく、下で待っていますよ」
「なるほど」小さく笑みが漏れた。「では私達もそろそろ行きましょう」
 モーリスが頷いて、背後に回った。





「え?」
 浅海は呟いた。それ以上、声が出なかった。

 今日は朝から散々だった。
 モーリスの嫌味が散々だった。きっと自分が必要以上にはしゃいでいたからだろうが、「余りはしゃがないでくれないかい? 見ていて、気持ちが悪いだろう?」から始まり、最後には「喜んでおいて。突き落とされないのを祈るよ」と笑顔で言われた。
 しかし。そんなことも今日は気にならなかった。朝から散々だったが、今日はきっと人生で一番素敵な日なのだろうと思っていた。
 なんてたって、洋輔くんに逢えるのだ。それも振って沸いたように、追いかけるでもなく、逢えるのだ。これは何てたって同行であるし、単身無理矢理、京都に行くわけじゃない。
 ストーカー。その言葉は、常々自分でも自分に言っていた言葉だった。頑張るという言葉を吐き違えてはいけないと思っていたし、そもそも男同士であるのだから何より時間が必要なのだ、と。
 そしてそうやってでも彼を思い続けている僕に、今回のこれは神様が用意してくれた素敵な偶然なのだな、と思った。いやむしろ。彼は……自分がセレスティのところに居ると知って電話をかけて来たのではないのだろうか。そんな妄想すらした。
 テンションが上がった。
 どうしようもなく、そわそわした。
 好きだ。好きなんだ! 愛してるんだ! そう。抱きしめてしまったらどうしよう。
 浅海。俺、お前のこと……なんて、潤んだ瞳で言われたらどうしよう。
 逢えない時間に気持ちが離れるなんてことはないよ。逢えない時間、考えるのは洋輔くんのことばかりだからね。なんて、カッコつけて言っちゃったらどうしよう!

 なのに。
 今。
 彼は。
 何と。
 言った?

「覚えられてすら、いないようですね」耳元で声がした。浅海は、追憶から戻り、現実を噛み締めた。「あぁ。それとも。知らないフリをしたいほど、キミを嫌いなのかも知れない」
 ゆっくりと振り返る。モーリスが今まで見た中で一番きれいで、一番威勢の良い、満面の笑みを浮かべていた。
 彼の頭とお尻に、黒いものが見えた気がした。とんがった角。とんがった、尻尾。
 悪魔だ。
 悪魔だ!
「だから言ったじゃないか。余り、喜ばない方がいい」
 また、耳打ちされる。目の前が、真っ暗になった。





 冗談で「はじめまして」と言ってやったら、それっきり浅海は動かなくなった。
 洋輔は小さく小首を傾げ、ま。いっか。と思った。電池が切れたのかも知れないし。そういうこともあるだろう。
 それより問題は手のことだった。
「それでさ」身を乗り出して、切り出した。「手、なんだけど」
 皆は浅海の顔を見つめていたが、「あぁ」といった風に視線を戻した。
「その手を見に行かないといけませんね」セレスティが言う。
「あぁ。いや。手ならあるんよ」
「ある?」ケーナズが眉を寄せた「ある? とは、どういうことだ?」
 洋輔はソファにもたれ、「ちょ、店長。手持ってきて」と言った。店長はカウンターの奥に消え、暫くしてまた現れた。
 手に手を持って。
 髭にドレッド頭の店長が、それをまるで料理の皿を置くかのようにテーブルにポンと置いた。
「はい、手」
「依頼主がね。捕まえたらしいんだわ」洋輔が言うと、店長が頷いた。
「そう。捕まえたらしいよ」指先でドレッドの間をポリポリとかきながら、素っ気無く言う。そしてまたカウンターに戻った。
「じゃあさ。とりあえずサイコメトリーして貰って」
「私を殺す気か」ケーナズが睨む。その隣で、ユウが頷いた。「そうだ。殺す気か。テメーでやれ」
 先ほどからいちいち癪に障る男である。
「なんでよ」唇を尖らせた。「そしたら解決早いじゃん」
「もう。今回は楽したいんだ。とにかく。地道に解決しようじゃないか」
「地道ィ?」
「ネットに情報はなかったな。ま。東京で見ただけだが」
「ネットなぁ。噂を辿るってこと? 」
「まずは。共通点、だな。手を見たという人間の共通点。以外な何かが出るかもしれないぞ」
「そうですね……あぁ。この手を捕まえても。まだ、他に見ている人が居る、ということでしょうか」
 セレスティが臆することもなく手を掴む。
「うん。手は複数ある臭い」
「なるほど」手をじっくり観察しながら、セレスティが頷く。「傷も特にありませんねぇ。しかし、華奢なきれいな手ですよ」
 手をテーブルに置いて、セレスティが「あぁ」と声を漏らした。「手に手を繋いで、行きたい場所に行かせるというのはどうでしょう。行きたい場所はありませんかと聞いてみて」
「ハハハハ。そいつはいい。それがいいんじゃないか」ケーナズが頷く。
 洋輔は脱力した。「真剣に考えてくんない? 真剣にさ」
「真剣ですが」
 セレスティが微笑む。
「何事もやってみないとわからないではないですか」


