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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


アバンチュールしてみませんか? 〜in海キャンプ〜

ACT.SPECIAL■津田香都夜の憂鬱

 ――どうして、こんなことに。
 まったく……。美術部のふたりと関わることになってから、何度そう繰り返したことか。
 本当に、どうしてこんなことになったのだろう。

 学業のかたわら、香都夜はとある喫茶店でアルバイトの「ウエイター」をしていた。
 本来、女性の場合は「ウエイトレス」の筈であるが、香都夜の外見から判断した店主が、そういう呼称を使うことに決めてしまったのである。
 店にやってくる客は、女子高生が多い。場所柄、同じ神聖都学園に通う生徒たちもやってくる。
 彼女たちは口々に、香都夜を「男装の麗人」だと言うけれど、香都夜には男装しているという意識はない。
 ただ、長い髪を無造作に束ね、自分が着やすい服を着て、自分の思うとおりに振る舞っているだけなのだ。
 女子高生たちはみな、憧れの目で香都夜を見る。後輩も、同級生も、上級生も。中には、思い詰めた顔で、思いのたけを切々と訴えてくる女子もいる。
 ――困る。
 それが嫌だとか、迷惑だとかではなく、ひたすら困る。私にいったい、何を求めているのか。
 どう接して、どのように振るまえと言うのか。
 美術部の副部長、ハナコもまた、そんな女子のひとりだった。
 否。そう思っていたのだが……。

「ねえねえ香都夜ちゃん。海キャンプでアバンチュールしてみない?」
 初めてそう言われた時は、耳を疑った。何度も何度も聞き返した。
 しかしハナコはにこにこと、同じ言葉を繰り返す。
「香都夜ちゃんて美人だからさー。きっと男子たちも好感持って話聞いてくれると思うよ?」
 香都夜には、何をしろと言われているのかも判らなかった。ただ、指定のターゲットを捕捉し、非常手段を用いて勧誘すればいいらしいということは理解できた。
 そして言われたとおりに、草間武彦の勧誘ミッションを行い、それなりの効果を得た。
 従って、自分の仕事というか、関わった以上の責任は果たしたことだし、海キャンプが終了したからには、もう良かろうとも思っていた。
 ――それなのに。

「あの。どうしても、ですか」
「どうしてもこれに着替えなきゃだめ! さあさあ」
 学園祭の準備に突入している美術部に、部員でもないのに呼び出され、香都夜はフランス近衛隊の衣装を着せられる。
 しかも。
「デルフェスちゃん、お願い!」
 学園祭期間中は、その姿で換石の術とやらを施され、あちこちに飾られることになるらしい。

 ――どうして、こんなことに。
 香都夜の憂鬱は、当分続きそうであった。

 
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■   登場人物                  ■
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【3164/津田・香都夜(つだ・かつや)/女子/2年B組】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、神無月です。お待たせいたしました!
この度は、ギャグイベントしか発生しない、いきあたりばったりのおとぼけ恋愛SLG(違)に勇気を振り絞ってのご参加、まことにありがとうございます。
夏の貴重なひとときを、弁天とハナコにお付き合いくださいましたことに感謝いたします。
なお、個別ノベルでの時系列は、大別して「キャンプ前」「キャンプ中」「キャンプ後」となっております。

□■津田香都夜さま@キャンプ前&後
初めまして。お会いできて光栄です。どうぞ宜しくお願いいたします。
香都夜さまにはこれが初めてのノベル参加でいらっしゃって、ライターの責任重大なわけですが、このクールな魅力を壊さぬままお笑いシナリオに溶け込んでいただけるよう、ワタクシ、もう全力で!(握りこぶし)いえこほん、ほんの少しでもお楽しみいただければ、これに勝る喜びはありませぬ。

ご参加、ありがとうございました。
いつかどこかで、またお会いできますことを願って。