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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


アバンチュールしてみませんか? 〜in海キャンプ〜

ACT.SPECIAL■中藤美猫の熱血

 学外での出来事は、生徒たちの人間関係に劇的な変化をもたらす。
 海キャンプが終了して、数日が経過した。
 それまでは、同じクラスにも関わらずあまり話をしなかったクラスメイトとも、キャンプがきっかけて親しくなり、いろんなことを話し合える友人になったりする。
 中藤美猫にとって、デューク・アイゼンも、そんなひとりであった。
 仲の良いハナコに頼まれての、美術部への勧誘だった。ずっと、真面目すぎて取っつきにくそうな人だと思っていたデュークは、確かに真面目だがそれは好感の持てる範囲のことで、話してみれば感じが良く、思いやり深くもあることに気づいた。
「中藤さんは、学費をご自分で働いて捻出してらっしゃるんですね」
「お祖母ちゃんの方針なんです」
「大変でしょうが、素晴らしいことです。頑張ってください」
「あは。でも、海キャンプで着た水着とか、この制服とかは、お祖母ちゃんが入学祝いに作ってくれたんです」
「なるほど。だから学園指定のものと型は同じまま、赤が基調になってるんですね。中藤さんによく似合っている」
 そんな会話を交わすうち、美猫は刺すような視線を感じるようになった。
 上級生の、マリーネブラウである。
 マリーネブラウが以前デュークと交際していて、それが彼女の一方的な仕打ちにより破局に終わったことは、ハナコや弁天から聞いて知っていた。また、後悔した彼女がデュークに復縁を求めているらしいことも、海キャンプでの一幕により、見当はついていた。
(デュークくん、美術部に入ったけど、もしかしたらマリーネブラウは、弁天ちゃん以上に美猫ちゃんを目の敵にするかも知れない。いじめられたら、ハナコに言うんだよ?)
 ハナコはそう言って心配してくれる。しかし、じろりと睨まれるくらいでは、いじめれたうちには入るまい。
(それに……。別にデュークさんとは、そんなんじゃないし)

 学園祭の近づいているこの時期、美術部は多忙なようだ。それと平行して、剣道部も他校との試合を控えているという。
 デュークも試合に臨むと聞いて、美猫はふと思いついた。
(お守りとか、あげようかな?)

 近所の神社で入手した必勝祈願のお守りを、デュークは笑顔で受け取った。
 それが妙に嬉しくて、知らず知らずのうちに美猫も満面の笑みを浮かべる。
 その様子も、マリーネブラウは見ていた。
 ――そして、ある日。

「きゃあ!」
 ロッカーに入れておいた靴に履き替えるなり、鋭い痛みに美猫は悲鳴を上げた。
 つま先に、画びょうが刺さっていたのである。
(これが噂に聞く、例の)
 指でつまんだ画びょうを見る美猫の目に、明らかな反撃の炎が燃えた。
 そっとしておけば良かったものを、純な少女の心に火をともしてしまったのだ。
(お祖母ちゃん。美猫、頑張る!)

 そして少女はライバルを認識し、新しい一歩を踏み出すこととなったのである。


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■   登場人物                  ■
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【2449/中藤・美猫(なかふじ・みねこ)/女子/2年A組】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、神無月です。お待たせいたしました!
この度は、ギャグイベントしか発生しない、いきあたりばったりのおとぼけ恋愛SLG(違)に勇気を振り絞ってのご参加、まことにありがとうございます。
夏の貴重なひとときを、弁天とハナコにお付き合いくださいましたことに感謝いたします。
なお、個別ノベルでの時系列は、大別して「キャンプ前」「キャンプ中」「キャンプ後」となっております。

□■中藤美猫さま@キャンプ後
この度は美術部へのご協力、並びにデュークの勧誘、お疲れ様でございました。マリーネブラウに睨まれてしまったようですが、大丈夫です、美猫さまのKO勝ちですから!!

ご参加、ありがとうございました。
いつかどこかで、またお会いできますことを願って。