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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


海の蛍火

◆それぞれの捜索編
 深雪は立ち上がった。
「じゃ行ってきます」
 静かにそういうと皆が雑談をしている炊事場を離れていく。きっとあの光を調べに行くのだろうとこずえは直感した。それならば個人個人で動くよりも協力した方が効率がいい。
「あたしも休憩してくる」
 勢いよく言うと立ち上がって深雪が消えた方へと進む。
「靜も〜」
 何故だか靜もこずえを追ってきた。
「どうして一緒に来るの?」
 靜が追いついてくるとこずえは尋ねた。
「だってぇあの光を調べに行くんでしょ? なら靜も一緒に行きたいもの」
 少し考えてこずえはうなづいた。1人より2人、2人より3人の方が効率がいい筈だ。
「わかったわ。とにかく今は寒河江さんに追いつかなきゃね」
「うん」
 2人は砂に足を取られながらも懸命に先を急いだ。するとすぐに深雪の姿が見えてくる。
「待って!」
 こずえが声をかけると、深雪はすぐに振り返った。
「どうしたんですか?」
 不思議そうに深雪は言った。追いついたこずえは低い声で囁きかける。
「知ってるわよ。今からあの光を調べるんでしょう?」
「‥‥はい。カスミ先生に許可を頂いてボートであの辺りに行ってみようかと思っているんです」
 素直に深雪は予定を口にする。
「あたしも行くわ」
「靜もで〜す。いいですよね。1人より3人の方が心強いし何かを見逃しちゃう事もないと思うし‥‥」
 靜に言われるとそれも悪くないと思う。もともと、秘密で調査をするつもりはなかったのだ。
「わかりました。じゃ一緒にカスミ先生のところに行きましょう」
「OK!」
「やった。大船に乗ったつもりでいてください。あ、ボートはちっちゃいかな」
 わいわいと賑やかに、3人は砂浜をキャンプ地の方へと歩いていった。
 響カスミは難色を示したが、沖合に出るわけではないことを力説しなんとか許可を得る事が出来た。もしかしたら根負けしたのかもしれない。3人は意気揚々とボートに乗り込んだ。手漕ぎボートを操るのは皆不慣れであったが、ほんの短い距離なのでなんとか目的地に着く事が出来た。
「ここら辺ですよね」
 深雪が砂浜を見ながら言う。こずえも周囲を見てうなづいた。砂浜からの距離も丁度いい筈だ。あの時みた光の乱舞が最も強い場所にボートは到着している筈だ。
「そうね、いいみたい」
「あれ? なんか変?」
 靜が海を指さした。ちょうどボートがある真下あたりの海が淡く光っていた。海の底に何かあるのかもしれない。深雪とこずえがオールで海をかき回してみる。だが、なんの手応えもない。
「‥‥潜ってみるしかないかしら?」
 深雪は覚悟を決めた。

◆それぞれの結末
 ボートを返却しに行った深雪はまだ戻ってこない。こずえは少しじれていた。幸い繭神陽一郎はすぐに見つけたので今は靜が足止めをしている。けれどいつまで引き留めていられるのか自信がない。その時やっと浜辺に深雪の姿が見えた。
「こっち!」
 急いで深雪の手を振る。すぐに気が付いたらしく深雪は駆け寄ってきた。
「繭神陽一郎はこっちよ」
 こずえは深雪を先導して走る。靜と話をしていた陽一郎が振り返ってこちらを見た。
「かけらを見つけたようだな」
 その声は落ち着いていて渋い。常々陽一郎には苦手意識のあるこずえだが、こういう時の冷静さは評価出来ると思う。
「これの事ですか」
 深雪の手には小さな石があった。何かの破片らしく鋭利な角が残っている。とても海の中にあったものとは思えない。
「それを渡してもらえないか」
 陽一郎が開いた手のひらを上にして、ゆっくりとその腕を深雪に向かって伸ばす。深雪に危害を加える気はないらしい。けれど有無を言わせぬ威圧感があった。
「‥‥わかりました」
 深雪は石を陽一郎に渡した。
「ありがとう」
 深雪は軽くうなづくと皆の待つ浜辺へと戻っていった。靜もそれに続く。一緒に戻りかけたこずえは足を止めて陽一郎に向き直った。
「どうして気になるなら一緒に探そうって言わないのよ」
 もし、そう言ってくれたならもっと陽一郎に親しみを感じられたかもしれない。少なくても苦手だと思う気持ちは薄れただろう。陽一郎は溜め息をついた。
「そんなに事を荒立てる気はない‥‥まだ、な」
 意味ありげにそういうと、陽一郎はキャンプ地の奥へと向かって歩きだした。

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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
【3206 /神崎・こずえ/女性/新鮮な貝】
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■         ライター通信          ■
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 ダブルノベルにご参加いただき、ありがとうございました。完成品です。久しぶりの共通文章と個別文章で、ちょっと難産になりましたが楽しく書かせていただきました。繭神陽一郎はなかなか喰えない男みたいです。きっと彼を苦手に思う人は沢山いるのでしょう。でも、今回の事でこずえさんはちょっと苦手意識が薄れたかもしれませんね。カレーは大変残念な結果になりました。お腹空きながら寝たのかと思うと不憫でなりません。お疲れさまでした。