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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


痴話喧嘩勃発!−砂の城−
 夕方――
 陽も沈み、そろそろお開きという頃になって嘉神・真輝は砂浜を一人歩いていた。砂浜はまるで戦地のように荒れ放題だった。砂が盛り上がっていたり、穴が空いていたり、西瓜が丸ごと転がっていたり(何故?)、風に舞うビニールシートを追い掛け回す女子生徒の姿もあった。とにかくメチャクチャ。
 そんな惨状を目の当たりにした真輝は、
「そういえば、あいつらはどうしたかな」
 ふと思い出し、現場に赴いてみることにした。
 しかし、もはや誰もいなくなっていた。まあ、当然だろう。既に数時間も前の話だ。その間、真輝は海の家でひたすら食べ物を胃袋に放り込んでいた。満腹中枢もさぞ喜んでいる事だろう(甘い物ばかり食べた)。
「ん? これは――」
 誰もいなくなっていたが、代わりに巨大な城が建設されていた。もちろん、砂の城だ。両者の陣地の中心付近に立っている所を見ると、決着がつかずに和解した――そんなふうに解釈する事も出来るが、もしかしたらイジけた透が一人で作成した可能性も考えられる。
 真輝は砂の城を眺めながらさらに砂浜を歩き出した。
 しばらく歩いていると話し声が聞こえてきた。どこかで聞いた事のある二つの声は、透と悠。二人は岩場に腰掛けてなにやら談笑しているようだった。
「おお、これはこれは……」
 真輝は二人に気づかれぬよう、身を低くして様子を窺った。
「違うわよ、そこじゃないわ」
「どこだよ? ここか?」
「あ、そこそこ。もっと強くしても――」
 何の会話だ?
 真輝は身を隠して声のみ聞いていたので、二人が何をやっているのか、明確には判断する事が出来なかった。想像するに、いかがわしいことをやっているような気もするが、
「もー、へたくそ!」
 へたくそ? 何が?
「うるさいな! 張り倒すぞ!」
 あ、なんだ――そういう色気のある展開ではないのか。
 真輝はちょっとがっかりした。
「若いくせに肩が凝るなんて、どうかしてる」
「うっさいわね。胸のせいよ、胸の重みのせい」
「プ、胸? その平坦な胸が重いと? 悠さんはそうおっしゃるんですか?」
 パシーン。
 平手打ちっぽい音がした。悠の怒気に満ち溢れた顔は想像に固くない。透の引きつった顔も同様だ。相変わらず、仲がよろしくない。いや、この場合、逆なのだろうか? 真輝は幼馴染について考察し始めた。
「殺す! そして海に放り投げてやるわ!」
「ああ、かかってこいよ! 負けても、胸のせいにするなよ!」
「どういう意味よ!」
 二人とも言いたい放題である。
 真輝はそろそろ退散する事にした。巻き添えを受けるのはごめんだ。生贄は透だけで十分だろう。
「程々にな」
 どうせ聞こえないだろうけど、一応、呟いておく。
 上空を見上げると既に星空が浮かんでいた。だいぶ薄暗くなってきたようだ。
 真輝はヒートアップする痴話喧嘩に思わず苦笑しながら砂浜を駆け出した――

−End−

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■   登場人物                  ■
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【2227/嘉神・真輝(かがみ・まさき)/男/24歳/神聖都学園高等部教師(家庭科)】

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■         ライター通信          ■
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『痴話喧嘩勃発!−砂の城−』に、ご参加くださいまして本当にありがとうございます。
初めまして嘉神様、担当ライターの周防ツカサです。
色気もなくひたすらギャグで貫き通しました。楽しんでいただければ幸いです。
よくよく、考えてみると砂って相当痛いですよね。実際にやると血まみれになるのかもしれませんね。……ちょっと想像してしまいました。
あの二人の関係については現状維持といった感じで落ち着きました(喧嘩ばかりで穏やかじゃありませんが)。ちょっと透君が不憫だなーと思いつつ、私が参加した場合は悠の犬になっていたことでしょう。冗談です。たぶん。

ご意見、ご要望等などありましたら、どんどんお申し付けください。
それでは、またの機会にお会い致しましょう。

Writer name:Tsukasa suo
Personal room:http://omc.terranetz.jp/creators_room/room_view.cgi?ROOMID=0141