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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


闇光石
「いいよなぁ、コレ。欲しくね?」
「…俺はこっちの方がいいな」
 誰かが持ち込んだバイク雑誌を手に、品定めをしている男子達。
「向坂はレプリカ派か?俺オフロードの方が好きだな」
「まあな。がっしりしていて安定感あるだろ」
「ああ、それは言えてるな」
 円座を囲んで真ん中に雑誌の見開きを置き、その中を覗き込みながらわいわい品定めをしている図と言うのは、傍目から見ると他の人には見せられない物を見ているように見えるらしい。今もすぐ近くを通った女生徒が「やーねー」と言うのを耳にして、思わず小さく笑ってしまった。
「でも、どうせなら大型乗ってみたいよな。映画にあんじゃん、延々続く道路を走るハーレーとかさ」
「大型は同意だけどアメリカンは勘弁かな。第一お前じゃ足届かねえだろ?」
「何を!?こ、これから伸びるんだよ!」
 まあまあ、と宥めたのは嵐。
「俺はそこそこ大きくて小回りが効くならそれがいいな。今大型って言うよりは手に入る範囲で探す方が現実的だし。――バイトしないとなぁ」
 高校生の自分には各が違うかもなぁ、と思いながら溜息を付くと、その言葉を聞いた数人が同じように溜息を吐き。
「親に頼み込んで頭金だけでも…って無理かねえ。結構トシだしなぁ、いつまでもスネ齧る訳にも…」
 いくらなんだよ、と誰かが呟き、一斉に値段へと目が行く。
「…………」
 何故か、そこでほとんどの者がしん、となる。
「やっぱり高いなぁ。今度親に相談してみるしかないか」
 値を見た瞬間がっかりした顔をした男子生徒の言葉で、数人がはっと我に返り、「お、おう、そうだな」と慌てたように同意した。
「…高い…んだよな」
 ぽつりと、声のトーンを落とした嵐に、すぐ両隣にいたクラスメイトがぎょっとしたように目を剥いた。まるで、自分の心の声を代弁したとでも言うように。
 そう。
 高価なのは間違いない。誰もが小遣いで買える値段などとは思っていなかった筈だ。
 それなのに、
 ――なんだ、これなら月々これくらいで…全然余裕で買えるじゃないか。
 そう思ってしまった自分達がいた。
 それは、嵐にも例外ではなく。だから、何故だか少しうろたえて、最初に高いと発言した生徒へ唱和せざるを得なかった。
「…こっちのバイクはどうだ?ニューモデルだってよ」
「ああ、これか。この間見てきたけどな…」
 ちりちりとした違和感。ほんの少しのそれに、首筋を手で擦りながら、無理やり話題を転換する嵐。
 それに不思議そうな顔をしたのは最初に発言した生徒だけで、他の者は幾分ほっとしたような顔で自分からまた楽しげな会話へと変わっていった。

 だからこそ、飛びついたのかもしれない。
 ――生徒の1人が行方不明になったと言う噂を聞いた時。
 やけに手馴れているように見えた武彦の指図に我知らず身体が動いていた。

 ――月神さんて、そんな迂闊な印象じゃなかったんだけどなぁ…。
 そんな、微妙な違和感を感じながら。


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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】

【2380/向坂・嵐    /男性/1-B】

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■         ライター通信          ■
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お待たせいたしました。「闇光石」をお届けします。
時間軸が進むにつれ、次第に見え隠れし始めた「真相」に関わったお話にさせていただきました。
このお話は丁度八月末ですので、「夏」が半分過ぎた形になります。
少しずつ歪みが表へ顔を出す時期ですね。それに関わっている、あるいは関わらされている人々の動きが次第に活発になっていきます。
もう暫く、この夢にお付き合いくださいませ。
参加ありがとうございました。

間垣久実