003




 留守番をしていると、酒に目を潤ませて軟体動物のようになったユウが、言った。「教えてほしいことがあるんだけどさ」柔らかい髪をすりすりと寄せる。
 セレスティはジンベースのカクテルが入ったグラスを置いてユウを見た。
 軟体動物とまではいかないが、自分の体の中にもアルコールが巡っている。酷く、心地が良かった。
「なんでしょう?」
 柔らかい髪に指を絡めながら言う。
「ケーナズの。ことなんだけどさ」
「えぇ」
「どんなタイプが好きだとか……そういうの。知ってるかな、と思って」
 ユウが顔を上げた。潤んだ大きな瞳が見上げている。温度のある白い頬はとても、柔らかそうだ。
「どうしてそんな事が知りたいんでしょう」悪戯心でそう聞いた。ユウは一度、瞳を伏せ。それからまた、甘えるような強請るような目をした。
「わかんないけど」
 いつだったかケーナズが言っていた。そういう顔を見ると意地悪がしたくなるんだ。
 なるほど、と思った。確かにこれは、意地悪をしたくなる顔だ。
 彼は今、意図的にこの顔を作っているのだろう。自分が今可愛いと知っている顔。甘えることを知っている顔。
 セレスティはその頬にゆっくりと触れた。マシュマロのように柔らかで、温かい。そっと鼻筋を撫でてやり、唇に触れた。
「柔らかい唇」
「セレスティさんのもきっと、柔らかいよ」
「では。こうしましょう」また、悪戯心でそう言った。「私のが柔らかいかどうか。確かめてくれたら、教えてあげますよ」


