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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


■月と石と貝殻と───凛と人喰い編■

 皆で詠子をそれぞれに探すことになった凛は、入り江からは極力離れ、持ってきていた懐中電灯で足元より少し先を照らしながら、警戒はしながらでも途中貝殻を見つけたりして、余裕のある足取りで歩を進めていた。
 そうしていると、岩場の陰から煙が見えてきた。
「煙……? 火事、じゃないよね……」
 不審というよりは彼女の場合、不思議といった感じで近づいていくと、なんと、ペンションの従業員である美青年が岩場でサザエのつぼ焼きをしていたのだった。
「あ、見つかっちゃいましたか」
 軽い感じで言う、青年である。
「うん……見つけちゃった」
 凛が言うと、風に乗って凛が風呂上がりに丁寧に自分の身体にすりこんだバターや塩の香りが美青年の元へ届く。
「ああ、ちゃんと美味しそうに仕上がってますね。筋肉の乗り具合も上々のようですし」
 にっこり微笑んだ青年の言葉が、凛には分からないらしい。
「ああ……サザエのこと? そこ……焦げてるよ……」
「あ、本当だ。どうも」
 思わずサザエの焦げた部分を取る美青年。そして、
「違いますっ」
 と叫んだ。
「我こそは伝説の人喰い美青年ヤクタ。今宵貴女を美味しく食べてあげましょう」
 ざぱーんと海飛沫を背に、カッコつける青年である。
「……セクハラは嫌われるよ」
 だが、凛には通じなかったようだ。
「セクハラじゃありません、人喰いですっ。コワくないんですかっ」
「だって……状況が状況だし。月神さん探しが優先だし……僕、行くね」
 歩き出そうとする凛の肩を掴む、ヤクタ。
「あのー、あんまりコケにされると哀しくなっちゃうんですけど……」
「だって、相手にしたら……食べられちゃうし」
「それはそうなんですけど、もう少しこう、コワがってくれても……」
「出来ないものは仕方がないし……」
 凛は本気で困っているらしい───相変わらず、顔は無表情だったが。
 そのうち、ヤクタは実力行使に出たようだ。
「ええい、人喰いやって何百年。このヤクタに迷いなし!」
 噛み付こうとした矢先、凛は光の弓矢を取り出し、何か呟いたが早いか、文句を言おうとした人喰い青年ヤクタの肩に光の矢を突き刺した。
 そのまま、岩場に縫い付けられる、ヤクタ。
「暫くそのまま頭冷やしてれば……」
 すたすたと、ある意味人喰いよりも冷たく言い放ち、凛は歩いて行く。ふと、その足が何かを蹴った。拾ってみると、月の光を浴びて淡く輝く不思議な石である。
「……なんだろう?」
 不思議に思いながらしまいこみ、とりあえずまた詠子を探し始める凛だった。




《完》




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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】


1883/セレスティ・カーニンガム (せれすてぃ・かーにんがむ)/男性/3年A組
3604/諏訪・海月 (すわ・かげつ)/男性/2年B組
3636/青砥・凛 (あおと・りん)/女性/2年B組
3629/十里楠・真癒圭 (とりな・まゆこ)/女性/2年B組
3453/CASLL・TO (キャスル・テイオウ)/男性/3年C組


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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東瑠真黒逢(とうりゅう まくあ)改め東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。今まで約一年ほど、身体の不調や父の死去等で仕事を休ませて頂いていたのですが、これからは、身体と相談しながら、確実に、そしていいものを作っていくよう心がけていこうと思っています。覚えていて下さった方々からは、暖かいお迎えのお言葉、本当に嬉しく思いますv

さて今回ですが、ダブルノベルというものを初めて書きました。わたしの作品としては結構コメディ寄りになっています。一番の懸念は、ダブルノベルとしてうまく役割を果たせているか、ということと、お客様皆様の心をちゃんと満たせたかどうかということですが、今からドキドキしています。

■セレスティ・カーニンガム様:連続のご参加、有難うございますv 人喰いに対してもやはりあんな感じでセレスティさんなら対応するかなと思いましたが、如何でしたでしょうか。ある意味、一番容赦がない人なのかもしれません(笑)。
■諏訪・海月様:連続のご参加、有難うございますv 人喰いの部分を個別と最初に決めてあったため、凛さんとの連係プレーは楽しそうだなとも思ったのですが、今回は会話のみにとどめてみました。ボケツッコミなどはあんな感じだと思うのですが(笑)、如何でしたでしょうか。
■青砥・凛様:連続のご参加、有難うございますv やはり今回もボケさせて頂きました、物語にとっては重要なエキスの一つであるボケツッコミのボケですが、わたしのは生ぬるかったでしょうか(笑)。やはり、人喰いに対しても凛さんとしてはあんな感じなのでは……と思うのですが、如何でしたでしょうか。
■十里楠・真癒圭様:連続のご参加、有難うございますv 罠をしかける、というのが面白そうだったのでやってみたかったのですが中々機会がなく、力不足で申し訳ありません; ですが、過去の真癒圭さんの作品を見るに能力的な能力を使っていなかったのと、今回の人喰い退治を一人でどう解決しようかと考えていたので、「恵安奉」を使わせて頂きましたが、如何でしたでしょうか。
■CASLL・TO様:初のご参加、有難うございますv 悪者顔、というところをもう少し使ったシチュエーションなども入れたかったのですが、こちらも中々機会がありませんでした。力不足で申し訳ありません; CASLLさんは初めて書かせて頂きましたが、能力の「迫真の演技」は、あんな感じで如何でしたでしょうか。ハタから見るとかなり楽しいPCさんだと思いますが(笑)。

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。今回は、その束の間の休息(というと語弊がありますが)と思っていただければ、と思います。

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