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盆踊り、しませんか? 〜あるいは真夏の夜の夢〜
ACT.0■PROLOGUE――夢のダンス――
夕立が過ぎた後の、とある夏の日のこと。
弁天は、ボート乗り場係員の鯉太郎を相手に愚痴っていた。
「今日も例によって不景気じゃな。お客の姿が見えぬのう」
「つーか弁天さま。最近、多角経営に走りすぎて基本を忘れてんじゃねぇか? 井の頭公園といえばボート乗り場、ボート乗り場といえば別れ話、じゃなかった縁結び。そーゆー方針で邁進してきたんじゃないのかよ」
料金所の床にどっかとあぐらをかいた鯉太郎は、いささか不機嫌そうだ。ここのところの弁天は、働きに出たりして井の頭公園を留守にしがちで、ボート乗り場へのテコ入れがおろそかになっていることに反発しているのである。
「多少、遠回りが続いておるという認識はあったがの。しかし、わらわのポリシーは一貫して縁結び一筋じゃ!」
「じゃあさ、お客が来すぎてボートが足りなくなりそうな企画を打ち上げてくれよ」
「それそれ。時節柄、盆踊り大会を催すのはどうじゃろう?」
「盆踊りねぇ……」
鯉太郎はちょっと胡乱な目を弁天に向けた。というのも、今日の弁天のいでたちは、紺地に花火柄の浴衣に金魚模様の団扇という、すでにスタンバイオッケーな姿だったからだ。
「やっほー弁天ちゃん。浴衣なんか着ちゃって、盆踊りにでも行くの? 蛇之助ちゃんの姿が見えないけど、どした?」
とことこと、ハナコまでがボート乗り場にやってきた。連日の暑さで、幻獣動物園の方も商売あがったりのようである。
「それがのう、聞いておくれ。我が眷属はわらわに黙って花火見物デートに出かけてしもうたのじゃ。戻ってきたら水撃をお見舞いしてくれる!」
「独占欲強いなぁ。蛇之助ちゃんの邪魔ばっかしてないで、弁天ちゃんも前向きに彼氏とか愛人とか作ればいいじゃん」
「そりゃヤバイっすよ、ハナコさん。相手にだって選ぶ権利ってもんが」
思わず突っ込んでしまった鯉太郎の後頭部を団扇ではたいてから、弁天はにんまりと笑う。
「……ふむ。前々から思うておったが、現在、東京にはさまざまな異界が出来ておるのう」
いきなり何を言い出すのかと、鯉太郎とハナコはちらりと視線を交わす。
「それでハナコ、ものは相談じゃが」
手招きされ、耳元で囁かれた内容に、さしもの〈世界象〉も、仰天して大声を上げた。
「えええっ! 別の異界にゲートを繋げるの? そりゃ出来なくはないけど、禁じ手だよ?」
「よその異界には、ぐっとくる殿方がうようよしておるではないか。この際、かたっぱしから拉致、もとい情熱的にご招待申し上げて、輪になって踊って親睦を深めようと思うのじゃ」
「弁天ちゃんて、目的のためには手段を選ばないんだね」
「愛人でも奴隷でも好きに作りゃいいけど、ボート乗り場の方はどうしてくれる?」
「案ずるでない、鯉太郎。蛇之助が戻り次第、草間興信所とアトラス編集部に走らせて、盆踊り大会の一般参加者を広く募集しようほどに。そして、参加者の中で踊って盛り上がった男女がいたら、即座にわらわがボートまで誘導してしんぜよう」
「大丈夫かなァ……」
「その代わり、おぬしは、お客人たちへの浴衣貸し出しスタッフを兼務するのじゃぞ」
「ええっ?」
眷属でもないのに雑用を言いつけられて、鯉太郎は非常に迷惑そうであるが、弁天は気にするそぶりもない。
――こうして。
波瀾万丈愛憎渦巻く盆踊り大会が、開催される運びとなったのである。
ACT.1-A■招待状は東京音頭――異界side――
「でもさ、異界って不安定なんだよね」
弁財天宮地下1階に設けた、『盆踊り大会ゲスト様熱烈歓迎部屋』の中で、ハナコは思案顔だ。
「だから、繋げる場所は限られるよ。今日、たまたま6つの異界とバイオリズムが合致してるから、そこにゲート作るけど、いい?」
「うむうむ。上等じゃ」
「ゲート潜って拉致ってくるのは、弁天ちゃんひとりでやってね。蛇之助ちゃんは広報中だし、デュークは屋台の準備で忙しいし、鯉太郎は浴衣の整理してるし、ハナコはゲートのキープで手一杯だから」
「あいわかった」
「じゃあ、いっくよー!」
部屋の壁に向かい、ハナコはすっと両手をかざした。空間がゆっくりとねじれ始める。
「異界ゲート『いの439番』! 『ろの451番』! 『はの641番』! 『にの801番』! 『ほの968番』! 『への1050番』! OPENしまーす!」
♪
その日の夕方5時。
喫茶そえやまの客は、フミさんこと一二三史人ひとりであった。
静かなクラシック音楽が流れる店内で、こよなく『隙間』を愛する彼は、薫り高いコーヒーとともに、夕暮れ時のひとときを楽しんでいたのだったが。
静寂はいきなり、破られた。エルガーのヴァイオリン協奏曲であったはずのBGMが、いきなり――
大音響の『東京音頭』に、すりかわってしまったのだ。
「……おや?」
おっとりと顔を上げた、その瞬間。
今まで空席だった隣の椅子に、花火柄の浴衣を着た、奇妙な女が座っていた。
「どちらさまですか?」
しかし女はその問いには答えず、フミさんの腕をがしっと握る。
「わらわと一緒に来るが良い。おぬしのココロの隙間、埋めてみせようぞ!」
「あの、隙間というものは、埋めるものではなくて……」
やんわりと抵抗してみたが、無駄であった。
フミさんはコーヒーカップを持ったまま、別の異界へと連れ去られたのである。
♪♪
逢魔が時――すなわち大禍時。
災いの起こりやすい、夕暮れ時。フラワーショップ【神-JIN-】にいたのは、店長の神威天征だけであった。
弟もアルバイトの女の子も、しょっちゅう店を覗き込んでいる天征目当ての女子高生たちも、今日は学校の行事が長引いているようで、姿は見えない。
天征は、ふくらんだつぼみをつけた梅の枝を、配達用に梱包していた。真夏に花屋の店頭で見かけることなどありえない、『梅』を。
「はて。異なことじゃ。梅は百花の魁(さきがけ)というに」
「……?」
誰もいないはずの背後から掛けられた声に振り返れば、奇妙な女がひとり、立っている。
人ならぬものの、気配だった。退魔士である天征は身構える。
「あなたは……? 妖――ですか?」
言い得て妙であるのだが、女にとっては不満だったらしい。
「失礼な! 見てわからぬか! わらわは善良かつ純情な美貌の女神じゃ!」
――ますます怪しい。BGMなどかけてないはずの店内に、東京音頭が流れているのも怪しい。
しかし霊剣を召還する前に、気の毒な花屋兼退魔士は、圧倒的な強引さで引きずられてしまったのだった。
♪♪♪
夕方6時。
丹裏鏡子が、カフェ&ダイニングバー『テスタ・ディ・ドラゴ』に、バーテンダーとして勤務する時間帯である。
まだお客はひとりも入っていない。店長が、立ったまま寝ているのもいつものことだ。
トレードマークの大きなマスクを付け、鏡子はカウンターの中に立つ。
「『アフロディテ・カクテル』をもらおうかの」
いつの間にか、目の前のスツールに、浴衣姿の女性客がひとり座っている。
(ドアが開いた気配なんて、なかったのに)