Ж


「しかし、暑い」
 ケーナズが呟いた。
 ユウの実家、京都祇園にあるお茶屋、佐野屋である。
 目が覚めるとユウはそこに居た。
 どうやって帰って来たかは記憶になかった。
 気がつけば、どうやら洋輔、モーリスと、事件を解決しに行ったらしいケーナズと共に、宿であるここへ戻って来ていた。そして、ケーナズの隣には芸子、菊乃が居た。
 母が気を使って呼んでくれたのかも知れなかったが、それは小さな親切、大きなお世話というものだった。ずきずきと痛む頭に加えて、ケーナズの隣で扇子を上下に動かしていた菊乃の存在が、酷く疎ましい。
「そうどすかぁ?」菊乃が笑うとケーナズが「あぁ」と頷いた。
「暑い。むしむしするよ。ドイツでは考えられん」
 菊野が瞳を見開く。「ドイツどすかぁ」感心したように言う。
「あぁ」菊乃に視線を向けたまま、テーブルの上にある醤油刺しのような小さな陶器を手にケーナズが頷いた。「ドイツには梅雨がない。蒸すという現象もない。夏も短い。気温の変化は大きくてな。確かに、三十度を越す時もあるんだが……蒸さないからな。纏わりつくような暑さではないんだよ」
 陶器を傾ける。ユウは思わず、「アッ」と声を漏らした。
「ん?」
 ケーナズが視線を向ける。ユウは陶器を指差した。「それ! それ!」声を荒げる。
「なんだ」
「それ。醤油じゃないよ!」
「なに?!」
 ケーナズが慌てて陶器を起こす。しかし時既に遅し。さしみの上にはべっとりと酢味噌がかかっていた。「あぁ」ケーナズが眉を顰める。「なんということだ」
 見とれてるからだ、と思った。暑さのせいだなんて言って。本当は菊乃に見とれてたんじゃないか?
「あら。まぁ」菊乃は思わずという風に言った。「大丈夫ですか」
 ユウは眉を潜めて菊乃を見る。これだからおちょぼは。瞳にそんな意味を込めた。思い切り、言葉が京都弁ではなくなっているではないか。
「藤菊は一体何を教えてるんだか」冷たい目のままで言った。
「姉さんはちゃんと言い聞かしてくれてはります」
「どうだかね。おちょぼを見れば姉の価値も分かるってモンだ」
「どういう意味だ?」
 刺身を箸で隅に寄せながら、ケーナズが言った。
「おちょぼっていうのはね。教育期間中の女のことだよ。まだ完全な、舞妓や芸子として認められていない、ね」
「あぁ。そうなのか」ケーナズが菊乃に目を向ける。「頑張っているんだな」
 菊乃がはにかむ。着物の帯裏から千社札を取り出して「貼ってもええどすか」と言った。
「なんだね。それは」
「千社札言います。名刺代わりどす。ケーナズはんのキープしてはるボトルに貼らさしてもろたら。菊乃がお相手したぁいうこと、分かるようになっとるんどす」
「ほうほう。そうか。まぁ。別に構わんが」
「これからもご贔屓にぃ」菊乃が千社札をボトルに貼り付けようとする。ユウはそれを慌てて阻止した。ボトルを胸に抱き、菊乃から遠ざける。
「あのさ。半ダラの分際であんまり調子に乗ったことしないでくれる?」怨念を込めて、睨みつけた。
「もう。帰ってよ。ハッキリ言って邪魔。ママには僕から言っておくから」
「せやかて」
「煩い! 帰れ!」
「おいおい。そう言うな。彼女も頑張っているんだぞ」
「なんで。そんなこと言うんさ」
「何故とは? かわいそうだからだろう?」
「あの。ええんどす」困ったように微笑する。その笑顔までも、計算づくではないのか! と思った。「でもこれ。お渡ししときますさかい。財布にも貼っておくれやす」千社札をケーナズに差し出す。「お金が舞妓む言うて、げんかつぎなりますさかい」
「ん。そうか。有り難く受け取ろう」ケーナズは余りに自然に手を差し出す。
 どうして。
 どうして!
 そう、思った。
 どうして受け取るんだよ。とも、どうしてこんなに僕は腹が立つんだよ。とも。両方同時に思った。
 そんな自分も酷く嫌で、そんなケーナズも酷く嫌だった。
 何もかも。嫌だった。
「もう。いい!」
 叫んだ。勢い良く立ち上がった。身を翻し、部屋を出た。
 走った。
 どこまでも、走った。





「真っ赤になった目で来たと思ったら、もう。今日から僕は。セレスティさん家の子供になる! と地団駄を踏み出しましてね。まぁ。そのまま身請けさせて頂いても良かったのですが」
 セレスティは意地悪く、フフフと微笑む。ケーナズがやれやれと眉を下げた。
「暑さで頭が沸騰しそうなんだ。これ以上、余計な問題は増やしてほしくないんだがな」
「それでもちゃんと。迎えに来たではありませんか」
「暑さのせいだよ」ケーナズが苦笑する。「言葉は噛むし、フラフラするし。今の私は普通じゃない。だから、迎えに来たんだな。たぶん」
「なるほど。では。そういうことにしておきましょう」
「おいおい」
「彼はこの間。私に聞きましたよ。ケーナズはどんな人がタイプなのかと」
「そうなのか」
「そうですよ……嫉妬。したのではないでしょうかね。洋輔くんにも。その、舞妓にも」
「それは……返答に困る」呆れたようにケーナズは笑った。「義理の息子から告白された、父親の気分だ」
「それは、確かに困りますね」
「知ってると思うが」困惑したように眉を下げて、眼鏡を押し上げる。「私の好みは年上の知的な美女と頼りなげな美少年だ。間違っても。コイツではないし、あの舞妓でもない」
「知っていますよ」ゆったりと頷いてやる。「けれどまぁ。手も言っていたではありませんか。いろいろあるのが人生だとね」





