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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


■月と石と貝殻と───海月と人喰い編■

 皆で詠子をそれぞれに探すことになった海月は、入り江からは極力離れ、持ってきていた懐中電灯で足元より少し先を照らしながら、警戒はしながらでも余裕のある足取りで歩を進めていた。
 そのうち、うーんうーんと唸り声が聞こえてきた。
「……なんだ?」
 そちらのほうに懐中電灯を照らすと、ペンションの老婆が岩場の陰で腰を降ろすようにして唸っているのだった。
「どうしたんだ? こんなトコで」
 声をかけて近寄ると、老婆は振り向き、腰をさすった。
「詠子さんという方を、わたし達も探そうとしていたのですが……やっぱり年ですな。これこのとおり、ぎっくり腰を起こしてしまいました」
 心なしか、その目に涙が見える気がして、海月は暫く考えた後、老婆に背を向けてしゃがみ込んだ。
「乗れよ……ペンションまで送ってってやるから」
「おお!」
 老婆は目を潤ませて、海月の背に身を預けた。
「最近の若者にしては、出来た男性ですな。本当に美味そうな……いえ、将来有望そうなお方じゃ」
「そんなことねぇだろ。……乗ったか? 早くペンションにあんた届けて、そしたらすぐまた月神探さなきゃな」
 そして、老婆を担いでペンションへと歩く海月。
 すると、左肩に妙な感触があった。見ると、老婆が必死に海月の鍛えられた筋肉をかじっているのだった。が、鍛えられているため、海月にはどうということもない。
 しかし、海月は悪戯っぽく笑った。
「はは、人喰いの噂はホントだったのか。でも、そんなヤワな歯じゃ役に立たないみたいだな。他当たりな」
 そして老婆を再び岩場へ降ろす。
「今までのヤツもそうやって殺してきたのか?」
「違う、喰ってきただけです。そうしなくてはわたし達は死んでしまうから仕方があるまい」
 口調も、少し本性を出してきたようである。
「罪のない人々だろ……他のものは食べられないのか?」
「そりゃ食べられることは食べられるが、人間が粟を食うようなもの。まずくて食べられたものでもないし、腹にもたまらないのじゃ」
 海月はいつものようにどこからか出した銃を向けたが、「どうか助けてください」と頭を下げられ、ついにその手を降ろした。
「───もう、すんなよ」
 くるりと背を向け、詠子探しに専念し始める海月。
 ぺこぺこ頭を下げながら、それでも、次の獲物を狙う老婆の瞳に妖しい光が灯ったのを、海月は知らない。
 老婆から程よく遠ざかった頃に、足に何かが当たる。屈みこんでみると、月の光に淡く輝く不思議な石が、岩場にめり込んでいるのだった。
 これは、幻影学園でも幾度か彼は見たことがあった。
「…………」
 とりあえずポケットにしまいこみ、海月はまた、歩を進め始めた。




《完》




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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】


1883/セレスティ・カーニンガム (せれすてぃ・かーにんがむ)/男性/3年A組
3604/諏訪・海月 (すわ・かげつ)/男性/2年B組
3636/青砥・凛 (あおと・りん)/女性/2年B組
3629/十里楠・真癒圭 (とりな・まゆこ)/女性/2年B組
3453/CASLL・TO (キャスル・テイオウ)/男性/3年C組


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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東瑠真黒逢(とうりゅう まくあ)改め東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。今まで約一年ほど、身体の不調や父の死去等で仕事を休ませて頂いていたのですが、これからは、身体と相談しながら、確実に、そしていいものを作っていくよう心がけていこうと思っています。覚えていて下さった方々からは、暖かいお迎えのお言葉、本当に嬉しく思いますv

さて今回ですが、ダブルノベルというものを初めて書きました。わたしの作品としては結構コメディ寄りになっています。一番の懸念は、ダブルノベルとしてうまく役割を果たせているか、ということと、お客様皆様の心をちゃんと満たせたかどうかということですが、今からドキドキしています。

■セレスティ・カーニンガム様:連続のご参加、有難うございますv 人喰いに対してもやはりあんな感じでセレスティさんなら対応するかなと思いましたが、如何でしたでしょうか。ある意味、一番容赦がない人なのかもしれません(笑)。
■諏訪・海月様:連続のご参加、有難うございますv 人喰いの部分を個別と最初に決めてあったため、凛さんとの連係プレーは楽しそうだなとも思ったのですが、今回は会話のみにとどめてみました。ボケツッコミなどはあんな感じだと思うのですが(笑)、如何でしたでしょうか。
■青砥・凛様:連続のご参加、有難うございますv やはり今回もボケさせて頂きました、物語にとっては重要なエキスの一つであるボケツッコミのボケですが、わたしのは生ぬるかったでしょうか(笑)。やはり、人喰いに対しても凛さんとしてはあんな感じなのでは……と思うのですが、如何でしたでしょうか。
■十里楠・真癒圭様:連続のご参加、有難うございますv 罠をしかける、というのが面白そうだったのでやってみたかったのですが中々機会がなく、力不足で申し訳ありません; ですが、過去の真癒圭さんの作品を見るに能力的な能力を使っていなかったのと、今回の人喰い退治を一人でどう解決しようかと考えていたので、「恵安奉」を使わせて頂きましたが、如何でしたでしょうか。
■CASLL・TO様:初のご参加、有難うございますv 悪者顔、というところをもう少し使ったシチュエーションなども入れたかったのですが、こちらも中々機会がありませんでした。力不足で申し訳ありません; CASLLさんは初めて書かせて頂きましたが、能力の「迫真の演技」は、あんな感じで如何でしたでしょうか。ハタから見るとかなり楽しいPCさんだと思いますが(笑)。

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。今回は、その束の間の休息(というと語弊がありますが)と思っていただければ、と思います。

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