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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


アバンチュールしてみませんか? 〜in海キャンプ〜

ACT.SPECIAL■藍原和馬の受難

(海キャンプねぇ。ずいぶんと急に決まったんだなぁ)
 藍原和馬は、廊下を通り過ぎようとして、掲示板の前でふと立ち止まった。
 夏の終わりに、いきなり降って湧いた学園行事である。
 生徒の都合やスケジュールぶっちぎりの突然の企画は、神聖都学園のいわば校風だ。3年生の和馬は、もうすっかり慣れてしまったので、今更驚かない。それよりも――
(1ーBのあいつも参加するかな? するよな、きっと)
 気になる女子の水着姿を、ちらりと想像してみる。
 果たして彼女の水着は、学校指定の女子水着の、Aであろうか、はたまたBであろうか。
 どちらもデザインに大差なかろうというなかれ。年頃の男子には切実な問題である。
 真剣に考え込んでいた、その時。和馬の鋭い勘が、危険信号を訴えてきた。
 廊下の反対側に、同じクラスの女子がふたり、連れだって歩いてくるのが見えたのである。
(うわ。弁天とハナコだ。あいつら、ゴーイングマイウェイすぎて苦手なんだよなァ)
 そろりと踵を返し、見つからないようにその場を離れた――はずだったが。
「これ、和馬。今日も暇そうじゃのう」
「かっずまくん♪ お話しようよー」
「おおおまえら、いつの間に俺の後ろに! っていうか、こっちは話なんかねぇぞ」
 ダッシュで逃げようと試みる。しかし弁天とハナコは、野生動物なみの俊敏さを誇る和馬を、あっさりと両側から押さえてしまった。
「まあそう言わずに。実はな、只今美術部員大募集中につき、海キャンプでの勧誘員を求めておるのじゃ。仲良しさんなクラスメイトとして、わらわたちに協力してもらえぬかのう?」
「協力してくれたら、いいものあげるよ?」
「やなこった」
 拒絶する和馬をものともせず、その鼻先に、弁天は1枚の写真を突き出した。これ見よがしにひらひらと泳がせる。
 ――それは。
(あいつの……水着写真!?)
「そ、そんな初歩的な手段に、俺が引っかかるとでも思って」
 と言いつつも、思わず手を伸ばしてしまう。弁天は、取られないうちにささっと引っ込めた。
「これは1年生のプール授業を隠し撮りしたものじゃが、実はもっと、秘蔵の品があってのう……」
「――それって」
 ごくりと唾を飲んだ和馬の耳元で、弁天はそっと囁く。
「女子シャワールーム内の写真じゃ」

 …………!!!!!!

 和馬が不本意ながら勧誘に協力した裏には、そういう経緯があったのである。
 しかし、海キャンプ終了後、秘蔵写真を手に入れられたか否かは、幻影学園奇譚七不思議のひとつとして、現在に至っているのだった。


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■   登場人物                  ■
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【1533/藍原・和馬(あいはら・かずま)/男子/3年A組】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、神無月です。お待たせいたしました!
この度は、ギャグイベントしか発生しない、いきあたりばったりのおとぼけ恋愛SLG(違)に勇気を振り絞ってのご参加、まことにありがとうございます。
夏の貴重なひとときを、弁天とハナコにお付き合いくださいましたことに感謝いたします。
なお、個別ノベルでの時系列は、大別して「キャンプ前」「キャンプ中」「キャンプ後」となっております。

□■藍原和馬さま@キャンプ前
和馬さまは高校生になられても、やはり飄々とした感じがいたしますね。
夢の中でもデュークに抱きつかれてらっしゃるお姿にニヤリとしつつ(酷)、描写の合間に彼女との想い出をお作りになられていることを切望するライターでした。

ご参加、ありがとうございました。
いつかどこかで、またお会いできますことを願って。