怪訝に思いながらも、鏡子は注文通りに、ロゼワイン、クレーム・ド・フランボワーズ、コアントロー、ライムジュースを氷とともにシェイクし、カクテルグラスに注いだ。
「うむ。良い腕じゃ。屋台要員に欲しいのう」
鏡子の手をカウンター越しに掴み、女はにやりと笑う。
どこからか東京音頭が流れてくる。カウンターはかき消えて、代わりに不思議な通路が出現した。
逆らえない力で、鏡子は手を引かれた。
……店長はまだ、眠ったままである。
♪♪♪♪
「……さてと」
一二三史人と神威天征と丹裏鏡子を拉致してなお、弁天はまたもゲートをくぐった。
ゲートの端は、胞衣神社につながっていた。まよわしどりの里への近道である。
弁天は、『異界素敵殿方データ』と銘打ったノートを広げた。そこには、自分でこつこつと取材・編集した秘蔵の情報が記されている。
「うーむ。さすがに結界がばりばりに張ってある。粛瑛どのを攫うのはちと、一筋縄ではいかぬかも知れぬのう」
弁天の目当ては、伝説の妖狐、玉藻之前の弟であるところの粛瑛だった。
千年以上もの時を生きた大妖狐を相手に、果たしてどこまで力業が通じるか。それにそもそも粛瑛を見つける前に、大神狐が現れて戦闘になったりなどしたら、少々厄介である。
立ち止まって作戦を練り始めた弁天だったが。
――ざわり。
空間が揺らめき……そして。
「どうした、お嬢さん。道に迷ったんなら案内するぞ? まよわしどりの里はこっち……」
飛んで火に入る何とやら。当の粛瑛が現れた。
最後まで言わせずに、弁天は粛瑛の肩にがしっと両手を置く。
「よし。捕獲成功じゃ!」
「はいー?」
♪♪♪♪♪
東京屈指の怪奇スポット、東区三番倉庫街の西B1棟。
ダークサイドのブラックジャック(と言われているかどうかは定かではないが)闇医者の柩先生38歳独身は、夏の夕暮れ時を、優雅なる趣味の世界の書籍に没頭して過ごしていた。
「やはり女性は、10歳以下に限りますねぇ……」
その呟きだけを聞くならば、いつなんどき当局の手入れを受けてもおかしくはないものを見ているようだが、彼が広げていたのは決して幼い女の子のあーんな写真集ではなく、伝説のカードを集めている少女を描いた、可愛らしいイラスト集である。
あまりにもうっとりと見入っていたので、柩は気づかなかった。
音源もない部屋に、何故か東京音頭が流れ始めたことも、壁にぽっかりと穴が空き、奇妙な女が出現したことも。
女は背後からひょいとイラスト集を覗き込み、やれやれと首を振った。
「認めたくないものじゃのう。自分自身の、若さゆえのあやまちというものを」
「いきなり何ですかあなたは?」
ちょっとパクりすぎな台詞を吐かれて、やっと柩は異変に気づいた。
「わらわは想い出の中に生きる女。少年の日のおぬしの、青春の幻影」
「……何が仰りたいのかよくわかりませんが、すみません、勘弁してくださ……ああっ」
逆らったら恐ろしそうなので、取りあえず謝ってみたが――無駄な抵抗であった。
♪♪♪♪♪♪
危険物専門の骨董屋「RedMoon」の地下には、巨大な武道場がある。
戦闘好きの店主、紅月満の趣味全開の施設である。
今日のところは命知らずの挑戦者はいないようで、彼はひとり黙々と青龍戟を振るっていた。
――と。
いきなり、場違いな東京音頭が鳴り響く。武道場の真ん中に、浴衣姿の奇妙な女が出現した。
ペースを乱された満は青龍戟を床に置き、鋭い声を放った。
「誰だ?」
語気の強さにも、女はひるまない。その手には、『異界素敵殿方データ』と記されたノートがあった。
「愛の女神じゃ!」
「……はあぁ?」
「これ満。おぬし18の若さで『女よりも戦いが好き』とは、青少年として問題だと思わぬか?」
満は中華服の襟を引っ張り、ずれた丸サングラスを直してため息をついた。
「そのデータ、間違ってるぞ」
「ん?」
「『女の次に戦いが好き』だ」
女はまじまじとノートを見直し、大きく頷いた。
「なるほど。それなら話が早い!」
武器から手を離してしまった満に、女はじりじりと近づく。
いまだかつて誰も耳にしたことがない「RedMoon」店主の悲鳴が、武道場に響き渡った。
ACT.1-B■あなたと井の頭音頭――東京side――
「盆踊り大会だとぅ? 屋台も出るだぁ?」
「はい。会場内では浴衣の貸し出しも行います」
弁天が他異界に乱入して狼藉をはたらいている頃、蛇之助は武田写真事務所を訪れていた。
先日、臨時のカメラマンアシスタントとして雇ってもらった御礼がてら、盆踊り企画への参加を打診したところ、武田隆之はえらく気合の入った反応を示した。
「それは、弁天さんの企画か?」
「は、はい。すっ、すみません!」
てっきり、弁天に対する積もり積もった苦情を言われるとばかり思った蛇之助は、先回りして謝った。
しかし隆之は、自分の顎をなでて、にっと目を細める。
「ふっ……。蛇之助。おまえ、俺が『総ざらいの隆之』とテキヤ連中に恐れられたほどの、金魚すくいの達人だということを知らねぇな?」
「……不勉強にして、存じ上げませんが」
「弁天さんのことだ、どうせ何か企んでるんだろう。本来ならまっぴらなんだが、蛇之助がそこまで言うなら耐え難きを耐え忍び難きを忍び、行ってやらんこともない!!!」
「いえあの……ご無理にとは」
「浴衣の貸し出しはいらんぞ。my浴衣で行くからな!」
祭りの誘いに大張り切りな武田隆之35歳バツイチが胸を張ったとき。
「うぉーい、武田のダンナ。機材の積みおろしは終わったぞ」
勢いよくドアが開き、黒いTシャツにジーパン姿の男が事務所に入ってきた。蛇之助には見知った顔である。
「あれ? 蛇之助じゃねェか」
「和馬さん。意外なところでお会いしますね」
「俺はほら、何でも屋だから」
なんと、今日の武田カメラマンの撮影アシスタントは、藍原和馬だったようだ。
「こんにちは。蛇之助さん」
和馬の後ろから、愛らしい少女がひょっこりと顔を覗かせた。
「みなもさんも。奇遇ですね」
「あたし、今日はモデルのアルバイトだったんです。『ロマンチック・コレクション』の撮影依頼が隆之さんに来たので」
今日のみなもは、そでとすそにレースをあしらった水色のミニドレスを着ていた。アップにまとめられた髪には、ドレスと同じ布でできたリボンが編み込まれていて、いつにも増して可憐に見える。
「そうなんですか。みなもさんでしたら、弁天さまよりはよっぽどコンセプトどおりですよね」
「あの。今、井の頭公園で盆踊り大会があるって聞こえましたけど」
「ええ。今日の夜に。例によって急に決まったので、心当たりの方々に参加をお願いしているところです」
「弁天さまが企画なさったのでしたら、あたし絶対行きます!」
顔を輝かせるみなもに、蛇之助は頭を下げる。
「ありがとうございます。みなもさんは、いつもお優しいですねぇ」
「盆踊りか! イイねぇ」
和馬も身を乗り出した。
「浴衣姿の女の子がたくさん来るんだよな。な?」
「ええと」
まだ広報活動中で、開始時刻になってみないと集客状況が読めない蛇之助は首を傾げる。
「……たぶん。あ、取りあえず弁天さまは浴衣を着てるはずですが」
