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『 さざなみの貝殻のイヤリング 』
暑い夏。
制服は黒を基調とした服装から白を基調としたデザインに代わる。彼女が着ていたのも黒に近い紺色のブレザーから白のカッターシャツに、ネクタイも赤から青へと変わった。スカートの生地も気持ち夏仕様で薄くなっている。
女子高生のお洒落は個性というモノを無視した制服においてはスカートで決まる。
生徒手帳の最初の数ページに渡って書かれている校則にはスカート丈は膝下と決まっている。でもそれはほとんどの女子生徒が無視だ。スカートを折って膝上。でも制服検査がある時は折ってあるスカートを戻して膝を隠す。
スカートの短さが何よりもの命。彼女もまたスカートを折って膝を出している。
「ちょっと足には自信もあるしね♪」
少女はスカート短くない? と訊いてきた母親にそう得意げに言って、そしてその後に母さんに似てさ、と付け足すのも忘れない。そうすれば単純な母などを黙らすのは簡単な事だ。
自慢の足。
だからその自慢の足の美を損なうような真似は絶対にしたくない。冬場に短いスカートの下に折ったジャージ、もしくは体育のハーフパンツを履くなんてもってのほかだ。
少女は雪が降る寒い冬の日でもそれはやらずに、周りに苦笑を浮かべさせたほどだ。
「根性が違うのよ」
それがその時の「寒くない?」と訊かれる度に言っていた返し文句で、そしてそれは冬が終わり新学期となって春から夏になっても少女の透明なルージュが塗られた口から紡がれていた。すっかりと口癖になっていた。
その少女のこのところの興味はとあるセールスマンと話をする事だ。
外見は27歳ぐらいだろうか? 目は閉じているのか開いているのかわからなくだけどしっかりと見えてはいるらしい。
服装は痩身の体を黒いスーツで包み込み、ネクタイも黒で、ついでに持っているトランクなんかも黒で、実は少女はその徹底した黒の統一ぶりに自分と同じ匂いを感じて、それでまず最初にそのセールスマンに彼女から声をかけたのだ。
「それにルックスも良かったしね」
最初はそういう風で声をかけたのだがしかしこのセールスマン以外に全てを知るかのような知識と聡明で柔軟な思考を持っていて、そのくせ常に飄々として掴み所も無く、それがまた気に入った。
今では少女の一番の友達だ。
「ハァーイ、影さん。売り上げはどうかしら?」
砕けた感じで話し掛けると、セールスマンはにこりとその美貌に満面の笑みを浮かべた。実に自然で優雅な微笑。しかし他人の望む自分をいつも演じている少女にはそれが彼の営業スマイルであることが簡単にわかった。
「ええ、まあ、上々ですよ。先ほどは【影針】を売ってきましたね」
「【影針】?」
「はい」
「え、どんな商品なの?」
嬉々として目を輝かせる少女に影、としか自分のことを名乗らないセールスマンは【影針】の実演をして見せた。
神社の境内で先ほど散歩に来ていた老婆が巻いていったポップコーンを食べていた鳩であったが影によってその影に【影針】を刺された事によって身動きはできない。
体を動かせずに苦しそうに鳴く鳩を見て少女はけらけらと笑った。本当に無邪気に。
その少女の横顔を影はじっと見据えている。その時の彼はおそらくは黒衣よりも白衣の方が似合ったであろう。そう、その時の彼の様子はまるで試験官の中の液体もしくは実験容器の中のモルモットを見る科学者のような雰囲気をかもし出していたのだから。
ざわりと神社の社を取り囲む森が震えた。木々がざわざわと打ち震え音を奏でる。まるでさざなみのように。
「樹海とはよく言ったものですね。本当に風を奏者に木々が奏でる音は波の音のようにも聞こえます」
静謐なる黙(しじま)を壊しその場に大音量で流れた木々のざわめきにどこか薄ら寒そうに半袖から出た腕に鳥肌を立てていた少女はその腕を摩った。
そして隣の影を横目で見据えるこの男と一緒にいるといつもどこか薄ら寒い。気温が30度を超えるこの真夏にこんな薄ら寒さを感じるなど異常だ。
