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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


月夜の石集め
〜新緑の宝石〜

石の欠片を一つ手に入れた直後。

「…あれ?」

ふと何かに気づいたように、御先がつっかえ棒代わりの弓もそのままに巨大な二枚貝の中に再度頭を突っ込んだ。
「どうかしたのか?」
そんな御先の態度が気になり、翼が問いかける。
…と、御先が「あっ!」と声をあげ、何かを掴むように手を伸ばす動作をした。
その手の先は、二枚貝の更に奥。

「…おい、御先…?」
手に取ったそれを見る御先に訝しげに声をかけると、御先が「ゴメンゴメン」と謝りながら頭を引っこ抜いた。

「面白いの見つけちゃったんだ!
 ほら、見てよコレ!!」

そう言って笑いながらどこか誇らしげに突き出したのは―――乳白色がかった緑色の…小指の第一関節ぐらいの直径の、大粒のパール。

「これは…?」
「この二枚貝の端っこに引っかかってたんだ。
 凄いよねー。
 緑色のパールなんて初めてみたよ、俺」

驚いて問いかける翼に、海の中で日に透かすような仕草をしながら感動もあらわに話す御先。
確かに、翼も緑色のパールは初めて見た。しかも、こんな大粒の。
まじまじと見ている翼に気づいたのか、御先はにこりと笑うと―――パールを彼女に向かって差し出した。

「――――――これ、おねーさんにあげる」
「え?」

あまりにも唐突な申し出とプレゼント。
驚いて目を見開く翼に対し、御先はにこにこ笑顔のまま。

「しかし…これはキミが見つけたものだろ…?」
「別に俺どうしても欲しいってワケじゃないし、持って帰ってもつっちーに提供するだけだからさー。
 おねーさんが貰ってくれた方がパールも嬉しいと思うんだ♪」

ね?と笑う御先に、翼もなんだか困っている自分がおかしくなってくる。
御先の手の平の上に乗っている乳白緑色をしたパールをそっと指先で摘んで、手に取った。

つるりとした手触りのいいきめ細かいパール。
淡い新緑の色。
優しく、包み込むようなそれ。

―――無意識のうちに、口の端に笑みが浮かぶ。

「…ありがとう。大事にさせてもらうよ」
「うん!」
礼を告げながら微笑を浮かべる翼に、御先は嬉しそうに笑い返す。

「それじゃ、もう少し探してみようか」
「わかった!!」

しっかりとパールを握った翼が微笑みかけると、御先もしっかりと頷く。
つっかえ棒代わりにしていた弓を引き抜くのを見て、翼はゆっくりと足を動かしだす。
それに倣うように御先も足を動かし、二人は次第に巨大な二枚貝から遠ざかっていく。
蛍の光のような石の欠片の輝きは、少しずつ少しずつ小さくなって…じきに、消えた。

【うふふ…】

二人の姿が見えなくなった所で、ゆらりと、貝の周りを漂うような影が現れた。
暗闇に紛れてはっきりと色は識別できないが、太もも辺りまで届く長いストレートの髪、白い柔らかな肌。
恐らく女性なのであろう、膨らんだ胸は柔らかな布を巻きつけて隠してある。
何より異質なのは―――その、下半身。

――――――僅かな太陽の光を受けて輝く鱗がびっしりとついた、魚の下半身なのだ。

彼女は―――おそらく、人魚。
【くすくす…】
人魚は小さく笑いながら、貝の周りを舞うように泳ぎ回る。
そして暫くその状態を続けたかと思うと、ゆっくりと―――二枚貝の中心に座る。
二枚貝はそれを拒否することはない。
まるで―――最初から、人魚の椅子になることが決まっていたかのように。

ごぽぉっ。

一際大きな気泡が上がるような音と共に、横で漂っていた太い胴体が蠢いた。
――――先ほど御先と翼が倒した筈の海蛇もどきが、傷一つない姿で戻ってきたのだ。
その海蛇もどきはまるで人魚を守るかのように、彼女と二枚貝を包むようにとぐろを巻く。

【…ふふ…また、遊ぼうね…】

二人が消えて行った方向を見ながら、人魚は微笑んでそう呟いた。
ごぽり。
大きな海蛇もどきが一瞬人魚の姿を隠したと思うと―――何時の間にか、人魚は消えていた。


【くすくす…くすくす…】


どこまでもどこまでも―――――囁くような笑い声を残して。


<結果>
入手:グリーンパール(通常と同じサイズだが乳白緑色をした変わったパール)

終。

■登場人物(この物語に登場した人物の一覧)■
【整理番号/名前/性別/クラス/属性】

【2863/蒼王・翼/女/2−B/光&闇】

■ライター通信■
大変お待たせいたしまして申し訳御座いませんでした(汗)
学園ダブルノベル(海キャンプ編)個別をお届けします。 …いかがだったでしょうか?
ちなみに今回は残念ながら巳皇と話す方はいらっしゃいませんでした…結構好きなんですけどねぇ、私は(お前の好みは関係ない)
その代わりにB地点…鎖々螺のところが予想以上に多くて驚きました。やっぱり海辺は人気高いんですかねぇ…?(何)
そして例によって例の如く、PC様によっては入手アイテムなぞつけてみました(笑)
GETした人とGETしてない人がいるのは…単に私の趣味です(ぅをい)
場所ごとにNPC達の裏事情を散りばめて見ましたが…どうでしょう?わかっていただけましたか?(笑)
実は鬼斬の裏事情が一番多いのですが、それは単に彼の裏設定が一番多く決まっていたからに他なりません(ぇえ)
裏事情を垣間見て、NPC達に更に馴染んでいただければなぁ、と考えております。
全体的に色々と謎を残す不思議な展開・奇妙な終わり方を目指しておりますので、その謎について色々と考えてくだされば嬉しいです。
なにはともあれ、どうぞ、これからもNPC達のことをよろしくお願い致します(ぺこり)

【翼様】
ご参加どうも有難う御座いました。
御先と二人っきりの潜行と言うことで、掛け合い大目です。
また、戦闘シーンは割愛させていただきました。
共通ノベルで欠片を見つけた後の出来事、と言うイメージで書かせていただきました。
プレゼントはただの好意だと思って受け取ってあげて下さい。
最後に現れた人魚が何者かは―――正直、私も分かりません(待てコラ)一体どういう存在なのか、想像してみるのもまたご一興なのでは?(をい)

色々と至らないところもあると思いますが、楽しんでいただけたなら幸いです。
それでは、またお会いできることを願って。