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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


アバンチュールしてみませんか? 〜in海キャンプ〜

ACT.SPECIAL■赤星鈴人の邂逅

 赤星鈴人と、美術部の弁天部長と副部長ハナコとのファーストコンタクトは、およそ1年4ヶ月前に遡る。
 まだ入学して間もなく、広い校内の構成がよく把握できていない時期だった。サークル棟の中で、鈴人は迷ってしまった。
 そこへ、ふたりの上級生が通りかかったのである。黒髪で細身の女子と、茶色の巻き毛のグラマラスな女子のコンビでああった。
(わぁ……。綺麗なひとたちだなぁ)
 見とれている鈴人に、彼女らも目を止めてお互いをつつき合っている。
「みてみて弁天ちゃん。可愛い子がいるよ。新入生かな?」
「む? おおハナコ、なかなかじゃな。要チェック物件にマークせねば」
 弁天と呼ばれた上級生は、何やらノートのようなものを広げた。
 よく見ればその表紙には、『神聖都学園美形大全』と記されているのが判るのだが、幸か不幸か、鈴人は気づかなかった。
「これ、そこな美少年! 苦しゅうない、所属クラスと名を名乗れ!」
 鈴人はきょろきょろした。自分への呼びかけとは思わなかったのである。
 しかしふたりの視線は、どう見てもぴたりと自分に照準を合わせている。
「あはは。君のことだよ。ねえ、名前、何て言うの?」
「ちなみにわらわは、この春、美術部部長になったばかりの井の頭弁天。こちらは副部長のハナコじゃ」
「赤星鈴人です。所属クラスは――」
 美人上級生に話しかけられてどぎまぎしている鈴人に、弁天はふっと微笑んだ。
「迷ったのかえ?」
「あ、はい。サークル棟って広くて」
「どのクラブを訪ねるつもりだったのじゃ?」
「サッカー部です。入部手続きに」
「……ほぉーう」
 きらりと弁天の目が輝き、ハナコに合図を送る。ハナコは心得顔で頷くと、いずこかへ去った。
「……あの?」
「よしよし。可愛い後輩のためにわらわが骨を折って進ぜよう。今からサッカー部に案内するゆえ、ついて来るが良い」
「本当ですか! ありがとうございます」

(綺麗なうえに親切なんだ。なんて素敵なひとだろう!)

 このときの刷り込みにより、鈴人の弁天に対する美しい誤解は始まったのである。
 そして誤解は憧れと化して、現在に至っているのだ。

「ねーねー、キャプテン。サッカー部も部員不足で大変だって言ってたよね? あのね、弁天ちゃんが超有望な新入部員の勧誘に成功したの。……ホントだってば。今連れてくるから、紹介料の方、よろしくね♪」

 ――サッカー部に先回りしたハナコが、このような暗躍をしていたことも知らぬままに。


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■   登場人物                  ■
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【2199/赤星・鈴人(あかぼし・すずと)/男子/2年A組】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、神無月です。お待たせいたしました!
この度は、ギャグイベントしか発生しない、いきあたりばったりのおとぼけ恋愛SLG(違)に勇気を振り絞ってのご参加、まことにありがとうございます。
夏の貴重なひとときを、弁天とハナコにお付き合いくださいましたことに感謝いたします。
なお、個別ノベルでの時系列は、大別して「キャンプ前」「キャンプ中」「キャンプ後」となっております。

□■赤星鈴人さま@キャンプ前(かなり)
弁天はひねくれているので、男子からストレートに好意を示されるとかえって混乱しておたおたしてしまうことが、鈴人さまのおかげで判明いたしました(笑)。
でも鈴人さまには、もっとこー、純な女の子の方が……。早まっちゃいけません(毎回言ってるし)。

ご参加、ありがとうございました。
いつかどこかで、またお会いできますことを願って。