「どうかしましたか?」
「いいえ、別に」
少女は小首を傾げた。
そう、少女はとある性の持ち主だった。
影と言う男に何かしらの物を感じていながらそれなのに彼にくっついているのはその性ゆえ。
「ねえ、影さん」
「はい?」
「明日、球技大会なのよね。でもさ、あたしはサッカーなんてやりたくないわけよ。だってこの自慢の足をボールと間違えて、ってか絶対にボールと間違えたとかぬかして蹴ってくるバカな女がいるからさ、だから球技大会を中止にできる道具なんてのは無い?」
小首を傾げる少女に影はふむと細い目を細めて頷く仕草をした。
「では、これなどいかがでしょうか?」
「これは?」
「【雨天図】と申す商品でございます」
「【雨天図】?」
少女が覗き込んだそれは白地図であった。
「そうですよ。この【雨天図】に針を刺し、雨を降らせたい時間を書き込めばそれで良いのです。そうすればその時間に雨が降るでしょう」
影はにこりと微笑んだ。
+
気だるい朝の始まり。
すずめの歌声はうざい。
ついでに台所から聞こえてくる母親の包丁でまな板を叩く音もうるさいし、隣の部屋から聞こえてくる弟のMDコンポの音もうるさい。もちろん、父親の電気剃刀の音も。
うるさい。
五月蝿い。
ウルサイ。
この世は煩わしい事ばかりだ。
それでもあたしはこの唯一のあたしが主である部屋から出た瞬間に暴君から誰もが理想とする少女に変わる。
さながらあたしの部屋以外の世界が舞台であるかのように。
「おはよ、母さん。手伝うよ」
「じゃあ、ごはんをよそってくれる。ああ、その前に…」
「降りてくる前に不肖の弟は起こしておいたよ」
「本当に気の利いた娘」
あたしは母親の理想の娘を演じる。
「姉ちゃん、ごめん。この宿題の問題を教えて」
「何よ、朝から。そういう事は昨日の夜に聞きなさいな。しょうがないわね」
弟の理想の姉を演じる。
「今度の県大会の調子はどうだ?」
「もうばっちしよ。自己新記録を出したし」
「そうか。だったら最新のビデオを買って、応援に行かないとな」
「ああ、だったら今度の文化祭でうちのクラスがやる男女混合のシンクロを撮ってよ」
父の理想の娘を演じる。
「おはよう。ねえねえ、数学Bの宿題やってきた?」
「あ、うん、それはもうばっちしと」
「あ、じゃあ、ごめん。写させて」
「えー、ダメよ。それはあなたのためにならないでしょう?」
「うーん、そこをなんとか」
「しょうがないわね。じゃあ、幻の焼きそばパンで手をうってあげるわ」
「了解」
「もう」
理想の友達を演じて、
「おはよう」
「おはようございます、先生」
「うーん、ちょっとスカート短くない?」
「え、そうですか? ああ、多分きっとスカートを作った時よりも足が伸びたんだと想います」
「まったくもー。明日までに戻してきなさいよ」
「はーい」
理想の生徒を演じる。
スカートの丈が短いのは個性を無視した制服を着るという学生時代の中での足掻きにも似た抵抗。きっと卒業して大学に行ってそこもまた卒業して、OLでもやって結婚して子どもを産んで、それでクラス会なんかしたらそれをネタに盛り上がるのだ。どんなに寒くっても短いスカートで過ごした高校生時代を。
だけどそれはあたしにとっては何の感慨も無い事象。
ただの演技。
日常という劇、学校生活という舞台での演技。
そしてそこに響く物音や声は雑音。
そう、ノイズ。
すべてがあたしにとってはノイズ。
雑音。
誰にも見せない。
本当のあたしを誰にも見せない。
誰にも。
ノイズが溢れた世界ではあたしは見せない。
あたしがあたしを見せるのはあたし独りきりのあたしの部屋でだけ。
教室に入ると、今日の午前中に行われる球技大会に関する皆の意気込みが伝わってくる。
その空気にあたしは辟易した。
「雨、本当に降るのかしらね? ほんと、頼むわよ、影さん」
雨なんてまったくと言っていいほどに降りそうも無い青空を見つめながらあたしはやっぱり辟易としたため息を吐いた。
