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遭難! 必死 de サバイバル!!
<ほんの少しのラブコメディ>
他の遭難者と別れ、クラスメイトの草間武彦とともに森の探索へと来たシュライン・エマはほんの少しため息をついた。
原因は草間にある。
「ニホントカゲ! 久しぶりに見た〜」
・・・などと、いつものクールさはどこへやら。
草間はなにやらどこぞの田舎のガキ大将か? と思わせるような発言を連発させ『いいムード』のかけらもない。
花も恥らう高校生。遭難した男と女が2人きりで森の中。
そんなシチュエーションでありながら・・・
「こっち来てみろよ!? イモリだぜ? イモリ! 俺初めて見たかも・・・」
アカハライモリを摘み上げ、エマに自慢げに見せる草間のどこに高校生の威厳があるというのか!?
「・・・そんなもので遊んでる暇無いのわかってる? 火を起こす乾小枝や口にする物だって必要だし。獣とか、動物とか危険がないか調べなきゃいけないし! 果物なんかがあれば採っていかなきゃだし!! 落ちてる木や蔓なんか拾っていけばイカダ作って帰れるかもしれないし!!!」
募る不安と草間の能天気ぶりに段々と声のトーンが知らず知らずに大きくなっていく。
「・・何ヒス起こしてんだよ? 一応ここ日本だし、そんな獣なんていねぇって。もしかして、血糖値下がってんのか? 俺のチョコ食うか??」
草間がフゥッとため息をついた。
そして口にしていたシガレットチョコを手に取ると、エマの目の前に差し出した。
「い、いらないわよ。なんであなたってそうなのよ・・・?」
ほんのちょっぴり顔を赤らめたエマは、再びため息をついた。
「危機感が少ないっていうか・・・。例えば高台みたいに見晴らせる場所があれば、今のうちに登って状況を確認しようとか思わないわけ? それとも、他に何か良い考えでもあるっていうの??」
「まーまー。そう焦っても何にもならないさ。イライラするとシワ増えるぜ?」
「・・・」
草間の叩いた軽口に絶対零度の冷たい視線を注ぎ込んだエマ。
その視線に耐えられず、草間は「わかったよ」と呟いた。
「しょうがねぇな。よし、おまえにこれをやろう。日本固有種だぞ? 貴重だぞ〜?」
「イモリなんかいらないわよ! 早く捨ててったら!」
青くなって必死で拒否するエマに草間は笑った。
「青くなったり赤くなったり忙しい女だな」
草間は手にしていたイモリをポイっと投げ捨てた。
イモリは、木にペチッと引っ付くと水辺を探して動き出した。
草間に弄ばれているような気がしないでもない、とエマは思った。
不満げに草間をにらんでいたら、草間はエマの視線に気付いた。
「・・・わかったわかった。おぜう様の言うとおりにしましょ。あそこの木に登って状況確認してきてやるから、ちょっと待ってろ」
そういうと草間はポンッとエマの肩を叩き、軽く体を動かし始めた。
「もしかしたら、風向きで人の声が聞こえるかもしれないからそれも注意してね。あ、あと人家の明かりとかないかも確認してね?」
エマは細かく指示を出した。
「へーへー。了解しましたよ」
嫌味にしか聞こえないのか、草間はそういうと木に足をかけた。
と、上り始めた草間は何を思ったかエマに言った。
「やっぱりおまえ、あのイモリ持ってったら?」
一瞬、何を言われたかエマはわからなかった。
「イモリってさ、黒焼きにして煎じて飲むと惚れ薬になるらしいぜ?」
ニヤリと笑い、草間は木を登り始めた。
少し考えたあとでエマは草間に言った。
「なら、あんたそれ飲む勇気あるわけ?」
「・・・いまさら飲ませる必要あるのか?」
そう言ったあと、草間は無言で高い木の上へと登っていった。
なら、いまさら私にイモリ持っていけなんていう必要もないじゃない。
ちょろちょろと動くイモリを見つめながら、エマはそんなことを考えていた・・・。
■□ 登場人物 □■
【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
0086 / シュライン・エマ / 女 / 2年A組
■□ ライター通信 □■
シュライン・エマ様
この度は『遭難! 必死 de サバイバル!!』にご参加いただきありがとうございます。
この個別ノベルは共通ノベル第4章を補足するものです。
皆様がいったい何をしていたのか・・・興味とお時間がございましたらお読みいただければと思います。
ノベル中、クラスの関係で3年生の方々を全て『先輩』付けて呼んでいただきましたことをご報告いたします。
草間氏の傍に・・・ということでこちらではツーショットで行動していただきました。
微妙な恋の駆け引きが上手く伝われば幸いです。
それでは、またお会いできる日を楽しみにしております。
とーいでした。
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