コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


煌めきと鎮まりの追復曲(カノン)

I-c

 抜けた先の浜辺はさぞ、静かな事でしょうねえ――と。
 そんなユリウスの言葉に、一番初めに応えたのは、セレスであった。
「ええ、ユリウスさんの仰る通りでしょうね。それに、洞窟の中では、涼む事もできそうです。――人のいない浜辺というものも、静かで大変良いものでしょうしね」
 確かにキャンプも、面白い。ただその分、騒がしい分だけ、静かな時間が欲しくなる。
 ……騒ぎっぱなしでは、疲れてしまいますから。
「きっと一休みするのには、絶好の場所ですよ」
 もし、この先鍾乳洞の中を探索する事となれば、おそらく、外界からは隔離されたような静けさや雄大壮麗な世界をも楽しむ事ができるのであろう。その上、洞窟を抜けた先が人のいない浜辺ともなれば、
 午睡をするのも、良いでしょうから。
「ほら、セレスさんも、こう仰っている事ですし」
「しかしですね、ユリウス様――」
 セレスの反応を武器にしたユリウスの言葉に、それでも晶は、簡単には引き下がろうとはしなかった。
 しかし、唐突に、
「晶君は、本当に心優しいんだね」
「は?」
 肩に手を置かれ、晶は思わず素で顔を上げてしまう。
 そこには、眩しいばかりの笑顔で瞳を向ける、モーリスの姿があった。
 モーリスは、更に笑顔を深くすると、
「君のことは前々から聞いていましたよ……ユリウスさんから、ね」
 ふぅん、きっと、からかうと可愛い人なんだね?
 モーリスとしても、廊下で晶がユリウスの行動一つ一つに苦労している姿も、見た事が無いわけではない。
 気にしていなかったわけではなかったのだ。モーリスと晶の間に、今の今までこれほどまでの面識が無かったのは、単に機会が無かったからなのだから。
 だからこそ、
 ――これは、絶好のチャンスですね、と、内心悪戯な微笑を浮かべながら、
「私達のことを、そうやって心配してくれるんだから……、そうだ、君も一緒に行きませんか?」
「何で私まで……」
「愚痴なら聞いて差し上げますよ?」
 ちらり、と、ちゃっかりと素早く日陰に逃げ込んでいるユリウスの方へと、視線を投げかける。
「君も苦労しているのでしょう?」
「私だって、あなた方のことは、ユリウス様から話を伺っていますよ、モーリスさん」
 むすり、として、晶もユリウスの方へときつい視線を投げかけた。
 大きく息を吸い、視線を逸らして溜息を吐いて一言、
「ああ、ユリウス様が、セレスティさんのようであれば……」
 私だって、苦労はしなかっただろうに……!
 色々とあり、晶がユリウスの世話役の――殆ど度を超えられないようにするための監視役であったが――ような事をやるようになってから、結構長い年月が経っている。
 それでも、
 あの人はいつまでも、いつまでも……!
 一々腹立たしさを覚えてしまう事には、一向に変わり無い。
「ふむ、相当大変な思いをしていらっしゃるようですね」
「あなただって知っていらっしゃるでしょう。同級生として、あの人の傍若無人な振舞い方を……、」
「そう言われましても、色々とありますからね。――ああでも、例えば、授業中の居眠りについての詭弁、ですとか?」
「あの人はそんな事まで……!」
 何と……情け無い……!
 心底呆れてしまう。授業中に寝る事だけならばまだしも、それに対して詭弁をふるうなどと――。
「まあ、それでも、晶君が気になさる必要はありませんよ。あまり気になさったところで、ユリウスさんは、ユリウスさんでしかありませんから」
「そりゃあ、そうですけれど……」
「ですから、ね?」
 ぽむり、と肩を叩き、モーリスが晶へと悪戯っぽい微笑を向ける。
 軽く小首を傾げると、
「少し、気休めなさったらどうですか? この先の洞窟は、きっと涼しいはずですからね」
 暑いと尚更、イライラしてしまいますでしょう?
 もう一度、ですから一緒に行きましょう? と、声音で洞窟の方を指し示した。



 ■□ I caratteri. 〜登場人物  □■ ゜。。°† ゜。。°★ ゜。。°† ゜。。°★ ゜。
======================================================================

★ モーリス・ラジアル
整理番号:2318 性別:男 学年:3−A



 ■□ Dalla scrivente. 〜ライター通信 □■ ゜。。°† ゜。。°★ ゜。。°† ゜。。
======================================================================


 まずは長々と、本当にお疲れ様でございました。
 今晩は、今宵はいかがお過ごしになっていますでしょうか。海月でございます。今回はご発注を下さりまして、本当にありがとうございました。まずは心よりお礼申し上げます。
 ……実はこうしてライター通信を書かせていただくのも、とんでもなく久しぶりなものでございますから、何を書けば良かったかなぁ――と、少々現在戸惑ってしまっていたりするのですけれども……、
 一つ目に、どうもこの度は、無意味にお話が長くなってしまっているような気が致しまして、密やかに申し訳無く感じております。多分今までの納品の中で、最も字数が多くなっていると思われますが、飛ばし飛ばしででも、少しでも楽しんでいただけますと幸いなのでございます。
 また、少々このお話には、ええ、それはもう本当お空のたった一つのお星様くらいに密かに、ではあるのですが、学園の真相に関わる部分がございました。海月の受注と致しましては、幻影学園はこれが最初で最後でございましたが、洞窟で見つかった石等につきましての詳細は、是非とも他のライター様の納品で、また、学園の最終章にてご確認いただけますと……と存じております。

 唐突ですが、ご存知の方もいらっしゃるとは存じますが、この納品を持ちまして、海月は暫く、OMCを休業させていただく事となります。或いは十月、十二月辺りにはシチュエーションノベルの受注が一度くらいはあったりするのかも知れませんが、十二月、或いは来年の三月まで、依頼の類の受注予定は全くございません。
 それでも、戻ってくる気ばかりは満々とございますので、またお会いできる時が来ましたらば、宜しく構ってやって下さると嬉しく思います。

 では、今回は、この辺で失礼致します。
 何かありましたら、ご遠慮無くテラコン等よりご連絡してやって下さいましね。

 乱文、個別通信無しにて、失礼致します。
 それではまたいつか、どこかでお会いできます事を祈りつつ――。


04 ottobre 2004
Lina Umizuki