…………だけどそのちっとも雨なんて降りそうも無かった青空は――――――――
+
その黒衣の男は開いているのか開いていないのかわからない目で学校を見据えながら「ほぉー」と感嘆の声を漏らした。
「これはまた景気良く雨をお降らしになられた。しかしその代価はあなたの幸運ですよ?」
肩を竦めたその男はバケツをひっくり返したように激しく雨が降る中を校舎にたいして身を翻して、立ち去っていった。
+
あたしはご機嫌だった。
サッカーをやらずに済んで大万歳だ。
お昼休みの終わりを告げるチャイムの音と同時に雨もあがる。
「やぁー、綺麗に晴れたねー」
そう言ったあたしにクラスメイトは不満そうな顔をした。
だけどあたしはやっぱり嬉しくって笑いが止まらない。
しかし不思議な事もあった。
7月15日。夏休み最初の県大会、その最終調整で忙しいのにしかし・・・
「何よ、これは・・・」
プールの水が消えていたのだ。
+
影がいつものように神社の社に腰を下ろし、境内で老婆が巻くポップコーンを食べている鳩を見ながらMDウォークマンで音楽を聴いているとあの少女が来た。
「ハァーイ、影さん。何を聴いているの?」
「いえ、とある音楽ショップでいただいたMDを聴いていたのです」
「そう」
少女は元気が無さそうだ。ふぅーっと吐いたため息で前髪をあげる。
「どうしたんです、元気が無さそうですが?」
「いやね、県大会で負けたのよ」
「おや、それは残念でしたね」
「ほんと残念よ。なんか知らないけどプールの水が無くなっていて、学校側がプールの水代をケチって入れさせてくれなかったから満足に練習ができなくって、おじゃん。練習ではベストタイム更新していたのにさ。県大会から全国大会に行った子よりも上のタイムだったのよ? っとに、冗談じゃないわよ。しかもクラスで文化祭にやる予定だったシンクロも無しになっちゃうし、あーぁ。ほんと、なんでこんなにツイていないんだろう」
少女がげんなりとため息を漏らした。だけどこれに影は口だけで笑う。
「おや、これは奇な事を仰る。幸運があったが故の不幸せだというのに」
「え? 影さん、何か言った?」
「いえ、別に」
「はぁー。でも本当になんか気が抜けちゃって」
「気が抜けてですか?」
「ええ、気が抜けたわ。あたしはね、演技をしているのよ、演技を」
「ほぉー」
そこで影はどこか興味深そうな顔をした。
「何故?」
「何故って、何故かしら? 確かに全てをあたしは五月蝿く想うのよ。あたしがあたしでいられるのは、あたしが独りきりでいるあたしの部屋だけ。他の場所では全てが五月蝿く想えるの。だからあたしはその雑音を消すために演技をするの。その人があたしに望むあたしを演じる。そうすればあたしはその雑音に苦しめられない」
「そんなにその雑音ははっきりと聞こえるのですか?」
そこで少女は影に微笑んだ。
「ええ、それはもうはっきりとね」
ぞくりとするほど美しく。
「だから常々想うのよ。この世を美しき音で満たす事はできないかと。そうすればあたしはあたしを欺かずに生きていける。短いスカート、ただそれだけの喘ぐような息苦しい抵抗をせずとも」
少女はその場でくるりと回った。そしてにこりと影に笑う。
「影さん。あなたはそんな商品を持っていて?」
そして影は開いているのか閉じているのかわからぬ目で少女を見据え、唇を動かした。何か悪い相談でもするかのように囁くように。
「なるほど。だったらこの商品をご提供いたしましょう。この【さざなみの貝殻のイヤリング】を」
「【さざなみの貝殻のイヤリング】?」
「はい。これを身につければあなたは雑音から解放される」
影は少女に【さざなみの貝殻のイヤリング】を渡し、少女はそれをつけていたピアスを外して身につけてみた。
瞬間、世界はとても綺麗なさざなみの音に包まれる。
まるで夢を見ているように。
少女の顔に満面の笑みが浮かんだ。
まるで夢見る幼き少女のように。
そんな少女を影は見つめ続けた。
まるで実験結果を考察する科学者のように。
+
雑音とは少女にとって何なのであろうか?