「やー。おれは可愛い女の子と踊りたいんで、弁天さまはどうでもいいっていうかむしろ出来るだけ遠巻きに……いやあのげほんごほん今のなし! 楽しみだなァ弁天さまの浴衣姿!」
正直に心情を吐露し、墓穴を掘った藍原和馬920歳独身であった。
☆ ☆
「こんばんは、弁天さま。先日はどうもありがとうございました。これ、持ってきたんですけど皆さんで――あれ? 弁天さま? 蛇之助さん?」
弁財天宮1階に、大きな手提げ袋を抱えた美青年が訪れていた。後輩の縁結びを依頼して以来、美しい誤解が生じ、すっかり弁天を尊敬してしまった赤星鈴人である。
鈴人は1階フロアを見回して、首を傾げていた。何故か誰の姿も見あたらないのだ。
「留守――じゃないと思うんだけど」
耳を澄ませば、階下から大人数の話し声が聞こえてくる。何か異変でも起こったらしく、揉めているような感じである。
「階下にお客さまがたくさんいらっしゃっているようですわね。しばらく待たせていただきましょう」
鈴人の背後から、澄んだ美しい声が聞こえた。振り返れば、優美な王女を思わせる女性が、大きな包みを持って立っている。
「……あなたは?」
「先日、アンティークショップ・レンで働いていただいた御礼に、六花亭のストロベリーチョコと『雪の大地』と『まくら木』の詰め合わせをお持ちしたのですけれど」
「奇遇ですね。おれもケーキとクッキー焼いてきたんですよ。この前、武蔵野異鏡人材バンクの皆さんにはとてもお世話になったんで」
「まあ……。手作りのお菓子ですのね。申し遅れましたわ、わたくし、鹿沼デルフェスと申します」
「赤星鈴人です」
「嘉神真輝だ。よろしくな」
え? あら? と、デルフェスと鈴人は顔を見合わせる。
いつの間にやら、弁財天宮の来客がもうひとり増えていた。童顔で小柄な高校生、といった風情である。
「安心しろ! おれが来たからには、お菓子は一個たりとも無駄にはならん」
ふたりがそれぞれ持っているお菓子入りの包みを眺め、真輝は顔をほころばせている。どうやら甘いものに目がないらしい。
「それはともかく、妹に伝言を頼まれたんだが、蛇之助はまだ盆踊りの広報活動から戻ってないみたいだな。弁天さまは……地下かな?」
階下から聞こえてくる声は、ますます騒々しさを増している。声の調子から判断するに、複数の男女を、弁天とハナコがなだめすかしているような雰囲気である。
「なんかあったのかもな。行ってみようか。もし揉めてるようだったら、そういうときこそお菓子だ」
鈴人とデルフェスを促して、真輝はすたすたと、1階フロアから地下へ向かう階段へと足を向けた。
☆ ☆ ☆
しばらくして。
弁財天宮1階に、別の来客がふたり、連れ立って現れた。
6歳くらいの小さな子どもと、その保護者然とした美丈夫である。
「あれ? だれもいない。べんてんさまー? じゃのすけさんー? ぼんおどりにきましたよー?」
「どうした月弥。弁天殿はご不在か?」
「ちかのほうかな? こえがきこえる」
「まだ準備中で、お忙しいのだろう。出直すか?」
「えー? まってようよ」
小さな子どもに見えるのは、齢百歳にしてピュアなブルームーンストーンの付喪神、石神月弥であった。本日の年齢設定はことに無性別ぶりが炸裂し、ちょっと危険なほどの愛くるしさが醸し出されている。
美丈夫の方は、便宜上、伯父ということになっている剣の付喪神、有働祇紀だ。月弥に、夕涼みに行こうとねだられて腰を上げた彼は、藍の浴衣に雪駄履きという渋いいでたちである。
「あのー。すみません、盆踊りの会場って、この辺ですよね?」
ふたりの付喪神に、横合いからのんびりとした声が掛けられた。
薬屋『千種』の店主、公称22歳(ちょっぴり詐称気味)の久遠樹であった。紺色の甚平に草履履きという、お祭りに参加するにはもってこいの姿である。人づてに盆踊り大会の開催を知り、暇つぶしがてらに足を伸ばしてみる気になったらしい。
「そうらしいのですが、まだ始まっていないようです」
丁重に答える祇紀に、樹はにこにこと頷く。
「じゃあ、ゆっくり待ちましょうか。どっちみち、屋台で食事を済ませるつもりで、出てきたので」
「あら。ここの主催者は特殊だから、甘やかしちゃだめよ。催促したり苦情言ったりしないと、いつまでたっても始まらないわ」
3人が何となく手持ちぶさたにしていたところ、歯切れの良い声とともにシュライン・エマが現れた。紺と花浅葱の格子に小花と簪を柄付けした、粋な浴衣がよく似合っている。
「これはシュラインさん。こんばんは」
「あー。シュラインさんだ」
挨拶を返す樹と手を振る月弥の隣で、祇紀も無言で頭を下げる。
「こんばんは。樹さん、月弥くん。それと……月弥くんの伯父さんかしら? 弁天さんの行き当たりばったり企画に律儀につきあってあげるなんて、皆さんも物好きね」
「あはは。シュラインさんだって」
笑う月弥に、シュラインは頬に当てる。
「私はまぁ……。半分スタッフみたいなものだから」
呟いて、階下をうかがう。かなりの大人数が集っている気配に、シャープな瞳がついと細まった。
「弁天さんがイベント時に地下に詰めてるってことは……。何かやらかしたわね。私たちも行ってみましょう」
ACT.2■同じ世界で
「これはいったい、どういうことですか?」
浴衣に着替えた隆之と和馬と、撮影用衣装のままのみなもを伴って弁財天宮に戻った蛇之助は、地下1階の『盆踊り大会ゲスト様熱烈歓迎部屋』の光景に度肝を抜かれた。
弁天とハナコと、緊張と警戒の解けない異界からの拉致られ組6名と、何となく事情を飲み込んだ一般参加組7名が入り交ざって、差し入れのお菓子類をつまみながら、自己紹介と雑談などを行っているのである。
「どういうことも何も。せっかくデルフェスと鈴人がお菓子持参で来てくれたゆえ、各異界からのお客人や盆踊りに出向いてくれた方々と、会場の準備が整うまで楽しく歓談しておるのじゃ」
「そういうことではなくて」
「悪いのう。隆之と和馬と蛇之助の分のお菓子はもうないぞえ。みなもには、特別にわらわの取り置き分があるからこちらへおいで」
「はい!」
弁天はみなもだけを手招きした。隆之と和馬はぽりぽりと頭を掻き、蛇之助はがっくりと肩を落とす。
「そう意外そうにするでない。今回の盆踊り大会は、各異界の方々をお招きして開催すると言ったであろうが」
「でもまさか、本当にさらってくるとは思いませんでした」
「まあまあ。紹介しよう、そっちのテーブルの時計回り順に、会社員にして隙間愛好家の一二三史人どの、退魔士兼花屋の神威天征どの、バーテンダーの丹裏鏡子どの、結界守をなさっている妖狐の粛瑛どの、非合法の闇医者でいらっしゃる柩どの、『RedMoon』の店主、紅月満どのじゃ」
「……すみません、皆様。弁天さまがスケールの大きなご迷惑をおかけしたようで」
蛇之助はひとりひとりに頭を下げる。
「コーヒーを入れ直してくださったので、特に実害はないです」
「梅の配送をご手配くださるそうですし、それならまあ、少しくらいは」
「お店には一応、店長がいますから」
