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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


■月と石と貝殻と───真癒圭と人喰い編■

 皆で詠子をそれぞれに探すことになった真癒圭は、入り江からは極力離れ、持ってきていた懐中電灯で足元より少し先を照らしながら、警戒しすぎなほど警戒し、そろそろと歩を進めていた。
 すると、どこかの岩場から呻き声が聞こえてくる。
 恐々と覗いてみると、ペンションの従業員である美青年が、光の矢に肩を貫かれて岩場に縫い付けられているのだった。
「どうしたんですか?」
 驚いて、慌てて光の矢を引き抜こうとすると、それは真癒圭の手に触れるか触れないかのところで消え去った。多分凛が放ったものだと気付く。
「これ、凛さんの矢……?」
 呟くと、美青年は頷いた。
「実は、人喰いが現れまして……凛さんは危うくさっきの矢を放ってペンションに逃げたのですが、私はこれこのとおりといった具合で……危ないところでした」
「ひっ人喰いっ!?」
 飛び上がる、真癒圭。
「ここは危険です。さ、一緒にペンションに戻りましょう」
「は、はい……」
 美青年に手を取られ、歩き出す真癒圭。男性恐怖のほうは、凛の術がまだ効いていた。ペンションにつくと、青年は「飲むと落ち着く」というコーヒー味の何かを出してくれた。
 真癒圭がそれを全部飲んでしまうと、
「ここまでくれば安心です。皆さんを待っていましょう」
「はい」
 力なく、真癒圭。そして本当に段々力が抜けていき、そのまま眠ってしまった。
 再び目を覚ましたのは、ぐつぐつと煮える鍋の音がきっかけだった。
 目を開けると、青年が立って妖しく微笑んでいる。
「あ、れ……人喰いは……みんなは……?」
 まだ頭がぼんやりしている。すると青年は言った。
「さ、早くこの鍋にお入りなさい。私こそが人喰いのヤクタ。生憎と湯上がりのものは塗りこんでくださらなかったようですが、それでも貴女は充分に美味しそうですよ」
「ひとくい……? 人って、美味しいんですか……?」
 そう言ったあと、自分の言葉で目が覚めた。
 悲鳴をあげ、ペンションの外に逃げ出す。
「無駄ですよ」
 追いかけてくるほうが早い。窮地だ。咄嗟に、真癒圭の本能が能力実施を選んでいた───恵安奉(エンブ)だ。
 突然ゆったりと美しく踊り出した真癒圭に、青年は呆気にとられる。だが、それもつかの間だった。
 近くの小さな岩という岩が浮き上がり、どすどすと青年ヤクタの頭に落ちていったからだ。逃げても逃げても岩の攻撃はやまない。
「さっきの子といい、最近の子はコワい。こんなとこにもはやいられますか!」
 半分泣きが入っていたヤクタは、自ら海に飛び込み、果てまで泳ぎをやめるつもりはなく平泳ぎしていった。
 ようやく踊りがやみ、真癒圭はくたくたと崩れ落ちる。
「こ、コワかった……」
 こっちも半分泣きが入っていた───が。
 真癒圭の能力で引っこ抜かれた岩の下から、月の光に淡く輝く不思議な石ガ出てきたのを見て、彼女はそれを取り上げた。これは、幻影学園でも何度か見たことがある。
「と、とりあえず、まだ時間あるし、月神さん探さなくちゃ」
 ポケットにしまいこみ、再び詠子探しを始める真癒圭だった。




《完》




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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】


1883/セレスティ・カーニンガム (せれすてぃ・かーにんがむ)/男性/3年A組
3604/諏訪・海月 (すわ・かげつ)/男性/2年B組
3636/青砥・凛 (あおと・りん)/女性/2年B組
3629/十里楠・真癒圭 (とりな・まゆこ)/女性/2年B組
3453/CASLL・TO (キャスル・テイオウ)/男性/3年C組


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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東瑠真黒逢(とうりゅう まくあ)改め東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。今まで約一年ほど、身体の不調や父の死去等で仕事を休ませて頂いていたのですが、これからは、身体と相談しながら、確実に、そしていいものを作っていくよう心がけていこうと思っています。覚えていて下さった方々からは、暖かいお迎えのお言葉、本当に嬉しく思いますv

さて今回ですが、ダブルノベルというものを初めて書きました。わたしの作品としては結構コメディ寄りになっています。一番の懸念は、ダブルノベルとしてうまく役割を果たせているか、ということと、お客様皆様の心をちゃんと満たせたかどうかということですが、今からドキドキしています。

■セレスティ・カーニンガム様:連続のご参加、有難うございますv 人喰いに対してもやはりあんな感じでセレスティさんなら対応するかなと思いましたが、如何でしたでしょうか。ある意味、一番容赦がない人なのかもしれません(笑)。
■諏訪・海月様:連続のご参加、有難うございますv 人喰いの部分を個別と最初に決めてあったため、凛さんとの連係プレーは楽しそうだなとも思ったのですが、今回は会話のみにとどめてみました。ボケツッコミなどはあんな感じだと思うのですが(笑)、如何でしたでしょうか。
■青砥・凛様:連続のご参加、有難うございますv やはり今回もボケさせて頂きました、物語にとっては重要なエキスの一つであるボケツッコミのボケですが、わたしのは生ぬるかったでしょうか(笑)。やはり、人喰いに対しても凛さんとしてはあんな感じなのでは……と思うのですが、如何でしたでしょうか。
■十里楠・真癒圭様:連続のご参加、有難うございますv 罠をしかける、というのが面白そうだったのでやってみたかったのですが中々機会がなく、力不足で申し訳ありません; ですが、過去の真癒圭さんの作品を見るに能力的な能力を使っていなかったのと、今回の人喰い退治を一人でどう解決しようかと考えていたので、「恵安奉」を使わせて頂きましたが、如何でしたでしょうか。
■CASLL・TO様:初のご参加、有難うございますv 悪者顔、というところをもう少し使ったシチュエーションなども入れたかったのですが、こちらも中々機会がありませんでした。力不足で申し訳ありません; CASLLさんは初めて書かせて頂きましたが、能力の「迫真の演技」は、あんな感じで如何でしたでしょうか。ハタから見るとかなり楽しいPCさんだと思いますが(笑)。

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。今回は、その束の間の休息(というと語弊がありますが)と思っていただければ、と思います。

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