私はかつて光を作った。二つの光を。
大きな光には生きるための名前と心を、
小さな光には大きな光を護る為の器と力を、
――――――与えた。
光達は私の目であり耳であった。
光は闇の中で自分を知り、世界を知った。
彼女と彼に目的は無かった。
作られたモノは私を知らない。
そして自分たちの存在する意味を知らない。
永遠の迷子。
当然だ。
なぜならば彼女と彼は私が考えてもみなかった反応をしてみせたのだから。それで迷子になった。
そう、彼女と彼は私の目であり耳であった。
その彼女と彼が人間を好きになっていくようになったのだ。
それは時には絵描きであった。
それは時には陰陽師であった。
それは時には海賊であった。
それは時には闇の調律師であった。
また人以外のモノにも興味を持っていた。
それは時には人魚であった。
それは時にはスノードロップの花の妖精であった。
光達はどうやらイヅナという種類の妖怪だかなんだかを飼い始めた。
大きな光と小さな光は数々の事件に関わっていった。
時には自分から。
時には成り行きで。
そんな風に人々と関わっていく中で彼女と彼は成長をしていった。
笑い、
怒り、
泣き、
喜び…
そう、光達は私の想ってもみなかった反応の数々を見せてくれた。
そして私はそんな光に多大な影響を与え、今現在進行形で光を成長させている人間に興味を覚え、
それで私は気付くといつしか人の姿をとるようになった。
そうして私は人と触れ合うようになった。
人は確かに面白かった。
しかし私は光達と違い、人間を好きだとは思えなかった。
一体彼女と彼はどうして人間を好きだと想うのか?
その感情をわからぬままに私はこうしてセールスマンとして人に触れ合い、人を観察している。
「さて、このたびのお客様は少女。女子高生。彼女が私からお買い求めになられたのは【さざなみの貝殻のイヤリング】。これが身につけた人にもたらす効果はさざなみの音色。それは世界に満ちる雑音を消し、安息なる日々を約束する。しかしお忘れになられてはいけません。幸福の払い過ぎは自身を不幸にするのと同じ故、それに気付かずにいると…」
+
彼女は完璧だった。
生徒からも教師からも愛されて、
運動も勉強も人並み以上にできて、
容姿も抜群で、
本当に絵に描いたような優等生。
そんな彼女がとても息苦しそうに見えたのはきっと彼女の短いスカートのせい。
どこまでも優等生のはずの彼女がはいているその短い制服のスカートは私にはファッションではなく世界の息苦しさに彼女が喘いでいるように見えたのだ。
だから私は彼女に対して砕けた調子であたった。
彼女が嫌うような話を大声でやったり、
彼女に挑戦状を突きつけたり、
まあ、その他も色々。
それを彼女は実に軽やかに越えていってくれたし、
それに足を蹴ってやるわ、などと宣言していた球技大会が雨が降って潰れるなんてこともあった。
しかし完璧だったはずの彼女の演技が崩れた。
それは夏休み直前にプールの水が無くなってしまうという不可思議な事から始まった。
そのせいで彼女は県大会の練習ができずに全国大会出場が確実だと言われていたのに負けて、クラスの文化祭での演目もダメになったり、そしてそれが始まった…。
「あの娘ってさ、最近なんか変よね」
「聞いた? あの娘、裏ですごい事をしてるらしいわよ?」
などと生徒たちは彼女から離れていき、
そして教師にも、
「最近の彼女はしょうがありませんな」
などと評価を下げている。
それに彼女の家族も最近はよろしくないらしい。
一体彼女の身に何が起きたのだろうか?
あれだけ他人が望む自分を演じていた彼女が、だけどそれをやめてしまった。
だから私は彼女のその変化の訳を知るために彼女の後をつけていた。
+
世は美しいさざなみの音に満ちていた。
あたしが気にしていた雑音とは他人の視線だったのだ。
しかしあたしは影さんから買ったこの【さざなみの貝殻のイヤリング】によってそれから解放された。
偽りの自分を捨てた瞬間に、
家族の目も、
友達の目も、
教師の目も、
みんな気にしなくなった。
解放されたあたしは自由だ。
あたしは飛べる。飛べる。飛べる。
どこまでだって飛べる!!!
しかし、
しかし、
しかし、
…………最近、何かがおかしい。
前はあたしが主のあたしの部屋に居るのが好きだった。でも今はそこが何処よりも息苦しい。
あたしは文化祭が行われているその日、屋上に居て、空を見上げていた。
【さざなみの貝殻のイヤリング】はあたしに途切れる事無くさざなみの音色を届けてくれる。だけど…
「うわぁー」
あたしは大声を出した。
しかしその大声すらもさざなみの音に掻き消される。
そうだ!!!