史人はおっとりと微笑み、天征はため息混じりにあきらめ顔で、鏡子はマスクを軽く押さえて伏し目がちに言う。
「……困ったな。攫いたくなるほど好かれてるなんてな。おれには御霊神の妻とかわいい孫がいるんだが」
「ハナコさんとお会いできるなら、何百回拉致されても全然OKです!」
「盆踊りねぇ……。ふむ、美女がたくさん来てるみたいだから許すか」
困惑する粛瑛に、むしろ大喜びの柩、鏡子やデルフェスやシュラインやみなもを見て気分を直したらしい満と、反応はそれぞれである。
「あのー。すごく基本的なことを聞いていいですか?」
鈴人が片手を上げる。
「何じゃ、鈴人」
「盆踊り大会って、何のことですか?」
弁天は右手に持っていたクッキーをぽろりと落としかけ、慌てて左手でキャッチした。
「……そうか。鈴人は知らずにたまたま来てくれたのじゃな。実は今日これから、井の頭公園西園にある競技場のスペースを使って、皆で盆踊りを行う予定なのじゃ」
「ああ。それで、浴衣姿のかたが多いんですね。おれ、普段着で来ちゃいましたけど」
「ノープロブレムじゃ。そういうお客人のために、浴衣の貸し出しを行うゆえ」
「わたくしも存じませんでしたわ。日本にまいりましたのは昨年の10月なので、そういったお祭りは初めてですの。是非参加したいのですけど、わたくしにも浴衣をお貸しいただけますか?」
「もちろんじゃ、デルフェス」
「やたいとか、でるんだよね? おれ、よみせってはじめてなんだ。おこづかいももってきたし。たのしみー♪」
「よしよし。ゆっくり見て回るが良いぞ。しかし、今日のちみっこい月弥には母性本能を刺激されるのう」
「……あると思うか? 弁天さまに母性本能が……?」
弁天への挨拶は後回しにして、ケーキとクッキーとチョコレートをひととおりほおばった真輝は、こそりとシュラインに囁く。
「母性本能とは人間の遺伝子に刻まれたプログラムですからね。神さまが持つ必要はなくとも、理解はなさっているでしょう」
シュラインが口を開く前に、ストロベリーチョコをひとつ食べながら、樹がにこにこと呟いた。
幸い、何も聞こえなかったらしい弁天は、おもむろに一同を見回した。
「さてと。鯉太郎とデュークにまかせた会場の準備も整うころじゃ。そろそろ向かうとしようかの」
ACT.3■夏の宴
井の頭公園の西側を流れる玉川上水を越えたところに、広い競技場はある。
中央に高く組まれた櫓を頂点として、色鮮やかな提灯――それは実は提灯ではなく、エル・ヴァイセから種を持ち込んで育てた、ひまわりサイズの発光する花なのだが――斜めに吊られている。
その回りをぐるりと、たこ焼き、鯛焼き、イカ焼き、お好み焼き、焼きそば、焼きトウモロコシ等の食べもの系屋台と、金魚すくいや射的等のアトラクション系夜店が取り囲み、本格的な盆踊り会場が出来上がっていた。
「遅いぞ、みんな! 何やってんだよ」
会場入口には、『普段着でいらした貴方のために。浴衣貸し出し所』なるものが設置されていて、その貸出カウンターでは、既に浴衣を山積みにした鯉太郎が待ちかまえている。
「はい、浴衣借りたい人はこっちな。おれに任せてくれれば、ハイセンスな逸品を選んでやるぞ」
「おねがいしまーす!」
さっそく、月弥が走り寄った。借りる必要のない祇紀も、苦笑しながら後に続く。
一同も何となく、様子見のために見守った。
「よしきた坊主。っと? いや、嬢ちゃんなのか?」
「まだ、どっちでもないよ」
「そっか。若いんだな。若いうちは冒険しないとな! ……ようし、これがいい」
貸出所には更衣室も併設されていた。月弥はさっそく、鯉太郎が差し出した浴衣に着替える。
――と。
「えへへー。どうかな? にあう?」
……■☆▽☆■♪!!!!
鯉太郎の突き抜けたというか1本どころか108本ほどネジが外れたセンスは、一同を驚愕させるに十分だった。
月弥の浴衣は、カラフルな蛍光地に、クレヨンで描いたようなデフォルメもはなはだしい百鬼夜行模様だったのである。しかも模様には蓄光素材が使われているらしく、見ているだけで目が痛くなる。
しかし月弥はご機嫌な様子なので祇紀は何も言わず、屋台巡りをしたがる甥っ子(?)について行くだけであった。
「鯉太郎さん。あ、あたしにもお願いします」
まるで毒気に当てられたように、みなもが勇気をふりしぼって声を震わせる。
「みなも……。無理に浴衣着なくてもいいのよ?」
シュラインが横から気遣うが、みなもはふるふると首を振って、両手を握りしめるのだった。
「夏の想い出です! あたし、冒険します!」
「よっしゃあ、嬢ちゃん。嬢ちゃんにはこれだ!」
鯉太郎が有無を言わさず差し出した浴衣は――荒巻く波の上に、大きな鯛がはねているさまがプリントされ、『大漁』の二文字が躍っている。
「あれは……もしかすると」
「もしかしなくても、大漁旗柄ですねぇ」
真輝が気の毒そうに顔をしかめ、樹は楽しげに微笑む。
大漁旗模様の浴衣に着替えるなり、みなもは弁天のそばに走り寄った。
「弁天さま。どうですか? 鯉太郎さんのお見立て」
「うううううぅむ。ある意味、よく似合うておる(わらわが仕入れた浴衣には、こんな突き抜けた柄はなかったはずじゃが、いつの間に鯉太郎はカスタマイズしたのじゃろう?)」
「あたしと一緒に、屋台巡りをしていただけますか?」
「もももちろんじゃとも」
放心状態の弁天を引きずって、みなもは勢いよく屋台巡りに出かけた。それを見送って、鈴人もカウンターに進み出る。
「初めまして、鯉太郎さん。お手数ですがおれにも」
「はいよ、美形の兄ちゃん。あんたにはこれだ!」
次なるおすすめの逸品には、50個の星と13本のストライプが描かれていて――つまり。
「よりによって星条旗柄かよ! やめろ、鈴人、早まるな!」
隆之が慌てて、待ったをかける。
「あ。武田さん。ご挨拶が遅れましたが、お久しぶりです」
「うん。イスタンブール以来だな。って、それはいいんだが、その柄はやめとけ」
「星条旗じゃねぇぞ、おっさん。よく見ろよ、色が違うだろ?」
たしかに違う。星条旗であれば白地の部分が金色に塗られている。本物よりもえらいことになっていて、それが鯉太郎のこだわりなのかも知れない。
「それは、そうだが……」
「いい柄ですね! 気に入りました」
鈴人は爽やかに笑って、その浴衣を受け取った。
「鈴人がいいんなら、おれは別に構わないんだがな」
ぶつぶつと呟きながら隆之は、携帯した本日のミネラルウォーター『富士山天然水バナジウム92』をごくりと飲む。
その横で、黒一色でまとめた浴衣姿の和馬は、ほっと胸を撫で下ろした。
「うわぁー。俺、自前の浴衣着てて良かったー」
「まったくだ。ここで借りたらどうなってたことやら」
しかし、そういう隆之は、緑色の綿生地に渦と鷲が描かれている浴衣を着ていて、若干、鯉太郎のチョイスよりは地味だという程度であるのだが。
「私にもひとそろい、お願いできますか?」
次なる勇者は、他の異界からの来客、一二三史人だった。穏やかな笑みを浮かべる史人を見て、鯉太郎が選び取ったのは、灰色の地に流麗な筆文字で『隙間愛好』と書かれた浴衣である。
(何で、あんな柄が存在するんだろう……?)
