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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


IN THE MOOD ―分岐点―
●料理は愛情(戦場ではありません)【5A】
「少佐殿っ、火が熾りました!!」
「よーっし、絶対にその火を絶やすな!!」
「イエッサー!!」
 相変わらずの盛り上がりを見せるサバイバルゲーム同好会の連中。大佐がいつの間にやら少佐になっているのは、気にしない方がいいのだろう、たぶん。
「……何でわざわざ木をこすり合わせて火を熾すかな?」
「ライターあるのにねー?」
 首を傾げる女子生徒2人。その会話が耳に入ったのであろう、サバイバルゲーム同好会の中の1人が力説した。
「何を言ってるか! いついかなる時にもライターなどの文明の利器があると思うな! 戦場では臨機応変だ!! 最後に役に立つのは、知恵と勇気なんだぞ!!」
 念のために言っておくが、ここは戦場でも何でもない。非常に平和な海岸である。
「ま、何にしろ火が熾ればいいんだよ、火が」
 誰かがそう言った。とても説得力ある言葉であった。
 そして調理の方は、火が熾ったことにより作業が先に進むことになる。つまり、煮る・焼く・蒸すなどが火が熾ったことによって出来るようになったのだ。
「鍋洗ってきたぞー!」
 ちょうど寸胴鍋を抱えて、男子生徒たちが戻ってきた。それを見たさくらがにっこり微笑む。
「これでシーフードカレーを作り始められますね」
 キャンプの定番メニューといえば、やはりカレー。せっかく海に居るのだから、シーフードカレーにしようということになっていた。
「ではそのお鍋でお湯を沸かしてもらえますか? それからフライパンも熱しておいてください」
 指示を与えるさくら。恐らくフライパンで野菜などを炒めてから、湯の沸いた鍋に入れるのであろう。
 案の定、さくらはフライパンがよく熱されたことを確認すると、油を少量引いてから串切りにしたたまねぎを炒め始めた。
「あれっ、いかとかえびは炒めないの? もう切ってあるのに」
 女子生徒の誰かがさくらに尋ねた。さくらはその女子生徒の方を向き答える。
「それらは後です。長く煮ると、固くなってしまいますから」
「へーえ、そうなんだー」
 感心する女子生徒。その顔を見ながら口を動かす間も、さくらのたまねぎを炒める手は止まらない。見なくとも手が動くということは、感覚でもう身体が憶えてしまっているのだろう。
「んじゃ、野菜はとろとろ、シーフードはちょうどいい柔らかさになるってことか?」
 今度は男子生徒の誰かが言った。頷くさくら。目指すはそのラインである。が、アウトドアで火の調整がしにくいため、どうなるかは出来上がるまで分からない。
 やがてたまねぎは飴色に炒め上がり、フライパンから湯が沸騰する鍋の中へ移った。直後、さくらは予めボウルに用意してあった小えびも鍋の中に入れた。朝、海から取ってきてもらった新鮮な小えびである。
「……さっきの言葉と矛盾してないか?」
 また別の男子生徒が、首を傾げながらさくらに尋ねた。先程さくら自身が『いかなどは後』と言ったのに、何故に小えびは入れたのか?
 するとさくらはくすっと微笑んで、こう答えた。
「風味付けと……出汁を取るんです。少ししてお鍋がまた沸騰してきたら、小えびは掬ってもらえますか?」
 なるほど、小えびはカレーの具として使うのではないらしい。あくまで風味と出汁取りのためだけに使うようである。
 さくらが陣頭指揮を取るシーフードカレー、出来上がりが非常に楽しみである。だがこの時、いつの間にやら深雪の姿が消えていたことには誰も気付いていなかった……。

【IN THE MOOD ―分岐点―・個別ノベル 了】


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■   登場人物                  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                 / 性別 / クラス / 石の数 】
【 2336 / 天薙・さくら(あまなぎ・さくら)
                  / 女 / 2−C / ☆01 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談・幻影学園奇譚ダブルノベル』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全23場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・OMCイラストのPC学生証やPC学生全身図などをイメージの参考とさせていただいています。
・『幻影学園奇譚』の本文において、高原は意図的に表現をおかしくしている場合があります。
・この度はノベルをお手元にお届けするのが大変遅くなり、申し訳ありませんでした。ここにようやく、海キャンプの模様をお届けいたします。
・今回諸々のことは個別ノベルへ回っていますので、他の方の個別ノベルもご覧になっていただくと、より深く分かるかもしれません。ちなみにタイトルの元ネタは、あの終わりそうでなかなか終わらない曲のことです。海といえば、この曲でしょう。
・天薙さくらさん、ご参加ありがとうございます。美味しいシーフードカレーが出来上がりましたね。ちなみに高原は、甘えびでカレーに出汁を加えたことがあったりします。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、またお会いできることを願って。