今、あたしは唐突に気付いた。
家族、友人、教師…それらは何でもなかった。一番の目は自分の目であった。
あたしは自分で自分を追い込め苦しめていた。
雑音とはそんな本当のあたし(純粋な自分として生きたいという願い)の声であったのだ!!!
そう、あたしの目の前に現れたもうひとりのあたしに出会って。
「ごめん。苦しかったね」
あたしは彼女に笑いかけた。
しかしもう襲い。
彼女はあたしの首をしめた。
ぎりぎりと彼女の指がものすごい力であたしの首をしめる。
あたしは手を青い空に伸ばす。
聞こえてくるのはさざなみの音。
だけどあたしが聞きたいのは・・・
「あたしは生きたいのよぉー」
あたしがそう言った瞬間にそのもうひとりのあたしが消えた。
そしてあたしは気付く。
「ああ、そうか。あたしは死にたかったんだ」
そう、あたしはどこかで徹底的に今の世界に飽きて、冷めて、夢すら見れずに…まるでずっと朝、すずめの声を聞きながら天井を見ているかのようなそんな見た夢から覚めて現実だけを直視しているようなそんな感覚の中にいたのだ。
それをあたしはつまらないと想って、死んでしまいたいと想って、それがあのもうひとりのあたしを苦しめて、それが雑音になっていた。
あたしは【さざなみの貝殻のイヤリング】を外した。
雑音はもうしなかった。
するのは校舎に響くみんなの声と、
屋上にやってきたあたしを嫌いなあの娘。
だけど今ならあたしはあの娘としゃべれる感じがした。
【ラスト】
北館校舎の屋上にある影からひとりの男がすーっと浮き上がった。それはまるでその男が影に沈む光景を写したビデオを逆回ししたような光景であった。
「なるほど。彼女が払った幸運とは自分の本心を見ずにすむという幸運ですか。しかしそれは結果的には良く働いたようですね。色んなモノ(幸福)を無くしながらも彼女はまた新たな幸福(親友)を得た。出会いと別れを繰り返す、それが人間ですか。そして見ずに済むモノを…見たくないモノを見てしかし成長するというのも。ああ、これだから人間は本当に面白い」
影はにこりと笑い、
そして影に沈んだ。
そうして彼が次に現れたのは街中の裏通りの影で、
そこにはまるでそれを予見していたかのように男が居て、
それで影はその男ににこりと笑いながら唇を囁かせるのだ。
「私は、何者にもなり何者にもならず、此処に存在し此処に存在しない。幸も不幸もお望みのままに、貴方様は何をご所望致しますか?」
― 了 ―
【今回の商品の一覧】
【影針】
針を影に刺す事でその影の持ち主の動きを封じられる。
【雨天図】
この【雨天図】に針を刺し、雨を降らせたい時間を書き込めばそれで良い。そうすればその時間に雨が降る。
【さざなみの貝殻のイヤリング】
身につけた人にもたらす効果はさざなみの音色。それは世界に満ちる雑音を消し、安息なる日々を約束する。
++ライターより++
こんにちは、影さま。
このたび担当させていただいたライターの草摩一護です。
今回は面白いお話を任せていただけて本当に光栄でございます。
しかもこれが影さまの初めてのノベルだそうで。^^
影さまにとってはものすごく記念になるノベルを任せていただけて本当に嬉しかったです。^^
今回の物語、腕によりをかけて執筆したのですがいかがでしたか?
少しでもPLさまのイメージに近い作品に仕上がっていますと幸いです。
プレイングにはホラー風味と書かれていたので、いくつか案が浮かんで、ただただダークな人が不幸にしかならないような鬱々とした物語か、苦しみの中にも幸せがあるか?
どのようなお話にしようかなと想ったのですが、やっぱり影さまにとっては初めてのノベルでしたので、ここはホラー風味でラストは爽やかに、と想い学園物でホラーっぽい、尚且つ思春期に絡み合わせて書かせていただきました。^^
と、言ってもこういう物語は僕が好きな物語であるので、趣味に走ってしまった感も否めないのですが。;
それでは今回はこの辺で失礼させていただきますね。
本当にありがとうございました。
失礼します。
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