異界組東京組を問わず、一同は疑問符に包まれる。史人はそれなりに満足したようで、笑みを崩さずに更衣室に移動した。
「鯉太郎ちゃん、ハナコにも選んで」
「待ってました。ハナコ姐さんにぴったりのがあるよ」
はい、と渡されたそれは、白地に黒の蝶々模様で、袖と裾と帯に黒レースをあしらった……。
(……ゴスロリ浴衣……?)
ざざっと一同が引く中、ハナコはご満悦である。
「そうそう、こんなの着たかったんだ。ねー。柩ちゃん。柩ちゃんも浴衣着なよー」
「はい、それはもうハナコさんがそう仰るのなら百鬼夜行柄を何百着でも!!!」
初対面早々、柩はハナコの言うがままであった。
この闇医者が小さな女の子に弱いことを鋭く見抜いたハナコは、あっという間に手玉に取っている。ハナコ、なかなかに悪女である。
「そこのおっさんは――ふうん、医者か。じゃあ、これだな!」
問答無用でカウンターに置かれたのは、白無地の浴衣だった。
単なる白装束かと思いきや――背中にはしっかり、赤十字が描かれていた。
「すみません! 鯉太郎どのにまでお手伝いいただいて。ここは私が受け持ちますから、どうぞ屋台巡りなどなさってください」
浴衣は通常の柄物もたくさんある。ハイセンス過ぎる浴衣を望まない客のためには、自分が担当した方が無難だと判断した蛇之助は、貸出係の交代を申し出た。
現に満は、「……このままでいい」と言い置いて、中華服のまま屋台を冷やかしに歩き始めている。
「ん〜? そうかぁ? そりゃ弁天さまに押しつけられたからやってたわけだけど、ちょうど乗ってきたところなんだがなー。まあいいや、任せる」
改めて浴衣貸出担当となった蛇之助の前に、デルフェスが進み出る。
「初めてでよくわかりませんので、スタンダードな柄をお借りしたいのですけど」
「かしこまりました。朝顔柄など、いかがでしょう?」
デルフェスのために選ばれたのは、紺地に水色の朝顔があしらわれた、上品でまとまりのよい柄であった。
「ありがとうございます」
デルフェスは優美に会釈して受け取った。
「あの、それでは私も」
ほっとした顔で、鏡子がカウンターに近寄る。
「鏡子どのには……そうですね、レトロ銘仙柄を」
変り織生地を使用した、大正ロマン風のものが選び取られた。
一歩引いて様子を見ている風の粛瑛と天征にも、蛇之助は声を掛ける。
「粛瑛どのには、こちら、天征どのにはこちらなどがお似合いかと」
粛瑛に差し出されたのは、一見黒に見える暗い紫の地色に、黒の御所車と菱文様のもの。天征にはダークグレーの地色に、夏の雨のような黒の細線が入ったものが出された。
横合いから見ていた真輝が、あからさまに安心した声を上げる。
「俺も普段着で来てしまってどうしようかと思ってたよ。助かった。セレクト頼むわ――で」
カウンターに手を突いて、真輝はまじましと蛇之助を見る。
「あんたが、妹の彼氏か」
「は、はいっ? えーと、あなたさまは」
蛇之助はしばし考える。遠目で見かけたときは、よく似ているので彼女の血縁者に違いないとは思っていたが、年齢と性別の判断が難しく、姉なのか兄なのか妹なのか弟なのかさえ判らなかったのだ。
だが、彼女のきょうだいは、双子の妹と童顔の兄だと聞いているし、しかも妹たちの方が兄貴より長身だそうだから、そこから判断するに。
「お兄さん、の真輝さんですね」
「うん。妹のやつ、急な出張が入ってな。今日はどうしても来れないって伝えに来たっていうか、来させられたっていうか」
「そうですか。し――妹さんは、ご都合がつきませんでしたか」
残念そうな蛇之助に、真輝はぐいと顔を寄せる。
「これからもあいつのこと、宜しく頼むわ。是非ともな!」
「は、はい」
「あいつが機嫌良いと俺も平穏な生活が送れるんで、本気で頼むからっ!」
真顔で詰め寄る恋人の兄のために蛇之助が選んだのは、薄紫に紫の細縞の地模様に、小さくデザインされた黒猫が一列だけ並んだものだった。
他の参加者と引き比べても、ことに可愛らしい柄を出されてしまった真輝は、回りじゅうから口々に「ぴったりですね!」と言われ、非常に複雑な表情である。
一連の様子を見ていたシュラインの、主催者側的分析は、
(弁天さんのスタッフ配置は、いつも勿体ないわねぇ。ベースの浴衣の選択は蛇之助くんに任せて、小物等に鯉太郎くんのセンスを使えば、趣味良く華やかに仕上りそうなのに……)
――であった。
ACT.4■誘惑してよね夏だから
「ねぇー。そこのおじさまとお兄さァん」
「金魚すくい、やっていかなァい?」
「ぴっちぴちの金魚ちゃんたちが、たくさんいるわよぉー」
屋台を見回っていた隆之と和馬に、3人の女性たちから艶めかしい声が掛けられた。
それぞれ、薔薇柄、百合柄、牡丹柄の浴衣に身を包んだ、夢魔とスキュラとラミア――本名は発音不能のため、弁天の命名で、赤い髪がアケミ、褐色の髪がシノブ、緑の髪がミドリと呼ばれている。
ちょうど、みなもと弁天はひとすくい終えて、次の屋台へ移ったところであった。
みなもは例によって彼女らにもみくちゃにされたのだが、その結果、大漁旗柄の浴衣はあちこちデザイン変更されて、それなりにキュートに見えるようになったのは幸運と言えよう。
「あ、いや、俺はその」
テキ屋からのお声がかりであれば腕まくりしていたはずの『総ざらえの隆之』は、色っぽい女性たちのご指名に尻込みした。和馬の方はといえば、当然ながら張り切って進み出る。
「お姉さんたちにそう言われちゃ、挑戦しないわけにはいかねェな。しっかし、ここでこんな綺麗な幻獣に逢えるなんて思わなかったよ」
「あっらぁー。お上手ー」
「手が空いたら、一緒に踊らないか。……えっと、アケミさんだっけ」
「まァ大胆ー。喜んで」
「えー? アケミだけなのぅ?」
「どうせなら、あたしたち3人まとめて面倒見てくれないと、ねぇ?」
いい調子で軽口を叩いて、アケミとシノブとミドリを笑み崩れさせている和馬を、すぐ隣の屋台で焼きそばを担当していたデュークが、じっと見ていた。
と思いきや、やがてデュークは自分の屋台を離れ、つかつかと和馬に近づく。ちなみにデュークも鯉太郎のセンスの犠牲者であるらしく、黒地に真っ赤な上り龍が描かれた浴衣を着せられている。
「やはりどう見ても、そなたは『黒狼のイェルク』に間違いない! 思い出してくれ、私だ。デューク・アイゼン公爵だ」
「おわっ?! だからぁー、それは人違いだって言ってるだろう。俺は幻獣でもあんたの部下でもねェぞ?」
