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我、彼者を捜す者
それから数日後。
「……ごめん、待った?」
「いえ、ほんの五分と七秒程」
シュラインの言葉に、シン=フェインは笑顔で返した。滅多に見合わせない取り合わせに、何人かは通りすがりに声を潜めて笑い合っていたが、本人らにはお構いなしだ。
文化祭の近い廊下は人通りが多く、二人は立派な障害物をして成り立っていた。
「用件は?」
流石に他人の邪魔になるのは気が引けるのか、シュラインはすぐに言った。
「チョコに内緒で……って言っても元からどこにいるか分からないけど、後で話がある。そう言われちゃあ期待するわよ?」
「充分に期待しても構わない」
互いに微笑を浮かべて応戦する。
「これを、見せたかった」
シン=フェインは取り出した一枚の写真を、裏返して彼女に手渡した。
「誰にも見せないように。特に、生徒会長達には、ね」
「シンっ、何サボってんだよ! 人手足りないんだ、頭脳派でも手伝え!」
後方からの聞き慣れた級友の怒号に、二人の視線はそちらに向く。シン=フェインも大声で応戦する。
「もう一人のサボり魔には言わなくていいんですか!?」
「知るか! 見つからないんだよ!」
「分かりました。すぐ行きます!」
ぽんっとシュラインの背を叩いて、彼は教室に向けて消えていった。後に残されたシュラインはどうしたもんかと肩をすくめ、仕方なく写真を引っくり返して眼を落とす。
「っつ!?」
驚愕に眼が見開く。
裏にはマジックで何かの数字が書かれているが、その横には“生徒会写真班撮影”と汚い字で右上がりに書かれている。シン=フェイン自身の字ではないことは明らかだ。彼の字は知っているし、右下がりに決まってなるのだ。
「どういうことよ」
胸の鼓動を抑えられない侭シュラインは写真をポケットに仕舞う。
「そうして、写真に写ってるの? 私、知らないのに!?」
写真には、生徒会が卒業文集用に撮影し回っていた写真には確かに、シュラインが級友と笑っていたのだ。
ただ、キャンプ場で出会った少女も制服を着て、一緒に微笑んでいた。
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■ 登場人物 ■
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【整理番号 / PC名 / 性別】
【0086/シュライン・エマ/女性】
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■ ライター通信 ■
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御久し振りです、千秋志庵と申します。
依頼、有難う御座います。
夏、幽霊……とくれば怪談。
最後に少し生温い感触をもって話を終えましたが、如何だったでしょうか?
何分私自身が怪談が苦手なもので、途中から路線変更して共通ノベルのような感覚で締めるか少し迷ってしまいました。
まあ、怪談は夏の名産品(笑)。
慣れぬ稚拙な筆具合で申し訳ないですが、銃や剣や血の持つ恐怖ではなく、人間本来が持つ恐怖を少しでも感じ取っていただけたら幸いです。
それでは、またどこかで会えることを祈りつつ。
千秋志庵 拝
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