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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


潮騒に聞こえる想い

●嗚呼素晴らしきかな褌大魔王
「お久しぶりでございますっ!」
「うみゅっ!」「うむっ!」
 上社房八(かみやしろ・ふさはち)と浦島太郎。
 何だか、訳の分からない『一日ぶりのご無沙汰』なコンビの横で、うみゅっと一緒になって挨拶しているのは、1年A組にこの人有りとまで言わしめた何だか訳の分からないどてらい娘、レティシア嶋崎である。
「今宵は勿論?」
「うむ。肝試し会場に!」
 余計なことに情熱を燃やすことでは、きっと太郎とどっこいの房八の瞳は燃えていた。人々の歩く速度を測り、そのペースに合わせて歩く練習をすること小1時間。
 ついには房八は人の前を適度の速度で先回りしながら歩くストーキング能力を身に付けていた。
 ……やな話である。

 だがしかし、それはまだまだ彼の『やぼう』の、そして夢の中ではホンの序の口だった。
「ふふふ。これはきっと夢! そう、マイドリームッですね!」
 何時か何処かで見かけ、そして消えていった少女、その少女が下級生にいるなんてと、房八の思考は既にオーバーヒート気味だったのだ。
 その為に、折角の水冷式水泳大会や、空冷式肝試し大会中でも房八のCPUは全力運転を続け、とうとう帰宅前にはエジプトの砂漠の中で彷徨う冒険者の生き残りの如く、その姿は幽鬼じみて哀れを誘っていた。
「うみゅ〜?」
 しかし、どんなに人が不幸であっても、それをいっこうに解さない人物もいるのだ。
「ねぇねぇ師匠、これなぁに?」
「ん? 何、この白い布は?」
 聞き慣れた声が二つ。
 彼女達の名前が房八の脳裏に浮かび上がり、挨拶をしなければと振り向いた瞬間に喜劇は起きた。
「判らない時は引いてみるみゅ♪」
 思いっきり謎の布を引っ張るレティシア。
「ををおう!」
 一瞬、足と足の間がキュキュッと刺激されて、房八の表情が苦悶とも悦楽とも、とれる表情で前屈みになる。
「うみゅ、うみゅ、うみゅ、みゅみゅみゅ〜!」

 きゅっきゅっしゅるりしゅるしゅるしゅるしゅる〜。

「ををう。ををう。おう?」

 締まること二回、そしてついには狂気の独楽と化した房八が砂浜で一人白鳥の湖を披露する大回転、分身出来ない状態になってしまう。
「うみゅうみゅみゅ〜? 師匠、なんかこれ紐が付いてるよぉ?」
「っく! 捨てなさい!」

 そりゃないよ、セニョール、セニョーレ、セニョリーター♪

 房八の脳裏に何だか意味不明の台詞が浮かんでは走馬燈のように消えていった。
 そして不幸の回転が終わりを迎える頃、彼の腰元に何とか必死でしがみついていた、ジャージのヒモという最後の正義が重力と慣性と、結びが悪いという複数の悪魔に負けて、闘いに敗れたジャージの下と共に自由落下を始めた。

「っきゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 最後に房八の聞いた悲鳴は、ホラー映画のそれに非常に似ていたかも知れなかった。
 合掌―――。

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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
【2587 / 上社・房八 / 男性 / 召霊師で伝説の着ぐるみ師で美容師で宵闇の人】

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■         ライター通信          ■
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 お世話になりました。
 お久しぶりで、誠に申し訳ありませんでした。
 非常に私事ですが、職場が8月30日の台風で海水とヘドロで床上70cm冠水という悪条件になり、未だに完全復旧できていない職場の復旧で毎日を費やしていました。本職で執筆に支障をきたしましたこと、心よりお詫び申し上げます。