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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


星空を見つめて…

 夜の海で体操服のままはしゃぐひとつ影があった。彼はひとりで海を見ていたら無性に飛びこみたくなり、そのまま飛びこんだのだ。2年A組、室田 充。遊んだ後は濡れた髪が乾かないうちから砂浜に寝転がり、ただ星空を眺めて呆けていた。だがひとりでいると、どうしても昼間に聞いたあの言葉が耳に響くのだ。

 『そう、そうなんだ。ゴメンね、急に変なこと言っちゃって。ホントにごめんなさい。私が勝手にそう思ってただけだから、気にしないで……』
 「そう言われると……気にするんだよな。ただでさえ気にしてるのに。」

 充はある女子に夜の散歩に誘われていた。もちろん言葉通りのことが行われるわけがない。きっと彼女が充に告白するつもりだったのだろう。それは容易に想像がついた。しかし彼はその時点で断ってしまう。目の前の女の子を必要以上に傷つけたくない。ただその一心だった。振られる人間には振られる人間の、振る人間には振る人間の辛さがあることを充はよくわかっていた。だからこそ彼は中途半端に期待させるのはいけないと思い、思い切った行動に出たのだ。


 その後、どこからかそれを聞きつけた友達がさっそく充を冷やかしに来た。カッコいいねぇ、もてるねぇともてはやす友達を適当にあしらいつつ、彼は自分の思っていることを素直に口にした。そのセリフと言い方には大きなギャップがあった。

 「……俺、実はゲイだったりしてな。」

 彼はいつも一緒にいる友達に向かってそう言ったのだ。充が明るく軽く言ったこともあり、相手がその件に関して真剣に取り合うことはなかった。ただ女の子に対してそっけなくしたことの方が彼にとっては問題だったらしく、それについての講釈がしばらく続いた。

 「そんなに無下にすることはなかったんじゃないか。異性でも友情は成立するもんだし、本当は付き合いたいけど付き合えない奴だっているんだからさ……」

 とまぁ、こんな調子で話は進む。確かにそうだ。友人の言うことも一理ある。ならば同性間でも恋愛感情があっておかしくないのではないか……充はそう考えていた。だが、それを言うのはいつでもできると思い、今はただ黙って話を聞いた。だが彼の最後の言葉を聞いた瞬間、充は何も言えなくなった。

 「で、何をしたいかは自分の中で決まってるんだろう?」

 友達である彼は俺といい友人でありたいと思ってくれているのだろう。だからこそ相談にも乗ってくれた。でもこれが本気だと知った時、彼は自分の目の前にいてくれるのだろうか。それを考えるとどうしても言葉が出てこなかった。彼と女の子の言葉が交互に出ては消えていく……充は落ちつかなくなっていた。そしてあてもなくキャンプ地から少し離れた岩場まで散歩しに行こうと思い、満天の星空を見つめながら歩き出したのだった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】

0076/室田・充   /男性/2−A


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■         ライター通信          ■
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こんにちわ、市川智彦です。今回は幻影学園奇譚ダブルノベルをお届けします!
充くんはとても個性的ですね〜。設定を読んでる時から楽しませてもらいました(笑)。
今回は高校生ということで、実際にはまだ男(?)だった彼の心情を書きました。
深雪さんと同じく、個別ノベルは本編へと続く作品となっています。
とにかく揺れる気持ちに重点を置いて書いてみましたが、いかがだったでしょうか?

今回は本当にありがとうございました。また本編や別の作品でお会いしましょう!