「そなたは多分、記憶を失っているのだ。そう、かつてエル・ヴァイセでもちょうどこんな感じで気軽に後宮の女性たちに声をかけ、それが王に露見しておおごとになって。牢獄送りになったそなたを助け出すために、私がどんなに苦労したことか」
何かいろんな過去を思い出したらしく、デュークは感極まって目を閉じている。
その隙に、和馬は隆之の袖を引っ張ってその場を離れ、騎士見習いリージョア・ルーフォス担当のたこ焼き屋台の前にいたデルフェスに声を掛けた。
「おごりましょうか? お嬢さん」
「ありがとうございます。でも、わたくしは何も食べなくとも支障のない身ですし、それに――男のかたは、ちょっと」
そう言ってささっと、みなもと弁天の後ろに隠れてしまった。
「デルフェスさん。よろしかったら一緒に回りませんか?」
みなもがにっこりする。デルフェスも笑みを返した。
「ありがとうございます。わたくしは女性を専門に護衛するミスリルゴーレムなので、男性との色恋にはあまり興味がありませんの。みなもさまや弁天さまとご一緒できれば光栄ですわ」
「これイヌ! おぬしさっきから何を節操のないことをやっておるのじゃ。あの恋人未満の彼女はどうした? そろそろラブラブになって一緒にボート乗り場に来てくれるものと、楽しみにしておったに」
「いやー。今日はあいついないしー。それに何のことだかさっぱり」
和馬はさらっとすっとぼけ、今度は鏡子が出している(出させられた)臨時屋台のカクテルコーナーに走る。
つい今しがた、たこ焼き8個入り税込み350円を買ったばかりの樹は、はふほふと頬張りながら弁天に言った。
「皆さんとお会いするのは初めてで、だいたいのことひかわからなふぃんですが、もひかしてデューク・アイゼン公爵は、部下に恵まれていなかったんじゃなひですか?」
「優しげな顔をして鋭い御仁じゃのう。そうさな、部下がもう少ししっかりしておったらという言い方も出来ようが、しかしどんな部下を持とうとも全責任は上長が負うべきものゆえ――それはそうと、おぬし、独身かの?」
「はひ?」
「今日の記念に、愛人枠を30、奴隷枠を50、設けてみたのじゃが、好きな方を選んで良いぞ」
「……(たこ焼きを丸ごと飲み込んだらしい)」
いきなり究極の選択を突きつけられ、しかも喉を火傷しかけて、樹は胸を押さえた。
すばやくやってきたシュラインが、とんとんと背中を叩く。
「弁天さん……。免疫のない人相手に、それはあんまりよ」
弁天は不満そうに唇を尖らせた。
「せっかく新たなる出会いを求めて、異界からも東京一般からもお客人を募ったに、皆、速攻でわらわを振るのはどういうわけじゃろう」
「素早いわね。そんな様子なかったけど、他の異界の男性陣にはもうアタックしたの?」
「うむ。史人どのにも天征どのにも粛瑛どのにも柩どのにも満(呼び捨て)にも、サクっと却下されたぞえ」
「ねえ。もしかして、他異界を調査する時間がなかった?」
「そうでもないが……。なぜじゃ?」
「どう考えても弁天さん『を』好みそうな殿方がいないからよ。特に柩さんなんて、ストライクゾーンはハナコちゃんじゃない?」
「うむ、ま、柩どのに関しては確信犯でハナコ用に攫ってきたのじゃ。一度ハナコを、誰かとボートに乗せて見たくての。他の殿方については……うーむ、わらわのどこが悪かったのであろう? 『異界素敵殿方リスト』に不備があったかの」
「今度、他の異界へ行く機会があったら、そこの男性の資料をまとめてディスク化しておくわよ。そしたら買ってくれる?」
「お。『シュライン・ディスク』じゃな! 予約1名頼む」
そうこうしているうちに、浴衣貸し出し所要員の役目を終えた蛇之助が、心配そうにやってきた。
「弁天さま。あまりお客さまたちにご迷惑かけてないでしょうね?」
「おぬしは何ということを言うのじゃ。わらわがいつ――ん?」
弁天の目が、デュークの焼きそば屋台に近づいてくる真輝にはたと止まる。
真輝はそれまでにひととおり、焼きとうもろこしや鯛焼きやたこ焼きを制覇したうえで、焼きそばに臨んだようだった。
「へえ。なかなか手つきがいいじゃないか。85点やろう。……うん、味も合格♪」
焼きそばを炒めるデュークの手際と出来上がりを、真輝は褒めた。
「恐れ入ります。特訓の成果があったというもの」
神聖都学園高等部家庭科教師に太鼓判を押され、デュークは深々と頭を下げた。
「どういたしまして。よう、弁天さんか。……やらんぞ?」
焼きそばを頬張っていた真輝は、弁天と目が合った。と、蛇之助がその間に割って入る。
「真輝さん! 隠れてください!」
「何だ、いったい」
「弁天さまの好みのタイプは、童顔の美形や渋い美形やクールな美形やワイルドな美形やダークな美形やおっとりした美形なんです。なので真輝さんも危険です」
「ていうかそれ、ただの面食いって言うんじゃ」
「そこな堕天使の兄!」
蛇之助をぐいと押しのけて、弁天は真輝に歩み寄る。
「苦しゅうない。愛人枠30と奴隷枠が50空いておるが、どうじゃ?」
「友人という選択はないのか?」
焼きそばを食べる手を止めず、真輝は冷静に弁天を見返す。
「妹が甚くここを気に入ってるようで、礼言っとくよ。あいつは人の好き嫌いが激しくてな、嫌いな奴は徹底無視なんだ。でも弁天さんとは気が合うんだろ、妙に活き活きしてやがる」
苦笑する真輝に、蛇之助も頷く。
「ああ、それは――よくわかります」
「そんなわけだ。不束な妹だが、これからも仲良くしてやってくれ」
「……あいわかった」
神妙に言った後で、弁天はちらっと真輝を伺う。
「で、愛人と奴隷のどっちが?」
「お友達から始めましょうって言ってるだろーが!!!」
真輝はげっそりした顔で、蛇之助の肩に手を置いた。
「あんた、よく毎日、こんな女神さまと顔つき合わせていられるな……」
「弁天さまー! 愛人募集中って本当ですか!」
何をどう聞きつけたやら、焼きトウモロコシを片手に鈴人が走ってきた。
「おれ、弁天さまのこと凄く尊敬してるんです。憧れてます。まだ枠があるんなら、愛人枠に1名、お願いしまーす」
「うむ、よろしい。よくぞ言った」
「あとで一緒に、踊ってくださいね」
「もちろんじゃ」
弁天がどこからか団扇を取り出して、左手で仰ぎ始めたとき。
石頭こと騎士イシュア・アーダム担当の射的コーナーで、辣腕を振るっていた隆之がすっ飛んできた。