「もう。駄目です僕は」浅海が呟くと、セレスティは「そうですか」と頷いた。
 最終日。浅海、セレスティ、モーリスの三人は、五山送り火の見物に来ていた。
「結局。洋輔くんと話すことさえ出来なかった。だって。そうでしょう? はじめましてなんていわれて、どうすることが出来ますか」紅に燃える山を見ながら、浅海は言った。
「まぁ」セレスティの声はあくまで穏やかだ。「貴方の気持ちは貴方の物ですから。貴方がそう言うなら止めることは出来ません」
 緩やかな風が吹いた。彼の銀髪の髪が流れて行く。
「本当は。諦めた方がいいと思ってらっしゃるんでしょう?」
「私が? 何故ですか。貴方の問題でしょう?」
「冷たいんですね」
「では。貴方は私が諦めろと言えば、諦めるのですか」
「からかいたい……だけなんじゃないんですか」思わず、卑屈な言葉が出る。モーリスの言った言葉。からかわれたんじゃないんですか。もう、散々だ。そう、思った。人類が皆が敵のような気さえした。
 人間不信に陥りそうだ。むしろ、陥っているのかも知れない。
「からかう?」
「だって彼が。モーリスが、そう……あぁ。そうです。ここに来る前、モーリスを呼びに行ったことがあったじゃないですか」
「呼びに、ですか」
「はい。風呂に入ってるのに。呼んできて下さいって」
「あぁ」
 セレスティは山に浮かぶ、大の文字を見つめながら溜め息のような声を漏らした。「そのことですか」
「はい」
「からかったのではありませんよ」セレスティは文字から目を離すことはなく、じっとその、精霊送りの意味を持つ火の光に視線を馳せている。
 横顔が、溶けてしまいそうに美しかった。
「貴方と一緒に居ると、モーリスが楽しそうでしたからね」
 楽しそう? 浅海は眉を寄せる。そんな馬鹿な。
「そういう遊びなのか、と思いまして」
「まさか」思わず力む。「俺を虐めてるんですよ。彼は。俺のことがきっと。嫌いなのかも知れない」
 セレスティがフフフと笑う。「まぁそうかも知れませんが」
 そうに決まってる、と思った。
「どれだけ一緒に居ると思っているんですか」唐突にセレスティが問いかける。浅海は「え?」と問い返した。
「私と、モーリスが。ですよ」
「あ。あぁ? 長いん、でしょうね」
「えぇ。長いですよ」なんの話だ? と思った。
「ですからね」セレスティは落ち着いた声で言った。「私の言う言葉も、間違ってはいないような気もしませんか」
 マジでか。と思った。数メートル離れた場所に立ち、山を見るモーリスの姿を見た。金色の髪が風に流れている。その姿はこれまた酷く、美しい。
 浅海は思わず視線を逸らせた。それからまた、彼を、見た。
 気付いたように、モーリスが振り返る。スローモーションのようにゆったりと振り返った彼と、目が、合う。
「冗談だと言っていましたよ」
 何を言われたか一瞬、理解出来なかった。
「まぁ。百歩譲って。あの洋輔という青年は。何も考えてないのではありませんかね」
「何も、考えてない?」
「キミは今。そのまま川の中に飛び込みそうな、気持ちの悪い顔をしていますが」
 モーリスはまた、山を見た。
「貴方が居なくなったら、虐める対象が減るので面白くありません」
 風が、また流れた。
 セレスティが笑った。
 浅海は俯いた。それから、苦笑した。
 現金だが。
 凄く。
 救われた気がした。


Ж


 ホテルで聞いた、セレスティの言葉を思い出していた。
「あー見えて、彼は案外。天然なのですよ」セレスティは微笑んでいた。「それとも暑さのせいでしょうかね」

 あの時は何も思わなかったが、いや、寝起きで何も思えなかったのだが。今にして思えばそんなわけがあるか、と思う。
 暑いから鈍いなんて。そんなことあるわけない。つまり、どうやってもそういう対象ではない、ということではないか。
 追憶から戻り、佐野屋の手拭いで首筋を拭くケーナズに視線をやった。
「あー。暑い。暑い」
 暑いついでだ。そう言って服を脱ぎ始め、そしてユウを抱きしめた。なんて、展開はない。ケーナズは浴衣を肌蹴させ、畳みの上にコロンと横になった。
「次家出したら迎えには行かないぞ」背を向け、冷たい声で言う。

