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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


流星の夜に

(いったい何だったんだろう)
 首をひねりながら、零樹は夜の浜辺を歩いている。
(あんな可愛い女の子をつかまえて「兄さん」だなんて。どうかしてる)
 しかし――
 その呼び名のほうが、不思議と、違和感がないのである。
(そうだ。さっきの彼)
 件の少女の前に、浜で出会った青年のことを思い出す。夢を見るのだと言っていた。自分が、今の自分ではないという夢。
(僕も、そうなのだろうか。夢の中では、彼女と“兄弟”だなんて、そんなおかしなことあるかな……?)
 そのときだった。浜辺にうろうろと漂う、鬼火のような灯り――誰かが懐中電灯を手にして歩いている。
「誰だ」
 はたして、その光の鉾先が、零樹を指した。眩しさに目をつむる。
「……君は……たしか、2−Bの蓮巳君」
 それは、詰襟の制服をきっちりと着込んだ繭神陽一郎だった。
「何をしてるんだね、こんな夜中に」
「いえ……ちょっと、眠れなくて」
「いけないな。はやくキャンプに戻りたまえ」
「そういう生徒会長こそ」
 傲然と、陽一郎は言い放ったが、零樹は怖じけずに言い返す。ふと、彼は生徒会長の手の中に、不思議なものを見た。
「…………それ、何です」
「!」
 一瞬、生徒会長の顔にあきらかな狼狽が走ったのを、零樹はたしかに見逃さなかった。陽一郎はすばやく、手を、握り込んだものごとポケットに隠してしまったが、彼が、指のあいだから青白い光の漏れる、発光する小さななにかを持っていたことは間違いない。
「なにか、光ってましたけど」
「何でもない。浜で拾っただけだ」
「何でもない、って……光ってましたよ?」
「……」
 どう答えるべきか、逡巡している様子だった。だが、ふいに、はじかれたように、陽一郎は振り向いたので、零樹も思わず、その視線のあとを追う。
「あ――」
 流れ星だ。
 それもひとつやふたつではない。
 無数の、雨のような、銀色の矢が天空を翔てゆく。
「すごい……。願いごとし放題ですね……」
 思わず、そんなことを漏らしてしまった。陽一郎は、くすり、と笑うと、
「祈ってみたまえ。きっと叶うだろう」
「あれ。生徒会長って意外とロマンティストなんですね?」
「ここはそもそも、誰かの願いが形になった世界だからさ」
「え――?」
 天から降り注ぐ、光の雨。それを見ながら、陽一郎が静かに呟いた言葉の意味は、はかりしれない。でも――
 零樹はただ、そこにたたずんで、流星が降る夜空を眺めつづけているのだった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【2577/蓮巳・零樹/男/2−B】

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■         ライター通信          ■
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大変、お待たせいたしました。
このたびは、幻影学園奇譚、リッキー2号の海キャンプ・ダブルノベルに
ご参加いただき、ありがとうございました!

ご覧の通り、共通ノベルはいわゆる輪舞(ロンド)形式の構成で、
夜の海辺でPCさま方は順々におふたりずつ出会われることで
起こる事件(?)のてんまつ、個別ノベルはその合間や前後の、
おもにNPCとのやりとりを描いたものになっています。

>蓮巳・零樹さま
はじめてのご参加ありがとございます。
ちょっとミステリアスで、どこか達観したような零樹さまのキャラクター、そして
お友達との微妙〜な関係など、うまく描き出せていたでしょうか。
このノベルの零樹さまが、PLさまのイメージとそう遠くないものであればさいわいです。
なお、零樹さまの個別ノベルは共通ノベルの「後」のエピソードになっています。

それでは、また機会がございましたら、お会いできれば光栄です。
どうもありがとうございました。