「待て待てー。早まるな、鈴人! 親御さんを泣かせる気か」
鈴人はきょとんと隆之を見る。
「でも、おれ、もう成人してますし。何か問題でもありますか?」
「大ありだ。愛人の意味がわかってて言ってんのかおまえは!」
保護者モードで鈴人を庇う隆之に、弁天はふふっと含み笑いをした。
「そう照れるでない、隆之」
「……ハァ?」
「実はおぬしがわらわを愛しているというのは、よぉく判っておる」
「判ってない。ていうか、愛してねぇぞ?」
「気持ちは有り難いが、わらわはおぬしの再婚相手にはなれぬのじゃ。じゃが今回は特別に奴隷枠を50設けたゆえ、そこになら」
「奴隷限定かよ!」
焼きそばを渡したとたん騒々しくなった連中を静かに眺め、デュークは黙々と次の玉を炒める。
彼の前にゆらりと、煙管をくわえ扇子を手にした、剣の付喪神が立った。
「ご注文ですか?」
「いや」
長い前髪は、淡い水色の瞳をすっかり隠してしまっている。だがその口元は、滅多に浮かべない微笑をたたえていた。
「黒竜殿。その節は、甥っ子と店の物達が世話になった。感謝している」
「あなたが月弥どのの伯父上であられますか。こちらこそ、お店の付喪どのがたにはお世話になりました。不調法ゆえご迷惑をおかけし、まことに申し訳ない」
「ねー。おじさんー」
「どうした? 黒竜殿の焼きそばが欲しいのか?」
「ううん」
月弥が何度も祇紀の袖を引っ張る。何か言いたげな甥に祇紀は身をかがめ、小さな手が耳元に寄せられるのにまかせた。
「あのね。あいじんてなに?」
「……何だろうな」
「じゃあ、どれいは?」
祇紀はふうと紫煙を吐き、煌々と輝き始めた満月を見上げる。
「そういう質問は、もう少し大きな姿になったときにしなさい」
ACT.5■ダンシング・オールナイト
「さて。会場にお集まりの皆様。ご用意は宜しいですか?」
「これから井の頭弁財天主催の、盆踊り大会を開催致します」
「って、まだ始まってなかったんですかポチさん」
「皆様が屋台や夜店を満喫なさるまで様子見だったんですよフモ夫さん」
「……この喋り、かなり無理があるな」
「公爵のご命令です。がんばりましょう――では、司会はわたくしポチこと騎士ポール・チェダーリヤと」
「フモ夫こと騎士団長ファイゼ・モーリスがお送り致します」
「弁天さまその他大勢の方からのリクエストにより、東京音頭、炭坑節、越中おわら節」
「久遠樹さんからのリクエストにより、アンパンマン音頭、おどるポンポコリン」
「シュライン・エマさんからのリクエストにより、各種ヘヴィメタ、レゲエ、ジャズ」
「リクエストは常時受け付けております、お気軽にどうぞ」
「なお、ラストは井の頭音頭で締めさせていただきます」
「それではいってみましょう。ミュージック、スタァァァート!」
櫓の下で、マイクを持ったポールとファイゼが仕切る中、東京音頭が流れ出す。
最初の曲はお客様全員参加ということで、主催者サイドと、シュライン、みなも、隆之、和馬、樹、鈴人、デルフェス、真輝、月弥、祇紀がぐるりと輪になり、その間に、史人、天征、鏡子、粛瑛、柩、満が混ざる形となった。
弁天の顔を立てる形で最初の曲だけは参加したものの、祇紀はすぐに踊りの輪から抜け、一歩離れた場所で一同を眺めていた。
「……渋いのう」
祇紀にはまだ、愛人枠奴隷枠について打診していなかったことに思い至り、弁天はいそいそと側へ行く。
「祇紀どのには、好いた娘御などはおありかえ?」
あまりストレートなのは逆効果らしいと、何となく学習した弁天は、搦め手な言い回しを使ってみた。
しかし祇紀は苦笑を浮かべつつ、
「弁天殿。人も神も、所詮は何かに拘束される、奴隷のようなものかも知れませぬ」
切り出される前に、さらりと封じる。
「へえ。大人だなぁー」
ちゃっかり横で聞いていた鯉太郎が、感心して頷く。
「で、弁天さま。自分の縁結びも他人の縁結びもうまくいってないみたいだけど、おれの本来の仕事は?」
「案ずるでない。取りあえず、1カップルは確保してある!」
踊りの輪から、柩とハナコをずるずる引っ張ってきた弁天は、ほい、と鯉太郎に渡した。
「ひどーい、弁天ちゃん」
「大丈夫です! 何があってもハナコさんは私が守ります」
「柩ちゃんの嘘つき。踊ってる間中、月弥ちゃんのほうばっかり見てたくせに!」
「そ、それは……」
「はいよー。2名さまご案内ー」
どうもうまくいってなさそうな2名は、かくして時間旅行へと旅立った。
後で鯉太郎に救出されるまで、中世イタリアでボルジア家の陰謀に巻き込まれることになるのだが、それはまた別の話である。
隆之も踊りから抜けて、あちらこちらの写真を撮っていた。
彼のカメラには、いろんなものの『正体』が写ってしまうため、今回の写真は現像するのがかなり怖いなと思いながら。
カメラを向けた先に、臨時屋台のカクテルコーナーがあった。
丹裏鏡子が臨時のバーテンダーをつとめるそのスペースは、いわば盆踊り会場の隙間的場所であり、三々五々、異界からの来客はそこでくつろいでいるようだった。
「落ち着きますね」
「……ほっとします」
「それなりに楽しいけどな」
「あ、俺に『テキーラ・ドリーム・カクテル』を」
史人と天征と粛瑛と満が口々に言い、
「だめよ。満くんは未成年でしょう」
と、シュラインに突っ込まれている。
「異界集団に馴染んでるなァ」
シャッターを切りながら隆之が言うと、シュラインは目を細めた。
「一二三さんとは、某喫茶店の常連仲間なのよ」
「あの……鏡子さま」
おずおずと、デルフェスが声を掛けてきた。
「『ブラック・レディ・カクテル』を作っていただけませんか? 弁天さまにお持ちしたいのです」
鏡子は手際よく、氷とダークラム、クレーム・ド・カシス、アロマチックビターズをミキシンググラスでステアしてカクテルグラスに注ぎ、マラスキーノ・チェリーを飾って、デルフェスに渡したのだが――ふとした拍子に。
マスクが、ずれた。
鏡子に息を吹きかけられたデルフェスが、弁天にカクテルグラスを渡すなり……一波乱が起きた。
カクテルを飲み干した弁天に、ひしと抱きついたのである。
「弁天さま。お慕いしております」
「どどどうしたデルフェス。おぬしに何が起きたのじゃ〜!」
「わたくしも愛人枠に是非加えてくださいませ。奴隷枠でもかまいませんわ」
「ちょっと待てい。落ち着けと言うに」
「どうか私とボートに乗ってくださいな。めくるめく時間旅行に出かけましょう。さあ鯉太郎さま、お願いいたしますわ」
