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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


一千の中の一つの夢

 ダイビングからテントに帰ってきた綾和泉匡乃は、昼間海で取った写真を眺めていた。
 水中デジタルカメラなので、撮ったものはカメラで見ることが出来る。
 一枚、一枚、みていく中で、一枚の写真に見入った。
 それはあの、岩壁の洞窟の中を映した写真だった。
 日の光を天にあおぎ、暗い洞窟に光が差し込んで、幻想的な雰囲気をかもし出している。
 小さな色とりどりの魚がところどころに泳いでいて、まるで海の中の天国だ。
「これ、現像したら、結構いいかもな」
 それに見入って一人呟く。
「あ、そうだ。これ、何かの写真展にでも出してみようかな」
 思いつきでそう考えた。

 海キャンプから帰った匡乃は早速、写真誌を買ってそれを投稿してみた。
 暫くして、匡乃にその写真誌から電話があった。
「あ、あのですね、綾和泉匡乃さんですか? 実は、あの投稿してもらった海の写真なんですが……。編集部一致で特賞になったんですよ」
「は……え? ええ? そうなんですか?」
「ええ、賞金も出ます。それでですね、それを雑誌に掲載する際にコメントを頂きたいと思いまして」
 いきなりの特賞だ。
 賞金は五十万という破格の金額だった。
 学生の身で五十万という金額は、もはや使い切れないほどの大金だった。
「どうしよう……」
 電話を切って暫く茫然とする匡乃だった。

「で……、俺たちにお礼って事?」
 草間と月神と匡乃で今はカラオケボックスにいる。
「そうです。だってただでいい所に連れていってくれたし。じゃんじゃん歌って食べてくださいね!」
 テーブルの上には食べきれないほどの料理やジュースが載っていた。
 草間は団子を食べながら、リモコンを押す。
「じゃあ、俺、「神聖都学園の校歌」歌おう」
 それを聞いた月神が血相を変えてつっこんだ。
「なにそれ!! そんなのがカラオケに入ってるの!」
「入ってるぞ。見てみろよ」
 そう言って本を渡されると、確かに入っていた。
「へえ、じゃあ、皆でそれ歌おうか」
 匡乃が言うと、
「僕はいやだよ! なんでカラオケで校歌歌うわけ? もっと流行りの歌とか歌えばいいじゃない!」
 信じられないと言った体だった。
 散々騒いで、それも匡乃はデジタルカメラにその様子を収めた。
「あ、今の月神さんの顔、凄いですよ」
 匡乃がたった今とった写真を見せると、月神は悲鳴をあげて削除する。

 思い出を一つ一つ、残していく。
 それはとても楽しくて、大切な事に思えた。
 
 そして、誰にも見せていない写真には、あの少女も写っている。
 マリスという少女。
 あえて思い出そうとは思わないが、捨てる気にもならない。
 それも大切な思い出。
           ★END★

  登場人物                  
【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
 1537/綾和泉 匡乃/ 男性 / 予備校教師       


ライター通信 

 今回発注有難うございます。
 ダイビング経験者、という事で一歩進んだデジタルカメラを持って楽しんでもらいました。
 海の中で綺麗に写真をとるというのはなかなか難しいそうです。