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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


アバンチュールしてみませんか? 〜in海キャンプ〜

ACT.SPECIAL■シュライン・エマの肖像

 海キャンプが終了して間もないというのに、イベント好きの神聖都学園高等部は、いまや学園祭一色であった。
 首尾良く多数の部員を得ることが出来た美術部も、その準備に追われている。
 そんな最中、シュライン・エマは、弁天から呼び出しを受けた。
(何の用かしら。あれだけ部員が増えたわけだし、もう勧誘話はないと思うんだけど……)
 いささかの警戒と、微量の興味を持って、シュラインは美術部に足を運ぶ。

 ――シュラインを待っていたのは、絵描きとしての弁天部長からの、思いがけぬ懇願であった。

「私の、絵ですって?」
 部室には、弁天とハナコだけがいた。新しい美術部員たちは学園祭の下準備に出払っているらしい。
 椅子に座らせたシュラインに、モンブランとダージリンを振る舞って、弁天は両手を合わせる。
「そう。是非ともおぬしにモデルになって欲しいのじゃ! その知性、その美貌。語学オタクなところもちょっと恥ずかしがり屋さんなところもパーフェクトじゃ!」
「……また何か、企んでるんじゃないでしょうね?」
 ケーキと紅茶に罪はないので美味しくいただきながらも、シュラインは胡乱な目で弁天を見る。
「失敬な! おぬしを置いてモデルはおらぬと思えばこそ、こうやって頼んでいるのではないか。申請した部費も下りたし、新しいキャンバスも買える。学園祭にはどーんと100号サイズのおぬしの肖像画を出品したいのじゃ!」
「ふぅん? 弁天先輩のことだから、誰にでも同じこと言ってるんじゃないの?」
「そ、そんなことはないぞえ。おぬし一筋に決まっておろうが。安心せい、脱げとは言わぬ」
「あたりまえでしょ!」

「弁天ちゃーん。横で聞いてると、軟派な男子が真面目な女子を口説いてるみたいだよ。はい、シュラインちゃん、お茶のおかわりどうぞ」
 ハナコはティーポットを持ち上げては、シュラインのカップに注ぐ。サービス満点である。
「ねえ、ハナコ先輩」
 声を潜め、ハナコの耳元で、シュラインは事の次第を問うた。
「……どういうこと?」
「弁天ちゃんの言ってるとおり、そのまんま。裏も何もないよ。本当にシュラインちゃんにモデルになって欲しいんだよ」
「そう……なの?」
「うん。ただし」
「ただし?」
「弁天ちゃんの画風ってアレだから、ちょっと覚悟がいるけどね」

 描きかけのキャンバスを、ハナコは指さす。
 そこには、凡人には理解不能な天才絵師の、アバンギャルドな色彩が乱舞していた。
 ふうっと気が遠くなりかけたシュラインは、事態打開に向けて、まずはひとくち、紅茶のおかわりを飲むのだった。


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■   登場人物                  ■
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【0086/シュライン・エマ(しゅらいん・えま)/女子/2年A組】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、神無月です。お待たせいたしました!
この度は、ギャグイベントしか発生しない、いきあたりばったりのおとぼけ恋愛SLG(違)に勇気を振り絞ってのご参加、まことにありがとうございます。
夏の貴重なひとときを、弁天とハナコにお付き合いくださいましたことに感謝いたします。
なお、個別ノベルでの時系列は、大別して「キャンプ前」「キャンプ中」「キャンプ後」となっております。

□■シュライン・エマさま@キャンプ後
通常世界でのシュラインさまと草間さんの関係は、私の中では「恋人以上婚約者未満」という感じでしょうか。安定したステディなんだけど、あともう一歩、みたいな。夢の中ではもっと微妙に、お互いわかってる、でも口には出さない的なセンを狙ってみました。

ご参加、ありがとうございました。
いつかどこかで、またお会いできますことを願って。