「はっはぁ。こいつはいいや。はいよ、2名様ご案内ー」
ACT.6■EPILOGUE――RAIN DANCE MUSIC――
幸い、鏡子が吹きかけた息はごく少量だったので、デルフェスはほどなくして正気に戻り、弁天は時間旅行に旅立たずに済んだ。
「あー。やれやれじゃ」
弁天はぱたぱたと団扇で顔をあおいだ。
「ところで弁天さまに、ちょっとお聞きしたいことが」
踊り疲れて小腹が空いたらしく、イカ焼きを頬張りながら樹が言う。
「何じゃ樹。愛人枠の残りはあと29じゃ。早い者勝ちじゃぞ」
「いえ、そうじゃなくて。今日は、花火とかはないんでしょうか?」
夜空を見上げる樹に、弁天は残念そうに首を振った。
「それがのう。花火大会も同時に行いたかったのはやまやまじゃが、井の頭公園周辺は住宅街での。花火は禁止なのじゃ」
「……おい弁天さま。いきなりそんな夢のないこというなよ」
和馬が額の汗を拭っている。首尾良く、アケミ・シノブ・ミドリと踊ってきたらしい。
「あの、あたし、出来るかもしれません」
みなもが挙手する。
「何じゃと? 花火をか?」
「花火もどきですけど。……水の中でなら。以前、弁天さまに教えていただいた芸を応用すれば」
「そうか! みなもは雨の色を変えられたな――ならば」
弁天は両手を天にかざす。
時ならぬ雨雲が、井の頭公園上空に出現した。
ぼつぼつと降ってきた雨粒は、みなもの身体に触れるなり――256色の、輝きを放った。
会場内に、歓声が沸き起こる。
広い東京の 気晴らしどころ
ここは公園 井の頭ヨ
池に浮草 ういてはいるが
いくら眺めても 根は切れぬ
池にそり橋 弁天様は
お堂造りの 総朱ぬりヨ
池に浮草 ういてはいるが
いくら眺めても 根は切れぬ
【井の頭音頭 作詞:野口雨情】
水の花火が振りしきる中、異界に集うものたちの、踊りの輪は続いていた。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0086/シュライン・エマ(しゅらいん・えま)/女/26/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1252/海原・みなも(うなばら・みなも)/女/13/中学生】
【1466/武田・隆之(たけだ・たかゆき)/男/35/カメラマン】
【1533/藍原・和馬(あいはら・かずま)/男/920/フリーター(何でも屋)】
【1576/久遠・樹(くおん・いつき)/男/22/薬師】
【2199/赤星・鈴人(あかぼし・すずと)/男/20/大学生】
【2181/鹿沼・デルフェス(かぬま・でるふぇす)/女/463/アンティークショップ・レンの店員】
【2227/嘉神・真輝(かがみ・まさき)/男/24/神聖都学園高等部教師(家庭科)】
【2269/石神・月弥(いしがみ・つきや)/無性/100/つくも神】
【2299/有働・祇紀(うどう・しき)/男/836/骨董屋店主・剣の付喪神】
〈ゲストNPC/性別/年齢/職業/所属異界/所有クリエイター〉
【一二三・史人(ひふみ・ふみひと)/男/不詳/会社員・隙間愛好家/basement cafe/白子星(IL)】
【神威・天征(かむい・たかゆき)/男/26/退魔士・花屋/FLOWER SHOP【神-JIN-】/紫苑西都(IL)】
【丹裏・鏡子(にうら・きょうこ)/女/29/飲食店店員・バーテンダー/cafe & dining bar :*: Testa di drago/江間なっく(IL)】
【粛瑛(しゅくえい)/男/不詳/結界守(妖狐)/怪奇倶楽部/緋烏(IL)】
【柩(ひつぎ)/男/38/非合法の闇医者/東区三番倉庫街/ミズタニ(IL)】
【紅月・満(くげつ・みつる)/男/18/RedMoon店主/RED MOON〜紅月堂〜/渚女悠歩(W)】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、神無月です。
この度は、他異界に迷惑かけまくりの盆踊り大会にご参加くださいまして、まことにありがとうございます。
おかげさまで個性的な方たちが集い、にぎにぎしい催しとなりました。
予測はしておりましたが、いつにも増して長文になってしまい……お許しのほどを。
□■シュライン・エマさま
すでにスタッフを越えて、企画段階からお手伝いいただいているような気がいたします。どうぞ今後とも、弁天の面倒を見てやってください(え
□■海原みなもさま
大漁旗柄浴衣なぞチョイスして申し訳ありません。デザイン変更したら、かわいい、のでは、ないかと、思います、が(弱気)。締めの花火、お疲れ様でした!
□■武田隆之さま
金魚すくいのワザを、是非拝見したかったのですが……。担当がお姐さまがただったので……。最初は、すくわれる金魚たちも、言葉を話すお嬢ちゃんたちにしようと思ってましたが、それはあまりに鬼畜ですよね(笑)。
□■藍原和馬さま
こ、こらっ! 他の女の子と踊ってどーすんですか。でもおかげさまでまたひとつ、『イヌ』氏に新しいエピソードが加わりました。
□■久遠樹さま
初めまして! ご参加ありがとうございます! 薬屋さんとしての設定を生かせなかったのが少々心残りですが、少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。樹さまは、お茶目な方ですね。
□■赤星鈴人さま
勇者登場!(笑)。で、でも、武田さんも仰っていましたが、早まらない方が……。
□■鹿沼デルフェスさま
デルフェスさまに弾けていただけるとは光栄の至りでございます。せっかくだから、時間旅行に旅立って頂きたかった気もしたり。
□■嘉神真輝さま
依頼では初めまして! いつも妹さんにはお世話になっております。弁天がアレでナニですが、どうぞ今後とも宜しくお願い申し上げます。
□■石神月弥さま
ちみっこい月弥さまに、ハートを打ち抜かれましてございます。その愛くるしさは、各方面にも多大なる影響を与えていたようで……。
□■有働祇紀さま
初めまして! 甥御さんにはいつもお世話になっております。弁天をさらっとあしらえる男性は珍しいので、新鮮でございました。
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