 ドラマの中で良くある話は、現実にはそうそう、ない。


004


「ところで」
 Y神社の鳥居のふもとまで、手に連れられ歩いたところで、モーリスが言った。洋輔はなんだ? と振り返る。
「そろそろ私の能力を使っても宜しいでしょうかね」
「え」
「復元する能力がありますので。それで手を復元させて見てはどうかと」
「あぁ。そうだ」ケーナズがハハハと笑った。「それがいい」
「ええええええええええええええええええ」洋輔は絶叫した。
「いやいや。それ、先に言いなさいよ! アンタ!」
「すみません」モーリスが冷たく笑う。「つい、うっかり」
「うっかりじゃないよぉ」洋輔が頭を抱える。
 それを無視して、モーリスはハルモニアマイスターの力に集中した。
「手をそこに置いて下さい」洋輔に向かい、命令する。
 地面に置かれた手の前に立ち念ずると、白い光がふわふわ舞った。
 それは、蛍の光のようにも見える。
 浮遊する光は手の回りで渦を巻き、おぼろげな形を作った。その形は次第に、人へと変形していく。

「貴方は。どうして現れるのですか」
 モーリスは言った。手の持ち主と思われる青年が、響くような声で言った。
「無意味な死がないように」
「無意味な。死?」
「ここは。Y神社、ですね」
 青年は辺りを見回した。
「ここは僕が死んだ場所」
 呟くように、確認するように、青年は言う。

「僕は。自殺した」

「貴方は。どうして現れるのですか。何か。怨みでもあったのでしょうか」

 モーリスの問いに彼はゆっくりと首を振る。

「僕が自殺した当初、このY神社で自殺した者は、必ず成功するという噂が立っていました。その噂を信じた数十人もの人間が、ここで自殺をしました。僕もその一人です。少し嫌なことがあったら死にたい。いや、死ねるんだ。そんな感覚で皆、自らの命を絶った。酷く簡単に、酷く、手軽に」

「でも。それでは駄目なんです」

「駄目? とは?」


「死にたいなんて言っちゃ駄目なんだ。生きてることがどんなに素晴らしいことか。分かってないんだ。この姿に……手に。なって。もう一度世の中を見て。楽しいこといっぱいあったのに、勿体ないことをしたって。後悔したんです。もっと仲間と飲み歩いたり、そういうくだらない日々に楽しいことが沢山あったのにって。楽しいことも苦しいことも。もっと自分から得るべきだったんだって。自分次第だったんだな、ってそう、思ったんです。死ぬ前に、やることが。あったな、って」


「僕は、もうすぐ消えます。後悔の念を抱きながらですから。もちろん天国なんてものには行けません。けれど、消えます。そして、他の手達ももうすぐ消えるでしょう。僕等、手、は。あの神社で自殺という罪を犯した者が、もう一度だけ世を見るチャンスを与えられた姿だったんです。そしてもう二度と、こんな馬鹿げたことを人間がしないように。自ら命を絶つような、そんな真似はしないでほしいと。伝えて回るための存在だったんです。もしも。誰か自殺をしようとしたら、止めたいと。そう。思って」


「悲しいことや困難なことは沢山あるでしょう。思い通りにいかないことも。けれど。それが人生で。それがあるからこそ、楽しいとか嬉しいとか。頑張ろうとか、やってみようとか。感じられるんじゃないかって」

「僕等はそう。思うんです」

 青年が悲しく微笑む。
 風が流れた。
 回りに立つ木々が、同意するかのように。揺れた。






END






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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 1883/セレスティ・カーニンガム (せれすてぃ・かーにんがむ)/男性/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い】
【整理番号 1481/ケーナズ・ルクセンブルク (けーなず・るくせんぶるく)/男性/25歳/製薬会社研究員(諜報員)】
【整理番号 2318/モーリス・ラジアル (もーりす・らじある)/男性/527歳/ガードナー・医師・調和者】


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■         ライター通信          ■
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こんにちは。
 冷たい手にご参加頂きまして、まことにありがとう御座いました。
 ご購入下さった皆様と
 素晴らしいプレイングやPCをお任せ下さった皆様の懐の深さに感謝致します。


 それではまた。何処かでお逢い出来ることを祈りつつ。
                       感謝△和  下田マサル