コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


■月と石と貝殻と───セレスティと人喰い編■

 皆で詠子をそれぞれに探すことになったセレスティは、入り江からは極力離れ、夜ゆえにいつもより見えなくなっている目を、持ってきていた懐中電灯で辺りを照らし凝らしながら、慎重に足を進める。
 そのうち、うーんうーんと唸り声が聞こえてきた。
「……?」
 そちらのほうに懐中電灯を照らすと、ペンションの老婆が岩場の陰で腰を降ろすようにして唸っているのだった。
「どうかなさったのですか? こんなところで」
 穏やかに声をかけると、
「その、詠子さんとやらをわたし達も探そうと思ったんですが……この有様です。気は若くてももう年ですよ」
 苦笑したような上品な老婆に、セレスティも負けじと上品な笑顔を振舞う。単刀直入に、尋ねた。
「あなた達は、本当に人喰いなのですか?」
 すると、老婆はくくくっと笑う。少し上品さが欠けてしまったように感じられた。
「さっきの諏訪という男の肉は硬くてナマでは喰えませんでしたからな。一緒に鍋で煮込んでしまいますわ。もうひとり、悪者面の男はサエナのほうがもう殺って血抜きでもしておるじゃろ」
「あの美女さん、サエナさんていうのですね」
 でも、とセレスティは続ける。
「不思議ですよね、昔から聴き伝えのある三人の人喰いの容姿の形容が変わらないところに、その人喰いは容姿も変わらないで存在しているのは、どうも腑に落ちなくて」
「それはわたしらが人喰いであるゆえ、不老不死であるゆえですからな」
 なるほど、と彼が言った時にはもう、老婆の背後には海水が迫ってきていた。
「食べられなくて、残念ですね」
「な……!?」
 海水が、何かに操られたように老婆の身体に纏わりつく。
「こうやって善良な地元民や観光客を食べていたというわけですか……」
「喰わねば死んでしまう、何がいけないのじゃ」
 口調もすっかり野卑なものになっている。その老婆に、困り果てたようにセレスティはため息をつく。海水が、より一層動きを強くした。
「分からないのなら、地元の人達のために、そうですね───海の果てにでも行って頭を暫く冷やしてきてもらいましょうか」
「な……何をする! やめんか!」
 やめるはずがない。
 かくして、人喰いのひとりは、海の彼方へ消え去った。
 水の近くにいたのがこの老婆、ゼヨナの敗因───。
「でも晩御飯は、本当に美味しかったですよ」
 ご馳走様でした、と、海のお星様になったセレスティはにっこり微笑んだ。
 ふうっとまたため息をついて歩き出そうとしたところへ、杖にコツンと何かが当たる。懐中電灯で照らしてみると、月の光に淡く輝く不思議な石だった。
「これは……?」
 以前、幻影学園でも幾度か目にしたことがある。
 とりあえず彼は、それをポケットにしまいこみ、また詠子を探し始めたのだった。



《完》




□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物                  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】


1883/セレスティ・カーニンガム (せれすてぃ・かーにんがむ)/男性/3年A組
3604/諏訪・海月 (すわ・かげつ)/男性/2年B組
3636/青砥・凛 (あおと・りん)/女性/2年B組
3629/十里楠・真癒圭 (とりな・まゆこ)/女性/2年B組
3453/CASLL・TO (キャスル・テイオウ)/男性/3年C組


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


こんにちは、東瑠真黒逢(とうりゅう まくあ)改め東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。今まで約一年ほど、身体の不調や父の死去等で仕事を休ませて頂いていたのですが、これからは、身体と相談しながら、確実に、そしていいものを作っていくよう心がけていこうと思っています。覚えていて下さった方々からは、暖かいお迎えのお言葉、本当に嬉しく思いますv

さて今回ですが、ダブルノベルというものを初めて書きました。わたしの作品としては結構コメディ寄りになっています。一番の懸念は、ダブルノベルとしてうまく役割を果たせているか、ということと、お客様皆様の心をちゃんと満たせたかどうかということですが、今からドキドキしています。

■セレスティ・カーニンガム様:連続のご参加、有難うございますv 人喰いに対してもやはりあんな感じでセレスティさんなら対応するかなと思いましたが、如何でしたでしょうか。ある意味、一番容赦がない人なのかもしれません(笑)。
■諏訪・海月様:連続のご参加、有難うございますv 人喰いの部分を個別と最初に決めてあったため、凛さんとの連係プレーは楽しそうだなとも思ったのですが、今回は会話のみにとどめてみました。ボケツッコミなどはあんな感じだと思うのですが(笑)、如何でしたでしょうか。
■青砥・凛様:連続のご参加、有難うございますv やはり今回もボケさせて頂きました、物語にとっては重要なエキスの一つであるボケツッコミのボケですが、わたしのは生ぬるかったでしょうか(笑)。やはり、人喰いに対しても凛さんとしてはあんな感じなのでは……と思うのですが、如何でしたでしょうか。
■十里楠・真癒圭様:連続のご参加、有難うございますv 罠をしかける、というのが面白そうだったのでやってみたかったのですが中々機会がなく、力不足で申し訳ありません; ですが、過去の真癒圭さんの作品を見るに能力的な能力を使っていなかったのと、今回の人喰い退治を一人でどう解決しようかと考えていたので、「恵安奉」を使わせて頂きましたが、如何でしたでしょうか。
■CASLL・TO様:初のご参加、有難うございますv 悪者顔、というところをもう少し使ったシチュエーションなども入れたかったのですが、こちらも中々機会がありませんでした。力不足で申し訳ありません; CASLLさんは初めて書かせて頂きましたが、能力の「迫真の演技」は、あんな感じで如何でしたでしょうか。ハタから見るとかなり楽しいPCさんだと思いますが(笑)。

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。今回は、その束の間の休息(というと語弊がありますが)と思っていただければ、と思います。

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