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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


流星の夜に

「あれっ。八島くん?」
 ふいに声を掛けられて、その男子生徒は驚いて、居ずまいをただした。
 黒い詰襟に、夜だというのに真っ黒なサングラス。CASLL・TOとは同じクラスの八島真である。たしか生徒会の役員でもあったはずだった。
「どうしたの。こんな夜中に」
「CASLLくんこそ」
 無邪気に訊ねるCASLLに対して、八島の挙動はどこか不審だった。声を掛けられるまで、彼は懐中電灯で砂浜を照らしながら、まるでなにかを探すように歩いていたのだ。
「ジョギングしてた。なんだか寝るのがもったいなくて!」
「あ、そう……」
「何か、探し物?」
「え、いや。何でもないんです。……ちょっと、散歩に……」
「ふーん。あ、そうだ。八島くん!」
 夜の海で思いもかけずクラスメートに会えて、CASLLはうれしそうだった。片目は眼帯だからわからないが、もう一方の目はにこにこと細められている。
「ねえ、花火やらない?」
 そして――
 男ふたりの花火がはじまったのである。
 方や黒ずくめの八島と、こわもてに眼帯のCASLLの組み合わせはあやしいことこの上ない。闇夜の中、花火の明りに浮かび上がるふたりの姿を見たものが腰を抜かしかねない光景だった。
「そういえば、八島くんと、こんなふうにゆっくり話すことってなかったよね」
「そうでしたっけ」
「うん。……こういうことがあるから、やっぱりキャンプっていいな」
 手の中でパチパチと、花火がはじける。
「八島くん、休みの日とか何してんの」
「……さあ、特には……。テレビ観たり、本読んだりするくらいかな……」
「好きなテレビとかある?」
「…………『皇室アルバム』」
「…………」
 波が岩にあたって砕ける音と、花火の燃える音の合間に、ぽつりぽつりとぎこちない会話がつづく。
「……CASLLくんは、何か趣味が?」
「お茶かな」
「お茶って茶道!?」
「ぼく、茶道部だよ」
「え……。あ、そうなの……」
 そういわれれば、体格のわりに所作振舞が繊細に見えてくるから不思議だ。
「生け花もやるよ」
「……それも習ってるの?」
「いろいろやってる。八島くん、夢ってあるかな。ぼく、役者になりたいんだ」
「へえ。……いいかもしれない。CASLLくんなら――」
 背も高いし、運動神経もよさそうだから、アクション俳優にでもなれるのではないか、と八島は思ったのだったが。
「みんなをなごませる、いやし系の役者になりたいな」
「…………」
 しかし本人の目指すところは少し違うようだった。
「CASLLくん。これをやろう。ロケット花火だ」
 ひときわ派手な一本を、八島は取り出した。CASLLは期待をこめた瞳で頷く。彼にとって、楽しいキャンプの夜は、まだまだこれからなのだ――。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【3453/CASLL・TO/男/3−C】

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■         ライター通信          ■
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大変、お待たせいたしました。
このたびは、幻影学園奇譚、リッキー2号の海キャンプ・ダブルノベルに
ご参加いただき、ありがとうございました!

ご覧の通り、共通ノベルはいわゆる輪舞(ロンド)形式の構成で、
夜の海辺でPCさま方は順々におふたりずつ出会われることで
起こる事件(?)のてんまつ、個別ノベルはその合間や前後の、
おもにNPCとのやりとりを描いたものになっています。

>CASLL・TOさま
こんにちは! 夢の中では八島くんとクラスメイトだったんですねぇ。
つづいて後日、ご依頼いただいたパーティノベルで風紀委員というお話がありましたので、遡って、こちらにもその設定を反映させました。ちょっと大変な一夜でしたが、楽しんでいただければさいわいです。
なお、CASLLさまの個別ノベルは共通ノベルの「前」のエピソードになっています。

それでは、また機会がございましたら、お会いできれば光栄です。
どうもありがとうございました。